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どうする日銀
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20150202-00042735/
2015年2月2日 11時18分 久保田博幸 | 金融アナリスト
1月30日に発表された12月の全国消費者物価指数は前年比プラス2.5%となった。日銀が試算する消費増税の影響を除くと前年比プラス0.5%となる。原油価格の下落によるガソリンや灯油価格の下落が影響したとみられる。日銀の物価目標からさらに遠ざかりつつある。
ロイターによると複数の政府関係者は、政府として原油安によるメリットを最大限に生かすために、物価上昇率の低下に対応して日銀が追加緩和することは、政府として当面歓迎しないスタンスに切り替えたそうである。つまり原油安により物価目標の達成が遅れようが、原油下落による日本経済へのメリットが大きいので、原油安というチャンスを生かすべきとのご意見のようである。
「足元の日本経済では、企業収益の拡大や今春闘後の実質所得のプラス転換も期待されている。そこへ日銀の追加緩和で物価上昇が促されてしまっては、中小企業の業績や個人所得の回復に水を差しかねない、との見方が政府部内で台頭している。」(ロイター)
日銀の異次元緩和で物価上昇が促されるわけではないことがむしろ立証されていると思うが、それはさておき、これは日銀の追加緩和で円安の動きが加速し、原油価格の下落によるメリットを相殺する懸念を示しているのではなかろうか。
1月の政府の月例経済報告では、日銀の物価目標達成に関する表現について、従来の「できるだけ早期に」から「経済・物価情勢を踏まえつつ」に修正された。政府は日銀による物価目標達成について、無理しなくても良いとして第一の矢を仕舞いはじめたようにも思える。
昨年10月31日の量的・質的緩和の拡大の理由について、黒田総裁は下記のような発言を記者会見でしている。
「このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等でやや長引いています。そうしたもとで、ごく最近ですが石油価格が大幅に下落し、そういったことから現に消費者物価の上昇率も少しずつ縮小してきているといったことが起こって、それが今後さらに続くとすれば、やはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそも好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあります。そういったリスクに未然に対処するために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したということです。」(2014年10月31日総裁記者会見より)
この10月31日の金融政策決定会合では謎の中断時間があった。10月31日の決定会合議事要旨によると以下の記述があった。
「金融市場調節方針の変更等に関する議論を踏まえ、政府からの出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(12時31分中断、12時42分再開)」
金融政策の変更を決定しようとしているので、担当大臣に確認を取るのはあたりまえではないかと思われるかもしれないが、これは極めて異例の出来事なのである。過去の事例を見ても金融引き締めの際には、このような中断が幾度かあったが、その後の金融緩和の際には異次元緩和第一弾を決定した2013年4月の決定会合を含めて、中断の事例はなかった。政府にとっても10月31日の日銀による量的・質的緩和第二弾がサプライズであった可能性がある。このあたりから日銀と政府には認識のずれが生じていたのであろうか。
そういえば現在来日中のトマ・ピケティ氏であるが、12月の日経新聞のインタビューでは「安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい」と答えていたが、1月29日の東京都内での講演後のパネル討論でアベノミクスに触れて「リフレ政策は不動産バブルにならないか」と懸念を示し、「物価を上昇させるなら賃金を増やすしかない」と指摘したそうである。
著名なピケティ教授の本当の意見はどちらなのか。実はアベノミクスにはあまり御関心はないのかもしれないが、来日の際にいろいろと日本の話を聞いて、微妙に軌道修正を行った可能性もある。
政府は自ら日銀に押しつけたはずの第一の矢に対する効果について疑問を抱きつつあり、頑なに物価目標達成を目指そうとしている日銀に距離を置きだしたのであろうか。
債券市場では過大な日銀の買入による需給逼迫での異常ともいえの金利低下に警鐘を鳴らし始めている。健全な債券市場を取り戻すためにも、政府もスタンスの変化もあり、日銀にとってもう少しフレキシブルな金融政策に転じるチャンスなのではなかろうか。はっきりいえば、このような巨額な量の国債買入が効果がないのであれば、方針を修正したほうが良いのではなかろうか。
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