今の時代は最悪」と感じる理由とは〜社会オンチの世渡り論2016年1月27日 深澤真紀×古市憲寿対談「今の世の中は最悪ではないのだけれど」 本サイトでも人気だった連載「深澤真紀の女オンチ人生」を発展させ、女オンチに「男オンチ、社会オンチ」までをテーマにした書籍が、来月、刊行されることになりました。対談相手として加わったのは、若手の社会学者、古市憲寿さん。「女オンチ、男オンチ、恋愛オンチ、社会オンチ」について、語り合いました。
今回のテーマは「今の世の中は“悪い”のか」です。 深澤:「古市くんがネットやテレビで炎上するたびに思うのは、この人は「余計なことを言う楽観主義者」だなあということ。私にも同じようなところがあるから、炎上することがめんどうくさくて、なるべくそれを発言しないようにしてるんだけど(笑) 古市:そんなに余計なこと言ってるかな(笑) 深澤:私たちは「今の世の中はそんなに悪くない」「今の若者はそんなに悪くない」ということをずっと言ってるでしょう。
古市:だってそうだし。 深澤:そうなんだよね。「長い人類の歴史の中では、今はずいぶんマシな時代だ」と思っている楽観主義者だし、「なんでそれがわからないの?」と思うから古市くんはつい余計なことを言ってしまう(笑) 古市:余計なことなのかなあ。 深澤:たとえば、保守だろうとリベラルだろうと、「このままでは日本は終わりだ」って悲観したがる人が多すぎる。 古市:そう、なんでみんなこの世の終わりみたいな顔をしたがるんだろう。歴史の教科書読めば一瞬でわかるけど、どう考えても、今より悪い時代ばっかりじゃないですか。 深澤:「今、自分が生きている時代が最悪だ」って思いたがるのは、「ドラマティック願望」の一種だから、そのほうが気持ちいいんでしょうね。だけど古市くんも私も、自分の人生と社会をドラマティックにしたいとは思っていない。 古市:思ってない、めんどうくさいし。 深澤:「今の日本は、戦後最悪である」っていうニュースは、子どもの頃から聞き続けてる。そして老人になってもたぶん同じことを言い続けるでしょう。 古市:まあ、いつの時代もどう切り取るかで、いい面も悪い面もあるわけだからね。 深澤:もちろんその時代ごとに個別の問題はあるし、今の時代にもたくさんの問題はあるけど、「すべてを最悪」と言い切るのはおかしい。むしろ最悪だと思ってしまうことで、希望を失ってしまう若者だって多いから、逆効果だと思う。 古市:そう。そんなにひどくない。少なくとも江戸時代とかよりはよっぽどマシでしょ。飢饉の心配とかしなくていいし! 深澤:寿命むちゃくちゃ伸びてるし! 私たちの「ドラマティック願望」が低いのも、オンチだからかもしれない。 「どこに所属してるかよくわからない」 古市:オンチってことは、つまりイデオロギーからも自由ってこと? 深澤:イデオロギーから自由にはなれないでしょ。単純にイデオロギーに対してもオンチなのかも。 古市:イデオロギーという楽譜が読めないから、上手に歌えないってことかな。
深澤:そうかもしれない(笑)。だから、「深澤さん、どういうイデオロギーですか?」って言われたら、「クソ左翼のクソフェミニストのクソリベラルです」だって答えています。 古市:「クソ」って言い過ぎ。 深澤:左翼だってフェミニストだってリベラルだって、必要悪みたいなものでしょう。だからクソをつけて自戒しないと、危ないなと思ってる。 古市:ああ、自戒なんですね。 深澤:古市くんもよく「あなたは左なのか右なのか」って、迫られてるよね(笑) 古市:あれなんなんですかね。なんでみんな、あんなに踏絵のようになんかどっちかにしたがるんだろう。右か左かって、そんな簡単に分けられないでしょ。 深澤:以前古市くんに「深澤さんって、どこに所属してるかよくわからない」って言われたでしょう。 古市:言ったかもしれない。 次ページ たしかに私も以前は「どこかに所属しよう」としてた... 深澤:たしかに私も以前は「どこかに所属しよう」としてたけど、オンチだから、所属すること自体だったり、そこでの地位が目的になってしまって結局うまくいかなくなるから、今は所属しないようにしているかもしれない。
