もう一つの危険信号、国債利回りの低下投資家のリスク回避傾向で各国の国債利回りは低下傾向にある PHOTO: BLOOMBERG NEWS By RICHARD BARLEY 2016 年 1 月 21 日 13:55 JST 世界の市場で赤信号がもう一つ点滅し出した。各国の長期国債利回りが低下し始め、イールドカーブが平坦化してきていることだ。投資家は、投資資金から得られるリターンよりも投資資金を引き揚げる(リターンさせる)ことの方に関心があるようだ。 米国では10年物米国債の利回りが再び2%割れした。年初は2.3%を付けていた。10年物英国債利回りはさらに大きく0.35%低下し、1.65%となっている。ドイツ国債は利回り低下幅では米英ほどではないが、水準は0.42%と新たな領域に入った。これは、欧州中央銀行(ECB)による量的緩和の債券購入開始前、市場が昂揚感に包まれていた局面でだけ見られた水準だ。 そうした昂揚感は現在まったくない。中心にあるのは原油と中国問題で、その影響が各市場に広がっている。米国と欧州で見られる内需主導の回復には逆風が吹いている。 ただ、国債価格の反騰は、必ずしも中央銀行による政策行動への期待を反映したものではない。中銀の政策手段に限界があることは周知の事実だからだ。実際、株式市場の動きは、金融政策の影響でリスクの高い株式の価格が持続不能な水準へ押し上げられていることを示している。 確かに、英国ではイングランド銀行(中央銀行)が米連邦準備制度理事会(FRB)に追随しないと明言している。イングランド銀のカーニー総裁は今週、「現在はまだ利上げの時期にない」と述べた。また、ECBの追加措置を多くのエコノミストが予測しているが、近い将来のことではないだろう。一方、米国債利回りはFRBの利上げ予想の動向とは相いれない動きとなっている。ただし、FRBが利上げについて様子見する可能性はあるとはいえ、利上げ姿勢を急激に転換するようなことでもあれば、その信用は大きく傷つくことになるだろう。 10年物国債利回りの推移(緑:米国債、青:英国債) ENLARGE 10年物国債利回りの推移(緑:米国債、青:英国債) むしろ、各国の国債市場の動向は(中銀への期待でなく)、リスク回避が高まっていることを示しているようにも見える。銘記すべきことは、中国や新興国の成長への懸念が台頭した昨年夏にはほとんど動かなかったドイツ国債利回りが、今年の混乱では反応していることだ。 国債価格はすでに、株式など他資産との比較でも、また、絶対額としても割高な水準にある。利回りがここまで低いということは、中期的な将来リターンの見込みが小さい一方、リスク選好が回復した場合、一気に損失が発生する恐れのあることを意味している。安全資産の価格が高くなっているのに、それでも投資家はそれを支払う意欲を示している。これこそが懸念すべきことなのだ。 関連記事 ECBの量的緩和、市場混乱で効果薄れる 米国債市場、FOMCタカ派委員のインフレ発言に揺れる http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-ME526_bondhe_G_20160120075517.jpg
Business | 2016年 01月 21日 13:56 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス マイナス金利採用せず米国経済は回復=黒田日銀総裁
[東京 21日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は21日午後の参院決算委員会に出席し、「現時点でマイナス金利政策を具体的に考えていることはない」との従来見解を繰り返した。マイナス金利については「プラス面とマイナス面がある」としたうえで、「米国はマイナス金利政策を取らずに量的緩和政策で経済回復しつつある」と指摘。追加緩和手段としてマイナス金利に否定的な見解を改めて示した。 民主党の江崎孝委員への答弁。 追加緩和手段について「そのときの経済状況を見てもっとも適切な手段を取る」と指摘。日銀は手詰まりとの批判に対しては「手段は十分に持っている」と反論した。 年初来の世界的な株価暴落について「原油価格の一段安や中国経済の先行き不透明感で投資家のリスク回避姿勢が強まっている」との見解を示し、「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」と強調した。 量的・質的緩和(QQE)について「所期の効果を発揮している」「経済は前向きな好循環を続けている」との見方を繰り返した。消費者物価指数は、生鮮を除くコアCPIは前年比ゼロ近傍にとどまっているが「エネルギーを除く指数(日銀版コアコア)は1.2%まで上昇している」と強調、「物価の基調は高まっている」と語った。 2%の物価目標達成時期は「昨年10月の展望リポートで2016年度後半」との見通しを示しているが「原油の先物価格などを参照しており、原油価格次第で前後する」とした。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/kuroda-upperhouse-idJPKCN0UZ0AL 巨大銀行規制、FDIC副総裁がFRB新規則を批判 By RYAN TRACY 2016 年 1 月 21 日 12:52 JST
