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原油暴落は「暴落」ではない?“本当の”理由とは 割高状態の調整で底打ち安定へ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150123-00010007-bjournal-bus_all
Business Journal 1月23日(金)6時1分配信
昨年末から世界の金融資本市場の一大波乱要因となってきたのが、原油価格の急落である。一向に歯止めがかからない原油安のせいで、産油国の株・通貨のみならず、米国をはじめとする世界の株が売られた。リスク回避の流れが強まり、外国為替市場では安全通貨とされる円に資金が回帰し、円高に巻き戻った。また、原油価格の下落が物価上昇率を押し下げる、すなわちデフレ圧力を高めるとの思惑から、全世界的に金利低下に拍車がかかった。
そもそも、この原油価格下落の背景はなんだろうか。原油に限らずコモディティ(金融商品)の価格決定メカニズムは、潜在的な需給状況が長期的な価格トレンドを規定し、そこに市場のセンチメントや期待を動かす短期的な要因が加わる。世界銀行の分析(「Understanding the Plunge in Oil Prices: Source and Implications」)によると、長期トレンドに影響する需給バランス面では、米国シェールオイルの生産増という供給要因とグローバル経済の成長鈍化という需要要因が挙げられている。短期的な要因としては、OPEC(主にサウジアラビア)の目標の変更、地政学リスクの後退による供給遮断懸念の緩和、米ドル高が指摘されている。どれも一見すると極めて正論のように思われるし、一般的なメディアで見られる解説も世銀の分析と大きくは違わない。
しかし、それらは原油安の「舞台装置」を提供するものであっても、ここまで短期間のうちに、これほど大きな価格低下をドライブしてきた「直接的な理由」としては説明力が弱いと感じる。
例えば、シェール革命による米国の原油生産量の増加という最も説得力のありそうな理由にしても、今に始まった話ではない。米国の原油生産量は、ここ数年鋭角的に右肩上がりで増えてきた。その間、指標となる米国原油価格(WTI:ウエスト・テキサス・インターメディエーツ)は、ほぼ90〜100ドルのレンジで横ばいだった。米国のシェールオイル増産で需給バランスが崩れたことが原油価格下落の要因であるならば、もっと前から原油価格は下げていなければおかしい。
無論、こうした需給バランスの歪みは、原油安を招く根本的な下地ではあった。ただし、ここまでの下落トレンドに突入したのは需給要因というよりは価格要因、すなわち割高な状態で推移していた原油の価格調整が一気に起きたというものであり、価格に着目して売りが売りを呼ぶ状態というのは実需主導というよりも明らかに投機的な動きであると考えられる。
●原油価格の適正値とは
では、どれだけ割高だったかということを示そう。原油価格の適正値を考える際に「生産コスト」という考えがあるが、実際は役に立たない。原油と一口にいっても多様な種類の原油が取引されており、かつ産油国により生産コストはまちまちであるからだ。原油価格が適正であるかどうかを判断するひとつの目安は、先物の価格構造(フォワードカーブ)である。現物それ自体の理論価格は、あってないようなものである。しかし、先物には理論価格がある。とすれば、先物と現物の相対関係においては、現物にもまた理論価格があるといえる。
商品先物の価格は、現物価格に金利と保管コストを加えたものである。従って、先物のフォワードカーブは期先へ行けば行くほど高くなる(右肩上がり、順ザヤ)のが普通の状態である。ところが、例えばハリケーンが米国のメキシコ湾岸を襲って原油設備が打撃を受ける懸念が高まるなど、なんらかの要因で現物に対する需要が強まると、現物価格が跳ね上がる。一方、その需給ひっ迫の要因が一時的だと思われる場合は、将来の需給に影響を与えないので、期先の価格はあまり変動しない。その結果、フォワードカーブは手前が高くなる(右肩下がり、逆ザヤ)。
WTI先物の直先スプレッドと米国の原油在庫の推移を見ると、2014年前半は在庫が積み上がる過程においても直先スプレッドは拡大しなかった。これはスポット価格が割高に買われすぎていたことを示すものである。
●底打ちを探る水準に
原油価格は、どのあたりで下げ止まるだろうか。そろそろ底打ちを探る水準に近づいてきたというのが筆者の見立てである。フォワードカーブの観点からは、ずっと逆ザヤで推移してきたが、1年先の先物がスポット価格に対して2割弱高くなっている。この程度の価格差があれば、スポットを買って先物を売るという裁定取引が機能する水準であり、一本調子の下落に歯止めがかかるだろう。
もうひとつは、リグカウントが減り始めたことである。リグカウントとは掘削機(ドリル)による掘削数。原油価格の急落で、採算割れを起こしたシェールオイル油田が増えてきていることを示す指標となる。米オイルのリグカウントはシェールオイルの生産が増え始めた09年ごろから急増し、12年〜13年は1400前後で安定推移していたが、14年に入ると再び増加に転じ、10月には1600を超え、ピークを付けた。これがおそらく「ラストストロー」となったと思われる。ラストストローとは、最後の藁(わら)という意味。最後の一本の藁が、それまで重荷に耐えてきたラクダの背中を挫く、という喩えがあるように、それまでギリギリ限界的に均衡を保っていたのが、ちょっとした追加的な負荷で崩壊してしまうさまをいう。
リグカウントが1400までは拮抗し、まだ需給が均衡していた。ところが1600へ増加すると、需給バランスが保てなかったということなのだろう。米国シェールオイルの増産が原油の需給を悪化させ、原油価格の低下につながったというのは大きな背景としては正しい。しかし、直近の急落を説明するのは、ここ数年の臨界点を超えた、すなわちリグカウントの1400から1600へのシェール増産が「ラストストロー」となったということではないか。
リグカウントは直近では1400台に低下している。原油価格が横ばいで安定していた時期の水準に戻ったわけで、目先、調整一巡感が台頭してもおかしくないと考える。
広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト
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