01. 2015年1月23日 14:29:54
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ユーロが対ドルで11年ぶり安値圏、ギリシャ選挙控え上値重い (ブルームバーグ):東京外国為替市場ではユーロが対ドルで約11年ぶり安値圏で推移。前日の海外市場で欧州中央銀行(ECB)による量的緩和(QE)導入を受け下落した後も、ギリシャ選挙を週末に控えてユーロの上値が重くなっている。 ユーロ・ドル相場は午後1時49分現在、1ユーロ=1.1348ドル前後。22日の海外市場では1.16ドル台から一時1.1316ドルと2003年9月以来の安値まで急落した。この日の東京市場では1.1374ドルを上値にもみ合う展開となっている。 みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、ECBが発表したQEについて「思ったよりも細部まで詰められており、ECBの本気度が伝わった」と指摘。「週末にギリシャもあるし、本気の緩和姿勢が見られてきた中で、なかなかユーロを買い向かうのは難しい」と話す。 ユーロ・円相場は海外時間に一時1ユーロ=134円23銭と昨年10月以来の水準までユーロ安が進行。東京市場の朝方には135円台を回復する場面も見られたが、ユーロ買いは続かず、その後134円台半ばまで水準を切り下げている。 一方、ECBの金融緩和でリスク選好ムードが広がる中、ドル・円相場は朝方に1ドル=118円82銭と2日ぶり円安値を付けたが、その後は円買いが優勢となり、一時118円台前半まで値を戻した。同時刻現在は118円54銭前後で推移している。 ECBがQE発表 ドラギ総裁は、デフレスパイラルを防ぐため、国債を含め少なくとも1兆1000億ユーロの資産を購入するプログラムを22日発表した。総裁によると、ECBは月600億ユーロの資産を購入するQEプログラムを少なくとも16年9月末まで実施する。 ウエストパック銀行のシニア通貨ストラテジスト、ショーン・キャロー氏(シドニー在勤)は、「ドラギ総裁が必要な限りQEを継続することを明確にしたことは少し驚きだった」と指摘。非常に大きく動いた後で、目先は1.13ドル台半ばでのもみ合いとなるのが恐らく妥当だが、「ユーロが安値を付けたと信じる理由はない」と話す。 QE発表を受け、22日の欧州債市場では高利回り国債が買われ、イタリアやスペインの10年債利回りは過去最低を記録。また、欧米株は続伸し、23日のアジア株も上昇している。 ギリシャ選挙 ドラギ総裁は22日の会見で、ジャンク級(投機的格付け)のギリシャ国債について、ギリシャが救済に伴う欧州連合(EU)による監視プログラムの下にとどまっていれば、7月以降に購入できるとの見通しも示した。25日投開票のギリシャ総選挙では、債務返済を訴える野党・急進左派連合(SYRIZA)が勝利する可能性が予想されている。 三井住友銀行の山下えつ子チーフエコノミスト(ニューヨーク在勤)は、ギリシャ選挙について「反ユーロが勝つというのは織り込まれているが、要はその結果が大きな混乱を呼びそうかどうかということだ」と指摘。その上で、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに対するスタンスが変わらなければ「ドルは利上げ、ユーロはQE拡大というところがかなり鮮明になるので、さらにユーロが売られてドルが買われる」と予想している。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 小宮弘子 hkomiya1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 崎浜秀磨, 山中英典 更新日時: 2015/01/23 13:59 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NILOPN6JTSEN01.html コラム:「四重苦」のユーロ安は必然か=植野大作氏 2015年 01月 23日 13:06 JST 植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト [東京 23日] - ユーロドル相場の下落に歯止めがかからない。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和実施を決めた22日の海外市場では一時1ユーロ=1.1316ドルと、2003年9月19日以来、11年4カ月ぶりの水準まで売り込まれる場面があった。 昨年5月8日の高値1.3993ドルからわずか8カ月間で2600ポイント以上、騰落率換算では19.1%もの大幅安だ。 その後はさすがに買い戻され、23日9時現在の東京市場では1ユーロ=1.135ドル前後で取引されているが、昨年初夏から断続的に猛威を振るうユーロ安ショックの余韻を引きずり、上値の重たい雰囲気が蔓延している。 ユーロ相場が順調に上昇し続けていた昨年春頃までは、「経常収支が黒字でディスインフレ(物価上昇率の鈍化)が進むユーロはかつての日本円のような通貨高圧力に晒されやすい」との見方も強かった。実際、その後もユーロ圏は安定的な経常収支の黒字を計上し続けているほか、消費者物価上昇率はどんどん下がって12月には前年比マイナス0.2%とデフレに陥っている。かつての日本との類似性に注目すれば、現在のユーロは構造的に値上がりしやすい状態にあるはずだ。 にもかかわらず、ユーロが大幅に下落しているのはなぜだろうか。構造的なユーロ高圧力を凌駕するのに十分なユーロ安圧力が発生していないと説明がつかない。 一番大きな環境の違いは、相方である米国の金融政策だろう。日本で1ドル=75円台までの超円高が進行していた当時の米国は量的緩和拡充の真っただ中でドル安圧力を発生させていた。