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1月22日、 金融マーケットでは、政策対応の限界が意識されてきた。2014年1月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
焦点:浮上する政策限界論、消費増税見送りなら市場の洗礼も
http://jp.reuters.com/article/abenomix-mkts-idJPKCN0V00F4
2016年 01月 22日 15:39 JST
[東京 22日 ロイター] - 金融マーケットでは、政策対応の限界が意識されてきた。金融・財政の政策選択の余地が狭まるなか、せっかくの政策発動でもコストに見合った効果が望めないとの冷ややかな視線が政府・日銀に向けられている。特に債務残高が1000兆円を超える超借金大国・日本が、やむにやまれず10%の消費増税を延期すれば、今度こそ市場の「洗礼」を浴びかねないという危機感も広がってきた。
<「マジック」再現には疑問も>
市場のリスクオフムード拡大に歯止めをかけたのは、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の発言だった。21日の理事会後の会見で、3月の追加金融緩和を示唆すると、欧米市場で株価が反発、ドイツの2、5年債利回りは過去最低を更新した。
しかし、市場では冷ややかな受け止め方も少なくない。「(日本株は)あくまで自律反発。海外勢の処分売りが終わった感触はない」(国内証券・株式トレーダー)という。22日の日経平均.N225は900円を超える反発となったが、前場の東証1部売買代金は1.1兆円に過ぎない。
みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、ECBが追加緩和でできる施策は限られていると指摘。「想定されるのは、拡大資産購入プログラム(APP)の月間購入額の増額だが、前回はこれができず市場に失望を与えた。ECB内は決して一枚岩ではなく、3月の会合でも12月のように、肩透かしとなる可能性もある」と話す。
高まる金融緩和の限界論に対し、ドラギ総裁は「われわれには行動する力と意欲、そして決意がある」とし、金融政策手段の活用範囲に対しても「制限はない」と強く否定したが、市場は言葉通りには受け取っていない。
日銀の次の一手としては、ECBのようなマイナス金利導入も選択肢の1つだが、日本では金融機関の負担が大き過ぎるとして、導入には否定的な見方が多い。
超過準備に対する付利の引き下げについても、準備預金の残高が集まらなくなり、マネタリー・ベースの目標が維持できなくなる可能性がある。追加緩和で国債買い入れの増額があっても、0.1%の付利がある限りは、10年債利回りのマイナス突入は考えにくい。
<狭い財政対応の余地>
大和証券・チーフエコノミストの永井靖敏氏は、日銀が大規模に進めている国債買い入れを増額した場合、むしろ出尽くし感が浮上し、「玉切れ(限界論)」を意識せざるを得なくなるとみる。
このため、市場では、金融政策に限界が到来したならば、次は財政政策だとの声も徐々に強まっている。
しかし、2015年度1次補正の成立後、政府は来年度予算の年度内成立に全力を挙げる構えであり、2次補正予算案の編成と国会成立は現実味が薄い。15年度には基礎的財政収支(プライマリーバランス)赤字のGDP(国内総生産)比半減目標もある。
4月以降に2016年度の1次補正を早期に組むケースを想定する声も多い。7月には参院選があるためだ。「円高・株安がさらに進行し、企業業績が悪化、デフレ脱却どころか、アベノミクス崩壊で選挙を迎えるようなことは、政府・与党としては何としても避けなくてはならない」(外資系証券エコノミスト)との思惑が、すでに出始めている。
2月中旬に発表される2015年10─12月期実質国内総生産(GDP)が、個人消費の落ち込みによって、小幅マイナス成長になるとの観測も市場では浮上。安倍政権は、なりふり構わず景気テコ入れ策を打ち出してくるとの観測もある。
ただ、建設現場などで人手不足が目立つなか、公共投資拡大は容易ではない。金利が歴史的低水準にあるのは、日銀の買い入れもあるが、投資機会が減少しているからだ。無理な財政拡大は、中国のように過剰な設備を増やしかねない。
円債市場が警戒するのは、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げ延期だ。政府は再三、財政規律を強調しているだけに、増税延期の市場インパクトは想定以上に大きくなる可能性がある。2度目の延期は財政規律への疑いも強くなりかねない。
1月22日、 金融マーケットでは、政策対応の限界が意識されてきた。2014年1月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
1月22日、 金融マーケットでは、政策対応の限界が意識されてきた。2014年1月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
円債市場からは「延期になると、複数の格付け会社から日本国債の格付けが引き下げられることになるだろう。日銀のQQE(量的・質的金融緩和)があるため、金利の急騰はないだろうが、市場参加者はリスク許容度を考慮に入れたうえで、日本国債への投資を控えることになり、ますます市場規模が縮小しかねない」(国内金融機関)と、警戒する声も出ている。
世界的なリスクオフが強まる中で、政策対応を求める声も高まってきた。しかし、2008年のリーマン・ショックで大規模なマクロ政策を打った後に、残っている「駒」はかなり少なくなっているのが「日本だけでなく世界の主要国の実態」(大手銀関係者)だ。
3年目を迎えた安倍政権とアベノミクスは、世界的な資産価格下落の大波を受けながら、重大な岐路に差し掛かっている。
(伊藤武文 取材協力:星裕康 編集:伊賀大記)
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