>「デフレではないという状況を作りだすことができたが、デフレ脱却というところまで来ていないのも事実」という話になる。筆者には、意味がさっぱり理解できない 1月の月例経済報告は、今後の留意事項として「金融資本市場変動の影響」を追記するなど、中国経済失速のリスクを警戒する内容となった。原油安を背景に日銀が掲げる物価上昇目標2%の達成は難しく、政府の「デフレ脱却宣言」は遠い。政府内では早くも、景気刺激のための経済対策を求める声が出始めている。(山口暢彦) 安倍晋三首相は20日、政府与党連絡会議で「わが国経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」と強調した。 甘利明経済再生担当相も同日の記者会見で「(デフレ脱却のため)平成27年度補正予算の迅速な執行に向け、政府を挙げて取り組む」と述べ、当面は補正予算を早期に執行して景気の下支えをしていく考えを示した。 しかし、昨年12月に閣議了解された政府経済見通しでは、28年度の物価上昇率は総合で1・2%。株安、原油安という事態になる中、政府はデフレ脱却の判断に物価目標達成は必須ではないとの見方を強調し始めている。 甘利氏は4日の会見で、需給ギャップ(供給過剰の大きさ)とユニットレーバーコスト(生産1単位あたりの人件費)など複数の指標を組み合わせて「総合的に判断する」とした。 こうした指標が安定的にプラスになれば、デフレ脱却と判断する。その場合はまず、毎月公表される月例報告に盛り込まれ、首相が対外的に「宣言」する公算が大きい。政府が13年3月に戦後初のデフレ入りを認定した際も、月例報告に明記した。 それでも、市場では「当面のデフレ脱却は難しい」との見方が多い。 判断基準の一つに挙がる需給ギャップの供給過剰解消についても「個人消費、設備投資といった内需の底上げが必要になる」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)が、中国経済への不安感を背景に、経営側は賃上げや投資に対し慎重になっている。 今夏の参院選を踏まえ、政府は景気刺激のための経済対策を経済財政諮問会議などで議論する方向だ。 ただ、個人消費も伸び悩む中、新たな経済対策がどこまでの効果を生み出せるかが課題になる。肝心の経済政策の「司令塔」甘利氏に金銭授受疑惑が浮上するなど先行きを見通せない状況もあり、来年4月の消費税増税の再延期という可能性も出てくる。 (はりかえ済み) 内閣府が発表した1月の月例経済報告は、先行きの留意事項として「金融資本市場変動の影響」を追記するなど、中国経済失速などのリスクを警戒する内容となった。原油安を背景に、日銀が掲げる物価上昇目標2%の達成は難しく、政府の「デフレ脱却宣言」は遠い。政府内では早くも、景気刺激と内需底上げのため経済対策を講じるべきだとの声が出始めている。 安倍晋三首相は今月4日の年頭会見で「デフレ脱却というところまで来ていないのは事実だ」と述べた。 昨年12月に閣議了解された政府経済見通しでは、平成28年度の物価上昇率は1・2%。菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官は19日の記者会見で「市場の動きに右往左往すべきじゃない」とした上で、「成立した27年度補正予算を速やかに実行に移すことを大事にしたいし、日銀と政府がしっかり連携したい」と強調した。 一方で政府は、デフレ脱却の判断に物価目標達成は必須ではないとの見方を強調し始めている。 甘利明経済再生担当相は4日の記者会見で、需給ギャップ(供給過剰の大きさ)とユニットレーバーコスト(生産1単位あたりの人件費)など複数の指標を組み合わせて「総合的に判断する」と述べた。 こうした指標が安定的にプラスになれば、デフレ脱却宣言と判断する。その場合はまず、毎月公表される月例報告に盛り込まれ、首相が対外的に「宣言」する公算が大きい。政府が13年3月に戦後初のデフレ入りを認定した際も、まずは月例報告に明記した。 甘利担当相は「28年中にもデフレ脱却宣言ができれば最高だ」とも述べた。 しかし、市場では「当面のデフレ脱却は難しい」との見方が多い。 