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期待は禁物!「電力自由化」のまやかし〜結局、国民がソンして官僚が栄えるだけじゃないか?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47556
2016年01月26日(火) 町田徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■過大な期待は禁物
今年4月1日に始まる電力の小売り自由化に向けて消費者の囲い込み合戦が過熱し、新聞や雑誌、テレビでも「最大〇%お得!」とか「使えば使うほど安くなる」と消費者を煽るかのような特集が氾濫している。
長年、実質所得が伸び悩む中で、支出を抑えたいというのは庶民の切実な思いだ。
しかし、過大な期待は禁物である。氾濫する新料金プランのほとんどは、首都圏や関西エリアのヘビーユーザーをターゲットにしたものだ。甘言につられて早々に契約すると、“2年縛り”などの制約を受け、来年4月以降さらに拡大する競争の恩恵を受けられないリスクが大きい。
国営・東京電力による民業圧迫の問題も深刻である。福島原発事故で国策救済を受け、今なお巨額の資金支援を受けている東電が、その返済に充てるべきおカネ、つまり税金を流用して値引き合戦を展開しているからだ。この問題は、官僚が電力市場を統制する端緒にもなりかねない。
電力の小売り自由化は、これまで全国10社の電力大手がエリアごとに地域独占してきた発電、送配電、小売りの3業務のうち、小売りを全面的に自由化しようというものだ。
小売りの自由化が始まったのは2000年のこと。最初に2000kw以上の大口向けが解禁され、その後、対象が商用全般に拡大された。ただ、家庭向けについては電力各社の抵抗が激しく、自由化しないことになっていた。
ところが、東日本大震災の翌年にあたる2012年に政府は方針を大転換、今年4月から家庭向けも自由化に踏み切ることにした。その背景にあったのは、電力業界の盟主だった東電が、福島第一原子力発電所事故などが原因で大規模な計画停電を実施して社会を混乱させたうえ、経営破綻に瀕して国営化されることになり、かつての政治力を失ったこと。
政治家を味方につけた東電に敗れ、苦渋を味わい続けていたエネルギー官僚が、絶好の好機と巻き返しに出たのである。このため、電力業界では、今回の自由化を「官僚たちの意趣返し」と呼んでいる。
■焦って選ぶと損をする
1月下旬の段階で、小売り参入を表明している企業は約130社。顔触れも、ガス、石油、携帯電話、ケーブルテレビ、旅行、コンビニなど多彩だ。
この中で、ガス、石油といったエネルギー関連企業には、電力会社とガチンコの競争を展開しようというところが多い。もともと自前で火力発電所を所有していたり、海岸沿いに広大な土地を持っており発電所を増やしやすい事情があるからで、いずれも電力自由化を業容拡大の好機と捉えている。
これに対し、携帯電話、ケーブルテレビ、旅行、コンビニなどは自社流通網で扱える商品の多様化を主眼としている。既存商品と電力をセットにすることによって、自社離れを防ぐ “囲い込み”も重要なポイントである。したがって電力の“仕入れ”は既存の電力会社に依存し、“売り子”として参入するケースがほとんどだ。
再生可能エネルギーで発電した電気だけを売るとか、地産地消で賄うなど、期待する声の多いビジネスモデルを実現している例は、今のところほとんど見られない。
率直に言って、料金プランは先に自由化が進んだ携帯電話並みか、それ以上に複雑でわかりにくい。様々なポイント制や他のサービス・商品とのバンドルがその傾向に拍車をかけている。
新規参入会社が注力しているのは、人口減少を迎える国内で例外的に有望な市場とされている都市部だ。特に、2020年のオリンピックまでは人口が増加するとみられている首都圏を重視する企業が多い。割引率は、東電の既存料金との比較で1〜5%程度。割引幅が大きいのは、月額2万円以上の電気代を支払う層となっている。
換言すると、地方に住む人や、都市部でも電気使用量が少ない人向けに、メリットが大きいプランを提示しているところは見当たらない。
また、エネルギー市場では、来年4月からガスの小売り自由化も予定されている。このため、既存の電力会社も含めてポイント還元などを売り物に早期の契約獲得に躍起のところが多い。
が、これらの契約にはほぼ漏れなく2年以内の契約解除にペナルティを科す条項が設けられている。
