03. 2015年2月02日 14:24:21
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メインシナリオは破綻の先延ばしだがGREXITした方が、ユーロ圏の純化は進むし ギリシャデフォルトとEURO買いに賭けている投機家も喜ぶだろう http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42810 ギリシャとユーロの未来:どうする、メルケル首相 2015年02月02日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2015年1月31日号) 急進左派連合の勝利は、ギリシャのユーロ圏離脱を招く恐れがあるが、ユーロのより良い未来につながるはずだ。 ギリシャ総選挙、反緊縮の急進左派連合が歴史的勝利 1月25日、ギリシャの首都アテネの選挙集会で、集まった支持者らに向け手を挙げる急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・チプラス党首〔AFPBB News〕 5年あまり前の地獄のようなユーロ危機は、まさにギリシャから始まった。だから、ギリシャが今、大詰めが演じられるであろう舞台となっているのは、古典的な意味でふさわしいことだ。 最終幕のお膳立てをしたのは、1月25日のギリシャ総選挙でアレクシス・チプラス氏率いるポピュリスト政党の急進左派連合(SYRIZA)が演じた大勝劇だ。 チプラス氏は、ギリシャの債務の大幅削減を求め、公共支出の大盤振る舞いを公約に掲げることで、欧州の単一通貨にかつてない重大な挑戦状を突き付けている。それはすなわち、欧州に緊縮の道を敷いたドイツのアンゲラ・メルケル首相にとっても最大の挑戦状と言える。 賭け金は高い。チプラス氏を含め、誰もがギリシャのユーロ圏残留を望むと主張しているものの、いまやギリシャ離脱(いわゆる「Grexit=グリグジット」)の危険性は明らかだ。 メルケル首相は、2011年から2012年にかけては判断に迷っていたが、その後、ギリシャのユーロ圏残留を支援する決断をした。ドイツのせいでまた欧州が災難に巻きこまれたとの非難を望まなかったのだ。加えて、北部の債権国も南部の債務国も共に、無秩序なグリグジットに伴う混乱が欧州の銀行や自国経済に及ぼす影響を懸念していた。 だが今回は、オッズが変わっている。ギリシャの離脱がギリシャ自身の責任と見なされる公算は、前回よりも大きい。欧州経済は以前よりも強固になり、ギリシャの債務の80%は他国の政府か公的機関の手中にある。 何よりも、政治情勢が変化している。フィンランドとオランダは、ドイツと同様、ギリシャが2度にわたる救済時に交わした約束を守ることを望んでいる。そして、南部諸国の中道派政権は、ギリシャの脅しが成功したら、スペインのポデモス党など、自国のポピュリスト野党に有権者の票が流れるのではないかと危惧している。 悪い問いに対する良い答え いずれにしても、大きな混乱が生じるかもしれない。だが、おおまかに見ると、考え得る結果は3通りある。良い結果、悲惨な結果、そして妥協による問題の先送りだ。ユーロはこれまで常に痛みを先送りしてきたが、現在の闘いは経済ではなく政治を巡るものだ。妥協は以前よりもずっと難しいだろう。 強く期待したいところだが、ギリシャと欧州がともに選ぶことのできる良い解決策が1つある。チプラス氏の主張は、2つの大きな点で正しく、1つの点で全く間違っている。 チプラス氏が正しいのは、欧州の緊縮策が過剰だという点だ。メルケル首相が主導する政策は、欧州経済の首を絞め、デフレを招いてきた。欧州中央銀行(ECB)が遅ればせながら導入を決定した量的緩和(QE)が、それを裏づけている。 ギリシャの債務が返済不能という点でも、チプラス氏は正しい。増税と歳出削減にもかかわらず、ここ6年でギリシャの債務は国内総生産(GDP)比109%から同175%という膨大な規模にまで膨らんでいる。アフリカの経済破綻国と同様に、ギリシャについても債務免除プログラムを適用すべきだ。 だが、国内の改革を放棄するという点では、チプラス氏は間違っている。1万2000人の公務員を再雇用し、国有企業の民営化をとりやめ、最低賃金を大幅に引き上げるという同氏の計画は、どれもギリシャが苦労して手に入れてきた競争力を損なうだろう。 従って、本誌(英エコノミスト)は次のような解決策を提案する――債務減免と引き換えに、チプラス氏に行きすぎた社会主義を捨てさせ、構造改革を維持させるのだ。