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「円安株高はアベノミクスと無関係」(EJ第3956号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/412613386.html
2015年01月20日 Electronic Journal
アベノミクスは「政治的レトリック」ではなかったかという人
がいます。そもそも経済政策というものはそういう曖昧なもので
あるといえなくもないのです。
ある経済政策が正しかったかどうかを検証するには、政策が行
われた場合と行われなかった場合の差を比較しなければならない
のですが、シミュレーションならともかく、実際にそういう比較
はできないのです。
そういう経済政策の曖昧さについて、服部茂幸教授は次のよう
に述べています。
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例えば、日本の経済成長率がゼロだったとしても、異次元緩和
が行われなかった場合、成長率がマイナス3%になっていたとす
れば、異次元緩和は成長率を3%引き上げたことになる。逆に4
%という高い成長率であつても、異次元緩和が行われなくても4
%の成長率だったならば、政策効果はゼロである。しかし、異次
元緩和が行われなかったら、日本経済がどうなっていたかは正確
には誰にも分からない。そのため、政策評価は曖昧なものとなら
ざるを得ない。 ──服部茂幸著『アベノミクスの終焉』
岩波新書1495
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服部茂幸教授は、安倍政権と日銀は、アベノミクスで「ある物
語」を作ろうとしているといっています。それは、民主党政権の
3年間で低迷している日本経済を安倍政権が目の醒めるような大
胆な経済政策を実行して、かつての経済成長華やかなりし頃の日
本を取り戻すという「物語」です。
まず、政権発足前の安倍晋三自民党総裁が「日本経済を再生す
るために無制限の金融緩和を行うべきである」と主張します。そ
うすると、直ちに円安と株価上昇がはじまったのです。これに呼
応して、安倍氏周辺の政治家や経済学者が「市場はアベノミクス
を支持している」と訴えたのです。
しかし、安倍政権が発足し、黒田日銀総裁が異次元金融緩和を
実施したとたん株式市場の大暴落が起きたのです。安倍総裁が無
制限の金融緩和を訴えたとき市場がそれを支持したという論法に
したがえば、2013年5月の株価大暴落は「市場はアベノミク
スを拒否した」ことになります。
しかし、安倍首相周辺の政治家や経済学者は「株は上がったり
下がったりするもの。株価には一喜一憂すべきではない」という
のです。その代わり「有効求人倍率は順調に上昇しているじゃな
いか」とデータを示して反論します。つまり、悪いデータは無視
し、良いデータを示して反論しているのです。
それでは、アベノミクスが安倍政権発足後に起きている円安/
株高の原因でないとしたら、何によってその現象が起きたのでし
ようか。アベノミクス懐疑派の論説をまとめると、次のようにな
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.12年秋以降の円安は、ユーロ危機により買われていた円
が危機が去るにつれて売られたことと、海外投資家による
円安投機によるものである。
2.異次元緩和が始まる前の経済成長は、主として政府支出の
増加(第2の矢)による効果が中心で、一部に消費税増税
による駆け込み需要がある。
3.異次元金融緩和が始まると、円安が止まり円高に振れ、株
価が下がり、経済成長率は低迷する。消費者物価の上昇も
輸入インフレが原因である。
―――――――――――――――――――――――――――――
これから1つずつ実証していくことにしますが、まず、「1」
について考えます。
添付ファイルをご覧ください。このグラフは、イタリア10年
国債利回りと円/ドルレート関係を示したものです。これらの2
つは強く相関しています。
このグラフの作成者である野口悠紀雄氏は、グラフについて次
のように述べています。
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イタリア10年国債の利回りは、11年11月から12年1月
までは、7%を超える水準だった。しかし、12年1月初めから
急低下し、3月には一時5%を割り込んだ。これと並行して円安
が進展した。この時の円安は一時的なものにすぎなかったのだが
イタリア国債の利回りはその後再び上昇し、7月には6・3%に
なった。これに対応して円高が進展した。しかし、イタリア国債
の利回りはこの後はほぼ下落を続け、13年1月には4・1%に
なった。この過程と急激な円安の進行がほぼ一致している。
──野口悠紀元雄著/日本経済新聞出版社
『金融政策の死/金利で見る世界と日本の経済』
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このグラフが示している重要なポイントは、円安が進行した時
期と、イタリア国債の利回りが低下した時期が一致していること
です。つまり、ユーロ危機が深刻になると、安全資産である円が
買われ、円高になりますが、危機が去るにつれて資金は引き上げ
られ、円安になるのです。
2012年は秋から円安になっていますが、イタリア国債の利
回りの低下は10月中旬から生じています。つまり、その頃から
ユーロ危機は遠ざかり、安全資産の円にシフトしていた資金は引
き上げられ、円安になり、それは加速しつつあったのです。これ
は、安倍晋三氏が自民党総裁になり、「無期限金融緩和」を宣言
する前からの傾向であり、安倍晋三氏によるアベノミクス宣言と
は何ら関係はない──これが野口悠紀雄氏の考えです。
これを機に、「ユーロ崩壊」に賭けていたニューヨークのヘッ
ジファンドを中心とする海外投資家の資金が、日本に流れ込み、
円安投機を仕掛け、日本は円安/株高が進むことになるのです。
これが「1」です。 ─── [検証!アベノミクス/38]
≪画像および関連情報≫
●欧州債務危機と円高/羽田 亨教授
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2011年11月21日のニューヨーク外国為替市場で円相
場が一時1ドル=75円78銭をつけ2ヶ月ぶりに戦後最高
値を更新したのに続き、その翌週には連日最高値を更新して
31日のオセアニア市場で一時1ドル=75円32銭まで上
昇しました。対ユーロでも円高が続いています。31日の政
府・日銀の市場介入により東京市場で円は一時、79円台半
ばまで急落したが、円高圧力は依然として強く日本の景気や
企業業績への悪影響が心配されています。円高の要因のひと
つに欧州の債務危機があり、安全な資産とされる円に資金が
流れ込んでいることがその背景にあります。欧州債務危機は
2009年に発生したギリシャ財政危機に端を発しているの
です。2009年10月にギリシャでは政権交代があり、新
政権が2009年の財政赤字は対GDP比で12・7%に達
すると発表したことで、前政権が財政赤字をかなり低く見積
もっていたことが明らかになりました。市場では、ギリシャ
の財政破綻懸念とこの粉飾疑惑から、ギリシャ国債の大量の
売りが発生して国債価格が暴落しました。
http://bit.ly/1yycDmP
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●グラフ出典/──野口悠紀元雄著の前掲書より
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