一方、現在は昨年10月いっぱいで米連邦準備制度が量的緩和を打ち切った上、金利政策の正常化期待が発生しているのでドル高圧力が発生している。 ただ、それだけでユーロドル相場の下落を片付けてしまうのは、ちょっと物足りない。ドル高現象の一環としてユーロ安圧力が働いているのは間違いないが、ユーロ側にもたぶん何か大きな変化があったはずだ。以下の4つが考えられる。 <金融緩和の上塗り、ロシア、ギリシャも重石に> 第1は、ECBによる相次ぐ金融緩和の上塗りだ。ユーロ圏で強まるディスインフレ懸念に対処すべく、ドラギECB総裁は5月の定例会見で思い切った金融緩和の開始を予告、6月に採用した政策金利の一部マイナス是認幅を9月に拡大すると同時に域内の銀行に融資拡大の条件付きで低利の長期資金供給オペ(TLTRO)も開始した。それらの金融緩和、流動性供与策と同時並行の形で、資産購入による量的緩和も拡充、担保付き債券(カバードボンド)、資産担保証券(ABS)の購入も順次開始された。 これら諸々の金融緩和策に加え、1月22日に開催された今年初めてのECB理事会では、それまで封印してきた国債などの購入にも踏み込むことも発表された。上記の既存プログラムと合わせて、月額600億ユーロの証券買い入れが3月からスタート、2016年9月まで継続する。昨年中頃を境にして、非常にコッテリとした金融緩和政策の上塗りが幾重にも繰り返される状況が続いている。 現在、ECBは諸々の施策を総動員して2012年3月頃の水準にまで保有資産の規模を膨らませるとしているが、それでもデフレが止まらないようなら、さらなる追加緩和の可能性が意識されるかもしれない。かつての日本では、十数年間の長きにわたって中央銀行がデフレを放置していたが、現在のECBはデフレ転落の兆候が表れた初期段階で対応を始めている。成否については神のみぞ知るところだが、その点に大きな違いがあると言えるだろう。 第2は、ウクライナ・ロシア問題の発生だ。昨年2月のウクライナ政変の後、ロシア軍によるウクライナ南部のクリミア半島への侵攻が始まり、その後親ロシア派勢力によるお手盛りの住民投票などを経てクリミアはロシア領に編入されてしまった。 クリミアのロシア併合を認めない米国と欧州連合(EU)などが開始した経済制裁の影響でロシア経済に下振れ懸念が台頭している。夏場以降に加速した原油価格の下落がロシアのエネルギー産業を直撃、景気の悪化懸念がさらに強まっている。ロシアの経済の混乱は、地政学的に近接するユーロ圏への景気下押し圧力ともなるため、ユーロ売り圧力発生の一因にもなっている。 第3は、ギリシャ債務問題の蒸し返しだ。2009年10月にギリシャ政府による公的債務の虚偽申告が発覚して以来、同国の債務問題は何度も収束と再燃を繰り返したが、2012年2月にEU・国際通貨基金(IMF)・ECBのトロイカによる第2次金融支援が決まってからは、ひとまず落ち着いていた。 だが、2014年12月29日にギリシャ議会での大統領選出投票が不調に終わり、今月25日に実施される総選挙でトロイカから金融支援の代償として課せられた緊縮財政の見直しを主張する急進左派連合(SYRIZA)を中核とする新政権誕生の見込みが強まっている。トロイカとギリシャ新政府の交渉が決裂して金融支援が打ち切られた場合、同国の債務不履行は不可避になる。ドイツを中心にギリシャのユーロ離脱容認論が出ていることが市場の不透明感をさらに強め、ユーロ安圧力発生の触媒になっている。 「金融支援は受け取りたいし、ユーロから出ていく気もないが、現在の緊縮財政の継続は無理」などというSYRIZAの主張が、そのままトロイカに受け入れられる可能性は皆無だが、そういう政権への支持が集まるほどギリシャ国民が緊縮疲れを起こしていることも事実だ。現在のEU条約にはギリシャをユーロ圏から追放する法的根拠はないこともあり、最終的にはギリシャとトロイカが少しずつ歩み寄って最悪のシナリオは回避されるだろう。だが、例によって瀬戸際交渉は長引きそうだ。状況がハッキリするまで、ユーロ相場の心理的重石になるとみられる。 <スイスショックの「負の遺産」> 第4は、スイス中銀(SNB)による唐突なユーロスイスフラン相場の下限撤廃だ。2011年9月以降、SNBは「1ユーロ=1.20フラン」を絶対的な防衛ラインに設定して無制限のユーロ買い・フラン売り介入でこれを死守する政策を維持してきたが、今月15日に突然の撤廃を表明した。あまりにも唐突なSNBの「梯子外し」に驚いたユーロスイスフラン相場は当然暴落、19分間で3割近くも急落した。 SNBのジョーダン総裁は、無制限介入宣言の撤回について「国際情勢の変化などから持続可能ではないと判断した」と述べているが、「特定の水準に防衛ラインを引いて無制限の為替介入で市場価格をコントロールする」という政策自体が無理筋なのは、この政策が始まった直後から、比較的多くの市場参加者が指摘していた。 過去3年4カ月もの長期間、大規模なユーロ買い・フラン売りを続けた結果、スイスの外貨準備やベースマネーは尋常ではない勢いで膨張していた。このため、どこかで無制限介入の看板を下ろさなければならなかった事情は分かる。だが、過激な政策変更を行う前に本来必要な「市場との対話」を一切行わず、唐突にフラン高防御の戦いを放棄したのは本当に罪作りだ。 「SNBによるフラン高防御の為替介入は市場で売るのが自国通貨なので、理論的には無制限に実施できる」「ユーロスイスのような小さいマーケットなら、中銀による無制限介入の神通力で防衛ラインは死守できる」などという「SNB不敗神話」を信じていた人々は、唐突な「梯子外し」の直後に奈落の底に転落して複雑骨折、修復不可能な大損害を被っている。 世界各地の外為証拠金取引(FX)投資家や金融機関などがどの程度の打撃を受けたのか、今のところ未知数だが、出合い頭の金融惨事で引き起こされた被害の程度は、ユーロ圏及びその周辺地域が大きいのではなかろうか。