http://www.asyura2.com/15/hasan93/msg/230.html
Tweet |
ユニクロの看板商品の一つ「ヒートテック」も極めて整然と並ぶ(写真は2014年秋オープンの吉祥寺店)
あなたは、それでもユニクロを買ってしまう 店頭についつい誘導される絶妙な仕掛け
http://toyokeizai.net/articles/-/58843
2015年01月24日 大ナギ 勝:ムービングオフィス代表 東洋経済
中国の下請け工場での過酷な労働環境が騒がれているユニクロ。労働問題では何かと批判されることも多いファーストリテイリングですが、筆者が1月15日配信の「なぜユニクロは批判されても売れ続けるのかhttp://toyokeizai.net/articles/-/58016」で解説したように、きっとこの週末以降もユニクロの客足が極端に落ち込むことはないだろうと見ています。
■世界共通の「接客」手法が必要
ユニクロには商品の強さだけでなく、消費者が店頭に誘導され、「つい買ってしまう」という接客の仕組みが整えられています。それは通常のアパレルでありがちな店舗での「ひと対ひと」による「接客」だけではありません。グローバルブランドとして世界レベルの展開をするためには国境も人種も超えた仕組みが必要です。その課題に対して、ユニクロ本部が実践している「見えない接客」があります。「ステルス接客戦略」とでもいったらいいでしょうか。ポイントは大きく5つです。
@ 「単純接触効果」を利用
ユニクロといえば毎週末の新聞折り込みチラシ。WEBチラシとも連動しています。これは1年=52週間にわたり1週たりとも休むことなく、場合によっては年末年始など週2回のペースで続けています。
「ああ、またユニクロか」と一瞥する人も、「そういえばあの商品安くなってないかな?」とくまなく見る人もいるでしょう。ところが重要なポイントはそこではありません。実は「ユニクロのチラシ広告が自宅に届いた」という事実を認識してもらうだけで事足たりているのです。
認知心理学では「単純接触効果(ザイアンスの法則)」という考え方があります。「ひとは何かしらの対象物(ひと、物なんでも)と繰り返し接することで、警戒心が薄れ、好感度が増していく」という法則です。今回の場合の対象物とはまさしくユニクロの新聞折り込みチラシそのものです。
毎週そのチラシ広告に接触することで、ちゃんと買い物の目的のある人はそのまま店舗へ直行してしまいたくなる感情を芽生えさせています。そうではない人も週末の会社帰りや家族とのショッピングでたまたま見かけただけで「そういえば、お買い得品がでていたな」と思い出し「ついでに見てみようか」と、なんとなくでも足を向けさせてしまうような効果を発揮します。
多くのユニクロユーザーは毎週毎週、知らず知らずチラシ広告に触れている間に感情を操作され、店舗へ足を運ぶように誘導されてしまっているのです。
A チラシどおりの品ぞろえ
ユニクロのチラシ広告を見た消費者が店舗を訪れると、広告の商品がそのまま棚に並んでいます。「そんなことは当たり前だ」と思うかもしれませんが、アパレル業界で実はこれほど大変なことはありません。ほかのアパレルでは、チラシ掲載商品が最初から店頭にない場合や、ほんの数点の在庫だけでごまかしているなどの例は数知れません。
せっかくお店まで来たのに目的の商品がなかったりしたらどれほど腹が立つか。ユニクロでは、商品在庫の欠品によるお客からのクレームと販売機会損失を最も残念なこととして社内でとらえられています。広告通りの商品があるという『安心感』を作り出しています。
B 徹底して平等に対応
ユニクロには老若男女、常連や初来店などの顧客属性の区別もなく、徹底して平等な『接客』を店舗全体の仕組みとして構成しています。
■誰がどう見てもわかりやすい陳列
店先のカウンター式の長い棚、壁面の棚、ラック。そのすべての場所でアイテム別、カラー別、サイズ順に整然とならべられ、遠くから見てもわかりやすい大きな価格表が掲示されています。誰もがどこにどの商品があるのか一目でわかり、欲しいカラーやサイズを見つけ、値段も聞くことなく選べるようになっています。
しかもちょっと目線よりも高い位置にある商品も、お客自身に取ってもらうためか、踏み台や小さな釣りざお状のものが自由に使えるようにさりげなく置いてあります。一見、不親切なようにも見えますが、むしろ今の時代にはこの方が親切といえます。