判断基準の一つに挙がる需給ギャップの供給過剰解消についても「個人消費、設備投資といった内需の底上げが必要になる」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)。ただ、中国経済減速に対する不安感を背景に、経営側の賃上げや投資の姿勢は慎重だ。 今夏の参院選や、来年4月の消費税率10%への引き上げを踏まえ、政府内では、景気浮揚のための経済対策を経済財政諮問会議などで議論すべきだとの声が浮上している。 ただ、個人消費も伸び悩む中、新たな経済対策がどこまでの効果を生み出せるかが課題になる。(山口暢彦) http://www.sankei.com/economy/news/160120/ecn1601200066-n1.html 震災直後の道路復旧工事における「談合」は本当に悪なのか?=三橋貴明 2016年1月21日ニュース 1月20日、連日続く大寒波も「暖かく」感じてしまうような、背筋が凍りつくほどに「寒い」ニュースが報じられました。信じがたい話ですが、震災直後の道路復旧工事が「談合である」と公正取引委員会が問題視し、強制捜査が行われると言うのです。(三橋貴明) 記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年1月20日号より ※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです 震災直後の工事で談合容疑、強制捜査〜それは本当に悪なのか? 2011年3月11日、東日本大震災発生。太平洋沿岸の高速道路が津波により、あちこちで分断されてしまいます。東京方面から東北へ救援部隊を派遣しようにも「チャネルが破壊された」事態に至りました。特に、太平洋沿岸を走る国道45号が通行不能になったため、大量輸送を伴う救援活動が、ほぼ不可能となってしまいます。 国土交通省は被災地の各県や自衛隊、土木・建設事業者と協力し、緊急輸送道路を「くしの歯型」に切り拓くことを決定しました。最も被害を受けた海岸沿いの国道45号の復旧は後回しにし、まずは東北自動車道と国道4号線を優先的に通行可能とする。その上で、沿岸被災地に「くしの歯」として、救援活動のためのチャネルを確保することにしたのです。 「くしの歯作戦」第1ステップは、東北自動車道と国道4号という縦軸ラインの確保でした。総勢52の土木・建設業者のチームが投入され、被災地への啓開作業が始まります。啓開とは、災害時における一次対応で、 「災害発生→啓開→応急復旧→本復旧→復興」 という、一連の流れの基礎となる工程になります。 第一ステップで縦軸(南北)のラインが回復し次第、第二ステップとして三陸被災地域へのアクセスとなる「横軸」の啓開が進められました。東北自動車道、国道四号から東へ「くしの歯」を伸ばしていき、救援部隊を送り込むためのチャネルが確保されていきます。 早くも3月15日時点で、15ルートの東西ルートが通行可能となりました。翌16日からは、一般車両も通行できるようになります。 くしの歯作戦第三ステップは、国道45号の啓開でした。第二ステップ完了後、休むことなく作業は続けられ、3月18日までに国道45号の97%が通行可能となります。 土木・建築業者の方々の不眠不休の努力により、世界が驚くほどの速さで被災地への物流ルートが確保され、救援活動が本格的に始まりした。その後も、高速道路の復旧作業は続きます。 信じがたい話ですが、上記の復旧作業が「談合である」と公正取引委員会が問題視し、強制捜査が行われようとしています。 東日本大震災で被災した高速道路の復旧工事を巡り、談合の疑いが持たれている事件で、談合は、入札に参加した大手道路舗装会社4社が調整役となって行われた疑いがあることが、関係者への取材で分かりました。東京地検特捜部と公正取引委員会は、20日にも独占禁止法違反の疑いで強制捜査に乗り出すものとみられます。 関係者によりますと、談合の疑いが持たれているのは、国の復興予算を財源に、東日本高速道路東北支社が発注し、震災後の平成23年8月から9月にかけて入札が行われた、東北自動車道や常磐自動車道など合わせて12件の復旧舗装工事です。 