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国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法
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投稿者 蟲 日時 2015 年 2 月 05 日 07:55:06: VXoEun45fU5tI
 

 
高橋洋一の俗論を撃つ!
【第112回】 2015年2月5日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
国の債務超過490兆円を意外と簡単に減らす方法
 財務省は、2013年度末の国のバランスシートをまとめ、2014年3月末時点で資産・負債差額(負債が資産を上回る債務超過額)は490兆円と発表したという報道があった。

 まず、その資料をみてみよう。
「財務省HP 平成25年度「国の財務書類」の貸借対照表の概要」

 資産は総計653兆円。そのうち、現預金19兆円、有価証券129兆円、貸付金138兆円、出資66兆円、計352兆円が比較的換金可能な金融資産である。そのほかに、有形固定資産178兆円、運用寄託金105兆円、その他18兆円。

 負債は1143兆円。その内訳は、公債856兆円、政府短期証券102兆円、借入金28兆円、これらがいわゆる国の借金で計976兆円。運用寄託金の見合い負債である公的年金預り金112兆円、その他45兆円。

 先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴をいえば、政府資産が巨額なことだ。政府資産額としては世界一である。政府資産の中身についても、比較的換金可能な金融資産の割合がきわめて大きいことだ。

巨額な資産をオープンにせず
債務の多さだけを強調した過去の政府

 実は、国のバランスシートは前から公表されている。1998年度から2002年度までは試算として公表され、2003年度からは正式版として公表されている。それより以前、20年前にはじめて国のバランスシートを作ったのは筆者である。

 その当時、政府内で資産・負債総合管理(ALM)を行う必要があり、その必要性から国のバランスシートを作成したわけであるが、幹部から口外しないようにかなり注意を受けた。あまりに資産が多額にあったからであり、それまで国の借金いくらと、資産をいわずに負債だけで財政危機を説明してきたからだ。

 しかも資産の大半が特殊法人などへの出資金・貸付金であったため、仮に資産売却・整理となると、特殊法人の民営化や整理が避けられず、天下り先を失う可能性が高かったことも、大きかった。

 その結果、国のバランスシートを公表しても、役所言葉で「ロー・キー」で行い、あまりマスコミへ説明しなかった。このため、バランスシートの資産・負債差額(債務超過額)の数字があっても、財務省が説明しないので、マスコミは記事を書けない状態だった。

 今回、資産・負債差額が報道されたということは、財務省がマスコミにレク(説明)したはずだ。どうして、このような方向転換があったのか、興味深い。

為替介入で得た外債で運用含み益、
いわば借金で財テクという実態

 資産・負債差額に着目するのは世界標準なので、財務省もようやく世界に近づいたというのが一つの理由だ。もっとも、ほかの国は政府資産が少額なので、ネットの資産・負債差額で見ても、グロスの負債額だけを見ても大差ない。日本の場合、政府資産額が大きいので、債務額をグロスで見るか、ネットで見るかは大きな違いがある。

 もう一つ考えられる理由は、債務超過額をいっている以上、政府資産の売却・整理はあまりいわれないですむ。売却・整理しても債務超過額はそれほど変わらないからだ。

 これは、資産のうち外貨債権が100兆円以上あり、それが最近の円安で20兆円程度の含み益が出ていることが大きく関係している。これは、外為特会に関わる部分で、バランスシートでいえば、資産の有価証券と負債の短期政府証券にあたるところだ。

 日本の外貨準備が大きいことに着目して、その運用をもっと積極的に行うという政府系ファンドの提言がしばしばある。実態をいえば、実際に外資系証券会社をはじめとして「運用」の委託を財務省から受けている会社は確かに存在している。

 外為運用の秘密ということで、世間ではあまり知られていないが、100兆円の運用なので、証券会社への実入りも大きい。これが財務省の利権を担っているのが問題だ。外為特会をみれば、政府短期証券という「国債」によって資金調達をして、為替介入という名目で外債購入し、その後「運用」しているわけだ。

 いってみれば、借金が大変といいながら、さらに借金して財テクを行っているわけだ。どう考えても、財務省がいうような財政危機とはあまりにふさわしくないことが実際には行われているのだ。