米連邦預金保険公社(FDIC)のホーニグ副総裁はカンザスシティー地区連銀総裁時代、連邦公開市場委員会(FOMC)の歴代メンバーの中で特に多くの反対票を投じたことで知られる。そのため、ホーニグ副総裁が再びFRBの政策に疑問を唱えていることに驚きはない。ホーニグ副総裁が今回(20日)批判の矛先を向けたのはFRBが最近提案した「総損失吸収能力(TLAC)」規則だった。 ホーニグ副総裁の批判とその重要性を理解するには、副総裁の理念をよく知ることが肝要だ。 副総裁は「(巨大銀行を)大きすぎてつぶせない」問題に対して、規制当局がこれまで講じてきた措置よりもはるかに思い切った措置を求めている。一つは、商業銀行と投資銀行を分離させることで、上院民主党のエリザベス・ウォーレン議員(マサチューセッツ州)とバーニー・サンダース議員(バーモント州)の提案に沿っている。もう一つは、金融機関にさらに多くの資本積み増しを義務付けることだ。具体的には、全ての銀行を対象に総資産の最低10%に相当する資本を普通株等Tier1(基本的項目)資本で確保するよう義務付ける。これは銀行持ち株会社を対象にした現行の最低所要比率の2倍に相当する。 FRBにはFRBなりの根拠があってTLAC規則を取りまとめた。根拠の多くは同規則の発表時点で明らかにされている。ホーニグ副総裁は講演やその後の質疑応答で、そうした根拠の一部を批判した。 要するにホーニグ副総裁は、普通株等ティア1資本の所要比率を引き上げれば、FRBのTLAC規則よりも長期的な悪影響は低いと考えているのだ。例えば、TLAC規則はコスト負担が大きいため、銀行は借り入れをさらに増やして利益の押し上げを図ることで、こうしたコストを埋め合わせようとする恐れがあると副総裁は危惧している。副総裁は「銀行システムのレバレッジを高めることでシステムの安定化を狙うというのはギャンブルだ」と述べた。 副総裁の分析によると、資本の積み増しを義務付ければ、大手銀行は財務面でより慎重な対応を余儀なくされることから、これら銀行の(解体とまではいかなくとも)拡大を間接的に抑えられる。対照的に、FRBのTLAC規則は事実上、リスクテイクや拡大を促し、危険度の高い複雑性を高める恐れがある。 FRB理事会は昨年、TLAC規則案を全会一致で承認したので、FRBが軌道修正する公算は小さい。その上、FRBは同規則の履行について金融安定理事会(FSB)で国際合意に署名済みだ。 より重要なのは、ホーニグ副総裁が「大きすぎてつぶせない」問題を解決するためのFRB・FDIC体制の重要なピースをやり玉に挙げ、金融システム改革に向けた取り組みは実際にはまだ巨大銀行の制限に成功していないと示唆したことだ。 副総裁はピーターソン国際経済研究所に集まった聴衆に対し、「まずは、現在保有している水準よりも多くの自己資本が必要だという事実からお話したい」と述べ、規制当局トップの大半が認めていない仮定を論じて見せた。副総裁は大手銀行1行の問題が金融システム全体に波及する可能性は残っているとし、「業界全体の自己資本が過小だったなら、『他の銀行も脆弱(ぜいじゃく)なのでは』という疑問が直ちに浮上するだろう。前回(の金融危機で)起きたのがまさにこれだ」と述べた。 忘れてならないのは、無党派のホーニグ副総裁は何年も前から連邦議会議員およびその職員と信頼関係を築いてきたということだ。議員らは副総裁を法案の相談役として位置づけている。次の大統領か議会が金融業界の改革を再び問題として取り上げた場合、ホーニグ副総裁は持論が選択肢として上るよう手を尽くすだろう。あるいは少なくとも、現行の資本基準が金融業界のロビー活動によって緩和されることは防ごうとするはずだ。 仮定が現実に勝ることがよくあるワシントンでは、副総裁の主張が銀行業界と他の規制当局幹部の両方を揺さぶっている。公的資金注入による救済が繰り返されるのを回避するために大きな進展があったと表明しているのは、こうした幹部に他ならない。 関連記事 FRB、大手銀の損失吸収力向上に新規則 FRBの新規則案、金融安定を損なう恐れ=FDIC副総裁 ECBの量的緩和、市場混乱で効果薄れる By TOMMY STUBBINGTON AND CHRISTOPHER WHITTALL 2016 年 1 月 21 日 12:28 JST