古市:属する場所も作りたくないし、地位も作りたくない。それはそれで大変そうですけどね。 深澤:「所属する」ってことは、守りたいものや隠したいことがあるっていう面もあるけど、私は今はもうそれもあまりないのかもしれない。 古市:僕は深澤さんよりはあるかなー。秘密くらいはある。 深澤:あなたに秘密なんてある? 古市:なんだろ……。些細なことかな。 深澤:些細なことじゃん!(笑) 古市:だって価値がある秘密ってことは、一定程度は世の中にありふれた秘密ってことでしょ。逆に、本当にごく個人的な秘密っていうのは、世の中に理解もされないから、隠す意味もあまりない。 深澤:ああ、それはそうだわ。 古市:そもそも、秘密を守るとかめんどうくさいしね。やっぱり省エネを追求した結果、こうなっちゃったのかな。 深澤:だから、「やりたいことをやってる」んじゃなくて、「やりたくないことをやらないこと」にかける労力は、私たちはすごいと思う。 古市:そうそうそう! やりたくないことはやんない。 深澤:苦手なものを克服できないのが、オンチなのかもしれない。でも克服するんじゃなくて、「できないことを認める」ことも悪くないと思う。 日経ウーマンオンラインで人気を博した連載「女オンチ人生」が1冊の本になります! 「女オンチ」とは、著者本人が自分のために作った言葉。生まれながらにして「女らしさ」というものが分からず、美魔女信仰が甚だしい現代の世の 女性たちとはズレた感覚の自分を、楽しく綴っている。化粧もしないで結婚式に出る、占いが嫌い、更年期障害や老眼を悲観するどころか楽しむ…かといって、女を武器にすることを否定をするわけでもなく…。 ここに挙げられていく「女オンチ」な出来事のうち、ひとつは誰にでも当てはまるところはあるはず。自分の ことを「女性としてだめだな」とちょっと悩んでいるあなたも、この本を読めば「こんな自分も悪くない」と、励まされること間違いなし!? 新たに、社会学者の古市憲寿氏との「女オンチ×男オンチ」のスペシャル対談を掲載!「人間オンチ」な2人の軽妙なやり取りにも癒される!?『女オンチ。−女なのに女の掟がわからない』(670円+税/祥伝社黄金文庫/2016年2月11日(木)発売) Profile 深澤真紀(ふかさわ・まき) コラムニスト・淑徳大学客員教授。1967年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部社会専修卒業。卒業後、いくつかの出版社で編集者をつとめ、1998年、企画会社タクト・プランニングを設立、代表取締役に。日経ビジネスオンラインで2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞し、国内外で話題になる。『女はオキテでできている―平成女図鑑』(春秋社)、『輝かないがんばらない話を聞かないー働くオンナの処世術』、津村記久子との対談集『ダメをみがく――”女子”の呪いを解く方法』(紀伊國屋書店)、『日本の女は、100年たっても面白い。』(ベストセラーズ)など著書も多数。 古市憲寿(ふるいちのりとし) 1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。 日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に日本社会の様々な「ズレ」について考察した『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。最新刊の 『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。 http://wol.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/121500038/011200006/?P=2&n_cid=nbpwol_else 「欲なし草食系」部下のやる気を引き出すには?出世も名誉も成長も恋愛も欲しがらない… 2016年1月27日(水)小倉 広
