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橋社長は「決断」できるのか〔PHOTO〕gettyimages
マクドナルド、シャープ、東芝に迫る「消滅のXデー」! 〜何があってもおかしくないビッグスリー
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47297
2016年01月12日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
経済激動の2016年。どんな企業も生き残れる保証はない。変化に乗り遅れれば即死するのが、この時代の恐ろしさ。間違いなくこの3社にとっては、ヤバい年になる。
■Xデーは3月31日
シャープのXデーが刻一刻と迫ってきた。
「デッドラインは3月31日。合計5100億円の協調融資の返済期限です。この日までに銀行団に再建策を提示してローン期間の延長をのんでもらえないと、日々の資金繰りにも窮しているシャープには返せる資金はない。いよいよデフォルト(債務不履行)へ、というわけです」(シャープ幹部OB)
市場関係者の間では、シャープの「倒産」に賭ける金融ゲームがすでに大盛り上がりとなっている。
「マーケットには『倒産危険度指数』と呼ばれているCDS値というものがあるが、シャープのそれが急上昇している。つまり、シャープが倒産するほうにベット(賭ける)する投資家が急増している。昨年末には、UBSやドイツ銀行がシャープ株を空売りしていた。
米大手格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)でさえ、シャープの格付けを『投機的』に格下げした。S&Pは、『今後半年から1年程度の間に債務の再編が必要になり、債務履行が困難になる確率が少なくとも50%程度ある』と踏み込んで、警鐘まで鳴らしている」(大手証券会社の電機担当アナリスト)
それもそのはずで、シャープは直近の中間決算で、本業の儲けをしめす営業損益が250億円の大赤字。稼ぎ頭のはずの液晶事業がボロボロで、経営復活の道筋がまったく見えてこない。
そもそも、シャープは5月に発表した中期経営計画では100億円の黒字目標を掲げたばかり。橋興三社長は「不退転の決意で達成を目指す」と意気込んでいたが、結果は計画より300億円以上も下振れた。シャープ経営陣は、「半年先」もまったく読み切れない末期状況なのである。
「シャープが生き残る道は一つしかありません」と、BNPパリバ証券投資調査本部長の中空麻奈氏は言う。
「シャープ経営陣は市況判断を誤り、液晶の在庫は積みあがるばかりで、これが損失につながる悪循環から抜け出せない。リストラ策も中途半端なものばかりで、再建能力が期待できない。残された道は、液晶事業を売り払うしかない。シャープにとってはコア事業を売り払うことになるので苦渋の決断になりますが、これを受け入れるしかない。経営陣は決断するのか、しないのか。残された時間は多くはない」
事業売却先の候補には、すでに液晶大手のジャパンディスプレイや台湾の鴻海精密工業などの名前が挙がっている。
「鴻海はシャープの液晶事業が欲しいが、シャープが破綻した後に安値で買い叩きたいというのが本音でしょう。経済産業省は日本の液晶技術の海外流出を懸念しているので、ジャパンディスプレイへの売却が現実路線です」(前出・アナリスト)
虎の子の液晶事業を売り払えば、会社は縮小均衡するしかない。それこそかつての「早川電機工業」に戻っての出直しという形になるが、それが嫌なら死が待つのみだ。
そんなシャープ同様、絶体絶命の危機にあえいでいるのが日本マクドナルドHD(以下、マクドナルド)である。
客離れに歯止めがかけられない隘路に陥っているところ、昨年末には約5割の株を握る米マクドナルドが株の売却に向けて動き出したとの報道が駆け巡り、社内外に「いよいよ本国も見捨てたか」との沈鬱ムードがただよっている。
「あまり知られていませんが、マクドナルドの決算書には直営店の売上原価率が記載されています。それを見ると、'09年度には71・5%だったのが、年々上がっていき、最新データでは96・1%にまでなっている。材料費や人件費などを引くとほとんど儲けがない状況で、もはやビジネスとして成り立っていない」(コア・コンセプト研究所代表の大西宏氏)
■消滅する可能性がある