欧州中央銀行(ECB)が景気刺激を目指す戦いを続ける中、世界市場の混乱がECB最大の武器である量的緩和の効果を鈍らせている。 足元の市場動向を受け、ECBは大規模な債券買い入れ措置をさらに拡大するか、追加利下げの実施を余儀なくされる可能性がある。ECBの意向については、あす21日の理事会で何らかの手掛かりが得られるもようだ。 年初から続く相場急落で、株式と社債はECBが1年前に量的緩和を発表して以来積み上げてきた上昇幅を全て失った。 量的緩和は債券と株式相場を押し上げ、企業の資金調達と投資を後押しして景気を刺激する狙いがあった。 だが原油、債券、株式の下落がこの効果を薄め、エネルギー価格の軟化がインフレを低水準にとどめる中で企業の資金調達はより困難になっている。 アリアンツ・グローバル・インベスターズの欧州債券担当最高投資責任者(CIO)、フランク・ディクスミエ氏は「経済・金融環境があまりに悪化したため、ECBは(追加金融緩和を実施する構えであることを)非常に強く示唆すると確信している」と述べた。 債券買い入れ措置によってユーロ圏国債の利回りは低下し、株式や社債などの高リスク資産から高いリターンを求める動きが強まった。だが足元では、かつて量的緩和による追い風を受けた資産からの資金引き揚げが進んでいる。 チャート上から、投資適格社債と国債の利回り差の推移、ユーロの対ドル相場の推移、10年物ドイツ(濃緑)およびイタリア(薄緑)国債利回りの推移、Stoxx600指数の推移 欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数は、ECBが量的緩和を発表した昨年1月以降の高値をつけた4月以来、23%近く下落している。ユーロ圏の高格付け社債と国債の利回り差(スプレッド)はここ数日に約3年ぶりの水準に拡大している。 みずほの欧州金利戦略責任者、ピーター・チャットウェル氏は「量的緩和はより高リスクの資産への投資を促すことで効果を発揮するはずだった。(中略)だがこうした取引が打撃を受けている中では機能するわけがない」と述べた。 一方、原油価格はこの1年で半分となっており、インフレ上昇に向けたECBの取り組みに水を差している。量的緩和は通常、経済に流通する資金を増やし、物価を押し上げるとみられている。 だがインフレは低水準にとどまったままだ。12月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%上昇と、ECBが目標とする2%弱に程遠い状態が続いている。 確かに、量的緩和は全く無意味ではないという声もある。ECBが刺激策を打ち出さなければ、ユーロ圏の金融環境は今よりもっと悪かったはずだという指摘も多い。大半の企業にとっては、欧州がソブリン債務危機に揺れていた数年前に比べて資金調達がしやすくなっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)、英イングランド銀行、日本銀行はいずれも世界金融危機への対応としてかなり前から量的緩和に乗り出しており、ECBは主要中央銀行でのこうした動きでは最後となった。このため、FRBが昨年12月に約10年ぶりとなる利上げを開始する中で、資金供給を行うこととなっている。 市場では目下、ECBのドラギ総裁が景気刺激に向けた取り組みを強化するとの見方が大勢だ。ドラギ総裁は21日に追加利下げと債券買い入れの拡大を行う意向であることを示唆する可能性がある。 ピクテ・ウェルス・マネジメントのフレデリック・デュクロゼ氏は「原油や金融市場で起きているすべてが大きな問題で、混乱が長引けば長引くほど(ECB)が何らかの行動を起こす可能性は高まる」と話した。その上で、早ければ3月にも債券買い入れのペース加速を発表する可能性があるとの見方を示した。 このほか、ECBが現在マイナス0.3%に設定している預金金利のマイナス幅を拡大するとの向きもある。 JPモルガンによると、金利デリバティブには現在、ECBが6月に預金金利をマイナス0.4%に引き下げる見通しが織り込まれており、ECBが3月に行動を起こす確率は50%と予想されている。 関連記事 ECBの量的緩和、デフレ阻止に寄与=プラート専務理事 ユーロ圏国債、ECBの防波堤が機能 http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AF178_ECBWAL_16U_20160120162120.jpg ウォルマート、米従業員の大半に賃上げ労働市場が逼迫するなか、離職防ぐ狙い