つまり、早期の契約には、来年4月のガスの小売り自由化以降に登場するであろう、ガスと電気の両方を絡めた、もう一段お得なプランへの乗り換えが、ペナルティの支払いなしには出来なくなるリスクが伴う。焦って電力会社を変えることは賢明な選択と言えない。
■官僚が絵を描いた「再編のシナリオ」
電力自由化には、消費者の未来に関わる大きな問題もある。国営企業・東電がグループで小売り自由化という名の値引き競争に参戦して、民業を圧迫している問題だ。
東電はいまだ過半数(約54%)の出資を国から受けているばかりか、4〜5兆円の資金供与を受けている。そして、可能な限り速やかに収益の中から返済することになっていた公的資金(税金)を値引き競争に投じているのだ。
その中には、今年度中の契約を条件に1万2000ポイントの付与(事実上、1万2000円のキャッシュバック)をうたい文句にするプランまである。これらは、従来の東電の営業エリアに新規参入したガス、石油会社や、他のエリアで東電を迎え撃つ電力会社にとって、深刻な経営問題になるだろう。体力を消耗し、いずれ国営・東電や他の電力会社に吸収されても不思議はない。
東電と同様、かつて国策救済を受けた日本航空(JAL)が公的資金を完済し、上場を果たして数年が経過した今も、値引き競争はもちろん、新規路線への就航や新型機の導入まで厳しく制限されていることと比べても、その異常さは明らかだ。
今回の小売り自由化について、エネルギー官僚たちは表向き、「消費者の選択の自由の拡大だ」とか「料金の抑制効果が期待できる」などと広言している。が、実はその裏で、国営・東電を足場に業界再編を進めて、電力市場への官僚統制を進めようという狙いをもっている。
筆者の取材に、「電力、ガス、石油会社を2、3グループに集約すれば、バイイングパワーが付いて原油市場を牛耳る石油メジャーとの交渉が有利になる」(ある官僚OB)と明かし、そうした再編を肯定する者もいる。
国内で自由化に成功した例といえば、NTTの分割・民営化と並行して行われた通信の自由化が挙げられる。電気通信白書によると、通信市場では過去30年弱の間に、NTTグループの売り上げが民営化前の2.1倍になっただけでなく、新たに参入した通信事業者全体の売り上げも20兆円超と4.1倍に膨らんだ。通信機器やコンテンツを含めたICT市場の規模は2.4倍の100兆円となっている。
市場拡大の中で、1985年を100とした指数で通信料金をみると、固定電話は60以下、携帯電話は20以下に低下した。
■そして「エネルギー官僚」が栄える
一方、今回の電力自由化では、成長が料金低下を促し、料金低下が成長に拍車をかけるような好循環は起きにくい。
人口減少で発電所や送配電網の新設が期待しにくい中、「企業のマージン圧縮合戦」(電力会社)になるとみられるのが、今回の電力小売り自由化だ。
それだけに、税金を値引きの原資とする国営・東電の存在は、採算確保に追われる他の電力会社やガス、石油会社にとって悪夢と言える。
しかも、国営・東電の料金プランは、はっきりとライバルを狙い打ちにしたものだ。4月から適用される「プレミアムプラン」で基本料金の契約を結び、毎月550kWhを使うと仮定すると、月額料金は関東が1万6864円、中部が1万5807円、近畿が1万4423円となっている。
東電は、これまで市場を独占してきた関東でプライスリーダーの地位にあり、値引き競争を抑えようと目論んでいる。一方、新規参入する中部や近畿では低価格を売り物にして、販路拡大を狙っているのだ。
ただ、東電にとって、中部電力は海外からの燃料調達で合弁会社を設置した、資本提携先だ。そこで、中部電力の本拠地である中部エリアでは値引き幅を抑え目にしている。これに対して、関西電力は、関東に本格的な攻勢をかける構えをみせており、最大のライバルの一つだ。このため、関西電力の本拠地である近畿地方では大胆な安売りを仕掛ける設定にしている。
発電に占める原発比率の高い関電は、高浜、大飯両原発が再稼働すれば料金を引き下げて、東電の浸食を食い止めたいという。しかし、同社の財務体質は、原発停止中に大幅に悪化した。税金を投入できる国営企業との新たな消耗戦が、同社にとって重い負担になることは間違いない。
「選択の自由を増やす」と称して、水面下で電力、ガス、石油会社の体力を奪い、統制を進める――。この国で将来も栄えるのは、こうした目論みを持つ、エネルギー官僚たちだけかもしれない。そんな不安の付きまとう電力小売りの自由化なのである。
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