米マクドナルドが株を手放すとの報道が駆け巡ると、投資家たちは「英断」として好感、米マクドナルドの株価は急上昇した。マーケットは日本のマクドナルドを、売り払うべき「お荷物」だと認定したわけだ。
「マクドナルドは原田泳幸社長時代、コスト削減のために直営店を急激にフランチャイズ化させましたが、これがすべての元凶です。本部の経費は減るうえ、直営店の売却益が入って来るので、一見すると業績好調に見えるのですが、あくまで会計上の話。実際はこの頃からマクドナルドブランドの毀損は始まっていて、気付いた時には『ほぼ手遅れ』になっていたというのが現状です。
現在のカサノバ社長は抜本的な経営改革をやろうにも、フランチャイズ店舗が全体の7割ほどを占めるので、一店ずつ交渉をして改革案に賛同を得なければならず、大胆に動けない。結果、中途半端な改善策を講じるばかりで、状況は一向に改善しない」(元JPモルガンアナリストの塚澤健二氏)
カサノバ社長には交代説もささやかれる〔PHOTO〕gettyimages
株の売却をめぐっては、すでにファンドや大手商社などに打診されているというが、購入額は1000億円規模になる見通し。そんな大金を払って一度壊れたブランドを、誰が欲しがるだろうか。
「たとえ買い手が現れても、立て直すのは難しいでしょう。仕入れから商品設計、現場の社員教育まですべてをやり直さなければいけないので、難工事になるからです。個人的な意見だが、食品ノウハウのあるサントリーHDが手掛ければ期待できる。サントリーは外食事業でプロントも成功させているので、マクドナルドのイメージも大胆に変えられるかもしれない」(前出・大西氏)
逆に言えば、それほどの起死回生策でもなければ、再生は望めないということである。
「買収した企業が、店舗だけは活用するが、すべて自社ブランドの店にそっくり変えてしまうこともあり得る。つまり、日本からマクドナルドが消滅する可能性もゼロではない」(前出・塚澤氏)
では、東芝の場合はどうか。粉飾問題の発覚を機に猛スピードで転落し、昨年末には事業売却や人員削減などの大規模リストラを断行するまでに追い込まれた。
■膿を出し切る気がない東芝
東芝が発表した構造改革案によれば、今年度は5500億円という巨額赤字に落ちるが、これは一気に膿を出し切るためのもので、今後は半導体事業と原発などのエネルギー事業に経営資源を集中投下してV字回復を目指すという。
「かつてカルロス・ゴーン氏が日産をV字回復させたような道筋を考えているのでしょうが、東芝にはそれはまったく期待できない」
と、経済ジャーナリストの磯山友幸氏が言う。
室町社長の仕事は頭を下げることばかり〔PHOTO〕gettyimages
「というのも、東芝の経営陣は本気で膿を出し切る気がないからです。実は東芝は'06年に買収して子会社化した米原子力大手ウエスチングハウス(WH)について、いまだに抜本的な処理を先送りにしているのです。
東芝はWHの経営の実情について多くを語ろうとしませんが、仮にこの事業が大きくつまずいていれば、追加の減損処理を迫られる可能性が出てくる。最悪の場合は、株主資本が底をつく可能性すらある」
WHの買収、そして原発事業は歴代社長が力を入れて推進してきた事業であり、「室町正志社長はこの期に及んでも諸先輩に気をつかって手を突っ込めないのでは」と見られても仕方がない。
「室町社長がV字回復を託している半導体事業にしても、実は粉飾問題で辞任した元取締役の小林清志氏と顧問契約を結び、その小林氏に頼っていた。それほど人材が育っていないということでもあるし、引責辞任した役員と顧問契約を結んでしまうような東芝の体質は相変わらずということ。
そもそも半導体事業は価格競争が激化しているうえ、浮き沈みが大きくて安定しない。市況が悪化すれば、逆に経営の足かせになりかねない」(大手電機メーカー幹部)
原発事業にしても、世界的な反原発ムードが高まる中で、東芝は新規受注で苦戦が続いている。中国での需要は期待ができるが、中国は「国産化」を進めているので、東芝がこの恩恵にあずかれる期待は薄い。
半導体も原発も大コケすれば、東芝は一気に「次のシャープ」「次のマクドナルド」に仲間入りするわけだ。
波乱の2016年—。なにが起きてもおかしくはない。
「週刊現代」2015年1月16日・23日合併号より
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