By SARAH NASSAUER 2016 年 1 月 21 日 13:56 JST 米小売り大手ウォルマート・ストアーズは来月、米国内の時給労働者ほぼ全員を対象に賃金引き上げを実施する。民間企業で米最大の雇用主である同社は、広範囲の賃上げにより労働市場の逼迫(ひっぱく)と小売業界特有の離職率の高さに対応する。 同社はこれに先立ち、2月に最低時給を10ドルに引き上げる計画を発表していた。だが20日になって、昨年12月31日時点で雇用されていた時給労働者を対象に2%以上の昇給を実施すると明らかにした。この賃上げはウォルマートと傘下の会員制倉庫型店舗「サムズ・クラブ」の米従業員約120万人に適用される。 広範な賃上げは、新規雇用者の賃金のほうが優遇されているという一部の古参従業員の不満に対処するもの。また、従業員の離職に歯止めをかけ、人材の採用と訓練にかかる費用を抑える狙いもある。同社では年間の離職者数は約50万人に達する。 米国では昨年、20州で法定最低賃金が引き上げられた。ファストフード世界最大手のマクドナルドやコーヒーチェーン世界最大手スターバックスをはじめ、時給労働者を最も多く雇用する企業数社が採用当初の賃金を引き上げている。 米労働統計局(BLS)によると、米小売業界労働者の昨年12月の平均時給は14.95ドルと、前年同月比3.6%上昇した。ウォルマートでは2月の賃上げの結果、フルタイム従業員の平均時給は13.38ドルに、パート従業員は同10.58ドルになる。 同社は米国内の4600店舗の改築を進めているほか、電子商取引での売り上げ増を目指して大規模な投資を行っている。賃上げ分の費用は2016年度と17年度に約27億ドル(約3200億円)に達し、その結果、来年度の利益は最大12%押し下げられる見通しだという。同社は先週、採算の合わない地域を中心に米国内で154店舗、国外で115店舗を閉鎖すると発表した。 ウォルマート株価の20日終値は前日比2.8%安の60.84ドル。過去1年間では30%下げている。 関連記事 ウォルマート、米国で異例の大量閉店 米マクドナルド、従業員9万人の時給引き上げへ ダボス会議出席のCEOを覆う中国減速への懸念
By KHADEEJA SAFDAR 2016 年 1 月 21 日 13:07 JST 【ダボス(スイス)】世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)出席のため当地に集まった企業経営者は、世界の市場混乱が拡大している中で、中国の景気減速が自社の経営に及ぼす影響について口々に懸念を表明している。 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の郭平最高経営責任者(CEO)は20日当地で開かれたウォール・ストリート・ジャーナル主催の昼食会で講演。中国経済は「困難な状況にあるが、危機ではない」としながらも、今後およそ2年間大規模な調整に見舞われるだろうと予想し、政策立案者は「いくつか過ちを犯した」と述べた。 中国政府は19日、同国の昨年の実質成長率が6.9%と、4半世紀ぶりの低水準となったと発表した。一部CEOは、実際の成長率は発表よりも低い可能性があるとの見方を示す。世界最大の英広告会社WPP傘下のバーソン・マーステラのドナルド・ベアCEOは、「私見だが、それは恐ろしい議論だ」と警戒感をあらわにする。 米海運会社リブラ・グループのジョージ・ロゴセティス会長兼CEOは、海運業界は中国経済の鈍化で大きな影響を受けていると指摘し、現状を「アルマゲドン(終末)のレベル」と評する。同CEOは、コンテナ市場のマージンは低下し、「大量の船荷が船積みされていない」と話す。 中国政府が1月に入って通貨人民元の下落誘導に乗り出したことから、通貨の切り下げ競争を誘発するとともに、中国の貿易相手国にデフレをもたらすのではないかとの懸念も生じている。 関連記事 荒れる市場、世界の企業経営者に悲観論広がる 中国の経済顧問、大規模追加刺激の可能性否定 世界経済、不確定要素が潜む場所 【特集】ダボス会議 Business | 2016年 01月 21日 13:39 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:米国株大幅安でもなぜか低調なヘッジ取引 [ニューヨーク 20日 ロイター] - 米国株が記録的な下げが記録しているにもかかわらず、こうした局面に付き物のヘッジの動きが鈍い。
