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新日本監査法人本部が入るビル。所属する会計士にも1〜6カ月の業務停止の処分が出されたのに比べると、法人への処分は甘く見える/東京都千代田区(撮影/写真部・岸本絢)
東芝不正見逃した新日本監査法人 見せかけの「重大」処分〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160105-00000004-sasahi-ind
AERA 2016年1月11日合併号より抜粋
東芝の不正会計を見抜けなかった新日本監査法人が処分された。重そうな処分にも見えるが、金融庁は上手に的を外していないか。
「下記7人の公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した」
2015年12月22日、東京・霞が関の金融庁会議室。監査法人を担当する企業開示課の担当者が、東芝の不正決算を見逃した新日本監査法人への処分について説明した。
初めに名が挙がったのは常務理事で、監査チームのリーダー格だ。監査体制に責任を持つ大物がいながら、なぜ不正を見逃したのか。金融庁の見立てを要約すると、「長年担当した会計士が、東芝を過信し、説明や資料を批判的に検証できなかった」とはいえ、悪いのは東芝で、監査法人はだまされた被害者。そんな筋書きになっている。
そうだろうか。世間は監査法人の「共犯」を疑っている。
「私たちも疑ったが、故意を立証する事実は見つからなかった」
金融庁の担当者は言う。結局、下された処分は、新規契約禁止3カ月と業務改善命令、21億円の課徴金。監査法人に課徴金が科されるのは初で、重い処分にも見えるが、
「業務停止に踏み込まない甘い処分。課徴金で重く見せた」
そう見る業界関係者は少なくない。
カネボウの粉飾決算では06年に中央青山監査法人(当時)が2カ月の業務停止処分を受けた。その結果、決算への支障を恐れた顧客企業が契約を打ち切り、中央青山は破綻。新日本に同様の処分を出して、企業に「監査難民」が出ると大混乱になる。だから、「厳しい処分は出ないだろう」という大方の見方通りの結果になった。
今回の処分を詳しく見ると、金融庁の弱腰がにじみ出ている点がまだ見つかる。処分対象にしたのは、パソコン事業や半導体事業など東芝の第三者委員会が不正を指摘した分野だけ。本誌昨年12月7日号でも報じた、東芝の不正会計疑惑の「本丸」、ウェスチングハウス(WH)の「のれん代」には触れていない。
純資産2400億円のWHを東芝は約6千億円で買収した。WHが営む原子力ビジネスはこれから広がる、と見込んで差額の約4千億円をのれん代として計上した。それが見込み違いだったことから東芝の迷走が始まった。日米にまたがる原子力ビジネスの会計処理はどうなっているのか。東芝疑惑の核心はそこにあるが、金融庁はメスを入れず、やり過ごした。
「検査は処分事案以外でも行った。何を調べたかは言えない」と金融庁の担当者。処分がなかったのは問題なしということか。そう問うても答えはなかった。
処分を受け、新日本は東芝との監査契約を辞退する、と発表した。来年3月期の決算は別の監査法人が担当する。新たな会計士は、曇りない目でWHののれん代を判断できるだろうか。
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