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年内に日経平均2万円?生保、信託銀行も楽観的予測 その根拠に疑問の声も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150203-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 2月3日(火)6時0分配信
今年の株式市場は、年初から振れ幅の激しい展開になっている。日経平均株価の終値で見れば1万7000円を挟む攻防になっており、欧州や中国の景気後退懸念など、不安材料が多いわりには底堅さを感じさせる。これは、日本銀行による「異次元の金融緩和」の第3弾や年金基金の押し目買いが期待されているからだろう。
市場では依然として先行きを強く見る向きが多く、「下落すれば昨年10月のように日銀、公的資金の援護が入るので安心感があります。『国策に売りなし』で、日経平均は年内に2万円台に乗るでしょう。バブル崩壊後の最高値(1996年6月に記録した2万2666円)の奪回も可能です」(準大手証券営業マン)と威勢の良い声も聞こえる。
万年強気が宿命の証券関係者ばかりではなく、比較的慎重な見通しを立てる生命保険会社や信託銀行の関係者にも「日経平均2万円」を予測する向きは少なくない。その根拠になっているのは、日経平均の年間変動率のようだ。銀行系アナリストは次のように解説する。
「過去の推移から見て、日経平均2万円は必ずしも困難な水準ではありません。バブル崩壊後も、日経平均の年間変動率(年間高値÷年間安値)はおおむね30%から40%台のゾーンです。現状をブルマーケット(強気の市場)と捉えて上げ幅20%、下げ幅10%と想定しても、1万7000円から20%上昇で2万400円になります」
簡潔明瞭な説明である。市場関係者のみならず、経営者や個人投資家などを対象としたアンケート調査を見ても、日経平均は2万円ないしその前後を今年の高値とする回答者が多い。彼らも、過去の年間変動率を参考にしているのかもしれない。
もっとも、市場の多数意見にしたがって株価が動くのであれば誰も苦労しない。投資の心得のある方は実感できると思うが、株価は多数派の思惑通りに動くほど素直ではなく、市場の見方をあっさり裏切ることも多い。
●実は難しい日経平均2万円
過去の年間変動率に基づいて考えると到達可能に見える日経平均2万円だが、別の角度から見ると、また違った見解になる。それは、個別銘柄の株価水準だ。
日経平均は「日経225」とも呼ばれるように、東京証券取引所の市場第一部に上場されている代表的な銘柄225社の株価によって計算されている。価格が変動する仕組みをわかりやすく示すと、日経225の対象になっている企業の株価が1円上昇(下落)すると、日経平均は約0.04円上昇(下落)する。同じく100円上昇すれば約4円、1000円なら約40円上昇することになる。
今年1月16日の終値(1万6864円)を基準に試算してみよう。日経225の対象の全銘柄がここから20%上昇すると、日経平均は3373円の上昇になり、晴れて2万円の大台に乗る。
しかし、これは現実的ではないだろう。なぜなら、銘柄によって、置かれている事業環境や株価の習性が大きく異なるからだ。一般的に、円安は企業にとって増益要因であり株価の上昇につながると見られがちだが、その逆となる業種も少なくない。金利の上下動も同様だ。
また、日頃から派手な値動きをする銘柄もあれば、ほぼ同じゾーンで往来する銘柄もある。特に日経225の対象となっている銘柄には鉄鋼、鉄道、繊維、化学といった重厚長大企業が多く含まれており、この種の銘柄は発行済み株式数が膨大なため株価の振れ幅は乏しい。
そういった要因を踏まえると、日経平均が2万円の大台に到達するには、株価水準が高く、日経平均への影響も大きい値がさ株が上伸することが条件になるだろう。では、ユニクロを展開するファーストリテイリングをはじめ、影響力が大きい上位10銘柄を用いて試算してみよう。
まず、この10銘柄以外で日経225の対象となっている215銘柄が10%上昇した(日経平均は1111円の上昇)と仮定する。そして、さらに影響力の大きい10銘柄が30%上昇(同じく1728円の上昇)したとすると、日経平均は1万9703円になる。実際は、値がさ株が上伸しても2万円に届かせるのは難しいのだ。
以下は日経平均への影響力の大きい10銘柄が30%上昇した時の株価と、各社の今期業績予想に基づく株価収益率(PER)だが、10社中6社の株価が5桁に達し、9社平均のPERは約30倍にもなる(1月16日の終値ベース)。
(1)ファーストリテイリング(株価5万3781円/PER57.1倍)
(2)ソフトバンク(同8886円/同17.8倍)
(3)ファナック(同2万4745円/同32.0倍)
(4)KDDI(同1万241円/同21.7倍)
(5)京セラ(同6701円/同26.1倍)
(6)アステラス製薬(同2万267円/同36.7倍)
(7)東京エレクトロン(同1万741円/最終赤字予想のため算出できす)
(8)ダイキン工業(同1万37円/同26.0倍)
(9)信越化学工業(同9937円/同35.8倍)
(10)トヨタ自動車(同9768円/同16.6倍)
しかしながら、見てきたように日経平均の2万円到達はかなり高いハードルであり、仮に乗ったとしても維持するのは至難の業になるだろう。
文=島野清志/評論家
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