工事は12の会社がそれぞれ1件ずつ落札し、落札の総額は176億円余りに上っていました。 関係者によりますと、談合は、入札に参加した大手道路舗装会社の「NIPPO」や「前田道路」「日本道路」「世紀東急工業」の大手4社の東北支店の担当者が調整役となって行われた疑いがあるということです。 予定価格に対する平均の落札率は94.7%で、震災前の平成22年度の高速道路の舗装工事より10ポイント以上高くなっていました。 関係者によりますと、一部の会社は公正取引委員会などの調べに対し、談合を認めているということで、特捜部と公正取引委員会は20日にも独占禁止法違反の疑いで、入札に参加した道路舗装各社を捜索し、強制捜査に乗り出すものとみられます。 出典:被災の高速道工事で談合か きょうにも強制捜査へ – NHKニュース 当たり前ですが、大震災という非常事態が発生した際に、平時同様に呑気に「公共入札」などやっていられるはずがありません。 特定の道路会社が「調整役」として、各業者に仕事を割り振り、とにもかくにも速やかに道路を復旧させるという現場の努力がなされたとしても、別に不思議でも何でもありません。というか、むしろその手の調整が行われることは当たり前としか思えません。 何しろ、当時は道路復旧が人命にかかわる非常事態だったのです。被災者の命を守るために、現場の方々が相談し、最も速やかに道路復旧が可能な形で仕事を割り振ったとして、罪になるとでもいうのでしょうか。 Next: 次の震災では早期の道路復旧が不可能に?罪になると公取委は考えている 罪になる。と、公正取引委員会は考えているようです。 言葉を選ばずに書かせてもらうと、「狂気」です。 今後、強制捜査に入った公正取引委員会と東京地検特捜部がいかなる結論に至るのかは分かりませんが、もしも「震災時の道路復旧のための仕事の割り振り」までもが独占禁止法違反ということで刑事罰の対象になってしまうのでは、今後、我が国がまたもや大震災に見舞われた際には、東日本大震災のような早期の道路復旧は不可能になります。 道路という物流の胆がいつまでたっても復旧せず、被災地で国民が死んでいく事態になりかねないでしょう。 怖いのは、各紙の報道を見る限り、 「震災発生の復旧における談合が本当に悪なのか?」 といった論調が全く見られない点です。 そもそも、日本の土木・建設の供給能力を維持し、かつある程度の競争を維持するために、「指名競争入札+談合」というシステムが悪であるなどとは全く思えません。日本が自然災害大国である以上、各地に土木・建設企業が存続してもらわなければ困りますし、かつ競争により生産性向上に努めて貰わなければなりません。 「各地域に企業を存続させる」と、「企業間競争により土木・建設分野の生産性を高める」の二つを両立させるために、「指名競争入札+談合」という知恵を先人たちは生み出したのですが、我が国はそれを「市場競争に反する(反しますが)」という単純かつ愚かな考え方に基づき、破壊してきました。 挙句の果てに、震災時の仕事の割り振りまで「談合」ということで公正取引委員会が問題視する。さらに、その異常性について誰も疑念を抱かない。 このままでは、普通に我が国は「亡国」に至るでしょう。 とはいえ、日本国民であるわたくしにとっては他人事ではありませんので、あえて声を大にして叫びたいと思います。 震災といった非常事態発生時に、速やかな道路啓開のために業者間で仕事を割り振り、調整をすることは、当たり前の話である、と。 それを処罰しようとする考え方自体が、異常極まりないのです。 【関連】安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明 http://www.mag2.com/p/money/7120/2 もはや開き直り?竹中平蔵氏がトリクルダウンを否定した真意=三橋貴明 2016年1月10日ニュース さて、前回の続きです。前回は、単にトリクルダウン仮説について解説しただけで、竹中氏の「真意」には踏み込みませんでした。そもそも、竹中平蔵氏はなぜ「トリクルダウンはあり得ない」と語ったのか?