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長期金利が史上最低を更新で来年にも国債市場消滅の衝撃
【第186回】 2015年1月27日 週刊ダイヤモンド編集部
長期金利の急低下が止まらない。1月下旬に長期金利の指標となる10年物国債の利回りが過去最低を更新して、一時、史上初めて0.1%台に突入した。5年物国債もマイナス金利を付けた。さらなる追加緩和も見込まれ、長期金利は今後も低下する公算が大きいが、その先にあるのは国債市場の“死”だ。
「日本の銀行が現金を詰め込むため、巨大な倉庫を保有することになるかもしれないね」──。メガバンク幹部は冗談っぽく笑いながら言った。
金利の急低下が止まらない。債券市場で1月20日、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが過去最低を更新して一時、0.195%と史上初めて0.1%台まで低下した。さらに5年物国債の利回りが初のマイナス金利を付けるなど、債券市場は前代未聞の非常事態に陥っている。
日本銀行の黒田東彦総裁は21日の金融政策決定会合後、日銀当座預金の超過準備に適用している付利の引き下げや撤廃について、議論がなかったと明かした(写真)
Photo:AFP=時事
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日銀当座預金の付利の話は脇に置くとして、運用するために国債を購入したのに、マイナス金利のために逆に金利を支払って損する羽目になるなら、いっそ場所を取ったとしても現金を保有した方がましだと、この幹部は理屈をつけたわけだ。
10年債利回りは20日で、6日連続して過去最低を更新した。長期金利が低下している最大の理由は、日本銀行が異次元の金融緩和策として、大量の国債を買い入れていることで、市場に流通する国債の量が激減していることにある。
幹部の話とは裏腹に、マイナス金利で購入した国債を満期まで保有したら損すると分かっていても、金融取引の担保として一定量の国債保有が必要な金融機関など、マイナス金利で国債を買わなければならない投資家も少なくない。
にもかかわらず、10月末の追加の金融緩和によって、日銀が長期国債の年間の市中発行額の9割を買い占めることになったために、市場に出回る国債が枯渇。長期金利に強い低下圧力(国債価格には上昇圧力)が働いているのだ。
さらに、スイスの中央銀行が対ユーロの為替レートの上限を撤廃するとした15日の「スイスショック」や、最近の原油価格の急落を受け、安全資産と見なされる日本国債を買う動きが強まったことも、金利低下を加速させた。
長期金利の急低下は世界的な潮流である。ドイツ、フランス、英国も過去最低水準まで低下している上、利上げが予想されている米国ですら長期金利は2%割れといった状況だ。
長期国債市場は
2016年にも事実上の消滅
長期金利が下がれば、住宅ローンの金利も低下するため、家計にとっては恩恵もある。
一方、生命保険が超低金利のために利回りが確保できず、運用難から販売停止に追い込まれる保険商品も出てきた。「究極的には預金にもマイナス金利が適用されたり、預金自体を受け付けない事態にもなりかねない」(市場関係者)。
マイナス金利の波は、債券市場の主役である10年債にも迫りつつある。
短期国債市場では、発行残高に占める日銀の保有比率が3割を超えた段階で、利回りがマイナスになったり、日銀が示した購入枠に金融機関の応札額が届かない「札割れ」が生じるようになったりしたという。
BNPパリバの河野龍太郎チーフエコノミストの試算では、今後も財務省の国債発行計画が大幅には変わらず、かつ日銀が現状のペースで購入を続けた場合、10年債の発行残高に占める日銀の保有比率は、2015年半ばに3割を突破する。同年末に36%、16年末には5割近くに達するという。
16年半ばにも「市場の流動性は著しく低下して、長期国債市場は事実上、消滅する可能性がある」と河野チーフエコノミストは指摘する。
そうなれば国債市場の機能は死んだも同然だ。日本の金融・財政当局はこれまで、国債市場の流動性を高めるために市場参加者の幅を広げてきたが、現在の金融緩和策はそれとは正反対、つまり市場参加者を遠ざける方向に突き進んでいると言わざるを得ない。
実際、1月23日に予定されていた5年物の個人向け国債をめぐっては、マイナス金利で投資家の需要が見込めないとして、販売が中止された。
一方で、金融緩和を手じまうための出口戦略では、日銀が国債購入の規模を縮小するため、その代わりとして市場参加者が国債を購入する受け皿となることが求められる。しかし、国債市場が事実上消滅して、市場機能がまひしてしまったら、受け皿不足に陥ることは避けられず、結果として、長期金利が急騰(国債価格は暴落)するリスクが高まってしまう。
冒頭の倉庫話に戻すと、1990年代後半にコンピュータの誤作動でシステム障害が懸念された「2000年問題」が浮上した際、ある大手銀行は実際に巨額の現金を倉庫で保有するコストを試算したことがあるという。
10年債のマイナス金利が現実のものになり、かつ日銀当座預金へのブタ積みができなくなったとしたら、現金の倉庫保管も絵空事とはいえなくなる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)
http://diamond.jp/articles/-/65753
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