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中国、海外企業を爆買い…異次元の巨額投資に「重大な不安」、瀕死の日本勢から覇権奪う?
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13520.html
2016.01.29 文=湯之上隆/微細加工研究所所長 Business Journal
中国の紫光集団が世界の半導体企業を“爆買い”している。その一方で、中国では半導体や液晶の工場建設ラッシュが起きている。本稿では、まずその状況を示したのち、それら工場の成否は技術者の確保にかかっていることを論じる。
■台湾UMCが中国にギガファブ建設
台湾UMCが中国福建省アモイ市で、62億ドルを投じて300mmウエハで40nmノードのギガファブ(巨大工場)建設を開始した。2015年3月に着工し、16年7-9月に月産5万枚、いずれ10万枚へキャパを増大する予定である。ロジック・ファンドリー(システムLSI製造専門の半導体メーカー)としては中国で最大規模の半導体工場となる。工場の運営会社はUMCで、UMC、福建省電子信息集団、アモイ市政府の3者が共同出資する。自動車用マイコン、生産自動化向けセンサーのビジネスを目指すとしている。
中国への台湾企業の進出は、台湾政府が足枷となっていた。2000年に政権に就いた台湾独立志向の陳水扁政権が技術流出や台湾産業の空洞化を懸念して、中国への大型工場建設を許可しなかったからだ。これをめぐって陳政権とUMCは訴訟を起こし、その結果、UMCの創業者である曹興誠・董事長が辞任するなどの事態に発展した。こうした経緯もあり、台湾のファンドリーの中国進出は阻まれていた。
転機は08年に対中融和派である国民党の馬英九政権が誕生したことで訪れた。10年には中国企業への出資または買収というかたちなら300mmウエハの工場建設に参画できるという規制緩和に踏み切った。UMCにとっては中国市場に再挑戦する絶好の機会となるため、世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)に先んじて中国進出を決めた。
■続いてTSMCも工場建設へ
15年12月7日、今度はファンドリー売上高世界一のTSMCが、中国に初めて単独で3700億円を投じて、300mmウエハの最先端半導体工場を南京市に建設すると発表した。18年下期に稼働させ、最先端の微細化技術16nmで2万枚の規模からスタートし、スマートフォン(スマホ)用プロセッサを製造する。年間出荷台数約5億台と中国がスマホの最大の市場となったことから、現地でプロセッサを生産すべきとの結論に至った。
これまでは中国と共同事業になるため知的財産が守りにくかったが、TSMCは単独で投資できるよう規制緩和を要望していた。それが15年9月に実現し、台湾のファンドリーの中国進出にメドが立った。
UMCにしろTSMCにしろ、ここが勝負となったら一気に攻め込んでいく決断力を有する。中国に巨大な半導体市場があるのは、誰の目にも明らかだ。日本企業も国内で縮こまっていないで、攻めるときは攻めるべきである。
■中国BOEが世界最大級の液晶工場建設
中国BOEは、テレビ用パネル世界シェア5位、スマホ用中小パネル世界シェア7位の企業である。その同社は15年12月2日、中国内陸部の安徽省合肥で世界最先端・最大級(第10.5世代)の液晶パネル工場を建設すると発表した。東京ドーム17個分の敷地に7700億円を投じて、2.94×3.37メートルのガラス基板の加工工場を建設するという。さらに今後3年間で2兆円を投じ、65インチ以上の大型液晶テレビ用パネルを月産9万枚体制で量産する予定である。
12月2日の工場着工式には、中国国家発展改革委員会、中央情報化省など中央官庁の幹部、地元政府の要人が参加し、国家プロジェクトの様相を呈したという。
BOEの大規模投資は、競合他社を振り落とし世界一のメーカーになるための戦略である。これは、かつては韓国サムスン電子が得意にしていた手法だ。先行者の日本・韓国・台湾メーカーをキャッチアップし、後発の中国メーカーの追随も許さず、今後2〜3年で世界のトップメーカーになることを目指している。
BOEの計画の全貌は凄まじい。17年には、テレビ用の大型パネルと、スマホやタブレット端末用の中小型パネルの新工場をそれぞれ稼働させる。大型パネルの新工場が、福州市に建設中の第8.5世代ラインである。投資額は5800億円で、生産能力はガラス基板投入量換算で月12万枚(最終的には月14万〜15万枚までキャパを拡大)。ここで、55型以下のテレビ用パネルを生産する。