「対人関係の心理学」と呼ばれるアドラー心理学を職場コミュニケーションに応用する方法を学びます。職場にはびこる“困ったちゃん”をアドラー心理学で分析。傾向と対策を示します。第4回は「欲なし草食系部下」編。 <今週の困ったちゃん> 超草食系男子 八木田草生くん(29歳) ■症例■ バブル世代のA課長は悩んでいた。今時の草食男子・八木田草生さん(29)をどうモチベートしていいか、わからなかったからだ。 A課長から見た、八木田さんの困った言動、意味が理解できない言動とは以下のようなものだ。 「ぜひ管理職を目指してほしい」と伝えても「いえ、管理職にはなりたくありません」とにべもない返答 A課長が行っていた責任ある仕事を八木田さんに任せようとすると、「これ以上仕事を増やされてもこなせません」とストレートに断られた 「やるじゃないか!」と仕事の成果をほめても「はぁ、別に普通じゃないっすか」とドライな反応 顧客へのフォローが遅くなり、クレームになっても気にする様子なし。「すぐに連絡しなくちゃだめじゃないか!」と叱っても「はぁ、すみませんでした……」とまったく気にする様子がない プライベートを尋ねてもあまり教えてくれない。どうやらつきあっている彼女はいないようだ。「別に必要ないですから……」と素っ気ない 一方で休日にジムに通い体を鍛えている、と他社員からの情報も。「好きなことには熱中するのか……」と意外な発見も A課長は、考えれば考えるほど、八木田さんのことがわからなくなっていくのだった。頭の中には自分自身が新入社員時代に呼ばれた「新人類」という古い流行語が浮かび、「いつの時代にも、世代間ギャップはあるのだな……」とあきらめに似た気持ちがわいてくる。 しかし一方で、実務にまじめでトータルでは仕事ができる部類に入る八木田さんを職場の中核リーダーに育てたい、という思いもある。その狭間で「どうすればいいのか……」と悩みは増すばかりであった。 分析1:「ありたい人物像」が変化してきた 「草食男子」とは、2006年に本サイト「日経ビジネスonline」にて、コラムニスト深澤真紀氏により最初に使われ(記事はこちら)、2009年に新語・流行語大賞にもノミネートされた言葉だ。その定義は論者によって異なるが、総じて、異性や恋愛をがつがつと求めるタイプではなく、互いに傷ついたり傷つけたりすることを避ける男性のこと、というニュアンスで使われることが多いようだ。つまり、本来は異性や恋愛に関する淡泊さを定義する言葉であったものが広義に使われ、異性以外も含めた「欲望」全般に対して淡泊な若者を指すようになっていったようである。 アドラー心理学的に上記の八木田さんを分析すると、2種類の仮説が立てられるように思う。1つは、アドラー心理学の目的論から推測したところによる「究極目標」、すなわち「ありたい人物像」が変化してきた、というものだ。アドラー心理学では誰もが「優越」を求める、と考える。ここで言う「優越」とは相対的に他人に勝つ、というものだけでなく、「より優れた人間でいたい」という絶対的概念を含んだ広い考えだ。その「優れ方」が従来と変わってきた。バリエーションが増えてきたのだ。 わかりやすく二元論的に考えると、バブル世代に代表される「肉食男子」が、カネ、出世、ブランド、異性を「優越」すなわちステイタスシンボルとして求めたのに対して、草食男子と呼ばれる世代は、その逆を行く。そして、逆を行く方がかっこよく「優越」である、と考えている。そういう仮説である。 もっともアドラーは性格・価値感などを総称する「ライフスタイル」において、十把一絡げにタイプ分類することの危険性を挙げている。そのため、このように世代全体をタイプ化する考え方に対して、天国にいらっしゃるアドラー先生は疑問を投げかけるかもしれない。しかし、ここではあえて二元論的に論ずることで、本コラムの理解を深めていただくよう、論を進めることをアドラー先生および読者の皆様にお許しいただきたいと思う。 分析2:草食男子は「勇気不足」? もう1つの分析は、アドラー心理学の中核概念であり本連載でも繰り返し述べてきた「勇気」についてである。おそらくは草食男子と呼ばれる人々は総じて勇気が不足しているのではないか、と推測される。 勇気が十分な状態であれば、人は誰もが優越を求め努力をしたり、協調したり、貢献したり、と建設的な行動を取ろうとする。つまり、放っておいても「良くなろう」とする、とアドラー心理学は考える。しかし、自信を失ったり、自己肯定感が低くなったりして、勇気が不足した状況になると、人は傷つくことを恐れて、非建設的な行動を取るようになる。例えば、自分を守るために攻撃的になったり、人間関係で傷つかないように人とつきあわないようにする、といった具合だ。 