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建築基準法が定める「確認済証」の取得手順
【スクープ】三井不動産が傾斜マンションで「脱法行為」、確認機関2社が便宜供与の疑い
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160126-54879421-fukkou-life
nikkei BPnet 1月26日(火)15時14分配信
■「載荷試験報告書」を提出しないで「確認済証」を取得
傾斜マンション「パークシティLaLa横浜」の杭工事で、事業者の三井不動産横浜支店が、建築基準法の根幹を揺るがすような、大胆な「脱法行為」をしていた事実が明らかになりました。建築確認の申請に必須とされる「杭の載荷試験報告書」を提出しないで、確認検査機関の日本ERIから「確認済証」を取得していたのです。
今回の問題は奇々怪々です。三井不動産は結局のところ、載荷試験報告書を日本ERIに提出していません。それに代わって杭工事の完了直前に、ハウスプラス住宅保証から確認済証を取得し直して、工事が完了した後に、同社に載荷試験報告書を提出していたのです。なぜ奇妙な行動をしたのでしょう。詳しく調べなければなりません。
建基法は表に示すように、「杭の載荷試験報告書を提出」→「確認済証の取得」→「杭工事を開始・完了」、という順番を義務付けています。しかし、三井不動産の行動は順番が逆転しています。これでは建築確認制度そのものが意味をなしません。
当然ながら、建基法は三井不動産の行為を「合法」とは認めていません。
これに関して、3人の弁護士で構成される旭化成・外部調査委員会の「中間報告書」に、興味深い一文がありました。「主として都市部では、杭の載荷試験実施前であっても、載荷試験に合格することを前提として、支持力に余裕を持たせた設計をした上で、杭工事が開始されることもあるようである」。
つまり、民間の確認検査機関が「違法」であることを承知の上で、確認済証を載荷試験前に交付することにより、早く着工できるように便宜を図っている──と指摘しているのです。
これまで一方的に非難され続けてきた旭化成グループが、三井不動産に対して、「そっちだって、おかしなことをやっているのではないか」と、反撃を開始したのでしょうか。
さて、都市部で行われている「違法」なケースでは、杭工事の着工直前というギリギリの段階で、杭の載荷試験を実施。確認検査機関に大急ぎで報告書を提出して、「すべり込みセーフ」を目指しているように思われます。
しかしLaLa横浜では、杭の載荷試験が行われたのは、なんと杭工事の出来高が45パーセントに達した段階でした。さらに載荷試験報告書が提出されたのは、杭工事が完了してから約2週間後のことでした。いったい何がどうなっているのでしょうか。
■「LaLa横浜」プロジェクトの成否を握る重要な試験
この問題を理解するために、まず建基法について復習しておきましょう。旭化成建材の「ダイナウィング工法」を、LaLa横浜のような土丹層(硬質粘土層)に適用する場合、建基法施行令93条および国土交通省告示第1113号第6は、「杭の載荷試験」を行うことを求めています。
また確認申請に際して、建基法は「杭伏図」や「基礎・地盤説明書」の提出を求めています。この「基礎・地盤説明書」には、「杭の載荷試験報告書」を添えるのが原則です。簡単にいえば、建基法に従って載荷試験を行った「証拠」を提出しなければならない、ということです。
こういった建基法の諸手続に関しては、旭化成「中間報告書」が詳しく解説しています。
特筆しなければならないのは、ダイナウィング工法を土丹層に適用したケースは、旭化成建材が持つ3040件の実績のうち、LaLa横浜の1件が最初で最後だった事実です。
「LaLa横浜」プロジェクトが成功するか失敗するかは、杭の載荷試験にかかっているわけですから、三井不動産をはじめとする関係者一同は細心の注意を払っていたはずです。
この難関を突破するためには、建基法の定めにしたがって、必要な手続きを一つひとつ丁寧にクリアしなければなりません。仮に手続きにミスがあったとすると、すべてが台無しになってしまいます。
以上をまとめると、次のようになります。
一。 申請に必要な書類一式を用意する
二。 その中には必ず「杭の載荷試験報告書」を入れる
三。 建築主の名前で、必要な書類を添えて、建築確認を申請する
四。 審査に合格すれば、確認済証が交付される
五。 その後に杭工事を開始する