 しかも、変動相場制という建前とも、今の外為運用は矛盾している。変動相場制であれば、一度為替介入して外債を購入しても、その外債の償還期限が来たら償還し、それで調達した政府短期証券も償還し、資産と負債を両方ともに減少させるのが筋だ。ところが、日本の外為特会では、外債のロールオーバーを行うことで、事実上の為替介入を継続している。その結果、先進国では類を見ない巨額な外為資金になっている。


 国際的な観点からいえば、外為資金を圧縮して、同時に政府短期証券を減らすことが望ましい。しかも、現在では円安で結果として上述のような20兆円程度の含み益があるので、絶好の機会だ。

 この話は、官邸も知っている。いずれ何らかの対策をせざるを得なくなることを財務省もわかっているので、今のうちに、債務超過額をアピールしている可能性はある。

 ただし、正しい財務運営は、資産を圧縮して有利子負債をその分減少させることだ。つまり、債務圧縮は避けられない。

 これまで財務省は、政府資産は道路などを例に挙げて、換金できないと説明してきた。ただし、これは有形固定資産178兆円にはあてはまるが、その約2倍にもなる金融資産ではあてはまらない。特殊法人などを廃止または民営化すれば換金可能だ。

 また、政府資産に含まれる運用寄託金105兆円を将来の年金のために処分できないといってきたが、それを処分せよなんていう人はいない。問題は金融資産である。財務省はこれからどのような説明をするのだろうか。

BS上は債務超過でも
徴税権という「簿外」資産が

 最後に考えられる理由は、債務超過を強調して財政再建の必要性をいうことだ。普通の企業であれば、債務超過であれば、破綻である。しかし、国の場合には事情が異なる。

 他の国のバランスシートをみても、債務超過は珍しくない。日本の債務超過額は名目GDPの90%程度であるが、たとえばアメリカの債務超過額も名目GDP比でみればやはり90%程度であり、日本とほとんど同じである。もし日本が財政破綻というなら、アメリカも財政破綻だが、そうなっていない。

 国の場合、形式的には債務超過であっても、国家としての徴税権という「簿外」の資産があると考えてもいい。日本の場合、少なくとも年間で40〜50兆円くらいの税収が確実にある。これが将来も続くとすれば、それらの現在価値は割引率4%で1000〜1250兆円程度である。これを資産と考えてもいいのであるから、少しぐらいの債務超過は問題にならない。

 もっとも、この点は、負債でも将来を縛るものがあれば、その分は差し引かなければいけない。いずれにしても、プライマリー収支が均衡しないと、まずいことには留意する必要がある(詳細は、 2014年10月30日付け「「消費増税で財政再建できる」は大間違い」を参照)。

 さらに、国のバランスシートだけで判断するのもミスリーディングだ。企業のバランスシートを見るとき、単体ベースと連結ベースの両方を見るように、国の場合も単体だけではなく、連結ベースも見なければいけない。筆者が、旧大蔵省時代に初めてバランスシートを作成したときも、連結ベースは作成した。

 今でも、政府の子会社である特殊法人などを含めた連結ベースでのバランスシートは作成されている。国の単体ベースより2ヵ月くらい遅れて公表されているので、今年も3月末くらいに公表されるだろう(2012年度末の連結バランスシートは、財務省HP 平成24年度連結財務書類pdf にある)。

日銀のBSを連結すると
国の負債超過は200兆円減?

 ただし、ここでは日本銀行が連結対象になっていない。日本銀行は認可法人であるが、連結ベースに含めて考えた方がいいこともある。荒っぽい方法だが、日本銀行のバランスシートを合算してみよう。他の政府子会社をすべて連結として含めて、債務超過額は若干低くなるはずだが、簡潔にするために、日本銀行だけを連結に含めてみよう。

 日本銀行のバランスシートは単純にいえば、資産に国債、負債は日銀当座預金と日銀券である。日銀当座預金は日銀券と代替可能なので、日本銀行の負債は日銀券のみとみても、間違いではない。

 となると、アバウトには、日本銀行のバランスシート(2014年3月末)は、資産の国債200兆円、負債の日銀券200兆円とみてもいい。これを国のバランスシートに合算すれば、負債の中の公債・政府短期証券が200兆円減少し、その代わりに日銀券200兆円が入るわけだ。

