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ノンフィクションライター 中澤まゆみ
2016年01月19日 12時12分
同居家族のいない「おひとりさま」の高齢化が社会問題となっている。年老いた後、別居する親を介護することになったり、自ら介護される身になったりすることを想像して、不安を覚えているおひとりさまも少ないないだろう。そんな状況に立たされる前に、どんな備えをすべきなのか。認知症の母親と友人の介護を担い、自身も「おひとりさま」であるノンフィクションライターの中澤まゆみさんがアドバイスする。
費用削減、「病院から在宅へ」の流れ
ひとり暮らしの高齢の「おひとりさま」は30年間で倍に増えている(写真はイメージです)
超高齢時代から超・超高齢時代に入りつつある日本では、現在、4人に1人が高齢者です。医療の進歩のおかげで、いまや「人生90年」時代。団塊世代の人たちが75歳の後期高齢者になる2025年には3人に1人、55年には2.5人に1人が高齢者になると言われています。こうなると、「街は高齢者だらけ」ということになりそうです。
なかでも増えているのが、ひとり暮らしをする高齢の「おひとりさま」。この30年間で、その数は3倍になりました。ひとり暮らし高齢者は、現在、65歳以上の約2割ですが、20年後には全国平均で約4割、東京都や大阪府では65歳以上の約45%がひとり暮らしになる、という推計が出ています。
高齢者の数は増え続け、おひとりさまの数も増えていく。ところが、それを支える若い世代の数は少なくなるばかり。介護人材の確保も追いつきません。こうした時代を背景に、団塊の世代が75歳になる25年に向けて、医療と介護を巡る状況が急激に変化してきました。
8割以上の人が病院で亡くなっている日本では、「元気なうちは自宅、病気になったり介護が必要になったりしたら病院か施設」というのが、これまでの高齢期の暮らし方でした。けれども、これからは高齢者が医療費のかかる病院で亡くなることは難しくなり、「ときどき病院、ほぼ在宅」という流れが進んできます。背景にあるのは、増え続ける医療費と介護費を削減するために、国が推し進めている「病院から在宅へ」の流れです。
いやはや、大変な時代になってきました。とはいえ、嘆いてばかりはいられません。国や自治体に頼れないのであれば、どうしたら自分らしい「ケア」を受け、どうしたら「安心して死ねる」のかを、私たち自身も真剣に考えていく必要がありそうです。
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動転、動揺、困惑の日々
11年前、都内に住む15歳年上のおひとりさまの友人が認知症になり、その介護が突然、飛び込んできました。当時、私は50代半ばの独身。おひとりさまがおひとりさまを介護するという、「おひとりさま時代」の先端を行くことになりました。最近では「実は私も友人の介護をしています」と、ときどき声をかけられることもあり、時代は変わってきたのだなぁと思います。
おひとりさまがおひとりさまを介護するケースも(写真はイメージです)
介護は、最初の3年が大変と言われます。私の場合も最初の数年間は、動転、動揺、困惑の日々でした。最初は病院探しを手伝うだけのつもりだったのが、友人に頼まれるままに後見人を引き受けてしまったのが「運の尽き」。後見人は、認知症などで判断能力が十分でない人に代わって財産管理や契約などを行いますが、介護は後見人の仕事には入っていません。
ところが、友人は「後見」と「介護」の違いなどお構いなし。何かを思いつくと昼となく夜となく、1日20回、30回と電話が入ります。これにはホトホト参ってしまい、神経症の一歩手前になったこともありました。
彼女を支える自信がなくなって、「有料老人ホームに入らない?」と勧めたことも何度かありましたが、「集団生活はイヤ」と言い張られ、最後には「お願いだから家にいさせて」と泣きつかれてしまいました。そのため、半ば根負け、「それなら、やれるところまで」と覚悟を決め、彼女の在宅生活を支えることになりました。
友人は自宅生活を8年続け、3年前から同じ区内のグループホームで暮らしています。「夜が寂しい」と言い始めたのと、認知症が進み、転倒などによる骨折も多くなったからです。
しかし、ほっと一息ついたのもつかの間、今度は、信州の実家で父と同居している母が認知症になりました。母のかかりつけ医と相談しながら医療と介護をつなげ、お隣さんの協力も得て、今度は母の介護が始まりました。
「育児は1人目よりも2人目のほうが楽」とは、よく言われることですが、介護も同じです。友人を介護した経験が母の介護に大いに役立っています。とは言え、離れた所に暮らす両親は91歳と92歳。どんなことが起こっても不思議ではありません。
