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ECBの量的緩和で金価格が上昇した意味
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20150123-00042497/
2015年1月23日 19時0分 小菅努 | 大起産業(株)情報調査室室長/商品アナリスト
金(Gold)は、ドルやユーロに対する代替通貨としての性格を有していると言われている。一般的に通貨は、それを発行する各国中央銀行に対する信認にその価値の源泉がある。手元にある1万円札を見てもらえば、「日本銀行券」と明記されているはずだ。このため、通貨に対する信認が高まれば金相場は売られ、逆に通貨に対する信認が低下すれば金相場は買われるという、一種の逆相関関係が見られる。金が、安全通貨や代替通貨と言われる所以である。
こうした中、1月22日に欧州中央銀行(ECB)が量的緩和政策に踏み切ったことが、金価格を一段と押し上げる原動力になっている。中央銀行に対する信認を重視するドイツなどは強硬に反対していた。しかし、昨年12月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)が前年同月比-0.2%と2009年10月以来となるマイナスインフレ化する中、日本型のデフレ状態に陥ることを阻止するには、下げ切った政策金利を据え置くのみならず、より積極的な量的緩和(=ユーロ増刷政策)が必要と判断した模様だ。その意味では、原油相場急落の余波が、ユーロの通貨価値を毀損しているとも言える。
これはユーロ経済にとって「必要悪」とも言えるが、いずれにしてもユーロの価値が失われることは、通貨ユーロからの資金流出を促すことになる。これからECB主導で中央銀行がユーロ圏の国債などを購入する動きが強まれば、大量供給されたユーロの価値は更に低下することになる。これは、脱ディスインフレ(=インフレ誘導)のためにECBが目指している流れであるが、ユーロの通貨価値が失われる中、代替通貨としての金が輝きを増している。
■ドル高でドル建て金価格が上昇した「怪」
教科書的には、ユーロ安(ドル高)は、ユーロ建て金価格に対してはポジティブであっても、ドル建て金価格に対してはネガティブ材料になる。現に、昨年後半はECBが量的緩和に踏み切るとの観測を背景にユーロ安(ドル高)が進む中、ドル建て金価格は強力な売りプレッシャーに晒されていた。
しかし、このECBの量的緩和決定を受けての22日のCOMEX金先物相場は、1オンス当たりで前日比+7.00ドルの1,300.70ドルと買い反応を示し、1,300ドルの大台確立を試す動きを見せている。為替市場では急激なドル高(ユーロ安)圧力が観測されているが、それ以上に投資家が中央銀行に対して向けた不信の目が、金価格を押し上げたと言えるだろう。今週はカナダ中央銀行が予想されていなかった利下げに踏み切るなど、世界の中央銀行が金融緩和・通過安の方向に軸足を移す動きが観測されている。
1月22日に米経済専門チャネルCNBCに出演した著名投資家マーク・ファーバー氏は、「中央銀行に対する信認はついに破綻した」、「中央銀行は売りだ」と強いトーンでこうした動きを批判している。これと同様の中央銀行に対する批判の声の受け皿になっているのが、金価格である。なお、ファーバー氏は同番組において、「今年の金価格は簡単に30%上昇する可能性がある」との見方も示している。
■金は中央銀行の通知表
筆者は、金価格は中央銀行の通知表だと考えている。適切な金融政策が運営されていれば金価格は下落し、不適切な金融政策が運営されていれば金価格は上昇する。年初からの金価格上昇には、20日付けの記事(金価格が急騰中、資産防衛に傾斜する投資家たち)でも書いたように、リスク投資環境の不安定化が大きく寄与したと考えている。
今は、そこに通貨不安という新たな金需要を創出する動きが本格化するのかの分岐点に差し掛かっている。そして、1月27〜28日にはいよいよ国際基軸通貨ドルをコントロールする米連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。世界経済で一人勝ちとも言える米国でさえ利上げ着手を先送りせざるを得ない状況になれば、金価格は更に輝きを強める可能性が浮上することになる。
(日本銀行券の画像出所:日本銀行ウェブサイト)
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