その行動の1つが「管理職を目指さない」「責任ある仕事を引き受けたがらない」「叱られても気にしない(ように振る舞う)」という「欲」を持たない行動に表れているのかもしれない。つまり、本ケースの八木田さんは勇気不足である、というのが2つ目の仮説である。 本コラムでは、八木田さんに関する分析を「究極目標の変化、バリエーションの拡大」および「勇気不足」の複合的要因である、と仮説をおいた上で、具体的な対処方法を考えてみたい。 対策1:「押しつける、誘導する、ほめる」に要注意 そんな八木田さんに対して、上司が取ってしまいがちな間違いは「押しつける、誘導する」といったものだ。八木田さんから見ておそらくは「カッコ悪い」と思われている「肉食」的価値感を当然のこととして「押しつけたり、誘導したり」すれば、余計に反発を買うだろうし、八木田さんの勇気をくじくだろう。 「そもそも会社員である以上は上を目指さねばならない」 「オレの若い頃はもっとガツガツしていたものだ」 といった押しつけの言葉は慎むべきであろう。 また、これ見よがしの「ほめ」言葉もやめた方がいい。 「お、後輩を指導しているのか。やればできるじゃないか。その調子だ。そろそろリーダーになってもらわなくては困るからな」 アドラー心理学では「ほめる」ことを操作・コントロールと考え、賞罰教育を否定する。そうではなく勇気づけるのだ。「ほめる」と「勇気づける」の区分はわかりにくいが、総じて以下のように対比することができるだろう。 「ほめる」:上から目線、評価的、自分(上司)目線、相手の自立を奪う方向に働く (例)よくやった、偉い!やればできるじゃないか 「勇気づける」:横から目線、共感的、相手(部下)目線、相手の自立を支援する方向に働く (例)あなたのお陰で助かった。ありがとう。勉強になった つまり、誘導的な「ほめる」は逆効果であり、押しつけと同じ意味合いに働いてしまう、とアドラー心理学では考えるのだ。 対策2:勇気を満たせば、人は貢献を求める では、アドラー心理学では草食男子・八木田さんに対してどのように接することが考えられるのか。 まずは仮説の1つ目である「草食という究極目標」に対して、その目標を変更させるような働きかけは不要であろう。つまり「草食」の八木田さんを「肉食」化させよう、というA課長の課題の立て方があるならば、その目標自体を改めるべきだと考えるのだ。 アドラー心理学では「何を持っているか」ではなく、「どのように使うか」を大切にする。つまり、八木田さんの持っている究極目標に注目するのではなく、草食ならば草食なりに、その目標の適切な使い方を支援する方向で考える。八木田さんの価値感を大切にしながら、企業が求める目標との重なりを増やすよう支援を考えるのだ。 それは具体的にどのようなことだろうか? 仮に八木田さんの価値感が草食男子的な「傷つき、傷つきたくない」というものであるならば、A課長は八木田さんと共に周囲の人を守ったり、安心させたりする仕事の仕方を考える、という支援方法があるかもしれない。 「どうすればクライアントにもっと安心してもらえるだろうか?」「チームのみんなが安心して働けるような環境づくりのために八木田さんができることは何だろうか?」などと問いかけ、共に考えていくのもその1つだろう。「売り上げを上げるための策を考えよ。ビジネスなんだからドライに考えろ」という論調で迫るのは逆効果だ。 上記の「安心を大切にする」アプローチは「持ち物を変えるのではなく、使い方を変える」という意味合いでも有効である。同時に勇気づけという観点からも有効。八木田さんからすれば自分を尊重されている、と感じるからだ。 先に述べた通り、アドラー心理学では勇気が補充されれば人は放っておいても「もっと良くなろう」とする、と考える。そして「人は誰かに貢献して役に立ちたい、と本質的に願っている」と考える。勇気づけはきっと八木田さんの「貢献したい」という思いを高めてくれることだろう。その意味では、二重の効果が期待できる。 そして、八木田さんがクライアントやチームのメンバーに貢献してくれたことがたとえわずかであってもそれに注目し、言葉で伝えることだ。その際には上から目線で操作的な「ほめる」ではなく、横から目線での共感的な「勇気づけ」の言葉を選んでほしい。 「ありがとう。とても助かるよ。