(三橋貴明) 記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年1月7日号より ※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです 富裕層に傾注した政策を進める際の「言い訳」がトリクルダウンだ 竹中氏「トリクルダウンはあり得ない」発言に謝罪のニュアンスはない 安倍総理は、年頭の記者会見において、フジテレビの西垣記者の「選挙に向けてこの半年、国会が今日から開く中、どういった目標を掲げていかれるお考えでしょうか」という質問に対し、 「将来の老後に備えて、あるいは子育てのためにも使っていくことになるわけでありまして、これはまさに成長と分配の好循環をつくっていくという新しい経済モデルを私たちは創っていく。その「挑戦」を行っていかなければいけないと思います」 と答えました。 「分配」という言葉を総理が使ったのは、初めてのような気がいたします(少なくとも、わたくしの記憶にはありません)。 わたくしは昨年末に刊行した徳間書店『2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本』において、 安倍総理は2015年1月28日の参院本会議で、民主党の質問に答えるかたちで、「安倍政権としてめざすのはトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現だ」と、トリクルダウンを否定した。 だが、実際に安倍政権が推進している政策は、消費税増税をはじめとする緊縮財政にせよ、法人税の実効税率引き下げにせよ、あるいは様々な構造改革にせよ、明らかに特定のグローバル投資家を利する政策ばかりだ。 グローバル投資家に傾注した政策を推進しつつ、トリクルダウンを否定したため、筆者はむしろ総理が国内の所得格差の拡大を歓迎しているかような印象を受けたものである。 すなわち、富裕層やグローバル投資家、大企業を優先する政策を打つ政権は、言い訳としてトリクルダウン理論を持ち出すのだ。法人税減税や消費増税、構造改革など、国内の所得格差を拡大する政策を繰り出しつつ、トリクルダウンすら否定するのでは、余計に問題ではないだろうか。 安倍総理が、そこまで理解した上で、トリクルダウンを否定したのかは不明だが。 出典:『2016年 中国・ユーロ同時破綻で瓦解する世界経済 勝ち抜ける日本』(P107〜) と、書きました。 『朝まで生テレビ』での様子を見た限り、竹中氏は別に、「トリクルダウンはあり得ないんです。ごめんなさい」というニュアンスで「トリクルダウンはあり得ない」と語ったわけではないわけです。 トリクルダウンなど起きえない。政府の政策で富が「滴り落ちる」のを待っている方が悪い、というニュアンスでトリクルダウンを否定したのでございます。すなわち、格差肯定論としてのトリクルダウンの否定なのです。 Next: 本音は「トリクルダウンなんてあるわけない、負けた奴は自己責任 そもそも、トリクルダウン仮説は民主主義国家において、一部の富裕層や法人企業に傾注した政策をする際、有権者である国民に「言い訳」をするために編み出されたレトリックなのです。 「富裕層や大手企業を富ます政策をやるけど、いずれ富は国民の皆さんに滴り落ちるので、安心してね」というわけでございます。 もっとも、トリクルダウンは別に民衆主義国の専売特許というわけではなく、中華人民共和国のケ小平が改革開放を始める際に連呼した「先富論」も、まさにトリクルダウン仮説そのものでした。 つまりは、政治家がグローバリズム、新自由主義的な構造改革、緊縮財政を推進し、国民の多数を痛めつける際に「言い訳」として持ち出されるのがトリクルダウン仮説なのです。 竹中氏がトリクルダウンを否定したのは、構造改革を推進するに際し、国民に言い訳をする必要性を感じなくなったのか、あるいは言い訳するのが面倒くさくなったのかのいずれかでしょう。 「面倒くせえな。トリクルダウンなんてあるわけないだろ。政府の政策で、富める者はますます富み、貧しい者はますます貧困化し、それでいいんだよ。どうせ、負けた奴は自己責任なんだから」 と、一種の開き直りで「トリクルダウンはあり得ない」と竹中氏が発言したと確信しています。 