ユーロに対する上限がSNBの約束によって制限され、金利も低かったスイスフランは借金するのに最適な通貨とみられていたこともあり、「南欧や東欧の諸国ではフラン建ての企業借入や住宅ローン残高がかなりあり、返済負担の増大で焦げ付きが増えるかもしれない」などといった不穏な話も後を絶たない。 自然災害でも金融災害でも、その規模が大きくなればなるほど、被害額の全容が解明されるまでには時間がかかる、「SNBショック」がもたらした「負の遺産」への警戒感はこの先もしばらく市場を徘徊するとみられ、ユーロの先安観を助長することになるだろう。 <ユーロドルは戻り売り戦略を基本に> 以上の諸点を総合的に加味すると、当面はユーロに強気の論調を展開すべき理由が見当たらない。昨年央を境にユーロドル相場を取り巻く風景は一変し、次から次へと売られる理由が台頭、共鳴し合う状態が続いている。 これほど分かりやすい弱気材料が出そろっているだけに、短期的にはユーロ売り投機の膨張によってユーロが売られ過ぎの領域に差し込んでいる可能性はある。ただ、「投機筋による利益確定のための買い戻しがどこかで起きる」という以外の理由で、ユーロが反発する姿を思い描くのは非常に難しくなっているのが実情だ。 テクニカル的にみても、足下のユーロドル相場は2010年6月安値の1ユーロ=1.1877ドルと2012年7月安値の同1.2043ドルを結ぶ下値抵抗ラインを明確に下抜けしているほか、13週、26週、52週の各移動平均線が次々にデッドクロスを完成させ、短期・中期・長期のトレンド線がいずれもハッキリと下を向くという分かりやすいチャートフェイスを形成中である。 この先も断続的な買い戻しによる反発局面を挟みつつ、ユーロドル相場の巡航高度は下がっていくだろう。基本的には戻り売り戦略を中心に据えたいと考えている。 *植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KW05320150123 コラム:ECB量的緩和、規模も中身も不十分 2015年 01月 23日 13:44 JST James Saft [22日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)流の量的緩和(QE)は市場の眼鏡にはかなったが、ユーロ圏経済や通貨同盟プロジェクトにも同様の好影響を及ぼすのには苦戦しそうだ。月額600億ユーロの資産を買い入れるドラギECB総裁のQEは、狭義ではあるが重要な尺度からすれば成功を収めた。 ユーロ圏の株価は7年ぶりの高値を付け、ユーロは対ドルで大幅に下げた。 よくぞここまでと言える成果だ。というのも2016年9月までに1兆ユーロ強の資産を買い入れる今回の計画は、その設計と本質部分の両方に重大な欠陥を抱えているからだ。 ECBのQEは来年9月までか、もしくは中期的なインフレ見通しが2.0%に達するまで継続する仕組み。最も重要なのは買い入れの大部分を担うのがECBではなく各国中銀であり、ECBが負担するリスクは20%にとどまる点だ。 債券を1ユーロ買い入れるごとに1ユーロが金融市場に流入する。トレーダーは買い入れには十分な規模があり、ECBが望むだろう動きをしても良いと判断した。これはQEにとって最低限のハードルだ。 しかし各国中銀にリスクを背負わせるという観点からすると、1ユーロの購入が1ユーロのマネーを意味しなくなる。ユーロ圏の金融政策は財政政策と同じく一枚岩ではないというのが、まごうことのないメッセージだ。ユーロ圏加盟国は確かに1つに結ばれているが、ひとたび情勢が悪化すればそれぞれをつるすロープの長さはバラバラになるだろう。 褒められたことではないが、ドイツの政治的立場や法律に配慮し続けるには負わねばならない代償だった。 しかしマネーが生まれて金融市場に流れ込む限り、金融市場はその資金を活用してくれるだろう。より不透明なのは資金がどこに向かい、何に使われるかだ。債券利回りの低下は企業にとって支えとなるが、ユーロ圏以外の地域、恐らく統一的な政策を採る国の市場でリスクを採る誘因にもなる。 <買い入れ規模は足りず> もう1つの問題は、予想と比較した買い入れ規模ではなく、ユーロ圏経済への効果という尺度で見た規模であり、この点ではかなり雲行きが怪しくなる。 12月の報道によると、ECBの内部調査では1兆ユーロのQEはユーロ圏の物価を2年後に0.2─0.8%ポイント押し上げると試算されている。これは英米のQEについての試算に比べ物価押し上げ効果が5分の1ないし9分の1に相当する。ソシエテ・ジェネラルの試算でも、ユーロ圏のQEの物価押し上げ効果は米国の5分の1となった。 ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、マイケル・マルティネス氏は顧客向けノートで「QEが効果を持つには2兆あるいは3兆ユーロの規模が必要だ」とした。 「つまりインフレを中期的に2.0%近くに押し上げるのに必要な買い入れ規模は2兆ないし3兆ユーロで、わずか1兆ユーロではない。ECBがバランスシートをこの水準まで拡大するには、流動性規則や格付けなどの面で債券買い入れの条件を緩和するか、既に日銀が手を染めているように株式や不動産投資信託(REIT)、上場投信(ETF)など他の資産クラスの買い入れを検討しなければならない」 ユーロ圏の資本市場は米国などの地域とは役割が異なる。銀行融資への依存度がはるかに高いからだ。債券買い入れは銀行への直接的な影響が極めて小さく、銀行の自己資本水準の向上には役立たない。 ECBのQEは、少なくとも当初はギリシャにとって支援材料にならない。最も早くとも夏までは買い入れ対象にならないからだ。しかもその時点でECB、国際通貨基金(IMF)、欧州委員会の3者と良好な関係を保っていればの話だ。 