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ユニクロの店舗(「Wikipedia」より/Kuha455405)
「安さ」を失ったユニクロ、客離れ深刻に…客数減&売上減止まらず、勝ちモデル崩壊
http://biz-journal.jp/2016/01/post_13317.html
2016.01.16 文=編集部 Business Journal
年明け以降、世界的な株安に歯止めがかからない。中国経済の減速懸念、原油安や中東情勢の緊迫化、北朝鮮の核実験などが足を引っ張り、日経平均株価は年初から6日連続値下がりで、その幅は一時1400円を超えた(終値ベースでは1335円安)。大発会から6日連続して下げるのは戦後、東京証券取引所で取引が再開されてから初めてである。
カジュアル衣料「ユニクロ」を中心に国内衣料市場で1割のシェアをもつファーストリテイリング株は売り一色。1月7日には一時、3万9010円まで下げ、昨年来安値を更新した。終値は前日比1120円(2.79%)安の3万9050円で4万円の大台を割った。8日も瞬間的に1960円安(7.0%安)の3万6180円まで急落、結局910円安の3万8140円で引けた。株価の崩落にまったく歯止めがかからない。15年の高値である6万1970円(2015年7月30日)から半値近くになった。
会長兼社長の柳井正氏は年頭所感で、20年の売上高5兆円の達成に向けて、「過去の成功は捨て去れ」と社員に檄を飛ばし、「従来のやり方の延長線上にチャンスはない」と述べた。
ファストリは15年11月26日、山口市の本社で定時株主総会を開いた。柳井氏は檀上で改めて「20年に売上高5兆円をぜひやりとげたい」と強調したが、質問に立った株主からはその実現性について懸念の声も上がった。
15年10月8日に発表した15年8月期の同社の連結決算(国際会計基準)は、営業利益が会社予想を350億円下回る結果となった。売上高に当たる売上収益は前期比21%増の1兆6817億円、営業利益は26%増の1644億円と共に過去最高を更新したが、会社の見通しやアナリストの予測を大幅に下回った。
これを受け、翌9日に株価は急落。下落率は取引時間中に一時10%を超え、下げ幅は4740円となった。時価総額は一瞬にして5000億円が吹き飛んだ。この日、売買代金(1115億円)、値下がり率(9.74%)ともに東証1部でトップ。日経平均株価を1銘柄で180円以上押し下げた計算になる。
表面上は過去最高益なのに株価が急落したのは、持続的成長を続けると期待されてきたユニクロのビジネスモデルに陰りが出ていることに、投資家が失望したからにほかならない。想定外だったのは、米国事業の赤字幅が拡大したことだ。米国はファストリが最優先市場と位置づけるアパレルの世界最大マーケットである。ユニクロを40店以上展開する。しかし、ブランドの認知度は上がらず、来客数が低迷。赤字幅が拡大し33億円の減損を計上した。12年に買収した高級ジーンズのJブランドも51億円の減損を出すなど、不振を極めた。
20年に売上高5兆円の目標を掲げており、その実現の大前提となる米国で200店舗を展開する予定だったが、急ブレーキがかかった。
■国内ユニクロ事業の不振
国内事業の不振は、かなり深刻だ。15年6〜8月期の国内ユニクロ事業の営業利益はわずか35億円。既存店売上高は前年同期比4.5%減と失速した。6、7月は約3年ぶりに2カ月連続で前年同月の実績を下回った。
ユニクロは天候不順を不振の理由に挙げたが、競合他社はこの間も堅調に推移していた。圧倒的な勝ち組だったユニクロが独り負けの状況となった主な理由はほかにあった。それが、値上げの影響である。
円安による原価高をカバーするため、14年の秋冬商品を平均5%値上げした。値上げ後、来客数は前年割れになる月が増えた。値上げによる客単価増で来客の減少を補い、既存店売り上げはプラスを維持するという計画だったが、顧客はこれに拒否反応を示した。ユニクロの最大の武器は低価格だったが、その魅力が薄れたためだ。
15年の秋冬商品も平均10%値上げした。値上げは2年連続になった。16年8月期は既存店売上高4%増を計画しているが、ハードルは高い。冬物商品の勝負どころである11月の既存店売り上げは8.9%減と大幅なマイナスになった。客数は12.9%減と2ケタ減少した。
