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中国政府の「誤った一手」が、再び世界同時株安を招く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47330
2016年01月12日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■連鎖安の嵐
2016年の第1週、世界の株式市場で年初としては異例の同時株安の嵐が吹き荒れた。現時点ではっきりしているのは、元凶がチャイナリスクだったことだ。昨年の夏、世界を震撼させた火種がわずか4カ月で再燃したのである。
しかし、不幸なことに、中国当局は市場を小手先でコントロールできると考えているようだ。マーケットの混乱を避けようと、上海市場の閉鎖や大株主の売却制限といった対症療法に終始した。このため、売り場を求める嵐は東京市場に上陸。戦後初めて日経平均株価が年初から5日急落するという災禍をもたらした。
とどまるところを知らない嵐は、他のアジアや欧州の市場を軒並み下落させた後、大西洋を渡った。そして、ニューヨーク・ダウ(工業株30種平均)は年初の5営業日として過去最大の下げ率を記録した。
あれだけ下げたのだから、世界の株式市場は今週、そろそろ下げ止まり、小康状態に入ってもおかしくないところだ。
とはいえ、連鎖安の嵐を繰り返さないためには、中国が小手先の対応を改めるだけでは不十分だ。急落のメカニズムの徹底的な究明と、かつてないクラスの国際協調が必要である。果たして、今の世界に、この重責を担えるリーダーがいるだろうか。
年初に勃発した今回の世界同時株安の深刻さをはっきりと表したのは、先週末(8日)のニューヨーク市場の動きだ。この日、最大の注目材料だった米雇用統計(昨年12月分)が、非農業部門の雇用者数が29万人増と、事前の大方の予想(20万人増)を大きく上回ったにもかかわらず、買い手の勢いは続かなかった。
ダウ(工業株30種平均)の終値は前日比167ドル65セント安の1万6346ドル45セント。年初の5営業日としては過去最悪の下落率を記録した。S&P500種のパフォーマンスも、データが遡れる1928年以降の最悪の水準という。
問題の5日の間、ニューヨークと東京には、相場が底入れして世界同時株安にピリオドを打ってもおかしくない局面があった。ところが、それぞれの局面でいずれも買いが十分に膨らまず、全体として市場が弱気に覆われていることを浮き彫りにした。先週末のニューヨーク市場の動きを見る限り、地合いの悪さは今週以降に持ち越されかねない。
■今さらオバマに頼れない
そうした中で、内外の市場関係者が高い関心を向けているのが、米東部時間の12日に最後の一般教書演説を行うオバマ米大統領のリーダーシップだ。
サブプライムローン問題に端を発したリーマン・ショックの最中に、“Yes, we can”を合言葉にさっそうと登場し、もたついていた前政権に代わって、米金融機関経営の救済・健全化やゼネラル・モーターズとクライスラーの破綻処理・再生を断行した実績に、多くの関係者が一縷の望みを託しているのである。
とはいえ、新たな指導者を選ぶ大統領選がすでに本格化し、もはやオバマ政権はレームダックだ。相次ぐ乱射事件の再発防止を目指す銃規制を巡って議会との対立を深める大統領に、今さら国際金融マフィアの統率を期待するのは無理がある。
一方、8年前のリーマン・ショックの際、異例の財政出動で内需拡大を実現し、世界経済の危機克服に貢献した中国も、ここ数年は見る影もない。
今回の世界同時株安の発端は、上海市場の動揺だ。米国の金融政策正常化に伴う新興国の利上げ追随が世界経済の足を引っ張りかねないリスクや、サウジアラビアのイランとの国交断絶が国際資源市況に与えるリスクは目を離せないものだが、世界第2の経済大国になった中国経済の変調は比較にならないほど大きなリスクである。
中国にはデタラメと言われるGDPを始めとした経済統計を速やかに整備し、実体経済をガラス張りにしたうえで、経済構造改革の道程を示すことが求められている。
だが、長年、マーケットと共存してきた先進国と違い、中国は今なお共産主義の新興国であり、市場の運営の経験が不足している。習近平政権は避けてはいけない抜本策を避けて、小手先の対応だけで市場をコントロールしようと格闘している。
■中国政府の大きな間違い
今回の下げ局面で、サーキットブレーカー制度に基づく措置だとして、市場を閉鎖して人為的に取引を停止したり、大株主の売買制限を延長したりといった対応をしたが、大量の売りを先送りするだけだ。こうした小手先の対応で市場のかく乱要因を根絶することは不可能である。
また、年明けからの株価の急落と対応の不手際を理由に、証券当局トップの肖鋼・証券監督管理委員会主席の更迭論が取り沙汰されているのも、中国政府の大きな勘違いと言わざるを得ない。
株価暴落の歴史を振り返ると、過去に例のない混乱を収拾するのに必要なのは、過去に例のない危機回避策の構築と経済構造改革の加速である。それによって、市場の心理的な動揺を沈静化することが不可欠なのだ。
リーマン・ショック後、G7(先進7か国)だけでは対処しきれないと、新興国を取り込んだG20ベースで国際協調を打ち出したのは、その典型的な例である。
さらに、相場の下げのメカニズムの解明も不可欠だ。先物の手口をみるとヘッジファンドなどグローバル資本の売り叩きのような投資戦略が散見されるほか、現物ではHFT(高頻度取引)などアルゴリズム取引と言われるハイテク投資手法が株安を加速している可能性が否定できない。
HFTは、コンピューターを駆使して1000分の1秒単位で売買を繰り返して利ざやを稼ぐもので、過去15年あまりの間に静かに進んだある種のイノベーションの産物だ。米国株など欧米の金融・資本市場のあり方を一変させたと言われる。半面、機関投資家や個人投資家が食い物にされかねないとの指摘もある。
特に、日本では、十分に検証がなされないまま、東京証券取引所が昨年秋、取引量の拡大を主眼に、こうした取引を呼び込み易いシステムを導入(強化)したばかり。今回は、その影響の有無や功罪をきちんと検証することが求められている。
■日本の大臣がこんな態度でいいのか
グローバルな視点に照らすと、安倍政権の意識の低さにも問題がある。
8日の記者会見で、麻生太郎財務相は「日本の経済のファンダメンタルズは悪いわけではない」ので、「おたおたする話ではない」と述べた。これは、何もする気がないと言っていることに他ならない。
また、甘利明経済財政・再生相も同日、「(日本株安は)外的要素が大きい」「世界的に落ち着くことを期待しつつ、日本経済再生に取り組む」と語った。が、こちらは国内対策にしか関心がないと言っているのに等しい。
2人の大臣はそろって、日本が世界経済の荒波の真っただ中にある事実を自覚していないことを露呈したのである。
深刻なのは、世界同時株安が実体経済に悪影響を及ぼし始めれば、日本経済も無傷ではいられない点である。安倍政権は、安全保障論議に熱心なのが特色だ。しかし、それだけでなく、市場や経済の安定のための国際協調にも万全の注意を払い、指導的な役割を果たすことが期待されている。
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