とはいえ、総理が「分配」と言い出したということは、竹中氏はともかく「政治家」にとっては、「トリクルダウンすらない構造改革、富裕層・大企業優遇政策」は、有権者に説明がつかないということなのだと思います。 「竹中氏がトリクルダウンを否定した。へ〜え。つまり、あんた(国会議員)たちは富める者がさらに富み、貧困層はますます貧困化する政策を肯定するんだな?」という突っ込みを受けるのは、安倍総理とは言えどもきついでしょう。 2016年は、政治の季節です。安倍政権の構造改革、緊縮財政路線を転換させるためにも、本日と昨日のトリクルダウン関連のエントリーにおける「レトリック」をご活用下さいませ。 【関連】安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明 【関連】安倍政権のトンデモ試算〜露骨な「TPPプロパガンダ」が始まった=三橋貴明 http://www.mag2.com/p/money/6972 安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明 2016年1月7日 あの竹中平蔵氏も旗振り役を担ってきた「トリクルダウン」とは、「富裕層や大企業を豊かにすると、富が国民全体にしたたり落ち(=トリクルダウン)、経済が成長する」という仮説です。しかし三橋貴明氏は、いまの日本でこの「トリクルダウン」が成立する可能性は限りなくゼロに近いと指摘します。 記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年1月6日号より ※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです 現在の日本においてトリクルダウン前提の経済政策は間違っている 竹中平蔵氏が手のひら返し「滴り落ちてくるなんてあり得ないですよ」 さて、今さらですが、トリクルダウンとは何でしょうか? トリクルダウンとは、「富裕層や大企業を豊かにすると、富が国民全体にしたたり落ち(=トリクルダウン)、経済が成長する」という「仮説」です。トリクルダウン「理論」と主張する人がいますが、単なる仮説です。 上記は今一つ抽象的なので、より具体的に書くと、「富裕層減税や法人税減税をすると、国内に投資が回り、国民の雇用が創出され、皆が豊かになる(=所得が増える)」となります。 要するに、グローバリズム的な、あるいは新古典派(以前は古典派)経済学的な「考え方」に基づき、所得が多い層を優遇しようとした際に、政策を「正当化」するために持ち出される屁理屈なのでございます。 ちなみに、大恐慌期のアメリカでは、財閥出身の財務長官アンドリュー・メロンが「法人税減税」を推進した際に、まんまトリクルダウン仮説が用いられました。 さて、現代日本において、トリクルダウンで安倍政権の法人税減税に代表される「グローバル投資家」「グローバル企業」を富ませる政策を正当化していたのが、みんな大好き!竹中平蔵氏です。 テレビ朝日系の「朝まで生テレビ!」。「激論!安倍政治〜国民の選択と覚悟〜」と題した1日放送の番組では、大田区の自民党区議が「建築板金業」と身分を隠し、安倍政権をヨイショするサクラ疑惑が発覚。「今年初のBPO入り番組」とネットで炎上中だが、同じように炎上しているのが、元総務相の竹中平蔵・慶応大教授の仰天発言だ。 番組では、アベノミクスの「元祖3本の矢」や「新3本の矢」について是非を評価。冒頭、「アベノミクスは理論的には百%正しい」と太鼓判を押した竹中平蔵氏。アベノミクスの“キモ”であるトリクルダウンの効果が出ていない状況に対して、「滴り落ちてくるなんてないですよ。あり得ないですよ」と平然と言い放ったのである。<中略> 竹中平蔵氏がトリクルダウンの旗振り役を担ってきたのは、誰の目から見ても明らかだ。その張本人が今さら、手のひら返しで「あり得ない」とは二枚舌にもホドがある。埼玉大名誉教授で経済学博士の鎌倉孝夫氏はこう言う。 「国民の多くは『えっ?』と首をかしげたでしょう。ただ、以前から指摘している通り、トリクルダウンは幻想であり、資本は儲かる方向にしか進まない。