注記したいのは、三井不動産が2002年4月26日に「マンションブランド戦略」の一環として、「TQPM」と呼ぶ品質マネジメント手法を導入。「躯体性能など目で見て確認が難しい基本性能クオリティを向上させます」と宣言していた事実です。クオリティを向上させるためには、建基法が定めた順番を守ることが出発点になります。
念のために補足すると、三井不動産グループで分譲マンション事業を担当する三井不動産レジデンシャルは、2005年12月26日に設立されました。しかし営業活動を開始したのは2006年10月ですので、「脱法行為」の当事者は三井不動産になります。
以下の文章では、必要に応じて三井不動産と三井不動産レジデンシャル(略称三井不レジ)を使い分けます。また三井住友建設は三住建設、日立ハイテクノロジーズは日立ハイテク、旭化成建材は旭建と略記します。
日本ERIとハウスプラスの唐突な入れ替え
さて「LaLa横浜」では、物事は次のような順に進みました。
1. 2005年11月28日─日本ERIが確認済証(ERI-05041224)を交付
2. 同年12月9日─杭工事を開始
3. 2006年1月26日─杭の載荷試験を実施
4. 同年3月7日─ハウスプラス住宅保証が確認済証(HPA-06-005901-1号)を交付
5. 同年3月10日─杭工事を完了
6. 同年3月23日─杭の載荷試験報告書をハウスプラスに提出
7. 2007年12月─LaLa横浜が竣工
この時間経過はいかにも奇々怪々です。杭工事を開始してから約45日後に、杭の載荷試験を実施しているのです。これでは先ほど述べたような「すべり込みセーフ」というわけにはいきません。判定は「遅すぎるのでアウト」でなければなりません。
また杭工事が完了した後に、杭の載荷試験報告書が提出された事実を、見逃すわけにはいきません。これは建基法に対する公然たる挑戦行為です。
「3040件のうち、ただ1件」という極めて重要な試験であるにもかかわらず、これほど不可解な事実が隠されていたのです。
「何か夢でも見ているのではないか?」。自分でも信じられなくて、LaLa横浜の管理組合から入手した確認済証と載荷試験報告書に記入された日付を何回も見直したのですが、夢ではありませんでした。
■「違法行為」と「脱法行為」の違い
一連の動きの中で、日本ERIが「違法行為」をしていたことは明白です。しかしながら建築主(申請者は三井不動産横浜支店長)の法的な立場は微妙です。仮に三井不動産が日本ERIに便宜供与を強く働きかけたとしても、日本ERIがそれを断れば「違法行為」は成立しなかったのです。それを考えて、三井不動産に関しては、とりあえず大胆な「脱法行為」としておきましょう。
経過表には他にも不思議なことがあります。三井不動産は杭工事が完了した2006年3月に、確認検査機関を日本ERIからハウスプラスに変更しています。そして、わざわざ確認済証を取得し直しているのです。
前ページに示した日本ERIの「確認済証」と、上に示したハウスプラスの「確認済証」を見比べると、文言はまったく同じです。これはこれで前代未聞に近い出来事なのです。
当時は、2005年11月に姉歯元建築士による耐震偽装事件が発覚し、日本ERIも巻き込まれて混乱している最中でした。「事件に伴う審査能力の低下や、行政処分による時間ロスを懸念した」ということです。
審査能力が低下した結果、載荷試験の実施前に、間違って確認済証を交付したのでしょうか。そうであるのなら、三井不動産が誤りを指摘すればいいのです。
結局のところ、三井不動産は日本ERIに載荷試験報告書を提出していません。その代わりに、杭工事が完了した後にハウスプラスに提出しています。
まるで檻に入った人間が一瞬にしてライオンに入れ替わる、不思議なマジックを見ているような気分です。もやもやした黒い霧が一面に立ちこめています。
■載荷試験の途中で発生した予想外の出来事
さて「LaLa横浜」では、なぜ大胆な「脱法行為」が行われたのでしょうか。これに関しては、日本建設業連合会「杭の施工管理方法の提案書」が参考になります。同書には「(LaLa横浜の工事が実施された)2006年当時の技術では、ダイナウィング工法を土丹層に適用するのは無理に近い」という趣旨の記述があります。
それを前提にして、載荷試験のプロセスをたどりましょう。日本ERIが確認済証を交付したのは2005年11月28日です。よって三住建設は12月9日の着工前に、杭の載荷試験を実施できたはずです。しかし実際には翌年1月26日にずれ込んでいます。つまり約2カ月もの間、モタモタしていたのです。