25日の総選挙でどのような政権が生まれるにせよ、そのころまでには債務条件についての交渉が決着はしないまでも始まっており、ギリシャの方向性は今よりもはっきりするだろう。 それまでの間、金融市場はユーロ圏QEの効果を享受し続けると期待できそうだ。もう一つの光明は、ユーロ圏QEは規模と効果が小さ過ぎて、米連邦準備理事会(FRB)に金融引き締めを思いとどまらせる要因となりそうなことだ。 リスク資産にとって、FRBの利上げはギリシャのユーロ離脱に匹敵するほどの恐怖をもたらすであろうことを踏まえれば、投資家はECBがより大胆になれなかったことを歓迎してよい。 http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0KW0AT20150123?sp=true コラム:ユーロ圏の原則曲げたECB量的緩和 2015年 01月 23日 12:31 JST Pierre Briancon
[ロンドン 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、政策効果を得るためにユーロ圏の原則を曲げてしまった。総裁は22日、待望の国債買い入れプログラムを発表した。これは当初から大規模であり、ユーロ圏の物価上昇率が正常な軌道に戻るまで続けられる。 だが、今回のユーロ版量的緩和(QE)は通貨統合の原則とは相容れない。 市場は月額600億ユーロという規模と、最短でも2016年9月までで、延長の可能性もあるという期間の双方に、強い印象を受けた。ユーロは10年ぶりの安値となり、株式市場は喜悦満面だった。ドラギ総裁はまたしてもECB理事会メンバーをまとめ上げ、買い入れプログラムの時期と規模をめぐり広がっていた不協和音を克服して見せた。 果たしてQEが「機能する」かどうかは、なお議論の余地がある。総裁はQEがユーロ圏経済を長引く低迷から脱却させることが可能だとは決して主張しなかった。ECBの目標はあくまでも、その使命である2%弱の物価上昇維持が達成できていない状況に終止符を打つことだ。 国債買い入れは各国のECBに対する出資比率に応じてそれぞれの割合が決まり、利回りは押し下げられるだろう。しかし効果は限られる。なぜなら利回り水準は既に過去最低圏にあるからだ。 昨年5月以降でドルに対して17%下落してきたユーロは、今後も下げ圧力を受け続け、物価上昇率の押し上げに貢献するとみられるが、やはり影響は限定的となる。 挙句の果てには、ドラギ総裁も指摘するように、QEは各国の財政支出抑制姿勢を緩める事態をもたらす。 ドラギ総裁はドイツのQEへの強い反対姿勢を和らげるために、国債買い入れに伴うリスクの80%を各国中銀に負担させる案を受け入れざるを得なかった。このやり方は現実世界では大きな問題になりそうもない。ユーロ圏加盟国のソブリン債が完全なデフォルト(債務不履行)を引き起こす公算は、極めて小さいからだ。ただ、今回の決定はECBが初めて、金融政策が分断化できると認めたことを示している。これは通貨同盟の核心にある損失共有の原則に違反する。 QEは異例の時期のための異例な政策手段で、全面的な損失共有がない無制限のプログラムの方が、損失共有原則を尊重した制限付きプログラムよりもすぐれているのかもしれない。とはいえ、タブー(禁忌)は破られてしまった。 ●背景となるニュース ・ECBは22日、国債を中心とする新たな証券買い入れプログラムを導入すると発表した。買い入れは3月から2016年9月までで、 物価上昇率が目標の2%弱に達する軌道に戻らなければ、その後も継続する。ただドイツ連銀は反対し、ドイツ政府内にはこうした買い入れが財政規律の緩い国の経済改革姿勢を弱めかねないとの懸念がある。 ・ドラギ総裁によると、買い入れプログラムは民間債務や銀行への低利貸出などを合わせると、毎月600億ユーロの資金をユーロ圏経済に供給する。16年9月までに供給総額は1兆ユーロを超える。 (筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0KP0PY20150116 甘利再生相がECB緩和を評価、「デフレに毅然と対処」 2015年 01月 23日 12:06 JST
1月23日、甘利明経済再生相は、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和の導入を決定したことについて、問題点をしっかり見据えて対処をしたと評価した。写真は甘利経済再生相(中央)。2014年7月撮影(2015年 ロイター/Toru [東京 23日 ロイター] - 甘利明経済再生相は、欧州中央銀行(ECB)が量的金融緩和の導入を決定したことについて、世界経済を支える柱の1つである同中銀が、問題点をしっかり見据えて対処をしたと評価した。23日午前の閣議後会見で述べた。 ECBの量的緩和政策が日本経済などに与える影響については「ECBが毅然とデフレに陥らない(ための)政策をとった。市場は欧州経済の足元を固めると評価し、これを好感して、米国・日本の株価が上昇した」と語った。 <日銀の物価見通し下方修正、妥当なこと> 日銀が2015年度の物価見通しを下方修正したことについては「日銀はもともと2015年度に物価安定目標2%を達成すると言い切っているわけではない。そこを視野に入れ、そこを中心に目標設定している」と説明。原油価格の下落を受けて、来年度の消費者物価見通しを下方修正したことは「環境の変化を見渡せば、妥当な判断だ」と理解を示した。 <財政再建計画、党には具体的な歳出削減策提言を期待> 夏に策定する財政再建計画に関して、自民党も動きだした。政調会に新たな組織を設置し、2月から検討を開始する方針を明らかにしている。 甘利氏は「聖域なき歳出の見直しに反対する人はいない」と述べ、党に期待することは「できるだけ具体的にどこをどう削るのか、手法も含めてより具体的に示して欲しい。