投資家は通常、下値不安増大に対処するために、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティインデックス(VIX)の先物を買ったり、株式のプットオプション(売る権利)を利用する。しかし足元で株価が1年3カ月ぶりの安値に沈んでも、こうした取引は昨年夏や秋ほど活発化していない。 なぜヘッジが増えないのか、確たる理由は分からないが、投資家は幾つかの要素が絡み合っていると指摘する。例えばヘッジファンドが最近数カ月で株式へのエクスポージャーを減らし、損失に備える必要性が薄れていることが挙げられる。そのほか、今回の株安局面は原油価格の下落、中国経済の減速など既知の材料が主導していて、新たな外的ショックが見当たらない面もある。 ここ数カ月、ボラティリティや市場の方向性に賭けるオプションの利用は減少している。 広告 コンバーグFXグループのチーフ市場ストラテジスト、ニック・コラス氏は「ヘッジ商品は実際は想定されるほど積極的に使われていない」と述べた。 VIXオプションの建玉は20日時点で約650万枚。昨年8月と9月に株価が底値をつけた局面と比べると10%程度少なく、2014年10月の株安時を30%下回っている。 S&P総合500種(SPX)の方向性に賭けるオプションの取引はもっと低調だ。昨年9月は1310万枚だったが、現在は1070万枚にとどまる。 VIXとSPXのオプションは株安に対するヘッジ手段としての人気が高いだけに、今は昨年ほど投資家がヘッジに熱心でない様子がうかがえる。 オプション清算会社OCCによると、株式のプットオプションとコールオプション(買う権利)の比率も昨年7月は1.47対1だったのが、現在はほぼ1対1となっている。 投資家の説明では、今回は株価下落のスピードが比較的遅いことがヘッジが活発化しない原因といえる。S&P総合500種は一時2014年初めの安値まで下げたものの、じり安傾向だったため、VIXが高水準になり始めたのはごく最近になってからだ。 昨年8月や2010年の暴落(フラッシュクラッシュ)などでは、VIXが瞬間的に45まで跳ね上がっていた。 クレディ・スイスの株式デリバティブ・ストラテジスト、マンディ・シュー氏は、VIXが大きく上がらないのは、株価を押し下げしている要因が原油安や中国市場絡みの懸念で、昨年から変わり映えしないことが一番の理由だとの見方を示した。 「既に知っている問題で何か分からない部分があるということと、これまでまったく認識されていない材料が出てくるのでは違いがある」という。 さらに、オプションを頻繁に利用するヘッジファンドがこれまでのところ事態を何とか乗り切っている点は大きい。クレディ・スイスのプライムサービス部門によると、ヘッジファンドの株式投資総額は2年ぶりの低水準で、株安からの痛手は小さい。ヘッジファンド・リサーチのデータでは、業界の年初来のリターンはマイナス2.5%程度の損失にとどまっている。 もっともまったく想定されていない事態が起きて市場の不安心理がもっと大きくなり、売りが加速した場合は、ヘッジ不足が投資家を苦しめかねない。 ディープ・バリュー・エクセキューション・サービシズのフロア業務担当マネジングディレクター、スティーブン・ギルフォイル氏は、もしもヘッジをせずに買い持ちだけ膨らませているとすれば、誰もが「もうこれ以上の痛みには耐えられない」と言う地点で、一気に売りが出てくる可能性があると予想している。 VIXは15日に4カ月余りぶりに30に上昇し、20日も同水準に達した。ヘッジをめぐる状況は今後変わる可能性もある。 (Saqib Iqbal Ahmed記者) http://jp.reuters.com/article/usa-stock-hedge-idJPKCN0UZ0A2
Top News | 2016年 01月 21日 13:14 JST 関連トピックス: トップニュース 焦点:止まらぬ原油安、株安巻き込み膨らむ景気後退懸念 [シンガポール 19日 ロイター] - 原油価格はもはや、世界の株式市場にとって、ありがた迷惑な水準まで下がっている。どちらの市場も年初来暴落しており、投資家は1バレル30ドルを割り込んだ原油安がもたらすデフレ効果に警戒感を強めている。 この1年半、下降スパイラルに陥った原油価格は75%も値を下げた。そればかりか、昨年末に一段と下落したことにより、今度は株式相場まで巻き添えにしてしまった。 「原油輸入国にとって、1バレル28ドルは素晴らしいニュースだ」と、オールド・ミューチュアル・グローバル・インベスターズ(香港)のアジア株統括、ジョシュ・ クラブ氏は語る。 「だが短期的には、センチメントにひどく影響する。