みんな喜んでいるよ」。そんな言葉が彼の「貢献意欲」に火をつけるだろう。 肉食が良くて、草食がダメなのではない。同様に草食が良くて肉食がダメなのでもない。アドラー心理学の前提条件である「相互尊敬、相互信頼」を前提として、縦の関係ではなく横の関係で、建設的な行動を実践していく。このケースでもそれが求められている。 最後に 古代メソポタミア文明の遺跡に「今どきの若い者は嘆かわしい」云々の文章が残されている、というのは有名な話。いつの世も、世代間ギャップは存在し、そして年長者は若者を嘆く。それが数千年前から繰り返されているのだろう。 私自身もA課長と同じように「新人類」「理解不能」と呼ばれた世代であり、現在は逆に「今どきの若い者は・・・・・・」と語る年代となってしまった。まさに、歴史は繰り返しているわけだ。しかし、嘆いているだけでは何も変わらない。そこで、このアドラー心理学が大切なヒントを投げかけてくれるのではないか、と思うのだ。 本コラムから、皆さんが何かしらのヒントをつかんでいただければうれしく思う。次回の第5回をお楽しみに。 アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学 アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学 人生の課題は、すべて対人関係の課題である――。こう語ったアルフレッド・アドラーの心理学を、ビジネスでのコミュニケーションに応用する手法をわかりやすく、具体的に解説します。 どうすれば、上司、同僚、部下と良好な人間関係を築き、仕事の成果を継続して高めていくことができるのか。そのキーワードは「距離感」。アドラー心理学を長年研究し、日々の仕事に生かす道を模索してきた筆者は、「近づきすぎず、遠ざけすぎない」「押しつけず、遠慮しない」コミュニケーションこそが、理想の関係を創り出すと説きます。 ベストセラーとなった『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』に続く、「アドラーの教えをビジネスに生かすシリーズ」の第2弾として、悩みを抱える多くのビジネスパーソンに読んでいただきたい1冊です。 職場の”困ったちゃん”対策はアドラーに聞け 2015年度に最も販売部数が多かったビジネス書『嫌われる勇気 自己啓発の源流アドラー心理学』を筆頭に、『アドラーに学ぶ部下育成の心理学』『アドラーに学ぶ職場コミュニケーションの心理学』などで、一躍ブームの様相を呈しているアドラー心理学。本連載は「対人関係の心理学」と呼ばれるアドラー心理学を職場コミュニケーションに応用するものです。職場にはびこる様々な“困ったちゃん”をアドラー心理学で分析。傾向と対策を示します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/122500020/012100006/?ST=print 二日酔いには「朝イチ」スポーツドリンクが効く肝臓の働きはアミノ酸、ビタミンの摂取で復活 2016年1月27日(水)継田治生=ライター 得意先の接待など、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎが続くと体調を崩しがちだ。たとえ食べ過ぎ・飲み過ぎたとしても、それをなかったかのようにカラダを復活させてくれる、ありがたい即効リセット術を紹介しよう。初回のプチ断食 、2回目の胃の不調対策 に続く最終回では、二日酔いの解消法をお届けしよう。 接待や飲み会で盛り上がってしまい、つい飲み過ぎ…。吐き気、だるさ、頭痛など、何度経験してもつらい二日酔い。後悔先に立たず。昨晩の飲み過ぎをなかったことにできるような、つらい症状から素早く立ち直れるありがたい解決法は…。 二日酔い対策に詳しい、自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科講師の浅部伸一医師に取材して分かった即効リセット術は以下の通り。順を追って詳しく説明していこう。 二日酔いへの速効対処法 1. 最初に水分補給。スポーツドリンクや味噌汁もお勧め。 2. アミノ酸やビタミンB1を中心に補給。サプリメントの活用も。 3. 