その理由は明確です。「LaLa横浜」の敷地で行われた載荷試験は、ある意味で危険なものだったのです。具体的にいうと、地上数mの高さから重錘(重さ35トン)を落下させて、全長が14mで直径が60cmという杭の頭部にドンッとぶつけて、杭が耐えられるかどうかを測定するという内容でした。
重さ35トンの重錘について、少しイメージしてみましょう。俗に「10トンダンプ」と呼ばれる全長9.3mのダンプカーは、車両の重量と荷物の重量を合計した限界重量が33トンになります。それに匹敵する重錘を地上数mに持ち上げてから、一気にドンッと落とすのですから迫力満点なのです。したがって、落下試験装置も高さが10m程度は必要ですし、頑丈な鉄骨造にしなければなりません。これでは時間がかかるわけです。
このように苦労して準備を整えた上で、ようやく1月26日に載荷試験を実施しました。その後に不思議な「空白期間」が続きます。すぐにでも、確認検査機関に報告書を提出すればいいのに、実際に提出したのは3月23日にずれ込みました。つまり約2カ月もの間、再びモタモタしていたのです。
その理由は載荷試験で予想外の出来事が発生したからです。事前の計画では、「100の力」に耐えられるはずだったのに、実際には「75の力」で杭が破壊してしまいました。
杭が予想の75パーセントの力で破壊したのですから、事態は深刻です。何とかしてその原因を突き止めなければなりません。杭の載荷試験は三住建設、日立ハイテク、旭建、システム計測が担当したのですが、どうも4社の分析能力を超えていたようです。
■杭工事を中止できなかった不都合な事情
困ってしまった4社は、新たにアプライドサーチに理論的な分析を依頼。同社は報告書を2月25日に提出しています。
それを受けて、旭建が三住建設に3月1日付けで、「杭の破壊について」と題する資料を提出しました。それを要約すると、「地下6mから6.6mの位置に硬い障害物があったため、杭がその位置で破壊したと推定される」というものです。つまり、杭自体ではなく、地中の障害物のせいにしてしまったのです。これで一件落着を狙ったと思われます。
ただし、地中の障害物の問題も本当は深刻です。敷地内に、昔あった工場を支えていた既存杭の残骸が、障害物として悪さをしたかもしれないのです。
これについて、旭化成「中間報告書」は、「工事日報によれば、掘削作業の過程で既存杭による地中障害が見つかり、設計上の杭の打設箇所を変更している箇所が比較的多く見受けられる」と記しています。淡々と述べていますが、杭位置をずらすのは構造的に危険なことなのです。
杭の強度不足や既存杭の残骸など未知の要素が多いのですから、本来であればこの段階でいったん工事を中止し、確認機関に指示を仰ぐべきだったのです。
しかしながら、表に示したように、杭工事の出来高は1号機と2号機を合わせると、既に45パーセントに達しています。ここで引き返すと、いろいろな問題が発生します。
あれこれ悩んだ末に、現場事務所の所長は工期を優先させて、杭工事の続行に踏み切ったのでしょう。また工事監理者(設計者)は同じ三住建設の社員として、それを阻止することができなかったと思われます。
■いわくありげなプロセス
この後に「いわくありげなプロセス」が続きます。
一。 2006年3月1日─旭建が三住建設に資料「杭の破壊」を提出
二。 同年3月7日─ハウスプラス住宅保証が確認済証を交付
三。 同年3月10日─杭工事を完了
四。 同年3月23日─三住建設が「載荷試験報告書」をハウスプラスに提出
3月1日に旭建から受け取った資料を、三住建設はなぜか手元に保管し続けました。その一方で、三井不動産がハウスプラスから確認済証を取得。さらに杭工事の完了を待って、三住建設が「杭載荷試験報告書」をハウスプラスに提出したのです。
この「いわくありげなプロセス」は何を意味しているのでしょう。三井不動産と三住建設が、杭工事が完了するまで、載荷試験報告書を確認検査機関(日本ERI、ハウスプラス)の目に触れないように工作し続けていた──と感じないでしょうか。
杭工事が完了してから約2週間後の3月23日に、ハウスプラスは載荷試験報告書をようやく受け取りました。同社でLaLaを担当した確認検査員は、職務に忠実であれば、「困ったなぁー」と悩んだことでしょう。
その確認検査員は、建基法的には、「載荷試験報告書の受理」→「確認済証を交付」という手続きを踏まなければなりませんでした。しかし、確認済証を交付した後に載荷試験報告書が届いたのですから、その瞬間に自分が「違法行為」を犯してしまった事実に気が付いたはずなのです。
ちなみに、LaLa横浜管理組合は今年1月に、三住建設に次のように質問しました。「ハウスプラスは、載荷試験報告書について、何か指摘していましたか?」。返って来たのは「何の指摘もありませんでした」という返事でした。
