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2016年も米国は世界の牽引役を担えるのか
2016年後半、米国減速で世界・日本経済に黄信号
http://diamond.jp/articles/-/83918
2016年1月5日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■資源バブル崩壊で景色一変 今年の鍵を握るのは米国
2015年を一言で表現すると、中国経済に振り回された年だった気がする。その減速が鮮明化したことで、原油や鉄鋼石、銅などの資源価格が大きく下落した。“資源バブル”が弾けたことが、世界経済の景色を大きく変化させた。
今まで資源産出に依存してきた、ブラジルやロシアなどの経済が落ち込んだ。それに加えて米国FRBが約9年ぶりに金利引き上げを実施したこともあり、新興国から多額の投資資金が流出し、主要国の経済が軒並み減速した。BRICSを中心にした新興国ブームが終焉を迎えたのである。
おそらく、2016年の前半はそうした動きを引き継ぐことになるだろう。新興国の経済が短期的に盛り上がることは考え難い。2016年以降の世界経済を占う上で、最も重要なファクターは米国経済になるだろう。
これまで、米国経済は堅調な展開を続け世界経済を牽引してきた。それは、わが国の大手自動車企業などの収益を見ても明らかだ。
問題は、同国が、今後も世界の牽引役としての役割を担えるか否かだ。足元の米国経済を概括すると、川上の製造業部門には既に陰りが見え始めている一方、川下の個人消費はしっかりしており雇用状況の改善が続いている。
ただ、そうした経済状態を長期間続けることは難しい。循環的要因を考えても、どこかで米国経済はピークを迎えて、下降トレンドに向かうことは避けられない。
その局面が2016年内にやってくると、世界経済は徐々に厳しい状況に追い込まれる。その場合、株式が下落したり、為替市場でドルが売られるなど金融市場は不安定な展開になるはずだ。2016年以降の世界経済の鍵を握るのは米国と見る。
■中国は大きな不安要因にはならず 米国経済には既にピークアウトの気配
昨年、世界経済を大きく攪乱した中国は、2016年には大きな不安要素にはならないだろう。共産党政権が経済構造の変化を目指す以上、もう2ケタ成長に復帰することはないだろう。
中国経済は過剰債務や過剰設備など構造的な問題を抱えてはいるものの、今のところ共産党政権のグリップが効いており、短期的にそれらの問題が暴発する可能性は低いと見られる。緩やかに成長率を下げながら、経済のソフトランディングを図ることになる。
ただ、同国の株式市場は個人投資家が多く株価が乱高下しやすい。景気対策に対する期待が先行して株式バブルが発生する場合には、2015年の年央以降と同様、中国発の世界的な株価下落が起きることも想定される。
一方、米国経済の先行きにも無視できない不透明要因がある。一つは、FRBの金利引き上げによって住宅や自動車のローン金利が上昇し、個人消費の足を引っ張る懸念だ。
今まで堅調に推移してきた住宅や自動車の販売が、金利上昇に耐えられるか気になるところだ。足元で、住宅に関する経済指標にややピーク感が出始めており、米国の専門家の中にも懸念を抱き始める見方もある。
また、ドル高の影響もあり、輸出の動きが鈍くなっていることも懸念材料の一つだ。世界的な資源価格の下落に伴い資源やエネルギー関連企業を中心に、米国企業の業績は2015年の年央以降やや陰りが目立ち始めている。
今後、2009年夏場から回復基調を続けてきた米国経済に、循環的要因から息切れ感が出てくると、企業業績のピークアウト感が個人消費の足を引っ張る可能性が高まる。そうなると、米国に世界を牽引する役割を期待することが難しくなる。
■新興国の回復には多くの時間がかかる 金融市場の波乱要因になる可能性も
中国経済の減速鮮明化や資源価格の下落などによって、かつて世界経済を席巻したBRICSブームは間違いなく終焉を迎えた。
インドは多くの人口を抱えていることもあり、堅調な国内消費によって景気は何とかなっているものの、資源輸出依存度の高いロシアやブラジルは、既にかなり厳しい状況に追い込まれている。
それに伴い、多額の投資資金が主要新興国から流出し、当該国の経済に痛手になっている。今後、ドル金利の上昇が続くと、ドルベースの債務残高の対GDP比で高い中国、タイ、トルコ、ブラジルなどの諸国は利払い負担が増加することになる。
当面、これらの国に関しては外貨準備高が厚いこともあり、すぐに大規模な信用不安が持ち上がることはないだろうが、経済状態の回復には多くの時間を要すると見るべきだ。
12月のFRBの利上げに呼応して、メキシコやなど一部の国が利上げに動いている。利上げによって自国通貨が下落すると、深刻な輸入インフレが進行するため、やむなく金利の引き上げに踏み切らざるを得ないのである。
景気を冷やしてしまうリスクを冒してでも、インフレが進むことを抑えようとする当該国中央銀行の苦肉の策と言える。
サウジアラビアなど中東の主要産油国は、原油価格の下落で手取りの輸出代金が大きく減っている。それに加えて、これらの諸国は、自国通貨とドルが連動するドルペッグ制を取っており、FRBの利上げに連動して自国の金利引き上げを行なっている。
中東産油国の経済状況はかなり悪化していると見られ、今後の原油価格の動向次第では、欧米諸国へ投資した資金の回収を行う可能性も指摘されている。それが本格化すると、世界の金融市場にとって波乱要因になることも考えられる。
■米国経済の堅調は年前半まで 後半は日本経済にも下押し圧力
2016年の前半、米国経済は堅調な個人消費を背景にそれなりにしっかりした足取りで歩むことができるだろう。しかし、安定した展開で年後半、さらには来年に向かって進むことは難しいだろう。
川上である製造業部門のピークアウト感が続くと、労働市場の回復にも一服感が出るはずだ。そうなると、いずれ川下の家計部門にマイナスの影響を与えることになる。米国経済は2016年後半以降、徐々に減速傾向が出始める可能性は高い。
米国経済に減速感が出てくると、世界経済にも黄色信号が灯る。わが国をはじめ世界の主要国の景気動向にも下押し圧力がかかる。それは、次第に金融市場の参加者にも影響を与え、大手投資家のリスクオフの動きを加速させる可能性がある。
投資家がリスクオフに動き出すと、米国をはじめとする主要先進国や新興国の株式市場は軒並み不安定な展開になるはずだ。株式市場が不安定化すると、負の資産効果や人々の心理状況の悪化を通して実体経済にマイナスの影響が及ぶ。
実体経済の落ち込みは、原油や銅鉱石などの資源価格の下落をもたらす。それは資源輸出国のみならず、世界経済に大きなデフレ圧力を与える。
そうしたシナリオが現実味を帯びてくると、主要国は一段の経済対策を打たざるを得なくなる。わが国やEUは財政・金融政策を動員せざるを得ない。さらに思い切った金融緩和策の実施を余儀なくされる可能性が高い。
現在、金融市場で、「米国経済の堅調さが年後半まで続けば、FRBは2016年に2回ないし3回の利上げが可能」との見方が有力だ。一方、同国経済の減速が早い時期に明確になると、「その場合、FRBはとりあえず金利の引き上げを止めて、景気の推移を注視することになる」との見方もある。
そうした厳しい見方の可能性が高まると、為替市場でのドルの上昇余地は限られる。特に、投資家のリスクオフの動きが早期に顕在化すると、円はむしろドルに対して強含みになる可能性が高まる。
いずれにしても、米国経済の動向から目を離すことはできない。
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