中小型パネルの新工場は成都市に建設中の第6世代ラインで、資額は約4200億円。ここでは、現在日本や韓国が圧倒している低温多結晶Si(LTPS)TFT液晶パネルや有機ELパネルを生産する計画である。その上で7700億円を投じて15年に着工した合肥市の第10.5世代工場を18年第2四半期に稼働させるのだ。
これらの巨額投資を可能にしているのが、政府の支援や政府系ファンドの資金である。中小型パネル4200億円、55型テレビ用5800億円、65インチ超テレビ用7700億円、合計約2兆円規模の工場投資額の90%を、政府や政府系ファンドなどが負担する。中国が国の威信をかけた投資をして、世界トップをもぎ取る計画である。
日本では、シャープの液晶事業が売却されようとし、産業革新機構が株主となっているジャパンディスプレイも赤字、粉飾会計の東芝はほぼテレビ事業からは撤退する。半導体も液晶も、中国の巨大工場が生産を開始すれば覇権を奪われそうな気配である。
しかし、中国の工場運営にはひとつの不安が付きまとう。それを以下で説明する。
■中国の半導体事情
中国の半導体市場は14年に980億ドルとなった(図1)。これは、世界半導体市場3330億ドルの29.4%に相当する。電気製品などで“世界の工場”となり経済発展を遂げた中国が、大量の半導体を必要としているのである。
ところが、14年に中国で製造された半導体は125億ドルしかない。国内半導体の自給率はたったの12.8%である。つまり、中国では半導体の自給がまったく追い付いていないのである。
世界の工場となった中国が、なぜ半導体では振るわないのだろうか。何しろ14年の125億ドルという生産高は、世界全体の3.8%しかないのである。
■中国は半導体の製造が苦手
半導体をつくるには、設計と製造の2つの工程が必要となる。中国が半導体を自給できない最大の理由は、製造工程の不振にある。それは、中国最大のファンドリーSMICの業績を見れば一目瞭然である。なお、ファンドリーとは製造専門の半導体メーカーのことである。
SMICは、地元銀行のほか米国、台湾、香港などの投資銀行やベンチャーキャピタルが出資して、2000年4月に設立された。02年に初代CEO(最高経営責任者)の張汝京は4〜5年間で約1兆円を投資するという爆弾発言を行った。この投資額は、02年当時で台湾TSMCの5倍、韓国サムスン電子の4倍に近い。日本は大手12社の合計が6250億円であったことを考えれば、この投資額がいかに桁外れのものだったかわかるだろう。
もし、張氏が描いたシナリオ通りにSMICが成長したら、中国が半導体王国になっていたはずだが、現実はそうなっていない。SMICの業績を見てみると、1兆円を投資して劇的に売上高が伸びたようには見えない(図2)。それどころか、長らく赤字の低空飛行を続け、12年以降にやっと黒字化できた有様である。ファンドリーの世界ランキングでも、台湾のTSMCやUMCの足元にも及ばず、09年に設立された米グローバル・ファンドリーズにも抜かれてしまった。
SMICの業績が示すように、中国のファンドリー、つまり製造は不振だが、設計を専門とするファブレス企業は12年10月時点で約450社もあり、活況を呈している。そのトップ企業が、爆買いをしている紫光集団である。
■中国の工場の成否のカギ
これは何を意味するか。ファブレスは少人数で勝負できる。一方、半導体製造には百人規模のプロセス技術者が必要となる。筆者は、中国人が個人プレーで能力を発揮できる半導体設計には向いているが、百人規模の技術者のチームワークが必要な製造には向いていないのではないかと考える。
その上、中国人は「もっと儲かる仕事」を目指して、すぐに転職してしまうという事情もある。そのため、中国で百人規模の技術者を揃え、チームワークを形成して半導体や液晶の開発・生産を行うのは非常に難しいことなのだ。このような事情があるからこそ、中国の紫光集団は、海外の半導体企業を技術者込みで爆買いしているのである。
したがって、UMC、TSMC、BOEの新工場での開発や生産のためには、チームワークが取れる優れた技術者の確保が最重要課題である。そのために、中国人以外、すなわち台湾、韓国、日本、欧米人などをヘッドハントするしかないと考えられる。
果たして、中国で建設ラッシュが起きている半導体工場や液晶工場は成功するだろうか。今後の動向に注目したい。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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