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「名目GDP」は(黙っていても)15兆円上がります!! photo Getty Images
名目GDPが15兆円も水ぶくれ! 安倍政権と財務省が使う「統計のマジック」は邪道ではないか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41880
2015年01月27日(火) 町田 徹町田徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
先週の本コラムでは、安倍政権・財務省が「経済再生と財政健全化の二つを同時に達成する」と自画自賛している2015年度の政府予算案が、昨年4月の消費増税という国民負担増大の賜物にもかかわらず、歳出・歳入の両面で抜本改革を先送りしたものに過ぎないことを明らかにした。
■GDPが15兆円「水膨れ」する
今週は、政府・財務省がなぜ、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を2015年度に5年前の半分以下にするという財政健全化目標の達成にそれほど揺るぎのない自信を持てるのか、という背景を紹介したい。実は、あまり知られていないが、マジックとでもいうべき“秘策”が存在するのである。
その秘策とは、内閣府が検討を進めているGDP(国内総生産)の算出基準の改訂だ。これまで計算に入れていなかった民間企業のR&D(研究開発)費用を加えることが目玉で、これによって2015年度の名目GDPはこれまでより約15兆円も水ぶくれするという。
本来、プライマリーバランスの赤字半減目標は、分子である赤字そのものを減らしてこそ意味があるものだ。ところが、算出方法の改訂によって分母のGDPが膨らむことで目標の達成が非常に容易になるというのである。
驚くほど報じられていないが、GDPの算出基準改訂は、安倍晋三首相が昨年9月に内閣府の統計委員会に諮問したものだ。
その諮問書には、国際連合が「2008SNA」という新たな国際標準を定めたことを受けて、容易に国際比較ができるよう、わが国でもGDP統計の作成基準の見直しを図る必要があると真っ当なことが書かれている。
大元の「2008SNA」が63項目の変更を打ち出したため、諮問された改訂ポイントも多岐に及ぶ。が、冒頭で触れたように、最もGDP統計への影響が大きく、「最大の目玉となっているのは、企業の研究・開発(R&D)の取り扱い」(統計委員会の事務局をつとめる内閣府経済社会総合研究所国民経済部)である。
■研究&開発費の加算は「統計のお化粧」!?
R&Dは、これまで単純に「費消されるもの」という位置づけだったが、最近では「設備のように固定資産として蓄積され、生産活動に大きく貢献する」ようになっており、GDP統計にきちんと加算しないと経済実態にそぐわなくなっている、というのが変更の理由だ。
ちなみに、欧米諸国は日本に先駆けて「2008SNA」への対応を進めた。その結果、そろって各国の名目GDPの水準は、大きく押し上げられた。
例えば、2013年に基準の見直しを実施した米国の場合、2002年から2012年の名目GDP(実額)が3.0%から3.6%程度膨らんだ。また、2014年に対応したフランスの場合も、2010年の名目GDPが2.4%膨らんだ。同じく2014年対応のドイツも2010年の名目GDPが2.7%増加したという。
内閣府の推計によると、日本のR&D費用は年間15兆円前後に達している。統計委員会は今年2、3月にも、安倍首相に「2008 SNA」への対応を是認する答申を提出する見通し。その結果、2015年度分のGDP(公表は2016年度)から、実際にR&Dを足し込んだ数字が公表されるのが確実となっているのだ。
ざっくり言って、日本の名目GDPは約500兆円だ。つまり、今回の改訂の結果、名目GDP(実額)が従来の基準で算出した場合よりも3%程度膨らむことは確実である。
念のために記すと、算出基準が改訂されれば、過去に遡及して、20年分程度の名目GDP値が再計算されて公表されるはず。そうした中でR&Dが突然増えた年があったとは考えにくいので、名目GDPを前年と比較して経済成長率を弾けば、従来とそれほど大きな違いがでることはないだろう。
他の先進諸国と比べて日本の「2008SNA」への対応が遅かった感は否めないものの、統計をより経済実態に近いものに刷新したり、国際比較が容易な透明性の高いものに変えたりするのは、当たり前のことである。そうした意味では、R&DのGDP統計組み入れを、財政健全化目標の達成のために目論んだ「統計のお化粧」などと批判するのは間違いだ。
■安倍政権も財務省も「統計のマジック」を熟知
しかし、今回のGDP統計の見直しを単なる偶然とばかりは言っていられない問題もある。
というのは、安倍首相と財務官僚がそろって「経済再生と財政健全化の二つを同時に達成する」と自画自賛した2015年度の政府予算案は、不自然なほど高水準の名目GDPを前提条件に立案されていたからだ。
そうしたGDPを確保するため、前年度は1.7%に過ぎない名目ベースの成長率を、2015年度は2.7%とかなり高く見積もっており、この点について、懐疑的な眼差しを向けるエコノミストが少なくなかったのである。
だが、当の内閣府だけでなく、政府関係者の間では、2015年度に高い成長が実現しなくても、高水準の名目GDP(実額)を確保できることは、よく知られた話だった。縷々述べてきたように、内閣府によって、GDPの算出基準の改訂作業が進められていたからである。
繰り返しになるが、政府が掲げる2015年度の財政健全化目標が、プライマリーバランスの赤字をGDPとの対比で2010年度の半分以下にすることだ。そこで、GDPの算出基準の改訂を念頭に置いて、放っておいても名目GDPが大きくなることを理解していれば、予算編成作業を通じてそれほど真剣にプライマリーバランスの赤字減らしに取り組まなくても、財政健全化目標を容易に達成できるというカラクリが理解できていたはずなのだ。
こうした統計のマジックを熟知していたからこそ、安倍政権や財務省が2015年度予算案を「経済再生と財政健全化の二つを同時に達成する」と自信満々なのだろう。
だが、財政健全化の観点から見れば、こうしたやり方での基準達成は明らかに邪道だろう。安倍首相や財務官僚には、小手先の数字合わせではなく、真摯な赤字減らしが求められているはずである。
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