竹中氏はそれを今になって、ズバリ突いただけ。つまり、安倍政権のブレーンが、これまで国民をゴマカし続けてきたことを認めたのも同然です」<後略> 出典:「トリクルダウンあり得ない」竹中氏が手のひら返しのア然 – 日刊ゲンダイ そもそも、トリクルダウンが成立するためには、絶対的に必要な条件が1つあります。それは、富裕層なり大企業で「増加した所得」が、国内に再投資されることです。前述の通り、トリクルダウンとは、富裕層や大企業の所得が「国内の投資」に回り、国民が豊かになるというプロセスを「仮定」したものなのです。 ゲンダイの説明も、かなり抽象的ですね。 「トリクルダウンは、富裕層が富めば経済活動が活発になり、その富が貧しい者にも浸透するという経済論」 まあ、それはそうなのですが、正しくは「富裕層が富み、国内に投資がされる」ことで経済活動が活発になるという話なのです。 すなわち、資本の移動が自由化されたグローバリズムの下では、トリクルダウンなど成立するはずがないのです。特に、デフレーションという需要不足に悩む我が国においては。 Next: いまの日本でトリクルダウンが成立する可能性は限りなくゼロに近い 富裕層減税や法人税減税で、「富める者」の可処分所得を増やしたところで、「グローバリゼーションで〜す」などとやっている状況で、国内への再投資におカネが回ると誰が保証できるのでしょう。誰もできません。 結局、企業は対外直接投資、富裕層が対外証券投資におカネを回すだけではないのでしょうか。特に、日本のように国内にめぼしい投資先がなく、国債金利が長期金利で0.26%と、異様な水準に落ち込んでしまっているデフレ国では。というか、国内における投資先がなく、民間がおカネを借りないからこそ、長期金利が0.26%に超低迷してしまっているわけですが。 無論、国境を越えた資本移動が制限されていたとしても、トリクルダウンが成立するかどうかは分かりません。減税で利益を受けた富裕層や企業が、国内に投資せず、増加した所得を「預金」として抱え込んでしまうかも知れません。 「いやいや、貯蓄が増えれば金利が下がり、国内に投資されるので、トリクルダウンは成立する」などと学者は反駁するのかもしれませんが、長期金利0.26%であるにも関わらず、国内の投資が十分に増えないデフレ国で、何を言っているの?頭、悪すぎるんじゃないの?という話でございます。現在の日本は、企業の内部留保までもが史上最大に膨れ上がっています。 お分かりでしょう。トリクルダウンが仮に成立するとしても、その場合は、 国境を越えた資本の移動が制限されている デフレではない と、最低2つの条件が必要になるのです。ところが、現実の日本はグローバル化を推し進めつつ、同時にデフレです。トリクルダウンが成立する可能性など、限りなくゼロに近いわけでございます。 そんなことは端から分かっていたし、何度も著作等で訴えてきたわけですが、残念ながらマスコミの主流は「トリクルダウン理論により、法人税減税は正しい」とう、「頭、悪すぎるんじゃないの?」理論が主流を占めていました。 少なくとも、現在の日本において、トリクルダウン前提の経済政策は「間違っている」と、全ての国民が認識する必要があるのです。 http://www.mag2.com/p/money/6935 デフレの原因は人口減少ではない〜人口変動とインフレ率の真実=三橋貴明 2016年1月17日
なぜ日本はデフレに突入したのだろうか。人口が減っているから?もちろん、違う。人口が減っているのは、別に日本だけではない。その上、日本の人口減少ペースは、世界の「人口減少国」と比べて、別に速いわけでも何でもない。(『週刊三橋貴明 〜新世紀のビッグブラザーへ〜』) きちんとデータを検証すれば誰にでも分かる「デフレの真実」 人口とデフレには何の関係もない なぜ日本はデフレに突入したのだろうか。人口が減っているから? もちろん、違う。平成バブル崩壊で国民が預金や借金返済を増やし、所得創出のプロセスにおいて消費・投資(=需要)が減り、誰か別の国民の所得が縮小している状況で、政府(橋本政権)が緊縮財政を実施したためだ。 ただでさえ需要や所得(同じ意味だが)が減っている環境下において、政府が消費税増税で国民の消費を減らし、自らも公共投資の削減を始めたわけだから、たまらない。 