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東京に急増するアンテナショップがヤバすぎる!全国の特産品満載で地酒試飲や観光の相談も
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13439.html
2016.01.23 文=編集部 Business Journal
アンテナショップ「銀座NAGANO」
■銀座の一等地で連日さまざまなイベントを開催
高級ブランドショップが立ち並ぶ東京・銀座5丁目。夕方5時半、すずらん通りにある洗練されたデザインのビルに客が吸いこまれていく。一昨年秋にオープンした長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」だ。
1階には特産品ショップのほか、地酒・ワインの試飲(有料)をはじめ信州の味を楽しめる「旬の信州味わいコーナー」が併設されている。2階はオープンキッチンのあるイベントスペース、4階はUターン、Iターン、移住、就職などの相談を受け付ける移住・交流センターといった配置になっている。
1階の特産品物販コーナーには会社帰りのOLやサラリーマンの姿に混じり、アジア系のグループが商品を吟味していた。爆買いの観光客ではない。仲間と何か会話しながらメモを取っている。旅行業界の関係者のようだ。この日、「味わいコーナー」では信州の地酒(ワンショット税別700円)、鯉の旨煮、凍豆腐(しみどうふ)の含め煮、五色の餅などを盛りつけた「信州の正月膳」(1000円)などが提供されていた。
筆者は、3種利き酒セット(60ml×3 800円)を楽しんだ。佐久の土屋酒造店、黒澤酒造、伊那の漆戸酒造の純米吟醸、純米大吟醸である。いずれも初めて味わう銘柄だが、信州の米と清冽な水が生み出した地酒の香りと味わいを堪能できる。
3種利き酒セット
2階には各地域の観光パンフレットや書籍がずらりと並んでいる。NHK大河ドラマ『真田丸』がスタートしたばかりとあって、その関連本が目を引く。イベントコーナーでは健康セミナーの準備中だった。
ここでは連日、各種イベントが開催されている。「酒造りを学ぶ」「信州ジビエ新商品等飲食会」「長野県庁ガイダンス」「信州の魅力発見大学」など、興味深いテーマが並ぶ。予約制のものが多く、一部は有料だ。
夜8時まで営業しているので、仕事帰りに立ち寄るには格好のスペース。信州の思わぬ発見を期待できるかもしれない。
■都内には過去最高の55店が展開 年商7億円以上のショップも
一般財団法人地域活性化センターの「平成27年度自治体アンテナショップ実態調査」(2015年4月1日時点)によると、都内には42都道府県13市町村あわせて55店が開設されており、過去最高を記録した。その後、さらに2店がオープンした。この春には日本橋に富山県、長崎県の大型店が開業する予定だ。地方創生が掲げられるなか、再び自治体のアンテナショップのブームが沸き起こっている。
地域活性化センターの調査によると、出店状況は08年の36店から55店へと1.5倍に増加。最近は大型店舗が増え、売り場面積500平米以上の店が7店となった。年間入館者数でみると、14年度中に100万人以上の入館者があったのは、「北海道どさんこプラザ」(北海道)、「とちまるショップ」(栃木県)、「表参道・新潟館ネスパス」(新潟県)、「銀座わしたショップ」(沖縄県)の4店。50万人以上となると全部で10店となっている。
年間売り上げはどうか。全体の53%にあたる29店舗は1億円以上を売り上げた(12店が未回答)。これは調査を開始した09年度以降、過去最高である。売り上げ上位は、常連の老舗「北海道どさんこプラザ」「銀座わしたショップ」(いずれも1990年代開業)に加え、2012年開業の「広島ブランドショップTAU」(広島県)が健闘。銀座・有楽町にある北海道、沖縄、広島の3店舗は、なんと年間7億円以上の売り上げを記録した。
最近の出店傾向について、地域活性化センターは「銀座・有楽町、日本橋への出店が続いており、ますます集積が進んでいる」と分析している。
■特産品販売から「地方創生」「移住」へシフトする動きも
銀座、有楽町、日本橋という東京を代表するショッピングゾーンに店舗を展開する以上、そのコスト負担は相当なものだ。
「過去に出店したアンテナショップの銀座の店舗の例でいうと、1坪当たりの賃料は2万5000円前後。約50坪の店で賃料が月額130万円、管理費が15万円ほどでした。年間の賃料、管理費が約1700万円かかる計算です。これに契約時には敷金、礼金として10カ月分の1300万円がかかったといいます。最近は賃料が高騰しており、こんな金額では収まりません。ましてや1階ともなるとグンと賃料が跳ね上がります。そこに人件費、光熱費などさまざまな運営コストがかかってくるので、物品販売だけで黒字化するのは厳しいのではないでしょうか」(経済ジャーナリスト)
それでもなお、地方自治体が銀座や日本橋を目指すのはなぜか。開設の目的に、「自治体のPR」「特産品のPR」「特産品の販路拡大」「観光案内・誘客」「地域情報発信」などを挙げたショップが40以上あった。一方、実際の効果については、40以上のショップが「観光」以外のメリットがあったとした。「観光客の増加」を挙げたのは29にとどまった。
注目されるのは、アンテナショップの役割の変化だ。地方創生関連事業として「プレミアム商品券」の取り扱い(販売)や「ふるさと割」(割引セール)を実施するショップが増加した。外国語のパンフレットを置くなど訪日外国人客への対応を強化する動きもある。さらに移住相談の窓口の設置やイベントの開催に取り組むショップも増えている。特産品販売の場から「地方創生」「移住」「起業」へとシフトする動きが目立っている。先に紹介した「銀座NAGANO」は4階のフロアに移住相談コーナーを設置したほか、起業やビジネスマッチングのためのスペースも設けている。
「自治体の最新情報、詳細情報を都会の人々に発信し、その自治体に対する認識を深めて実際に訪れてもらう。さらには移住、起業、ビジネス交流を促進する。そんなふれあい、交流、情報提供の場としてアンテナショップを位置づけ、ネット展開などと絡めて複合的に運営していけば、売り上げ以外の効果が見込めるのではないか。都会の生活者が欲しいのは特産品ではなく、自治体、観光地の本当の情報です。そのニーズにどれだけ応えていけるかがポイントになるでしょう」(同)
変貌するアンテナショップの真価が問われる1年になりそうだ。
(文=編集部)
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