頭痛がある場合、水分補給で治らない場合はカフェインも試す価値あり。 4. 胃薬も即効性あり。胃酸を抑える薬や整腸剤、乳酸菌製剤、吐き気止めなどを服用。 5. それでも治らない場合は医療機関で医師に相談。 カラカラの体に、まずは水分補給 まずは二日酔いの原因について知っておこう。「アルコールの飲み過ぎによる脱水状態、体内で過剰に発生したアセトアルデヒドの作用、胃の炎症などが主に考えられています」と浅部医師が説明してくれた。それぞれ不調をきたす理由を理解したうえで、対策を講じるといいだろう。 二日酔いの主な原因は、アルコールの飲み過ぎによる脱水状態にある。(©sabphoto-123rf) お酒を飲むと脱水状態になってしまうのは何故だろうか。「アルコール類には利尿作用がありますので、おしっことして水分を外に出してしまいます。加えて、おつまみには塩分過多のものが多く、これを排泄するためにも水分が使われてしまいます。二日酔いの翌朝の体内は、水分不足でカラカラだと思ってください」(浅部医師)。こうした脱水状態は、頭痛やめまいなど、様々な症状を引き起こす。 このため、二日酔いの朝にまず行うべき処置は、水分を補給することだ。「特にお勧めなのは、塩分や糖分が含まれ、吸収もいいスポーツドリンクです。二日酔いのときは胃が荒れていることが多いので、真水よりは少し塩分が入っていたほうが胃にやさしく、刺激も少ない。さらに、尿の排出に伴って、糖分も不足していることが多く、これがだるさの原因になりますので、糖分の補給もある程度は必要です。冷やす必要性はなく常温が一番いいですよ」(浅部医師)。気持ち悪くなければ、塩分を含む味噌汁、水、野菜ジュースなど、自分が飲みやすいものを選ぶといい。 ただし、スポーツドリンクを日常的に常用すると糖分過剰になる可能性があるで、そこは注意が必要だ。「スポーツ選手でも、スポーツドリンクの過剰使用によって糖尿病になる選手もいる」(浅部医師)という。 ちなみに、お酒の飲み過ぎで急性アルコール中毒になって病院に運ばれる人もいるが、最初の処置は点滴になる。これは、血管の中に直接、水分を補給ために行うもの。つまり、病院でも飲み過ぎの患者に最初に施すことは水分補給というわけだ。 肝臓の働きをアミノ酸、ビタミンでアップ 二日酔いの2つ目の原因であるアセトアルデヒドとは、アルコールが体の中で代謝される際に生じるものだ。体に入ったアルコールのほとんどは肝臓で代謝されるが、体が処理できる量であれば、筋肉や脂肪組織に運ばれて二酸化炭素と水に分解され、呼気や尿となって身体の外へ出ていく。しかし、アルコールの量が多過ぎると、分解しきれなかったアセトアルデヒドが血中を巡る。アセトアルデヒドは毒性が強く、吐き気や頭痛など二日酔い症状の原因となる。 このため、酷使している肝臓の働きを高める処置を行うと、アセトアルデヒドの産生防止につながり、二日酔いの早期解消につながる。具体的には、「アミノ酸やビタミンBの摂取が望ましい」(浅部医師)。 たんぱく質が代謝されて生まれるアミノ酸には、肝臓の解毒作用、アルコール代謝を促進するなど、肝機能を向上させる効果がある。中でも、浅部医師のオススメは『BCAA』(分岐鎖アミノ酸)。「科学的な立証はまだだが、炎症を抑え、肝臓を保護する効果も認められているので、二日酔い対策の効果が期待できる」(浅部医師)という。 アルコールが肝臓で分解される時には、ビタミンB1も大量に消費される。ビタミンB1は糖質の代謝を助け、エネルギーを作り出す働きがある。これが欠けるとだるさを感じるようになるため、積極的に補給したい。 BCAAは魚、肉、ご飯、そばなどに多く含まれ、ビタミンB1は豚肉、うなぎ、たらこなどに多く含まれる。飲み過ぎの後で胃腸も弱っていたら、サプリメントを活用して摂取する手もある。 吐き気や胃もたれには胃薬を服用 食べ過ぎによる胃もたれ、胸焼けについては2回目の記事で説明したが、お酒の飲み過ぎでも同様の症状が起こる。アルコールは胃を刺激して、食べた物を消化するための胃酸の分泌を促す。この胃酸は強い酸性で、アルコールの刺激によって胃の粘膜の働きが弱っていると、不快な症状を引き起こすのだ。特に空きっ腹でお酒を飲むと、アルコールは分子のサイズが小さいため、胃の粘膜を通り抜けて刺激を与えやすい。 「胃のもたれや吐き気の症状がきつい時には、胃薬を飲んでください。