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原油価格の反発予測に頼らざるを得ない日銀
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20150123-00042475/
2015年1月23日 9時32分 久保田博幸 | 金融アナリスト
1月21日の日銀金融政策決定会合では、金融政策は現状維持となった。「マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」が維持された。市場では超過準備の付利の引き下げもしくは撤廃観測もあったが、そうなるとマネタリーベースの維持が難しくなる点は注意する必要がある。このあたりについては超過準備の付利がマイナスとしているECBがどのようなかたちで量的緩和策を導入するのかも興味深いところ。
今回の決定も8対1の賛成多数での決定となった。反対したのは今回も木内委員で、『量的・質的金融緩和』の拡大」前の金融市場調節方針が適当であるとした。今回の会合では、スイス中銀の対ユーロでのフラン相場上限撤廃が影響し、反対派が増える可能性もあるかと思っていたが(つまりは現在の日銀ロジックへの疑問票)、それはなかった。また市場では物価目標達成がより困難になりつつあるため追加緩和期待もあったが、それを主張する委員もいなかった。
近く期限の到来する「貸出増加支援」、「成長基盤強化支援」等についての修正が入った。ここで「貸出増加支援」および「成長基盤強化支援」について、日本銀行の非取引先金融機関が各々の系統中央機関を通じて制度を利用し得る枠組みを導入するとある。これはどのようなものになるのかはわからないが、生保や投信などが日銀の当座預金口座を持つような格好となるのであろうか。このあたりも興味深い。
そして発表された展望レポートの中間レビューでは、2015年度の物価上昇率見通しを従来の1.7%から1.0%へと引き下げ、2016年度の物価上昇率は2.2%と従来より0.1ポイント引き上げた。GDP見通しは2015年度がプラス1.5%から2.1%に、2016年度がプラス1.2%から1.6%にそれぞれ引き上げられた。
ここで注目すべきは下記の注である。
「今回の中間評価では、原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、政策委員は、見通し作成に当たって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016 年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される」
このような試算が組み込まれるのは極めて異例である。むろん、ここにきての物価上昇率の低下は原油価格の下落による影響が大きい。それで昨年10月に追加緩和を決定したわけであるが、物価の前年比のプラス幅の縮小は止まらず、それで2015年度の物価見込みを下方修正せざるを得なくなった。このため原油価格が戻れば物価目標の達成も可能になるとのロジックをこの脚注で示そうとしたと思われる。
日銀はこのように物価への影響は原油価格の変動などに大きな影響を受けることを数字で示した。ところがその物価目標を達成するためには、国債を思い切って買い入れれば可能として、2度に渡る異次元緩和策を決定してきたはずであった。しかし、前年比プラス1.5%あたりまでの回復は、物価が戻り基調となっていたところに円安の影響が大きかった。その円安にブレーキがかかり、原油安で物価の上昇幅は剥落していった。ここに期待や予想とかでの説明を入れることは難しい。物価は予想や期待で動いているのではないことをむしろ日銀は丁寧に原油価格を用いて示していたと言える。
その原油価格の動向であるが、果たして日銀の予想通りとなるであろうか。これは1年後の日経平均やドル円などの相場を当てるようなもので、いくら日銀の調査能力が優れていても未来の相場の位置を的確に当てることなど困難である。ましてや、いまの原油価格は需給というより、サウジアラビアなどがシュールに対抗して政治的に価格下落を引き起こしている面もある(サウジアラビアのアブドラ国王の死去が今後影響為てくる可能性もあり)。もちろん世界経済の動向にも原油の需給は左右される。不確定要素も多く、その動向を予測することはきわめて難しい。日銀のあげた前提は、あくまでそうあってほしい数値であり、それがないと物価目標達成を示すことがより困難になるためとみられる。
だから追加緩和が必要というのもおかしな理屈となる。日銀がいくらバランスシートを膨らませてもいっこうに物価は上がってこない。もしそれでも物価を上げるために何かしら対策を取るとするならば、円安のために無制限介入をするなり(財務省の管轄ではあるが)、原油を無制限に買いあげるなり(こちらは経済産業省か)せざるを得なくなる。それもまたおかしな話である。
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