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際限のない価格&質劣化競争が行き着く果て スタバ誕生秘話と牛丼業界の変遷より考察(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/246.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 1 月 25 日 09:22:05: igsppGRN/E9PQ
 

際限のない価格&質劣化競争が行き着く果て スタバ誕生秘話と牛丼業界の変遷より考察
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150125-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 1月25日(日)6時0分配信


 本連載では、際限のない価格勝負から脱して価値で勝負するための方法論として、顧客が買う理由を考え抜く「ニーズの断捨離」について書いてきた。

 一方で多くの業界では、業界全体で先が見えない価格勝負を繰り返し疲弊しているのが現実だ。しかし、業界をあげての価格勝負は永遠には続かない。その先には何があるだろうか。実は、価格競争が行き着く先には、価値競争への転換がある。

 そのことは、1950〜60年代の米国コーヒー業界からも学ぶことができる。30年代後半にレギュラーコーヒーの真空パック技術が確立され、コーヒーの大量生産・大量流通が可能になり、コーヒーは大量に家庭や職場で消費されるようになった。当初、コーヒー市場は成長していったが、そのうち市場の成長が止まり、焙煎業者間で限られた市場のパイをめぐってシェア争いをするようになり、価格競争が激化していった。当時の様子は、59年の全米コーヒー協会年次総会における、ある評言でうかがい知ることができる。

「およそどんな商品でも、誰かが少しだけ質を落として安く売ることは可能だ」(『コーヒーの歴史』<マーク・ペンダーグラスト著/河出書房新社>p.318より)

 では具体的に、各社はどのように安くしたのか。

 コーヒー豆は大きく分けて、味は良いが栽培が難しいアラビカ種と、比較的味は劣るが栽培が容易なロブスタ種の2種類がある。ロブスタ種は劣化した麦茶のような味がしてストレートでは飲めない。そこで当初、米国のレギュラーコーヒーはアラビカ種100%だった。しかし、消費者が知らない間にロブスタ種が30%以上混ざるようになったのだ。また、インスタントコーヒーを製造する際には、豆を容赦なく搾り、より多くの量を生産するようにした。このようにして単価当たりの生産コストを下げて、低価格でも利益を出せるようにした。

 しかしこうすると、コーヒーの風味はますます落ちてしまう。これを補うために、あとから香りを付け加えて、瓶の蓋を開けた瞬間に焙煎したての香りがするようにした。当時のコーヒーの評価方法は、主に「欠点はないか」だった。腐敗していないか、カビはないか、変な臭いがないか、といったチェックが主体で、味は二の次だったのだ。

 このようにして価格を下げるべく徹底的なコスト削減が行われ、コーヒーの質はますます低下し、米国のコーヒー業界全体が薄利多売の果てしない価格競争へと陥っていったのである。「美味しいコーヒーを飲みたい」という消費者にとっては、不幸なことだ。

●スタバ誕生

 コーヒー業界でも、同じような問題意識を持っていた人もいた。そのひとりが、大手コーヒー会社に勤務していたヘンリー・ピート氏だ。

 60年代前半、ピート氏は「世界一の金持ちの国が、なぜこんなお粗末なコーヒーを飲んでいるのか、理解できなかった」(前掲書p.359)と考えた。65年、勤務していた会社を45歳で解雇されたピート氏は、新しい職も見つけることができなかったので、「ちゃんとしたコーヒーを自分で焙煎して売ろう」と考えて自分の店を持つことにした。66年4月1日、ピート氏は中古の25ポンド用焙煎機、コロンビア産の豆10袋、椅子6脚を用意し「ピーツ・コーヒー&ティー」という店をバークレー市で開店した。

 そして1年半後、美味しさを聞きつけた客で同店は大行列になった。

 この店で働いていたジェリー・ボールドウィン氏という若者が、71年にある店を開業した。その店の名前は「スターバックス」。この店は紆余曲折を経て、今や全世界に2万を超える店舗を持つようになった。

 同じ時期、ほかにも「より美味しいコーヒーを飲みたい」と考えた人たちがいた。それらの人たちによって「スペシャリティコーヒー」という考え方とカフェが生まれ、米国から世界に広がっていった。