日本の需要不足は深刻化し、供給能力に対し需要過小となるデフレギャップ状況に突入。橋本緊縮財政の翌年(98年)から本格的にデフレーションが始まった。 デフレーションは例外なく、バブル崩壊と緊縮財政を原因として発生する。藻谷浩介氏をはじめとする「人口減少デフレ論者」たちには気の毒だが、人口とデフレは何の関係もない。 何しろ、人口が減っているのは、別に日本だけではないのだ。その上、日本の人口減少ペースは、世界の「人口減少国」と比べて、別に速いわけでも何でもない。 IMFのデータを用い、2013年から14年にかけて人口が減少した国々について、ペースを比較してみた。2015年はIMFの推計値である。 主要人口減少国の人口減少ペース比較(2000年=1) 日本の人口減少について騒ぎ立てているのが、バカバカしく見えてこないだろうか。日本の人口減少など、ジョージアやラトビア、リトアニア、ルーマニア、ブルガリア、アルバニアといった真の意味の「人口減少国」と比べると、誤差のようなものである。 ジョージア(グルジア)の人口動態とインフレ率から分かること 特に、ジョージアやラトビアは2000年と比較し、人口が15%超も減少している。日本で言えば、2000万人もの人口減少に見舞われた計算になる(実際の日本国の総人口の減少ペースは、毎年20万人強だ)。 ちなみに、「ジョージア」という国について聞きなれない響きを覚えた方が少なくないだろうが、以前は「グルジア」と呼ばれていた。コーカサス地方に位置する旧ソ連構成国の1つで、独立後は2008年に南オセチア州の帰属をめぐり、ロシアと戦争を繰り広げた硬派な国だ。 グルジアという呼称は元々は「聖ゲオルギオスの国」という意味だが、ロシア語名「グルーズィヤ」に由来している。というわけで、対ロシア戦争後に反ロシア感情が勃興し、グルジア政府(当時)が日本政府に対し国名表記の変更を要請したのである。2014年10月24日、日本の安倍晋三総理とグルジアのマルグヴェラシヴィリ大統領が会談し、国名の表記変更が決定された。 日本政府は、15年4月22日以降、グルジアについて「ジョージア」と表記している。 このジョージアであるが、世界で最も人口減少ペースが速い国として有名だ。ジョージアの人口が減っていっているのは、旧ソ連圏の国の共通課題である「少子“低齢”化」(少子高齢化ではない)に加え、さらに紛争で難民が多数出ているためである。 ジョージアの生産年齢人口比率はおよそ7割であるため、日本(60.8%)とは異なる形で人口減少が進んでいっていることが分かる。 というわけで、世界で最も急速に人口が減っているジョージアで「デフレーション」が起きているかどうか。日本のデータと並べて比較してみた。 Next: 日本以上の人口減少国、ジョージアでインフレ率が高い理由とは 日本以上の人口減少国、ジョージアでインフレ率が高い理由とは 日本とジョージアの人口(左軸、2000年=1)とインフレ率(右軸、%) 上図の通り、日本の人口が2000年比でほぼ横ばいであるのに対し、ジョージアは17%近く減っている。 それにも関わらず、インフレ率(CPIの対前年比変動率)は日本がマイナスもしくはゼロ近辺で推移しているのに対し、ジョージアは2012年を例外に、5%を超えるインフレが常態化している。2007年や2010年のジョージアのインフレ率は、何と10%を上回った。 人口減少デフレ論者たちは、この事実をいかに説明するのだろうか。 ジョージアのインフレ率が高い水準で推移しているのは、同国が供給能力の蓄積が不十分な発展途上国であり、国内外で紛争が継続しているためだ。要するに、供給能力の蓄積が不十分で、常時インフレギャップの状態にあるためなのである。 供給能力の蓄積とは、設備投資、人材投資、公共投資、技術開発投資の「四投資」が必要だ。ジョージアは投資が足りず、供給能力の蓄積という意味の経済力が小さいままなのだ。 ついでに書いておくと、ジョージアではバブル崩壊は起きていない。すなわち、供給能力を高める投資が不足し、バブル崩壊による需要縮小も起きていないために、ジョージアでは人口が激しく減少しているにも関わらず、インフレ率が高くなってしまうのだ。