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電通幹部、重大疑惑浮上で中国当局がマークとの報道
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13364.html
2016.01.19 文=牧野源 Business Journal
昨年、中国で4人の日本人が「スパイ行為」の疑いで相次いで拘束され、うち3人が正式に逮捕されたが、中国在住の日本人に対する新たな疑惑を、官製メディアの中華網が1月5日付記事で報じている。
記事によると、業界内の情報提供者の話として、電通の中国現地法人、北京電通広告の広州支社の副総経理を務めるA(仮名)という帰化日本人が、昨年末から中国国内で不可解な買収合併を進めた疑いをかけられ、関係当局にマークされていると伝えている。ちなみに、中華網は実名で報道している。
不審点として挙げられているのは、まず買収先とされる企業は、業界内では無名のサプライヤー企業であり、この買収は電通にとっておおよそ必要性が見当たらないものであること。
同記事は、1980年代生まれの若者が代表を務める社員数名のこの企業が、創業後すぐにトヨタ自動車のサプライヤーとなった点を指摘し、「そもそも電通がなぜ、コネのみで仕事を取ってくるような小さい企業を買収する必要があるのか理解できない」としている。
また、買収を画策したAの謎めいた来歴も伝え、不審感を強調している。
北京で中国人として生まれたAは、中国の著名な舞台監督を父に持ち、大学卒業後に父の後を追って芸能の世界に進んだが、親の権威を傘に威張り散らすことで、業界では有名な問題児だった。そんなある日、突然、日本へ行ったかと思うと、結婚して日本国籍を取得。妻子をアメリカに住まわせる一方、中国に住む両親とは長く連絡を絶っており、何をしているかさえ知らせていなかったという。
そして2000年、Aは日本企業・電通の管理職として中国に戻った。広州を拠点にしたAは、父母のいる北京から離れた土地で、「何やら謎めいた仕事をし始めた」という。
「Aは単純な広告業務をこなし、日本人の身分で電通集団の代表としてトヨタや本田技研工業(ホンダ)など、日本の巨大企業と関係を維持した。同時に、芸能界の親のコネを生かし(中略)、電通集団の中国業務の障害を取り除いた。Aの人脈を使い、日本の各企業にさまざまな助け舟を提供したりもした。広州電通及びA本人を知る人は、『Aは人や事業に関してやろうと思えばどんなことでも可能だ』という。(中略)広州電通の業務が大きくなるにつれ、Aは日本電通本社の信任を得て、その辣腕を北京電通にまで伸ばしていった。広州での何年かを経て、Aは政財界で広く確実な人脈をつくり、成功した日本のビジネスマンという身分で北京に戻った」(記事より)
■スパイ&横領疑惑
記事では、人脈がビジネスの要とされる中国で有能ぶりを発揮する一方、Aは日本人の命令に従っていることに嫌気が差していたという話も紹介。さらに、「中国国内で拘束された日本国籍のスパイは皆、商業貿易をするビジネスパーソンの身分で東北三省から国内に入っていた」と引き合いに出し、スパイ疑惑までほのめかしている。
そして記事は、ひとつの仮説を立てている。
「この買収は、Aにとっては確かに一石二鳥だ。Aの日本本社での地位を確固たるものにしながら、個人の資産の流動も容易にし、北京人脈を使うことでマネーロンダリングも可能だ」
つまりAが、買収先の企業を利用して横領を企んでいるのではないか、と推測しているのだ。
日本企業の中国法人幹部による不正の例としては、昨年、東京証券取引所1部に上場していた化学薬品商社・江守グループホールディングスの中国現地法人の経営トップが、内規に違反して親族の経営する企業と不正な「売り戻し取引」を行っていたことが判明。江守はその後、破綻に追い込まれている。
しかし、中華網の今回の記事を見る限り、Aの疑惑を裏付ける確たる証拠は提示されていない。それにもかかわらず、官製メディアがこうした報道を行うことには、一体どんな意図が隠されているのだろうか。
(文=牧野源)
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