総論や哲学論は共通認識だ。各論で具体的に方法論も示してもらいたい」と要望した。 (吉川裕子) c Thomson Reuters 2015 All rights reserved. おすすめ記事 コラム:ECB量的緩和、ユーロ安の目安は日銀との対比=山本雅文氏 2015年 01月 22日 ECBの選択肢は限定されている─オーストリア中銀総裁=新聞 2015年 01月 19日 ギリシャ総選挙、野党・急進左派が支持拡大=世論調査 2015年 01月 23日 ECB量的緩和、二重のリスク共有を検討=関係筋 2015年 01月 10日 原油安続くなら、「根雪」の円ショートが溶け出すリスクも=今週の外為市場 2014年 12月 22日 湯川氏捜し過激派支配地域へ、後藤氏「何があっても責任は私に」 2015年 01月 22日 ECBが金利据え置き、総裁が会見で追加措置説明へ 2015年 01月 22日 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0KW07K20150123
債券は上げ幅拡大、日銀買いオペ結果受け−長期金利0.2%前半に低下
(ブルームバーグ):債券相場は上げ幅を拡大。欧州中央銀行(ECB)が大規模な量的緩和に踏み切ったことに加えて、日本銀行の国債買い入れオペで需給の良好さが示されたことが手掛かりとなっている。 長期国債先物市場で中心限月の3月物は、前日比34銭高の147円99銭で開始し、早々に前日の下げ幅(52銭安)を解消した。午後は水準を大きく切り上げて始まり、一時は86銭高の148円51銭まで上昇した。 日本相互証券によると、現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物国債の337回債利回りは、前日午後3時時点の参照値より2ベーシスポイント(bp)低い0.295%で始まり、その後も水準を切り下げ、午後に入ると一時0.22%まで大幅低下。その後は0.225%で推移している。新発20年物の151回債利回りは0.5bp低い1.05%で開始し、午後に入ると0.955%まで低下した。 JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「前日の金利急騰は予想外だったが、日銀の国債買い入れが需給を引き締める構図は変わらない」と指摘。ECBが量的緩和を決定したことについては、「欧州では株高などリスク選好が見込まれる一方、ドイツなど金利低下期待があることは円債サポートになる」と話した。 日銀が実施した長期国債買い入れオペ4本の結果によると、残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、10年超25年以下、25年超の応札倍率がいずれも前回より低下した。国債市場で売り圧力が弱まっていることが示された。 ECBのドラギ総裁は22日、デフレスパイラルを防ぐため、国債を含め少なくとも1兆1000億ユーロの資産を購入する量的緩和を発表。月600億ユーロの資産購入を少なくとも2016年9月末まで実施する。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 三浦和美 kmiura1@bloomberg.net;東京 山中英典 h.y@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 山中英典, 崎浜秀磨 更新日時: 2015/01/23 13:26 JST 国債が13年5月以来の急落、日銀巨額購入が一因か
(ブルームバーグ):日本銀行は2%の物価目標を達成するための大規模な国債買い入れで利回りを過去最低まで押し下げた立役者だが、きのうの金利急騰にも無縁だとは言えない。 長期金利の指標となる新発10年物国債利回り は22日に0.31%と6.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇。上げ幅は2013年5月以来の大きさとなった。30年債は18.5bp上げて1.29%。日本国債の相場変動率(ボラティリティ 、60日ベース)は13年8月以来の高水準に達している。 CIBC(カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマース)証券金融商品部の大江一明部長は、日銀による巨額の国債買い入れで「市場の流動性が非常に乏しくなっており、相場は乱高下しやすい」と指摘。「投資家はこのような相場を好まない」と続けた。 世界のほとんどの中央銀行が金融緩和で通貨安とリスク資産への投資を促す中、日銀は21日の金融政策決定会合で追加緩和を見送った。財務省が22日実施した20年債入札では、投資家需要の強弱を示す応札倍率が昨年11月以来の水準に低下。国債相場はその後急落した。 三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケットストラテジストは、日銀の異次元緩和は「二律背反」的だと指摘。「巨額の国債購入で需給面から金利をつぶしているが、物価が将来2%に上がると信じるなら長いゾーンの金利は下がり過ぎとなる」と述べた。「国債市場はファンダメンタルズではなく、もっぱら需給だけで金利が動いている」と言う。 10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り格差(ブレークイーブンレート、BEI )が示す市場の予想インフレ率は22日に0.8%。物価目標の半分にも届かない。日銀は21日、15年度のインフレ率見通しを昨年10月時点の1.7%から1%に下方修正した。 全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI )は消費増税の影響を含めても、過去20年間の前年比上昇率が平均0.1%にとどまる。 