 ではこの期間、米国のコーヒー業界はどのように変わったのか。

 米国の一人当たりコーヒー消費量のピークは62年だ。当時は一人当たり一日3.12杯飲んでいた。しかし消費量は次第に減少し、2003年は半減以下の1.50杯まで下がった。その後、スペシャリティコーヒー普及に伴いコーヒー消費量は増加し、07年は1.90杯飲まれるところまで回復した。ピークから下がり始め上昇に転じるまで、実に40年以上だ。米国コーヒー業界で繰り広げられた価格競争の影響は、きわめて甚大で、かつ長期間にわたったのである。

 商品の価格が下がる価格競争は、一見「より安い商品」を求める消費者にとってよいように見える。しかし、大規模な価格競争は、業界に大きな変動を引き起こす。このように商品の価値が低下し、業界に甚大な影響をもたらすこともある。それを克服するには、新たな価値を生み出すことなのだ。

●価値勝負へ転換する牛丼業界

 現代の日本で価格競争といえば、牛丼業界だろう。ここでも、実は同じことが起こりつつある。

 日本の牛丼業界はこれまで一杯300円以下で価格競争を繰り返し、業界全体が疲弊してきた。「すき家」のようにいわゆる「ブラック批判」にさらされてしまい、やむを得ず営業時間短縮を余儀なくするケースも出ている。そんな中、「松屋」は昨年7月に「プレミアム牛めし」を380円で、「吉野家」は昨年10月29日に「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」を630円でそれぞれ販売し始めている。円安の影響による材料高騰もあり、牛丼業界も価格勝負から価値勝負へ転換することを求められているのだ。

 このように、企業が生き残るために必要なことは、顧客に対してより高い価値を提供し続けること。そのためには、継続的に顧客にとっての新たな価値を生み出し続ける変革が必要だ。

 米国のコーヒー業界も、レギュラーコーヒーの真空パック技術が確立され、市場が成長していた時期は、価値を訴求していた。しかし多くの業者が参入し、市場の成長が頭打ちになり、競争が激しくなると、シェア争いを目的とした価格勝負に変わってしまったのだ。そこへ、よりおいしいコーヒーを重視したスペシャリティコーヒーが生まれ、再び価値勝負に転換していった。そして今、コーヒーのサードウェイブが始まりつつあるのだ。

 このように市場では、価値競争と価格競争の間を揺れながら、あたかもらせん階段を上っていくかのように進化していくのだ。

●環境変化を生き残る条件

 ここで注意すべきことがある。価格競争に陥ったすべての企業が、価値競争に生き残れるわけではないことだ。価値を生み出した者だけが生き残る。

 それは生物の進化を見ても明らかだ。

 白亜紀に地球を支配していた恐竜が6600万年前に突然絶滅したのは、ユカタン半島に落下した直径10kmの巨大隕石が引き起こした、10年間にも及ぶ気候変動が原因だと一説にはいわれている。急激な気候変動に、ほとんどの恐竜は巨大な身体を維持できず、対応できなかった。一方で対応できたほ乳類は、生き残ることができた。

 しかし、実は恐竜自身も変化して生き残ったという説もあるのだ。14年12月13日付「National Geographic日本版」記事『鳥類は恐竜絶滅後に爆発的進化した 6600万年前から鳥のDNAの変化が加速したことが明らかに』によると、恐竜の多くが絶滅した6600万年前から鳥のDNAの変化が加速したことが、新たな研究で明らかになった。また「このとき生き残った恐竜が無数の種へと枝分かれし、現在地球上にいる鳥の約95%を形成した」と語る研究者もいる。つまり白亜紀に地球を支配していた恐竜は、そのままの姿で進化できなかった種は絶え、鳥に進化できた種が生き残ったのである。

 このように転換期には、環境に合わせて変わることができる者だけが生き残るのだ。価格競争から価値競争への市場での転換点においても同じだ。価格勝負にこだわる企業にとっては、絶滅の危機である。一方で、「常に価値を高めよう」と考えている企業にとっては、進化のチャンスでもあるのだ。

 価格競争が引き起こす環境変化を生き残るためには、「自分自身が新たな価値を生み出し、進化すること」なのだ。
(文=永井孝尚/オフィス永井代表)

永井孝尚/オフィス永井代表

 

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