そのための方法として考えられるのは、ギリシャ債務の返済期限のさらなる延長か、もっと良いのは額面を減額することだ。 チプラス氏の左翼的な衝動は、ぬくぬくと守られているギリシャの寡占市場を解体し、腐敗を取り締まることで発散すればいい。マクロ経済学的な緩和とミクロ経済学的な構造改革という組み合わせは、イタリアや、さらにはフランスといった国の手本にさえなるかもしれない。 厳しい現実 「メルケル首相、ギリシャのユーロ圏離脱に対応の用意」独雑誌が報道 ドイツのアンゲラ・メルケル首相〔AFPBB News〕 これは極めて合理的な夢だ――目覚めてみれば結局、チプラス氏は恐らく常軌を逸した左翼で、メルケル首相は導入されたQE計画をほとんど認められないという現実に気づくまでは。 そうなれば、悲惨な第2の結果――ギリシャのユーロ圏離脱――が現実のものになる。楽観主義者たちは、今なら2012年よりもギリシャ離脱の痛みは少ないと考えている。それは確かに正しいが、それでも痛みがあることに変わりはない。 ギリシャでは、ユーロ圏を離脱すれば銀行が破綻し、面倒な資本規制が行われ、歳入がさらに減少し、失業率は現在の25%よりもまだ上がるだろう。さらには欧州連合(EU)からの離脱に至る可能性も高い。 マドリードで大規模デモ、新党ポデモスが呼びかけ スペインでは1月31日、反緊縮財政を掲げるポデモスがデモ行進を呼びかけ、首都マドリードの中心部にある広場「プエルタ・デル・ソル」が参加者で埋め尽くされた〔AFPBB News〕 ほかの欧州諸国に波及する影響も、厳しいものになるはずだ。 ポルトガルやスペイン、さらにはイタリアもユーロ圏にとどまるべきか、あるいはとどまれるのかという疑念が、すぐに呼び起されるだろう。 ユーロの新たな保護機能である銀行同盟と救済基金は、控えめに言っても、まだ効果が実証されていない。 従って、最も可能性の高い対応は、一時的なごまかしということになるだろう。とはいえ、その対応は長続きしそうにない。債務の減免を全く受けられなければ、チプラス氏はギリシャの有権者の信用をすべて失うだろう。だが、同氏がギリシャの立場をわずかに有利にする成果を勝ち取ったとしても、ほかの国の抵抗は避けられない。 かつての救済の条件を変える場合には、どんな変更であれ、フィンランドなどの一部の国で議会の承認を得る必要がある。仮にそれが認められれば、スペインやポルトガルなどの有権者は、自国の緊縮策の放棄を求めるだろう。 さらに悪いことに、右派と左派のポピュリストがフランスやイタリアで勢力を強めることになるだろう。彼らは緊縮政策に反対しているだけでなく、ユーロへの参加そのものにも反対している。 また、ごまかしを行うにしても、実際上の問題がある。ECBは、ギリシャが債権国と同意しているプログラムにチプラス政権が従わない限り、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援も債券の買い上げも実施できないとの姿勢を固持している。そのため、少しでも手づまりの気配が見えれば、ギリシャの銀行で取り付け騒ぎが起きるだろう。 返済期限を延長すれば、そうした事態の一部は回避できるかもしれない――だが、その対応策は、チプラス氏にはあまりにも小さく、メルケル首相にはあまりにも大きいと見なされるかもしれない。 ドイツ政府は状況を理解せよ このため、結局のところ、ギリシャは欧州に対して、いくつかの厳しい選択を迫ることになるだろう。 運が良ければ、この記事で述べたような良い結果に向かうだろう。ギリシャの有権者は、チプラス氏が公約を実現できると考えているのなら、現実を見ない愚者の楽園に生きているのかもしれない。だがドイツ国民も、自らの強情さが生む結果に目を向けなければならない。 ユーロ危機勃発から5年を経た今でも、ユーロ圏の南部諸国は、ほぼゼロに近い成長と猛烈に高い失業率から抜け出せずにいる。デフレに陥りつつあるせいで、緊縮財政にもかかわらず債務負担は増している。 政策がこうした悪い結果を生んでいる現状では、ギリシャの有権者による反乱は、予測できたことだし、無理からぬものだった。 ユーロ圏で成長を促進し、デフレを払拭するためのすべての取り組みに反対を続けるなら、メルケル首相は欧州に対して、1990年代に日本が経験したものよりもさらに消耗の激しい「失われた10年」を強いることになる。そうなれば、ギリシャよりも大規模なポピュリストの反発が、欧州全域で巻き起こるのは間違いない。 そうした状況で単一通貨ユーロが生き延びられると考えるのは難しい。そして、ユーロが生き延びられなければ、最も大きな損害を被るのは、ドイツ自身になるだろう。 |