米ウエスタン・アセット・マネジメントの土井一人投資運用部長は「誰もが金利水準には問題があると感じていた。その意味では今回の金利上昇は良い動きだ」と指摘。金利上昇の余地が大きいとは見ていないが、「日本国債にとっては、これでも大きな動きだ」と語った。 関連ニュースと情報:【クレジット市場】日本のマイナス利回り、それでも海外勢には魅力的【クレジット市場】野村BPIが示す国債リスク、年限長期化で最大【クレジット市場】5年債もマイナス金利か、預貸ギャップ過去最大で【クレジット市場】国債の売り手不在、10年債0.25%へ−BOAメリル 記事についての記者への問い合わせ先:シンガポール Wes Goodman wgoodman@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 崎浜秀磨, 山中英典, 青木勝 更新日時: 2015/01/23 08:34 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NIKTB46KLVRU01.html コラム:IMFが下方修正、世界経済「異変」の真偽=岩下真理氏 2015年 01月 22日 19:26 JST 1月22日、SMBCフレンド証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は、世界経済の天井は明らかに低くなっており、米国経済の勢いだけではおぼつかないと指摘。提供写真(2015年 ロイター) 岩下真理 SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト [東京 22日] - 年明け後、国際機関、政府、日銀と新しい経済見通しの発表が相次いでいる。20日発表された国際通貨基金(IMF)世界経済見通し改定では、世界全体の成長率が2015年プラス3.5%、16年プラス3.7%と、昨年10月時点からともに0.3ポイント引き下げられた。 下方修正要因として挙げられた国は、中国、ロシア、ユーロ圏および日本だ。産油国ロシアの景気後退はやむなしと言えるが、先進原油輸入国であるユーロ圏と日本では、原油安メリットがあるにもかかわらず、他の負の要因に打ち消されてしまうという。 ユーロ圏はロシア経済制裁の悪影響を受けるドイツ、イタリアの下振れが足を引っ張る形となっており、両国は足元の経済協力開発機構(OECD)景気先行指数の動きを見ても減速している。物価上昇率の鈍化(ディスインフレ)との闘いも、まだ始まったばかりだ。 それに対して、日本の2015年プラス0.6%、16年プラス0.8%という成長率はかなり弱い印象だ。さらに筆者が驚いたのは、IMFがわざわざ北京で発表会を開催し、中国に対する慎重な見通しを披露したことだった。 中国の2015年プラス6.8%、16年プラス6.3%という予測の背景は、不動産市場の健全な調整と当局がむやみに財政政策を講じないとの前提に立った数字と説明。3月の全国人民代表大会(全人代)では15年成長率目標の引き下げ(7%前後)が検討される見通しだが、当局よりも先行してIMFが2年後まで弱気見通しを発表するのは、極めて異例である。 IMFの推計によると、中国は2014年に世界経済に占める比率が16%を超え、米国を上回った。影響力が大きくなった中国経済の減速は、世界経済がリーマンショック前の4%成長には戻れないことを示す象徴的な存在と言えよう。世界の景色は天井が明らかに低くなっており、米国の勢いだけではおぼつかない。それゆえ昨今の世界的な長期金利の低下基調は、合理的な動きだが、過度な部分は調整をこなすことになる。 <IMF見通しは日本経済に慎重> さて、2015年のプラス0.6%というIMFの日本経済成長見通しは、潜在成長率の低下を踏まえた水準調整だとしても、かなり弱い印象を受ける。例えば、他の国際機関の見通しに目を移せば、13日発表の世界銀行も19日発表の国際連合も同じプラス1.2%だ。 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、IMFの数字が手元資料となって経済議論が行われる。参加国から見た日本の姿は、アベノミクスの第1の矢、第2の矢だけでは、中長期的な成長期待の低下は止められず、弱いままとの印象を与えるだろう。日本経済にとって第3の矢である成長戦略の重要性は明らかだ。 今はまだ日銀の追加緩和観測に揺れる市場だが、量的・質的金融緩和(QQE)の経済効果が不透明な状況下、マイナス金利の広がりは市場機能を低下させ、運用サイドに負担を強いることで、歪みが大きくなる。市場機能が低下した状況では、22日のように動くと一気に飛ぶ、金利上昇となってしまうのだ。海外勢の投資妙味が永久に続くわけではない。海外から日本を見る厳しい目は、徐々に成長戦略の取り組みと財政再建の課題に移っていくだろう。日銀が時間を稼いでいる間に、早期の取り組みが必要だ。 その一方で、日本サイドの予測数字は暦年(1月から12月)ではなく、年度ベース(4月から翌3月)となるため、単純比較はできない。12日発表の政府見通しでは、2014年度の実質成長率はマイナス0.5%と落ち込んだ後、15年度はプラス1.5%まで回復する見込みだ。 13日発表のESPフォーキャスト1月調査(回答締切は6日)の実質成長率の予測総平均は、2015年度プラス1.75%、16年度プラス1.63%であり、15年度は民間予測より政府の方が低いという珍しい結果となった。 その代わり2015年度の名目成長率を比較すると、政府のプラス2.7%に対して民間予測はプラス2.45%と政府の方が高く、政府がデフレ脱却に向けて、物価の伸びを高く想定したことがうかがえる。ちなみに筆者は、2015年度プラス1.8%で15年暦年ではプラス1.0%程度と見ており、IMFの数字を弱いと感じたのである。 