実際、C型肝炎持ちで認知症の母の身には「尿もれ」「結核疑いの検査入院」「入院によるADL(日常生活動作)の低下」「腹水がたまる」など、いろんなことが次々と起こっています。しかし、かかりつけ医やケアマネジャー、訪問看護師とメールや電話でのやりとりをこまめに行い、手助けしてもらうことで、いまのところは月1度程度の遠距離介護で済んでいます。
音楽雑誌の編集者からライターへ、その後も本の編集をしたり、自分で本を書いたり……。そんな生活もかれこれ45年近くになりますが、この10年は在宅医療と介護、高齢社会をテーマに取材・執筆活動をするようになりました。年上の友人の介護をするなかで、「私自身もやがてはジジババの仲間入りをするのだ」という実感が出てきたからです。
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かかりつけ医をつくる、「終のすみか」を考える
おひとりさまが老齢を迎えるとき、どんな備えが必要なのか。親や自分自身が介護を迎える前に何を準備すべきなのか。読者の皆さんの不安を少しでも減らすため、これまでの介護体験や取材を通じて考えた「老後の備え10か条」を紹介しましょう。
かかりつけ医とは長い付き合いになることを考え、自分より10歳ぐらい若い医師を選ぶのがポイント(写真はイメージです)
第1は「健康は日々の備えから」。何より大切なのは、健康を保つことです。その基本は「自分を知ること」。血圧や体温、体重などを定期的に図り、体調変化をチェックすることを習慣づけることです。
第2に「かかりつけ医をつくる」。体が「変だな」と感じたら、すぐにかかりつけ医に相談するという流れを作りたいものです。私の母の認知症に最初に気付いたのも、母のかかりつけ医でした。かかりつけ医を選ぶポイントは「遠くの大病院より近くの診療所」。それに、かかりつけ医とは長い付き合いになると考えて、自分より10歳ぐらい若く、新しい医療について勉強している医師がいいと思います。
第3は「介護保険の仕組みを知っておく」。市区町村の介護保険課や地域包括支援センターでパンフレットをもらって読んでみてください。介護は突然やってきます。あらかじめ仕組みを知っているか否かで、いざという時に大きな差がつくはずです。
第4は「行政のサービスを知って、使いこなす」。日本のお役所は申請主義といって、申請しないと制度やサービスは使えません。行政にはさまざまな相談窓口があります。困ったことがあったら、まずは行政に相談する習慣をつける。そうしなければ、いつまでも問題は解決しません。
第5は「遺言やリビングウィル(事前指示)を書いておく」。遺言には「自筆遺言」と「公正証書遺言」があります。「自筆遺言」は、誰からも関与されずに好きなときに書くことができ、費用もほとんどかかりません。しかし、書き方が厳格に決められていて裁判所の検認が必要なうえ、紛失や偽造の恐れがあります。一方、「公正証書遺言」は、公証役場が遺言の原本を保管してくれるので、安全・確実です。ただ、公証役場への手数料など費用がかかり、2人以上の証人が必要になります。それぞれ長所と短所があるので、それをよく考えて作成したいものです。自分らしい最期を迎えるために、終末期医療に関するリビングウィルも書いておくといいですね。
第6は「緊急医療情報を用意する」。多くの自治体で「緊急医療情報キット」の仕組みが導入されています。飲んでいる薬や診察券の写しなどを一式にまとめて冷蔵庫に入れておき、救急隊が来たら取り出してもらうというものです。また、持病や血液型、アレルギーの有無、緊急連絡先などを書いたカード(緊急医療情報カード)を自分でつくり、外出時に持ち歩くといいでしょう。
第7は「『終のすみか』を考える」。どこで、誰に介護を受けたいのか。どこで看取られたいのかを日頃から考えておきましょう。自宅や高齢者向け住宅、老人ホームなど、選択肢は増えています。不本意なことにならないよう、最期まで自分らしく暮らせる住まいを選びたいものです。
第8は「在宅医療について学ぶ」。前述したように、これからの医療・介護は「病院から在宅へ」の流れになってきます。在宅医療はずいぶん進歩していて、できないことは手術と先端医療ぐらい。もしも「自宅で死にたい」と考えている人がいたら、在宅医療の知識を身につけておいてください。
第9は「成年後見制度を知っておく」。成年後見は、認知症の人にとって大きな支えになる制度です。後見を受ける人の判断力がすでに衰えている場合の制度である「法定後見」と、判断力が衰えないうちにあらかじめ後見の契約を結んでおく「任意後見」があります。
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地域で支え合うことの大切さ