12月はさらに落ち込んだ。客数は14.6%減、既存店売上高は11.9%減とマイナス幅は一段と拡大した。ファストリは、暖冬の影響で機能性肌着ヒートテックなど冬物衣料がふるわなかったことを理由にあげているが、構造的な不振とみられている。12月の既存店来客数は7カ月連続で前年割れとなり、マイナス幅は11、12月と2カ月連続で2ケタに達した。値上げで客離れが進んだことを数字が如実に示している。
「客数の減少を微減にとどめ、客単価の上昇で既存店売り上げをプラスにするという、増収・増益のビジネスモデルが破綻したということだ」(アパレル業界筋)
■業績にも変調
今月7日、ファストリは15年9〜11月期の決算を発表した。国内ユニクロ事業の不振が一段と鮮明になった。
売上収益(売上高に相当)は8%増の5203億円。海外での店舗数増加が数字を押し上げたが、営業利益は17%減の759億円、純利益は30%減の480億円にとどまった。9〜11月期としては5年振りの減益となった。
国内ユニクロ事業は冬物衣料の不振に加え、値上げによる客離れで事業利益が444億円と前年同期から14%減少した。海外も変調をきたした。好調を維持してきた中国本土や周辺の香港などでも計画を下回り、減益となった。
そこで、16年8月期の通期見通しを下方修正した。売上収益は前期比7%増の1兆8000億円、営業利益は9%増の1800億円、純利益は横ばいの1100億円。従来予想からそれぞれ1000億円、200億円、50億円、減額修正した。
15年11月、ファストリは東レと高機能繊維を使用した衣料品の売り上げが5年間で1兆円を目指す契約を結んだ。両社は06年に提携し、5年の長期計画に基づき機能性素材ヒートテックを開発しヒットさせてきた。発熱・保温機能を持つヒートテックを使った衣料品はユニクロのドル箱となった。11〜15年は当初想定の4000億円を大きく上回り、8000億円を売り上げた。16〜20年の取引額は累計で1兆円を超える見通しだ。
■ネット通販に活路
ファストリが売上高5兆円を達成するための切り札と考えているのは、電子商取引(EC)事業の拡大だ。15年10月8日、東京都内で開いた15年8月期の決算説明会で同社は、「グローバルでインターネット経由の売上高を、3〜5年で足元の5%から30〜50%に引き上げる」とぶち上げた。ITと実店舗を結びつけ、いつでもどこでも買えるオムニチャネルの構想はこれまでも口にしてきたが、具体的な数値目標と達成時期を明言したのは初めてだった。
14年より異業種と提携してオムニチャネルに本格的に着手している。システム面ではコンサルティング大手アクセンチュアと、デジタルサービスの研究や開発などを手がける新会社を立ち上げた。物流面では大和ハウス工業との共同出資で16年に物流センターをオープンし、首都圏の一部で通販商品の当日配送を開始する。
セブン−イレブン・ジャパンなどコンビニエンスストアとの提携も探る。ネット通販の商品を既存の宅配サービスで消費者の手元に届けるだけでなく、全国に張り巡らされたコンビニの店舗網で商品を受け取ることができる仕組みをつくる。
ファストリがネット通販を成長の柱に据えたのは、米アマゾン・ドット・コムの大躍進に危機感を抱いたからである。衣料品は手で触り試着して買うのがセオリーであり、ネット通販は難しいとされてきた。ところが衣料品専門のネット通販会社が急成長を遂げ、アマゾンの米国での衣料品の売り上げは20年には百貨店大手メーシーズを抜き、米国最大の衣料品販売会社になる見通しなのだ。
5兆円の売り上げの3〜5割をネット通販で稼ぐには、2兆円程度の売り上げが必要になる。米アマゾンの14年度売上高は11兆円弱。5年でアマゾンの5分の1以上の売り上げの実績をつくらなければならないことになる。
一方、リアルの世界でもファストリは積極的な展開をみせる。中国や東南アジアで年間100店舗のペースで出店を続ける計画だが、欧米ではユニクロ・ブランドは浸透していない。ブランドの認知度を上げながら店舗の増加の手を緩めない、質と量を両取りする戦略が成功するのか。ユニクロの国内店舗数は850店前後で頭打ちの状況が続くなか、海外事業拡大でさらなる成長を目指すファストリの挑戦に注目が集まる。
(文=編集部)
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