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[真相深層]「結局は増税?」企業警戒
国際課税新ルール、強まる懸念 主要国、はや足並み乱れ
日米欧に新興国を加えた44カ国がまとめた国際課税の新ルールに日本企業が揺れている。行き過ぎた節税策を防ぐ狙いだが、米欧中などの解釈の不一致を残したままの合意だ。折しも世界景気の減速で各国政府とも税収確保に躍起になりそうな時期。日本と関係国の税の二重取りが発生し事実上の「増税」になるとの懸念がくすぶる。
各国の法律次第
「うちの倉庫が課税対象になったらどうしよう」。中国に部品の倉庫を持つある大手メーカーの税務担当者は年明け早々から不安げな表情だ。
昨年秋に固まった国際課税の新ルールでは、進出国に倉庫を持っていれば、倉庫から発生する利益に進出国が法人税をかけられるようになる。倉庫があるだけでは事業をしているとみなされず、米アマゾン・ドット・コムのような世界展開するネット通販業者に適正に課税できなかったこれまでとは変わる。
だが、新ルールはどのような倉庫を課税対象にするか明確にしていない。日本と中国で事業をする会社が中国に部品倉庫を持つ場合、中国当局が部品倉庫を事業の根幹とみなせば中国での活動がそれだけ多いとみなされて課税額が増える。
日本への納税はその分減るはずだが、国税庁が中国当局の主張を認めなければ、日本でもそれまでと同額の納税をすることになり、合計の税負担は増える可能性がある。
新ルールは国際協調を確認した指針で、拘束力のある国内法にどう反映させるかは各国次第だ。経済産業省の有識者会議は昨秋の報告書で「新ルールのとらえ方は各国の立場で大きく異なる。調和しないと企業が影響を受ける」と指摘した。
44カ国が新ルールに合意したのは昨年10月。ペルーで開いた主要国財務相の共同記者会見で早くもその兆しが出ている。
「G20に加盟していない国も利益を得られるようにすべきだ」。中国の楼継偉財政相が前面に押し出したのは新興国や途上国から見た「税逃れ」の防止だった。
この発言を聞いた大手税理士法人の幹部は思わず顔をしかめた。「中国は自国の利益しか考えていない。新ルールを拡大解釈して税金を取りにくる。日本企業は気をつけないといけない」。中国はすでに外国企業からより多くの税金を取れるように国内法の改正に着手しているという。
いまでも日本企業が行き過ぎた徴税で困っているのは新興国だ。新ルールで新興国の徴税がさらに厳しくなれば日本企業には厄介だ。
新ルールにはもう一つ懸念がある。多国籍企業の税逃れに国際協調で立ち向かうという触れ込みだが、44カ国の結束が強いとは言いがたい。肝心の先進国同士の足並みが大きく乱れている。
対立でしこり
英国は昨春、税逃れを封じる決め手として「迂回利益税」と呼ぶ税金を独自に導入した。企業の国外取引を英当局が検査し利益を不自然に外国に移していると判断すれば重税を課す。主要国で税逃れ対策を詰めているさなかに見切り発車で新税を導入したことで、英国は猛反発を受けた。
「勝手なことをするな」。ルー米財務長官がオズボーン英財務相を一喝した場面もあったとされる。そもそも新ルールで税負担が増えるのは節税策に熱心な米国系大企業が多い。米国は渋々新ルールにお付き合いしている面があった分、英国の独自路線が目に余ると感じたようだ。
英国の振る舞いに業を煮やしたのを機に、米国が枠組みから脱退する可能性もささやかれた。現時点では踏みとどまっているが、しこりは残る。
グローバル化が急進展したこの30年。企業が国を選ぶようになった結果、政府と企業の税を巡る攻防は企業優位に傾いた。世界各国で法人税率引き下げが進む一方、各国の税率の差を悪用した税逃れも横行した。
主要国の連携をテコに多国籍企業の税逃れを防ぐ「国家の逆襲」は「グローバルに協調してはじめて真価が発揮される」(麻生太郎財務相)。結束がほころべば節税に腐心する一部企業はそこを突く。まじめにやっている企業が増税になり、新たな税制のズレを利用した税逃れを一段と助長する展開になりかねない。
(江渕智弘)
[日経新聞1月22日朝刊P.2]
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