そして、「老後の備え10か条」の最後は「『自分力』『人もち力』『「地域力』で、ケアのまちづくりを考える」。家族の力だけで介護を支えることは不可能です。公的なサービスも、これからますますやせ細ってきます。そうなると、地域でさまざまな支援者、人的資源を見つけ、支え合うことが大切になってきます。
私が友人の介護に少し慣れてきたところで、ふと気がついたのが「地域のことを何も知らない」ということでした。「家にいたい」と言い続ける友人の希望を実現するためには、地域の医療・介護・福祉の資源や制度のことを、私自身がきちんと知る必要があると思ったのです。さまざまな情報を得て、知識を身に付ける。それが「自分力」をつけることにつながっていきます。
東京・世田谷区で開かれている「認知症カフェ」
そんなふうに考えるようになった転機は、私の住む世田谷区が07年に始めた福祉の実践プロジェクトに参加したことでした。当時はまだよく知られていなかった「在宅医療」「医療と介護の連携」「自宅での看取り」「認知症の人が地域で暮らすには」といったテーマでシンポジウムや講座を開き、訪問診療医や訪問看護師、介護の専門職、介護家族など、さまざまな人たちに出会いました。そうしたなかで、医療・介護従事者や、友人・知人、地域の人たちが「チーム」で支援していけば、認知症のおひとりさまでも自宅に住み続けることが可能であり、そのためには、支援してもらえる人たちとのネットワークを築くこと、つまり「人もち力」を高めることが大切だ、ということもわかってきました。
「最期まで自分らしく暮らせるまち」、それは私自身が「認知症になっても安心して暮らせるまち」です。そうしたまちがどうしたらできるのか。全国各地のケアの現場を回るなかで感じたのも、いろんな人が顔を合わせ、知り合うことができる「場」の重要さ。つまり、「地域力」が欠かせないということでした。
この5年で増えてきたのが、「ケアラーズカフェ」「ケアカフェ」「認知症カフェ」といった、同じテーマに関心を持った人たちがゆるやかに集える「カフェ」です。これらの「カフェ」の特徴は、SNS(ソーシャルネットワーク)を使って参加者を募り、その参加者がまた別の人に参加を呼びかけていく、というスタイルです。まずはひとりでもフェイスブックを使って始められる、という気軽さが共感を呼び、いま各地で続々と新しいカフェが誕生しています。
いまは「元気老人」でも、「病気老人」「介護老人」の予備軍です。そうした当事者意識を私たち自身が持ち、ケアの専門職と一緒になって活動しながらネットワークをつくっていこうと、一昨年、私たちも世田谷で「ケアコミュニティ せたカフェ」をスタートさせました。
拠点はフェイスブック。毎月カフェバーで開催する「もちよりカフェ」という交流会と、デイホームを使わせてもらって月替わりで催す「認知症カフェ」「介護家族のための実践介護講座」を基盤に、住民が広く参加できる「番外講座」なども行いながら、区内外の人や市民団体をネットワーク化し、新しい実践活動につなげています。
「認知症カフェ」や「介護講座」は、参加した人たちから「日頃の疑問が解けた」「介護の苦しさがやわらいだ」と喜ばれています。認知症でグループホームに入所していた母親の在宅介護を望んでいた女性が、せたカフェのメンバーに母親のケアマネジャーになってもらうなどの協力を得て、在宅介護を実現させる(退所支援)といった事例も見られるようになりました。
「点」が集まってつながれば「面」に、さらに「立体」になっていきます。「せたカフェ」などを通じてゆるやかにつながった世田谷の仲間たちは、行政も医療・介護・福祉の事業者も住民も一緒になって「地域まるごと」でケアのまちづくりを考えようと、区長を交えた「世田谷の福祉をとことん語ろう」フォーラム(通称「とことんフォーラム」)をスタートさせしました。医療も介護も福祉も「自分ごと」。みんながそんなふうに考え、一歩踏み出せば「ケアされる側」「支援する側」にとどまっていた私たちの意識も変わってきます。
「カフェ」というのは、そうした「自分ごと」を増やしていく“やわらかな民主主義”のあらわれではないのか、と思います。地域の生活のなかから生まれてくる「ケアのまちづくり」につながるさまざまな動き。最近はそんな現場を取材し続けています。
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プロフィル
中澤まゆみ( なかざわ・まゆみ )
1949年生まれ、長野県出身。雑誌編集者を経てライターに。友人の介護をきっかけに、医療・介護・高齢社会をテーマに執筆する。著書に『おひとりさまの終活』『おひとりさまでも最期まで在宅』など多数。
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