つまり、原油安はインフレ面で(低下を招くため)よくない、ということだ。経済にとって非常に多くの問題を生み出している」と同氏は指摘。 これまで株式市場では、燃料価格の低下は好材料と見られていたが、2016年の市場が悲惨なスタートを迎えるなかで、世界的リセッション(景気後退)の危険性についての悪い噂が浮上してきた。 「コモディティ価格が総崩れになったのは、ちょっとした需給のアンバランスが原因ではない。それは、世界経済が成長軌道に戻っておらず、リセッションに危険なほど近づいている可能性があるとの考えに基づいている」と、香港の投資リスク管理会社アクシオマでアジア太平洋地域担当のマネージングディレクターを務めるオリビエ・ダシエ氏は説明する。 米国の景気回復には時間がかかっており、米国企業は2015年第4・四半期に収益のリセッションに陥った可能性がある。 世界第2の経済大国である中国は、この25年間で最低の成長率を記録したばかりであり、アナリストの予測では2016年はさらに減速すると見られている。 世界第3位の日本は、たえずリセッションにつきまとわれており、日銀の2%というインフレ目標の達成も依然として遠い先である。 <かつての朗報が悲報に> 原油価格低下の恩恵は明らかだ。企業にとってはコスト削減に、消費者にとっては家計の節約になる。 その一方で、経済が低調で先の読めない時期に石油価格が非常に低くなると、どのような悪影響があるのか、ということは分かりにくい。 だがアナリストらは、企業はコスト削減分を投資に回さず、消費者も節約分を消費拡大ではなく債務返済に充てることを選んでいる、と指摘する。 「燃料価格の低下が、企業・家計の支出増大に回っているという証拠は、これまでのところほとんど見られない」と語るのは、NNインベストメント・パートナーズ(ブリュッセル)で上級ポートフォリオマネジャーを務めるロバート・デービス氏。 「むしろ、家計は用心深く燃料費の節約分を債務の返済に回しているように見える。すると、燃料価格の低下は消費ブームを支えるのではなく、単にデフレをもたらすということになる」と同氏は語る。 さらに、石油価格の低迷が長引いているせいで、石油会社では膨大な評価損が発生しており、エネルギー関連企業の破綻が生じた場合の連鎖的な悪影響への懸念も提起されている。 <原油と株の同時安> 原油価格とアジアの主要株式市場のトレンドを少し見てみよう。 2007年と2008年に原油価格が137%上昇すると、アジア地域におけるコモディティ輸入国である韓国、日本、香港の株価指数は、32%─58%下落した。 その後、2014年6月から2015年4月にかけてブレント原油が45%下落すると、日本、韓国、香港の株価は10─19%上昇した。 オーストラリアやマレーシアなどコモディティ輸出国を含む、より範囲の広い株価指数であるMSCI(日本を除くアジア太平洋株指数)は、5.3%上昇している。 だが2015年末以降、原油価格と株価は同じ方向で推移している。石油価格がほぼ40%下落して1バレル29ドル以下になるとともに、日経平均、香港ハンセン指数、韓国の総合株価指数はいずれも9─14%下落した。 これら3つの指数は現在、ブレント原油と約85─90%の相関を示している。 <材料は燃え尽きたか> 投資家の株式市場からの撤退の副産物としてドルが強力に買われ、ドルの主要6通貨に対するドル指数は過去3カ月で4.4%上昇した。 ブラジルやサウジアラビアなど、コモディティを輸出する新興市場諸国にとって、これでは踏んだり蹴ったりだと、アクシオマのダシエ氏は語る。米ドル建ての債務が拡大する一方で輸出収益が減少することになるからだ。 「こうした国々は恐らく赤字になるから、その手当てのために、たぶんドル建てで新規国債を発行することになる。ドルは今後上昇し、米国の金利は上昇する」とダシエ氏は言う。「これは、二重三重の痛手になる」 もちろん、石油価格が安定、あるいは上昇して、株価が元気を取り戻す可能性はある。 「今のところ石油価格が下方にオーバーシュートしているため、このテーマはすでに燃え尽きつつあり、石油価格が底を打って市場が広い範囲で落ち着く、というのはありそうな話だ」とヘンダーソン・グローバル・インベスターズ(ロンドン)のマルチアセット部門の共同主任ポール・オコナー氏は言う。 だが、イランに対する欧米の制裁解除に伴い、グローバルな石油の供給過剰はいっそう拡大する可能性が高いため、少なくとも短期的には、さらなる苦痛が待ち構えていることになりかねない。 (Nichola Saminather記者) (翻訳:エァクレーレン) http://jp.reuters.com/article/markets-stocks-oil-idJPKCN0UZ08U
|