21日発表の日銀展望レポート中間評価では、2014年度の実質成長率に関する政策委員の大勢見通し中央値はマイナス0.5%となり、昨年10月時から下方修正されたが、15年度はプラス2.1%、16年度はプラス1.6%と上方修正された。16年度は、17年4月に予定される8%から10%への消費税率引き上げを前提に修正したものだ。15年度は、筆者予想、政府よりもかなり強い数字だ。成長率予測の強弱を整理すると、「日銀>筆者>ESP>政府>IMF」という順番になる。 その一方で、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)見通しでは、消費税率引き上げの影響を除いたベースで2015年度はプラス1.0%と前回のプラス1.7%から大幅に下方修正。16年度は2.2%に微修正した。2年連続で1%を超える強い成長を続けることで、需給ギャップの縮小は進む。その結果、中期的な物価上昇の姿も変わらないというわけだ。 また、エネルギー価格の寄与度は、2015年度でマイナス0.7%からマイナス0.8%ポイント程度、16年度でプラス0.1%からプラス0.2%ポイント程度という試算も示された。今回、日銀が原油価格の想定(ドバイ原油で1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していく)と寄与度を明確に示した点は、予測の透明性が増し、評価できる。 エネルギーを除けば、2015年度は1%台後半になる見通しであり、改めて基調的な物価上昇の道筋を示したと言えるだろう。一部に原油価格の想定が甘いとの批判もあるが、むしろESP予測平均プラス0.84%にかなり近い水準まで今回、一気に大幅下方修正したことから、4月の展望レポート、7月の中間評価時に従来のような小刻み下方修正を続ける必要がなくなったように思える。 <物価予想を強気に見せた黒田日銀の工夫> 黒田日銀の2015年の金融政策決定会合の幕開けは、貸出支援制度の1年延長と増額、対象先の拡充決定となった。市場では事前に、「貸出支援制度の貸付金利0.10%の見直しに合わせて、付利金利0.10%の引き下げ」観測が強まり、円金利の低下が加速した。 しかし、黒田総裁は会見で、「付利の引き下げは全く議論しなかった」と語り、QQEの枠組みを維持する前提では、付利引き下げ実現のハードルはやはり高いようだ。 また、各種マスコミ報道で、特に取り上げられたのは、黒田総裁が2%の物価目標達成時期について、「2015年度を中心とする期間から、若干はみ出ることもある」と語った部分だった。昨年のハロウィン緩和で本気度を見せた日銀が、わずかな期間で軸がぶれたとの声もあるが、筆者はそう受け止めていない。 黒田日銀は以前から単月のCPIの動きではなく、基調的な物価動向を総合的に判断すると説明してきた。重要なのは、基調的な物価動向が安定的に2%になることだ。黒田総裁は具体的に、原油安が進んだにもかかわらず、家計、企業のアンケートによる中長期的な期待インフレが維持していることを指摘した。原油安の影響は一時的との見立てだ。遠回しではあったが、一時的な原油安だけでは政策対応しないという含意を伝えていた。原油安と金融政策は直接リンクしておらず、躊躇(ちゅうちょ)なく調整する時があるとすれば、基調的な物価が明確に下振れる時だろう。 日銀は、基調的な物価上昇には持続的な賃上げが必要と考えている。目先は春闘に働きかけることが肝要であり、物価上昇のシナリオを強気に見せる工夫をした。できるだけ早期に2%目標を達成したい人の気持ちになれば、次なる注意すべきタイミングは、2016年の春闘に向けて不安がよぎる可能性が高まった時だろう。 よって秋口以降までに基調的な物価動向が上昇する姿が見えてくるかが、重要なチェックポイントになると、筆者は考えている。 <6月の米利上げシナリオに揺らぎ> 世界経済に話を戻せば、1月は、原油安進行と欧州の政治・経済情勢の不透明感のもとでリスクオフ機運が高まり、グローバルに長期金利の低下が加速した。原油価格はWTIで13日に1バレル44ドル台まで下落。15日に石油輸出国機構(OPEC)が原油の供給過剰は2015年1―3月期がピークとの見通しを発表した後は、不安定ながらも下げ止まりつつある。 また欧州では、欧州中央銀行(ECB)が事前期待通りに量的緩和策への道を示すことになりそうだ。21日の米紙の報道によれば、「ECB役員会が3月以降、月額500億ユーロの債券を買い入れる案を提案したことを明らかにした」という。買い入れ対象や方法、期間などの詳細は定かではないが、量的緩和策に近く踏み込むことは間違いなさそうだ。 これで25日のギリシャ総選挙が無難に終了すれば、目先の材料出尽くしから、リスクオフ相場の一服が見込まれよう。ただし当面は、原油安とスイスフラン高に伴う損失を補てんするため、利益のある商品を売る動きが出てくる可能性があり、注意が必要だ。 相場に落ち着きが戻れば、再び米国経済と米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に注目は移るだろう。現在、スイス・ダボスで開催中の世界経済フォーラムでは、ドイツ銀行のジェイン共同最高経営責任者(CEO)が、今年の最大の懸念として、米利上げ時の想定外の余震をあげた。 筆者は、世界の市場は年前半、原油価格のフェアバリューを模索し、年後半になると米国の利上げとそのペース、それに伴う米債のフェアバリュー探しになると見ている。そして、米利上げの必要条件は、1)クリスマス商戦の順調な終了、2)賃金上昇率の下げ止まりの確認、3)欧州経済の持ち直しの3つと考える。 このうち一番目については、全米小売業協会が14日発表した2014年11―12月の小売売上高(飲食、自動車、ガソリン除く)は前年比プラス4.0%と好調な伸びを示した。