ただそれだけの話だ。 逆に、日本は供給能力の蓄積が十分な経済大国で、かつバブル崩壊と橋本緊縮財政により需要縮小に見舞われた。結果、供給能力が需要を上回るデフレギャップ状態に突入し、物価下落と所得縮小というデフレの循環が始まった。これまた、ただそれだけの話である。日本のデフレにせよ、ジョージアのインフレにせよ、人口とは無関係な経済現象である。 何を言いたいのか理解できない日銀 あるいは、人口減少デフレ論者たちは、それでも以下のように反論するかも知れない。 「日本の人口減少は生産年齢人口の減少だ。ジョージアとは違う」 日本銀行は2012年8月に「日本の人口動態と中長期的な成長力:事実と論点の整理」というレポートを出している。レポートで、日銀は、 わが国では、人口成長率の低下とともに物価上昇率も低下してきた。この点については、少子高齢化が予測を上回り続けるかたちで急激に進展する下で、中長期的な成長期待が次第に下振れるに連れて、将来起こる供給力の弱まりを先取りする形で需要が伸び悩んだことが、物価下押しの一因となってきた可能性がある。また、少子高齢化の進展に伴って消費者の嗜好が変化していく中で、供給側がこうした変化に十分対応できず、需要の創出が停滞すると同時に、既存の財やサービスにおいて供給超過の状態が生じやすくなったことが、物価の下押しにつながってきた可能性もある。(P2より) と、書いている。 一度読んだだけでは、日本銀行が何を言いたいのかさっぱり分からないだろうが、筆者の場合は何度読んでも理解できない。 「少子高齢化で需要が停滞した」と言いたいのは分かるのだが、途中のロジックは全くもって意味不明である。 Next: デフレという経済現象と人口が無関係であることは明らか デフレという経済現象と人口が無関係であることは明らか いずれにせよ、少子高齢化により引き起こされる「人口現象(減少ではない)」は、生産年齢人口比率の低下だ。生産年齢人口比率の低下は、国民経済を需要不足から供給能力不足へと移行させる。 実際、現在の我が国ではそのままの現象が起きており、一部の産業や地域で「人手不足」が顕著になり始めている。 人手不足が深刻化していくと、国民経済ではインフレ率が上昇していく。日本の生産年齢人口比率の低下が経済に与える影響は、「インフレ化」であって「デフレ化」ではないのだ。 すなわち、少子高齢化による生産年齢人口比率の低下という「人口現象」について、インフレ率上昇の理由にするのは分かるのだが、逆はあり得ないのである。 「生産年齢人口比率がインフレをもたらすなら、なぜ日本はデフレなのだ!」と、反駁されてしまうかも知れないが、もちろんバブル崩壊と橋本政権の緊縮財政により需要が縮小し、国民経済がデフレギャップ状態に陥ったためだ。他に、理由はない。 落ち着いてデータに基づき、プロセスを1つ1つ追っていけば、誰にでも理解できる話である。それにも関わらず、未だに「日本は人口が減っているからデフレ」という、単純かつ間違った理解をしている国民が多数派なのは、なぜなのだろうか。 推測だが、大東亜戦争敗北後にGHQが主導した「自虐史観」を植え付けられた世代を中心に、「日本のような国は衰退した方がいい」という価値観を持つ国民が少なくないのではないか。 その種の価値観を持つ国民にとっては、「日本は人口減少によるデフレで衰退する」と想像を巡らせることが「気持ちがいい」のではないだろうか。 ここまでくると、経済や政策というよりは心理学、カウンセリングの世界になるが、いずれにせよ日本のデフレという経済現象が「人口現象(=生産年齢人口比率の低下)」とは無関係であることを国民や政治家の多くが理解しなければ、我が国が再び経済成長路線を歩み始める日は訪れないだろう。 【関連】安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明 【関連】慰安婦20万人の虚構=『正論』元編集長・上島嘉郎 http://www.mag2.com/p/money/7053
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