特に前の日に吐いたりすると胃は荒れていますので、胃酸を抑える『制酸薬』が有効です。『整腸剤』や『乳酸菌製剤』、また中枢神経を抑える吐き気止めも効きますし、飲み過ぎただけでなく食べ過ぎてしまった場合は併用してもかまいません」(浅部医師)。まずは胃を早く治して、普通の食生活に戻すことを優先したい。 「どんな薬でも副作用が出る可能性はありますが、飲み過ぎによる急性の胃炎の場合は、1週間程度は続けて飲んでも基本的に問題ありません」(浅部医師)。ただし、それでも治らなければ、何か別の原因がある可能性があるので、医療機関を受診するべきだ。 一方で、頭痛がある場合は頭痛薬を飲んでもいいのだろうか。「脱水が原因の場合は水分補給でだいたい治るので、まずは水分を補給してください。アセトアルデヒドによる血管の拡張作用が原因なら、血管を収縮させるカフェインを含むコーヒー、お茶が有効な場合もあります。それでも治まらないようなら頭痛薬を飲んでもいいですが、副作用で胃を荒らすので、胃が弱っているときは飲みすぎに要注意です」(浅部医師)。 二日酔いを避けるには事前に固形物を食べる 今回は飲みすぎた後の対処法を主に紹介したが、やはり二日酔いにならないことが一番だ。もちろんお酒を適量で抑えればそれで済む話なのだが、どうしても飲みすぎてしまいそうな場合の事前の対処法も浅部医師に聞いた。 まずは、固形物を先にお腹に入れておくこと。アルコールは胃からも十二指腸からも非常に効率よく吸収される。胃の中に固形物を入れておくと、胃の出口がいったん閉まり、飲んだお酒がしばらくは胃に留まる。そして食べ物を消化してから、少しずつお酒を腸に送っていくようになる。 アルコールは胃からも少しずつ吸収されるが、事前にちょっとでもお腹に入れておけば、そのスピードをかなり緩めることもできる。「胃に入れるものは肉でも魚でも枝豆でも何でもいい」(浅部医師)。なお、牛乳を先に飲んで胃の粘膜をカバーするといった話もよく耳にするが、その効果に根拠はないとのことだ。 もう一つは、飲食の間にこまめに水を飲むことだ。胃腸内のアルコール濃度を薄める効果がある。さらに、飲酒後はアルコールの利尿作用によって脱水になりやすいので、それを防ぐ効果もあるという。 最後に、二日酔いでもでもどうしても飲まなければならない場合にはどうしたらいいか、浅部さんに聞いてみた。「医師としては勧められません。できれば避けてください」とのことだった。 本コラムの関連記事はこちらからお読み下さい。 最終回 医師880人に聞く、二日酔い対策の決定版とは? 二日酔いの朝、どうすれば楽になる? 二日酔いで困った朝は「サプリ」や「漢方薬」で対処する 浅部伸一(あさべ しんいち)さん 自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科講師 1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がんセンター研究所で主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科に勤務する。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料は、ワイン、日本酒、ビール。 この記事は日経Gooday 2015年12月16日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。 「一に健康、二に仕事」 from 日経Gooday 健康・医療の総合サイト「日経Gooday」が、メタボ解消・ダイエット・アンチエイジング・快眠・不調改善に役立つ最新情報やセルフケア実践術を、厳選してお届けします。ビジネスパーソンは「体が資本」。お酒と健康の意外な関係、カラダの謎に関するトリビアなど、思わず人にも話したくなるウンチクもお届けします。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/111700008/012600006/?ST=print
[32初期非表示理由]:担当:要点がまとまっていない長文
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