特にネット通販の堅調さが目立った。商務省の米12月小売売上高は、ガソリン販売の減少が足を引っ張ったが、購買力の減退を示すものではなく、懸念する必要はない。 一方、二番目については、12月の雇用統計で一部業種の賃金が大きく下落した。果たしてこれが一時的か、業種の広がりを伴うものか、単月では判断できない。賃金伸び悩みに不安が強まったのは事実であり、その点を重視すれば、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁(今年の投票権あり、ハト派の急先鋒)が9日、利上げは2016年まで遅らせるべきとの考えを示した気持ちはわからなくもない。今後は、他のFRBメンバーの賃金動向に関する発言が注目される。そして最後の三点目については、今年の早い段階で欧州経済の持ち直しを確認するのは難しくなった。 この二番目と三番目のハードルから、筆者は、米利上げ開始は早くとも6月と予想していたが、さらに後ずれする可能性が高まりつつあるように思える。 *岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) *本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。 *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。 コラム:古傷を覆い隠す中国の「ニューノーマル」 2015年 01月 23日 12:31 JST John Foley [北京 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ノーマルな状態を恐れるのは難しい。中国の新しいキャッチフレーズがこれほどの速度で流布したのは、そのあたりに理由があるのかもしれない。エコノミスト、財界リーダー、そして直近では李克強・中国首相が中国の景気減速を説明する言葉として「新常態(ニューノーマル)」という言葉を使っている。 正常さを強調するのは、現在の状態がそれとは程遠いという事実に蓋をしたいからだ。 西側諸国の識者らは5年前、金融危機に打ちのめされた経済を描写する方法としてこの言葉に飛びついた。中国では習近平・国家主席が昨年5月、成長鈍化を正当化する妙案として、この流行の火付け役となった。中国の経済成長率は昨年7.4%と、過去24年の最低まで低下。自ら定めた成長率目標を達成できなかったことをノーマルと表現する以上、未達成は意図的であり、目標値の拘束性は弱いのだろう。 ニューノーマルという表現には政治的な意味合いもある。この言葉を用いるのは習氏にとって、前任の胡錦濤、江沢民、両氏の経済政策をやんわりと批判する上でぎりぎり許される方法だ。両氏の下で中国経済は急成長を遂げたが、その過程で不均衡が拡大し、環境への配慮もほとんど成されなかった。政府からひいきにしてもらいたい面々は、表敬の方法としてこの言葉を採用した。電子商取引最大手、阿里巴巴(アリババ)集団の馬雲(ジャック・マー)会長や、不動産王の王健林氏も「ニューノーマリスト」だ。中国人民銀行(中央銀行)や塩の専売公社にもその輪は広がっている。 安心感を誘うと考えての表現だろうが、かえって不安を募らせる者もいるだろう。軍事用語で「ノーマル」と言えば、中国が19世紀に泣く泣く手放した地域支配への回帰を意味することも有り得る。生産能力の過剰に見舞われた産業の労働者や、給与の高いサービス職を求める新卒者にとっては失業、あるいは不本意な職に就業することを意味しかねない。教育の向上や社会的流動性を実現するには長年を要するからだ。 政治家がどう言おうと、ノーマルを持続するのは難しそうだ。建設業の雇用を支える固定資産投資は昨年12月、過去10年で最低の伸び率となった。やはり12月には、鉄道輸送された財の数量が前年同月比で10%減少し、2008年よりも厳しい落ち込みぶりを示した。そして建築中の住宅の数は、2009年には3年間の販売分に相当していたのが、現在は5年分まで増えている。ニューノーマルという新語は、古傷を覆い隠す新たな方法に過ぎない。 ●背景となるニュース ・李克強・中国首相は昨年11月22日、中国経済は高度成長局面から、中程度から高成長の間への移行に特徴づけられる「ニューノーマル」期に入ったと述べた。 ・首相はダボスで開かれている世界経済フォーラム(WEF)の年次総会で、中国ほどの経済規模なら7%成長するだけでも8000億ドル超の生産に相当すると強調した。 ・1月20日に発表された中国の2014年国内総生産(GDP)成長率は7.4%と、1990年以来で最低となり、公式目標の7.5%も下回った。 ( http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0KW08620150123?sp=true おすすめ記事 米ダンキンは「買い」、住宅市場回復で客増加へ=米大手ファンド2015年1月23日 甘利再生相がECB緩和を評価、「デフレに毅然と対処」2015年1月23日 序盤の米国株は上昇、IMF経済見通し下方修正で緩和期待2015年1月21日 コラム:日銀追加緩和は本当に遠のいたのか=村田雅志氏2015年1月21日 コラム:債券相場に見え隠れする「根拠なき熱狂」=嶋津洋樹氏2015年1月20日 ノーベル賞を受賞!EGFの効果(スキンケア大学) 20代も注意!シワができるメカニズムとは?(スキンケア大学) 知らなきゃ損!ビタミンCより美肌効果の高いビタミンC誘導体とは?(スキンケア大学) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0KV0J620150122?sp=true
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