お客からの目線でとらえると「生活用品」であれば、わずらわしく店員から勧められるよりも自分自身の目で自由に選びさっさと買い物が完結できたほうがいい。目的のものが無いなら無いで、誰に気兼ねすることなくお店からスッと出ていける。
全世界レベルで膨大な数のお客に対応しなければならないユニクロにとっては、この『入りやすい、見やすい、買いやすい店舗でお出迎えして、出やすい雰囲気作り』という『接客方法』が最も多くのお客様をさばくのに適した方法なのです。
C販売スタッフの好対応
普段のショッピングで入ったお店。店員がただやみくもに「いらっしゃいませ」を繰り返していたり、「何をお探しですか」としつこく質問攻めしたりする接客を経験したことはありませんか?一方で、なじみの店で丁寧な対応をしてもらうケースがあるでしょう。
ユニクロ販売スタッフの接客は物足りないと感じている人がいるかもしれません。特に商品を勧めてくるワケでもありません。でも、ユニクロで販売スタッフの顔を意識して覗いてみると、その認識はおそらく変わります。
職業柄、筆者は意識的にいろいろなアパレルブランドで販売スタッフの反応を観察しているのですが、ユニクロの販売スタッフは目が合うと「いらっしゃませ」と明るく声掛けしてくれます。筆者はその妙にさわやかな笑顔をあちこちのユニクロで経験しています。
■執拗に迫らず、困ったときだけ声がけ
ところが、ユニクロ販売スタッフはそれ以上迫ってきません。もちろんお客様から声をかけられれば喜んで対応してくれます。ある程度購買意欲がありそうなお客には、執拗に迫るよりも困った時にだけ声掛けをする。それ以外は、陳列棚をキチンと整理してお客様を迎えることに専念しています。これはより多くのお客に快適に買ってもらうための動きなのです。
目を転じてフィッティングルームでは、スタッフがすぐに空いている場所を案内してくれます。試着後の不要な商品はその場でにこやかに気持ちよく受け取ってくれます。もちろん、すそ上げなどはアドバイスを求めれば適切な答えを返してくれます。どの店舗のどのレジに並んでも精算はスムーズです。かなりの訓練を受けていると想定されます。
D本部の徹底したサポート
これらを支えるのが、ユニクロ本部です。本部で毎週月曜日に開かれる部長会議。柳井正会長兼社長も出席する重要な会議ですが、その議事録は社内イントラを通じて全社に配信されています。トップクラスのスーパーバイザーや店舗のSS店長(スーパースター店長)をはじめ通常の店舗スタッフ、本社の事務スタッフにいたるまで全員が同じ内容を共有できます。
決定事項だけを羅列したようなものではなく、その決定にいたるまでの会話の文言もリアルに再現されたものです。必ず実行する結論を出し、毎週その確認が行われるということが大きな特徴です。
具体的に話されているのは、前週の全ブランド、全商品、全カラー・サイズごとの予算と売り上げ実績の確認。それにともなって練られた今後の売り上げ対策、チラシ広告の掲載内容の確認・変更のほか、人事労務管理、国内外の新店舗のオープン状況、お客からのクレームやお褒めの声のまとめなど、商売に関わることのすべてが検討され答えが出されています。
■「トップからの一言」を明確に発信
その中でも特に時間をかけて議論されるのが「商売についての検討」のようです。前週の予算と売り上げ実績の確認をして、当初の計画値とかい離しているものは、とにかく近づけるために店頭をどうすべきかの検討をします。柳井会長兼社長は店舗、商品、広告には必ず目を通します。「トップからの一言」というかたちで明確な指示が発信されることになります。
今の季節で言えば
「残っている冬物をどのように棚で展開して売っていくか?」
「春物をマネキン人形に着用させてアピールしていこう」
「冬物を売るために春物をコーディネートしてはどうか?」
などが検討されているようです。売れて足りなくなった商品への生産調整の指示もあれば、逆に売れなくて在庫過多になりそうな商品には大幅値引きの指示も飛ぶようです。
今週も新聞の折り込みに入るユニクロのチラシ広告。この週末、気付かぬうちに店舗に誘導され、つい買ってしまうきっかけづくりを狙った戦略です。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。