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出がらしまで提供…コーヒー市場、なぜ不味くなりすぎて規模半減? 不毛な価格競争の末路
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20160124-00010001-biz_bj-nb&ref=rank
Business Journal 2016/1/24 07:00 文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表
「では、不毛でない値下げ合戦なら、いいのでしょうか?」
先日、筆者はある方からこのようなご質問を頂いた。利益を削って価格を下げて戦う「不毛な値下げ合戦」は避けるべきだ、という話をした後だった。
この質問には、価格戦略を考える上で重要なヒントが隠されている。そこで、まず「不毛な値下げ合戦」について考えてみたい。
価格競争で業界全体が利益を削り疲弊している状況が続くと、いずれ品質にも手を付けざるを得ない。たとえば1960年代に始まった米国コーヒー業界は、まさにそういう状況に陥っていた。その結果、コーヒーの出がらしを商品として提供するなど品質を下げて、顧客離れを引き起こした。当時米国人1人当たり1日3.12杯のコーヒーを飲んでいたが、40年後には1.5杯と半分以下になった。「米国のコーヒーは不味い」という評判が定着し、市場は半分以下になってしまったのだ。
値下げ競争は企業の「体力勝負」だ。スポーツの「体力勝負」は、体力の限界まで追い込むことで体力の限界値が徐々に上がる。しかし、利益や品質を削った値下げ競争の体力勝負においては、安くても低品質な商品を提供される顧客は徐々に離れ、企業の体力は徐々に失われていく。その先にあるのは企業の淘汰だ。行き着く果ては、まさに米国コーヒー市場が半減したように市場の大絶滅。だから「不毛な値下げ競争」なのだ。
幸い、米国コーヒー業界では「美味しいコーヒーを提供しよう」と考える人が現れて、スターバックスコーヒーなどのようにスペシャリティコーヒーを提供する会社が生まれ、価格競争から価値競争に転じた。
●不毛でない値下げ競争
では、冒頭の質問のように「不毛でない値下げ競争」とはどのようなものか。
値下げのなかには、利益を削らない値下げもある。最新技術の活用により、より低いコストで提供できるような新しいコスト構造を実現し、利益と品質を確保した上で価格を下げる方法だ。
たとえば、かつての生命保険業界では主に営業職員が商品を販売していた。人手や営業拠点などの販売コストはすべて保険料金に転嫁されるので、保険料金は割高になっていた。この伝統的なコスト構造を大きく変えたのが、2008年に開業したライフネット生命保険だ。生命保険をネット経由のみで販売することで、販売コストを削減して保険料金を大きく下げた。これは、最新技術を活用してコスト構造を変え低価格を実現した例だ。
「歯を食いしばってでも、がんばって値下げ競争を勝ち抜け」という根性論には限界がある。価格勝負をするのならば、利益や品質を削って価格を下げるのではなく、利益も品質も確保した上で、智恵を絞り技術を活用してコスト削減を図るべきなのだ。
しかし、ここに落とし穴がある。最新技術を活用して低コスト構造を実現して価格勝負に持ち込んでも、それだけでは不十分なのだ。いずれライバルが追いついてくるからだ。
ライフネット生命の創業から8年目となる現在、ライバルのネット生保が増えてきた。生保業界では、すでに「ネット専業だから低価格」だけでは差別化できない状態になっている。
そこでライフネット生命も、当初からわかりやすいシンプルな商品構成、保険の簡易請求の実現、業界で唯一の保険料内訳公開などによって顧客満足度第1位を獲得するなど、低価格を売りにするだけでなく企業努力を重ねている。
利益を削った「不毛な値下げ競争」は、最終的に顧客に対する品質低下を招くので避けるべきである。だから同じ値下げ合戦であれば、新しいコスト構造を実現し、利益を確保した「不毛でない値下げ競争」が望ましい。
しかし本来は、価格だけに頼らずに常に高い価値を提供し続けることを追求すべきなのである。
(文=永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表)
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