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ECBによる量的緩和
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52683062.html
2015年01月23日 在野のアナリスト
ECB理事会で、欧州でも量的緩和の開始が決定されました。月額600億€を16年9月まで、効果がなければ継続、と無制限を示唆し、市場は好感しています。ただ実際には既報であった500億€に、既存の民間資産の買い入れと金融機関への低利融資を組み合わせたものに、プラスアルファする形で計600億€となります。また各国の国債購入は発行の33%まで、価格下落などのリスクは、20%をECBが、80%を各国中銀が負う、としました。月ごとの緩和規模は既報に近かったものの、このリスク管理の明確化と、無期限に近い緩和の継続ということが好感された向きがあります。
しかし早くも、この緩和規模では目標とする2%近いインフレには達しない、という見方が出ており、追加緩和を求める声が高まるかもしれません。さらに問題は、ECBの負うリスクが20%だということです。各国の国債、特に独国を初めとする優良資産の金利は、すでに歴史的な低水準にまで落ちこんでおり、景気がもどり、金利が上昇するだけでその損失の8割を各国中銀が被らなければならない。通貨発行権のない中銀が、国家の発行する国債の価格下落の8割負担を強いられるのは、景気回復の足取りを鈍らせる恐れがあります。総じて言えることは、ECBとしては体面を保った形でも、各国にとって素直に喜べるほど、この緩和は甘くない、ということになります。
しかも日本の例をひくまでもなく、量的緩和がインフレ率を高めた経験を、人類はもっていません。日本は円安インフレを招き、それが経済に打撃となり、逆に需要減からインフレ率が低下してきています。欧州も高い失業率や、賃金の伸びの低さに直面しており、インフレ期待が高まりにくい。そして量的緩和は、格差拡大を促す施策ともされます。これは失業率を高止まりさせ、低賃金は改善されない、という意味であり、需要の回復が遅れる恐れもでてきます。
市場予想の500億€から、600億€と発表し、サプライズを誘ったことはドラギマジックですが、これでは夢から醒めるのも早いのでしょう。世界同時株高の商状ですが、これは材料出尽くしで売られるとみた層が、意外と底堅いことをうけて買い戻す動きに過ぎません。発表がでた後はじまったNY市場が、朝方には弱含んだのも、この内容では好感できないためです。日本でおきている5年物までマイナス金利、長期債が0.2%割りこむ、となれば弊害も出てくる。量的緩和の負の部分も散見される中で、今回のECBの判断は一つの賭けのように思えてなりません。
ギリシャでは野党が優勢を拡大している、との世論調査も出ています。ギリシャはすでに発行の33%の国債を保有しているため、ECBの買い入れには入りません。償還分を再投資はできますが、規模が限られる。今後も各国が苦境に陥り、国債が売られだした後、ECBの保有が上限に達したら、その後どうなるのか? 一気に市場が崩れる恐れも出てきます。結局、この枠が今後どうなるかも分かりません。ギリシャのようにユーロ圏の離脱を議論したり、それこそ各国が分裂し、国の規模が変わってしまうと国債の価値がどうなるかも分からりません。ECBはリスクを切り離し、そうした政治の混乱の影響をうけないよう配慮しましたが、その結果ユーロの形も流動的になっている印象を、今回の金融政策で抱いてしまうこともまた確かです。
独国中銀をはじめ、ECB理事の1名を含めた5人が、今回の決定に反対票を投じました。独国では『金があるところ、悪魔がもう一山ひりだす』とも言われます。ECBは無尽蔵にお金を供給する、と宣言しましたが、各国中銀からすれば今のECBは悪魔に見えているのかもしれません。そのお尻からひりだされた金が、浄財なのか、不浄なのかも分からないまま、欧州はその使い道に窮する、というのが今後起こりうることなのかもしれませんね。
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