 ここで、日銀券200兆円は、形式的には負債だが、利息負担もないし、返済義務もない。いってみれば、この分は負債とみなさない考え方もありうる。その考え方にたてば、債務超過額は490兆円から290兆円にあるわけだ。このあたりについて、公会計で定説はないと思うが、日銀保有国債分については、国にとって償還も利払いも必要ないので、債務超過額が減ったといってもいいだろう。

 こうした点について、経済財政諮問会議はしっかり議論する必要があるが、今のメンバーではとてもできそうにないのが気になるところである。

http://diamond.jp/articles/-/61359

http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2013/20150130gaiyou01.html

 http://diamond.jp/articles/-/66253
 

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コメント
 
01. 2015年2月05日 08:43:43 : nJF6kGWndY

>日銀券200兆円は、形式的には負債だが、利息負担もないし、返済義務もない。いってみれば、この分は負債とみなさない考え方もありうる。その考え方にたてば、債務超過額は490兆円から290兆円

原理的に考えれば、政府の債務と言っても、円建てである限り、日銀券によって相殺可能になり、財政破綻など起こらないが、

インフレ率が上昇し過ぎれば、実質的に破綻と変わらないことになる

つまり重要なのはインフレ率を、最適な範囲に抑えつつ、トータルの財政支出や規制による国民の効用を最大にするような政策運営ということになるが、現実には、簡単ではない

そもそも、そうした理解が、どこまで政策担当者にできているかは大いに疑問だな


02. 2015年2月05日 16:08:16 : jXbiWWJBCA

財政再建計画、高成長依存の「逃げ道」絶つべき=自民・河野氏
2015年 02月 5日 14:10 JST
[東京 5日 ロイター] - 自民党の河野太郎・行政改革推進本部長は、ロイターのインタビューで、今夏までにまとめる財政再建計画について、高めの成長率を前提に計画を策定しても「絵に描いた餅」になりかねないとし、保守的な成長率を前提に計画を策定すべきだとの認識を示した。経済成長率を高めに想定して税収をかさ上げし、歳出・歳入改革の取り組みが後退することに河野氏は警鐘を鳴らし、過度な成長率依存による「逃げ道」は絶つべきだと強調した。

財政再建計画を確実に実施させるためには、計画を法律として制定するほうが望ましいと語った。

<3%成長前提の試算を疑問視、保守的な成長で再計算を>

政府は国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)を2020年度に黒字化するとの目標を掲げ、実現を担保するために、今夏までに具体的な財政再建計画を取りまとめる予定だ。

一方で、安倍晋三首相がPB黒字化だけでなく、債務残高対GDP比などの指標も含め「複合的にみていく必要がある」との発言を繰り返していることで、エコノミストの間では「財政調整より高い成長で問題解決を目指すべきとの立場」に警戒の声も浮上している。河野氏はこの過度な「成長」依存の視点に一石を投じた。

河野氏がまず問題視するのが、計画策定の前提となる内閣府試算の現実性の乏しさ。

昨年7月の内閣府試算では、2010年度後半以降に名目成長率3%後半の高い名目成長率が続くとしても、20年度にはGDP比1.8%、金額で11.0兆円の基礎的財政収支の赤字が残る。この時の税収見通しは69.3兆円。日本でこれまで最も税収が多かったのはバブル末期の1990年の60.1兆円で、推計はこれを9兆円も上回った。

名目成長率が低めの2%弱となると、PB黒字化に必要な対応額はGDP比2.9%、金額にして16.2兆円に達する。  

河野氏は「3%成長なんてそもそも難しい。2020年度まで3%成長を前提とする試算はおかしい」と異論を唱え、「税収弾性値を上げて税収が増えるという『バラ色』のようなことを言われても困る」とも語り、「現実的かつ保守的な試算を、いろいろなケースに分けてまずスタートさせるべきだ」と指摘。「高めの成長率を前提に議論しても、『絵に描いた餅』になるだけだ」と語った。

<債務残高は今でも減らせる、外為特会検証へ>

さらに、財政健全化のために河野氏は「PB黒字化の議論だけではダメだ。ストックをどう減らしていくかという議論をしなければならない」と強調。PB黒字化達成後の次の目標として、債務残高を安定的に減らしていくことに着手すべきだとも語る。仮に黒字化したとしても、金利上昇が国債費の増大要因となり発散するからだ。