ハウスプラスの確認検査員は、厳しい現実から目を背けるしかなかったのでしょう。
■「タイム・イズ・マネー」の悪しき実例
「LaLa横浜」における「実際の行動」と「建基法が定める行動」の2種類を、「工期短縮」という観点から比較してみましょう。
【実際の行動(違法)】
確認済証の交付から杭工事の完了まで約3カ月。
一。 販売開始─2006年6月
二。 竣工─2007年12月
こちらは竣工が2007年12月だったため、遅くても2008年2月には入居が可能なので、4月の新学期にゆうゆう間に合います。
【建基法が定める行動(合法)】
載荷試験の準備から報告書の作成まで約4カ月。
確認済証の交付から杭工事の完了まで約3カ月。
合わせて約7カ月。
一。 販売開始─2006年10月(予想)
二。 竣工─2008年4月(予想)
こちらは竣工が2008年4月にずれ込むため、入居が可能になるのは6月ころになります。三井不レジは「引き渡し日の延期」に伴って、マンション購入者に違約金を支払う義務が生じたはずなのです。
分譲マンション事業で大切なのは「タイム・イズ・マネー」という格言です。設計期間、確認済証を所得するための期間、施工期間が長くなれば、設計費や施工費が高くなるだけではなく、販売経費もかさんでしまいます。さらに入居時期が遅れると、信用がガタ落ちするだけではなく、違約金の問題も生じます。
しかし確認検査機関から便宜供与を受けて、載荷試験報告書の提出を後回しにしてもらえると、事情は一変します。工期を約4カ月も短縮できるのですから、もう心配は無用です。
■国交省杭対策委員会の判断は?
傾斜マンション「パークシティLaLa横浜」で秘密裏に行われた、「違法行為」と「脱法行為」をきっかけにした複雑怪奇な問題は、どのような結末を迎えるのでしょうか。
そもそも確認申請に必須な書類が不足していた場合には、確認済証が交付されることはありません。また確認済証に正当性がなければ、杭工事や建築工事を行うことは許されません。さらに完成した建物の販売も許されません。
これらすべてを法的に解決するためには、事業主である三井不レジがすべての住戸を買い取った後に、全棟を解体するしかありません。
以上を前提にすると、同社が2015年10月31日に、「LaLa横浜」の管理組合に対して、「全棟全住戸の建替を基本的な枠組み」とする解決案を提示したことの真意を、初めて理解することができます。
この解決案に対しては、いろいろな憶測が流れました。「ブランドを守るために必死なのだろう」、「必要な費用を三住建設、日立ハイテク、旭建に押しつける見通しがついたためだろう」――等々。
また同業他社からの批判もありました。「マンション業界の前例に比べて慰謝料(迷惑料)が手厚すぎる」、「株主代表訴訟を起こされるリスクがある」。
どのような声があったとしても、それは枝葉末節に過ぎません。物事の根本は確認検査機関の「違法行為」と、事業主および設計・施工者の「脱法行為」にあるわけですから、結局のところ「LaLa横浜」は解体するしかないのです。
国土交通省「基礎杭工事問題に関する対策委員会」の「中間報告書」には、「本報告書はこれまでの検討を踏まえた再発防止策に関する提言をとりまとめたものであり、横浜市のマンション事案の責任の所在を明らかにすることを目的に行うものではない」と書いてありました。
しかし、建築基準法の根幹を揺るがす「違法行為」と「脱法行為」の発覚に伴って、状況はガラリと変わりました。
杭対策委員会は、建築確認制度そのものを崩壊させようとする、LaLa横浜の「違法行為」と「脱法行為」を見逃すことはできないと思うのですが、さて。
【参考資料】
1. 旭化成・外部調査委員会「中間報告書」(2016年1月8日)
杭工事の日程、「杭載荷試験報告書」と建築確認の関係を詳述
2. 三井住友建設「基礎杭の重錘落下方式による急速載荷試験報告書」(2006年3月)
3. 国土交通省・基礎杭工事問題に関する対策委員会「中間とりまとめ報告書」(2005年12月25日)
4. 日本建設業連合会・地盤基礎専門部会「高支持力埋込み杭の根固め部の施工管理方法の提案」(2013年4月)
5. 三井不動産「三井不動産グループにおけるマンションのブランド戦略について」(2002年4月26日)
6. 細野透「杭問題で三井住友建設に不利な新証拠!」
7. 同「傾斜マンションを全棟建替に追い込む4つの不安」
(細野透:「危ない建築」と「安全な建築」の境目を分けるもの)
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