もっとも、政府内で浮上している「債務残高対GDP比」目標ではなく、より直接的に、政府資産と負債の両建てとなっている外為特会を見直すことで、債務残高を減らすことができないかと提言する。「まず両建てになっているものから、削れるものは削っていくことをやるべきだ」とし、「債務残高は今からでも減らし始めることができるところがある」と語った。

そのうえで、ストック面からの目標設定では「欧州ではGDP比で計算し目標設定している国がある。それはわかる」と一定の理解を示しながらも、「(GDP比の目標では)すぐ経済成長率を高めれば(良い)という議論になってしまう。そういう『逃げ道』は避ける」と述べ、経済成長に期待しすぎる財政収支改善は、歳出削減や増税による歳入改革への取り組みを弛緩させるとした。

<本丸は社会保障改革、増税論議は避けて通れない>

歳出改革では、一般会計の3分の1を占めるまでに膨張した社会保障が「改革の本丸。避けて通れない」と繰り返し、高齢化による自然増の部分と、医療高度化による歳出増の部分に分けて、それぞれに上限を設定することも一案とした。

歳入改革では「議論せざるを得ない」としならも、租税特別措置の見直しや所得税引き上げなど選択肢はあるとし、2017年4月に消費税率を10%に引き上げた後、さらなる消費増税論議が議題になるかは言及を避けた。

<法定化で、コミットメントがより確実に>

計画策定にあたって河野氏はどれだけ具体的に決意をもって示すことができるかだと述べ、計画の実現をより確実にするには「法定化することが望ましい」と語った。

<自民特命委がきょう初会合、全党的議論にシフト>

河野氏は1月21日、こうした考え方を行政改革推進本部の提言としてまとめ、稲田朋美政調会長に提出した。自民党では、政調会長をトップに「財政再建に関する特命委員会」を新設。5日午後に初会合を開き、財政再建計画策定に向けた議論をスタートさせる。

河野氏は、箱根駅伝にたとえ、「1区から、2区の全党的組織にタスキを渡した」と述べ、全党的な議論を促した。自身も特命委のメンバーとして「伴走を続ける」構えだ。

*一部表現を修正しました。

(吉川裕子 編集:宮崎亜巳)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0L90B020150205?sp=true


03. 2015年2月06日 09:07:29 : jXbiWWJBCA
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150205/277187/graph_01.jpg

絵に描いただけの財政再建計画はもういらない
2015年2月6日(金)  田村 賢司


 増税なしでも財政再建は可能!?――。
 内閣府が間もなく公表する経済財政の中長期試算は、2015年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字がGDP(国内総生産)比で3.3%となり、2010年度から半減することを明らかにする。PBは税収と副収入で政策的経費が賄えるかどうかを見る指標。これが赤字とは、給料では生活費が足らず、借金に頼る状態に似る。我が身に引き寄せて見れば、その危うさはよく分かるだろう。

(注)公債発行は2012年度までは決算額、それ以降は当初予算。
(出所)予算書、決算書、財務省「財政統計」等より大和総研作成
 政府は2020年にこれを黒字化する目標を掲げ、2015年には2010年度比で赤字幅を半分に減らすとしてきたから、まずは最初のハードルをクリアしたようなものである。2015年10月に予定していた消費税増税を2017年4月に先送りしたことも考え合わせれば、政府もやりくり算段、何とか財政再建を進めていると映るかもしれない。
地方への大盤振る舞いが見せる不安
 だが、第一の目標達成という姿は本物なのか。裏に回ればまた違う像が浮かんでくる。
 例えば、景気対策を盛り込んだ約3兆1000億円の2014年度補正予算。公共事業費を約3200億円と前年度の3分の1に絞ったとしている。しかし、実態はかなり違う。年度後半に計上した公共事業費は、年度内に執行できず翌年度に繰り越されることが珍しくない。そうなると、PB半減目標の算定対象になる2015年度の歳出が膨らむことになるから、繰り越しを徹底的に避けようとしたという方が実態に近い。
 実際、補正予算の策定過程で「2015年度に繰り越しとなりやすい公共事業はぎりぎりまで絞らざるをえない」と苦笑いする財務官僚の姿を何度も見かけた。脇腹の贅肉を背中の側に回して締め付け、正面からは少しでも痩せて見えるようにしたようなもの。2016年度になればまた元に戻る。
 あるいは地方関連予算。国の2015年度当初予算では、安倍晋三首相肝いりの地方創生枠で約7000億円、その他の一般財源で1兆2000億円を積み増している。その一方で地方自身の税収は2兆4000億円も増えているのに国から地方へ“給付”する地方交付税はほとんど減らしていない。地方はバブルとでも言えそうなだぶつき予算である。
 この動きの中に浮かぶのは、大盤振る舞い予算は、本当に必要なのか、効果を上げるのかという懸念である。思い起こすのは、かつて「地方に出来る事は地方に、民間に出来る事は民間に」と打ち上げた小泉純一郎政権の三位一体改革である。
 国庫補助金を見直し、税源の一部を移譲することで地方分権を進め、地方交付税圧縮による財政再建を並行して行うとしたものだ。ネーミングの見事さとともに小泉首相の改革イメージを最大限に打ち出したが、結果は「地方が活性化した形跡はない」(大和総研の鈴木準・主席研究員)と言わざるを得ない。
 教訓として見えるのは、地方で改革を行うとしてもその実行ができる人材の少なさであり、広域の行政間での連携の弱さである。結局、国頼みの姿勢から脱却できていないという現実だ。
 そこに変化があるのかと言えば、予兆や胎動らしいものはほとんど見えていない。財政再建の難しさは、ここにある。単純な予算投入の問題だけでなく、それを使う「ソフト」の側の難題である。
社会保障改革も難所が待ち構える
 例えば、財政再建の鍵としてしばしば指摘される社会保障費。国は2017年度の実施を目指して、現在市町村が財政責任を担っている国民健康保険を都道府県に移す改革を進めようとしている。高齢化・人口減で市町村国保の財政が大幅に悪化してきたためだ。自治体間で保険料の差も大きく拡大し、住民の間の負担の格差も許容範囲を超えてきた。
 そこで、国保の運営を都道府県単位に切り替え、器を大きくすることで国保財政を維持しようとしているのである。
 だが、実態はきわめて難しい。地域医療費の増大の裏には、過剰な病床数や、都市部への病院と診療科目への偏在などの問題があり、その是正が欠かせない。現在の仕組みでは、重症の急性期患者を受け入れる医療機関は診療報酬が高くなるが、慢性患者が多いにもかかわらず、その指定を受けている病院は多く、その改革も重要な課題となっている。
 都道府県は、地域の実情にあわせた医療計画を策定し、それに基づいて改革を実施することとなっているが、議論のテーブルの反対側には、地元医師会が座る。地域で大きな政治力を持つ医師会を相手に改革の実を上げるのは容易なことではない。
 そもそも、知事会自体が約3000億円もの赤字を垂れ流す国保の財政責任を引き受けることに難色を示してきたという経緯もある。2015年度当初予算で国が国保への財政支援拡充のために決めた約1800億円(うち国費は約1030億円)は、そのための措置との見方が強い。
3度目の正直になる財政再建計画
 もちろん、地方だけの問題ではない。今回の当初予算では、介護保険で低所得者の保険料軽減を図り、約220億円を計上したが、実はこれは一部。消費税を10%に引き上げる2017年には、世帯の市町村民税が非課税になっている高齢者全員の介護保険料を軽減する。対象者は実に1000万人にも上る。国保でも、低所得者など保険料(定額部分)を2〜5割軽減する対象者を約500万人拡大するという。本当に必要な人に対象を絞り込めているのかと、疑念を持たざるを得ない。
 財政再建の取り組みは過去何度も挫折している。1997年、橋本龍太郎政権は、財政構造改革法を成立させ、大胆な見直しに取りかかろうとしたが、同年のアジア経済危機で景気が悪化すると、翌年無期限凍結となった。前述の三位一体改革に取り組んだ小泉政権は2006年の骨太の方針(経済財政運営と構造改革に関する基本方針)で、社会保障費の抑制に踏み込む財政再建策を打ち出したが、2008年秋のリーマンショックもあり、PB黒字化目標を10年先送りした。
 2020年のPB黒字化目標は、その時に延長されて残ったものだ。安倍晋三首相は、2020年の黒字化目標を堅持すると表明しているが、2015年のPB半減達成は景気回復による税収増に助けられたもの。一方で策定した予算には、前述のようになお穴が多い。安倍首相は、6月にも財政再建の具体的計画を打ち出すとしているが、絵に描いただけの計画ならもういらない。



記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
 


http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150205/277187
 


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