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12月16日に実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の第5回会合。ここで料金引き下げに向けた方針が打ち出された
さらにケータイ料金が上がる公算…格安スマホ普及を妨げ、業界の競争力も削ぐ愚策
http://biz-journal.jp/2015/12/post_13043.html
2015.12.27 文=佐野正弘/ITライター Business Journal
9月に安倍首相が引き下げの検討を要請したことを受け、総務省で議論が進められてきた携帯電話料金。12月16日に議論がまとめられ、18日にはキャリア(携帯電話会社)に料金引き下げに向けた要請も実施されたが、改めて議論の内容を振り返ると、携帯電話業界に対する明確なビジョンを持たないまま、公平性の追求に終始するあまり、かえって混乱をもたらそうとしているように見える。
■料金引き下げの議論が終結
10月から12月にわたって総務省の「ICTサービス安心・安全研究会」において、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が実施され、料金の引き下げに関する議論が進められた。
5回にわたるタスクフォースでの議論の結果、12月16日には料金引き下げに向けた方針がまとめられ、18日にはそれを受けて総務省が「スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針」を打ち出している。その内容によると、料金引き下げに向けては3つの方針が示されている。
具体的な内容を確認すると、1つ目の方針は「スマートフォンの料金負担の軽減」であり、「ライトユーザーや端末購入補助を受けない長期利用者等の多様なニーズに対応した料金プランの導入等により、利用者の料金負担の軽減を図ること」と説明されている。要するに、あまり利用しない人向けの安価な料金プランの提供を、キャリアに求めているわけだ。
2つ目の方針は「端末販売の適正化等」である。こちらは主に、「通信サービスの契約と一体的に行われる端末の販売について、店頭において端末販売価格の値引きや月額通信料金割引等に関する利用者の理解を促すための措置を講ずること」「MNP利用者等に対する端末購入補助について、端末の価格に相当するような行き過ぎた額とならないよう、適正化に向け取り組むこと」と説明されている。
今回のタスクフォースの議論でもっとも時間が費やされていたのが、この端末販売に関してであった。キャリア毎月の通信料から端末を値引くための販売奨励金を捻出。特にMNP(携帯電話番号ポータビリティ)で移ってきたユーザーに対し、それを使って0円など極端に安価な価格で端末を販売したり、何万円もの高額なキャッシュバックを提供したりするなどの“大盤振る舞い”を実施する一方、機種変更をしないユーザーはそうした恩恵にあずかれず損をし続けることを問題視。これを改善するための方策について議論が進められた結果、総務省側からキャリアに対し、MNP利用者を極度に優遇する割引を提供しないよう要請するに至ったのだ。
そして3つ目は、「MVNOのサービスの多様化を通じた料金競争の促進」である。これは従来MVNOが求めていた、キャリアが持つ加入者管理機能の開放に向けた協議を促進するというもの。ネットワーク制御に必要な、電話番号や端末情報、顧客の契約状況などといった情報を管理する機能をMVNO側が持つことで、MVNOが独自のSIMカードを発行したり、料金プランを自由に設定できたりするようになる。MVNOの競争力を高めるためにも、加入者管理機能の解放促進を積極化させたい狙いがあるようだ。
■MVNOの活性化よりもキャリアへの値下げを優先
ようやく料金引き下げに向けた方針が打ち出され、キャリアにも要請がなされたことから、今後はキャリアがこの方針を受けてどのような対応を実施するかが焦点となってくるだろう。しかしながら今回のタスクフォースの議論と、それを受けて打ち出された方針を見ると、一貫性を欠くなど疑問を抱く部分が少なからずある。
たとえば今回の方針では、キャリアに対しライトユーザー向けの低価格な料金プランを提供することを求めており、16日のタスクフォースの取りまとめを見ると、「対象年齢や機種を限定して提供されている5,000円以下のライトユーザー向けプランの価格帯も参考に」ライトユーザー向けの料金プランを検討すべきとしている。
実際、大手キャリアがライトユーザーが多いとされるシニア向けなどに提供している料金プランを見ると、高速データ通信容量が1GB以下で5000円以下という料金を実現しているものが多いことから、こうした料金プランを全年齢に広げることを想定しているようだ。
だが、そもそもキャリアが安価な料金プランを提供することは、ライトユーザーがキャリアにとどまり続けることも意味している。最近は安価な料金で勝負をしているMVNOがライトユーザー獲得に向け力を入れているが、今回の方針ではキャリアからMVNOへとユーザーが移動することを阻止し、MVNOの競争力向上を阻害する危惧がある。
もちろん、MVNOの料金プランは2000円前後であるのに対し、キャリアが新たに提供する料金プランは安くても5000円前後となる可能性が高く、料金面ではMVNOが有利であることに変わりはない。だがキャリアにライトユーザーがとどまり続けること自体、ライトユーザーを獲得して競争力を高めたいMVNOにとっては不利になることは確かだ。
一方でMVNOに対しては、先の取りまとめにおいて「MVNO自身が、大手携帯電話事業者との差別化を図りつつ、より多くの利用者から選ばれるような戦略をとっていくことが望まれる」と触れられており、加入者管理機能の開放を前提にやや突き放しているのも気になる。その開放も、協議の促進はするもののいつ実現するかはわからないし、仮に開放が実現したとしても、MVNOにとって自由度が高まるメリットがある一方で、運営や管理にかかるコストや手間が増大するため、MVNOという事業自体のハードルを上げることにもつながりかねない。
そうしたことから今回の方針では、MVNOの競争力を高めるよりも、増えすぎたMVNOの淘汰を狙っているように見えなくもないのだ。
■将来的に端末代が値上げ
また、もっとも時間をかけて議論された端末の割引、ひいては高額キャッシュバックの問題に関しても、割引を抑制する方針が打ち出されたことによって、結果的に多くのユーザーが損をする可能性が高まっている。
というのも、今回の方針では公平性が非常に重視されており、料金を下げるべきはこれまで端末値引きの恩恵を受けられなかった、機種変更をあまりしないライトユーザーとされている。スマートフォンを頻繁に利用しているユーザーに対しては応分の負担をするよう求めていることから、値引きの可能性はないといっていいだろう。
その一方で、端末購入時の割引が抑えられ、端末代が値上がりする可能性が高まることから、多くのユーザーにとって値上げ要因が増えてしまうのだ。安倍首相の料金引き下げ発言とは逆に、多くの人が端末代値上げで損をする可能性が高いというのは、なんとも皮肉な話でもある。
今回の措置は、あくまで高額キャッシュバックなどによって、端末代が「0円」を切ってお金がもらえてしまうような状況を阻止するためであり、販売奨励金を完全になくすわけではないと説明されている。しかしながら今回の方針をバネに、総務省側では今後一層公平性を追求し、販売奨励金の額を大幅に抑え、高額な端末は高額で販売されるようにしたいものと見られている。将来的に端末代が値上げしていくことに変わりはないだろう。
ビジョンが見えてこない
しかし、そのことが定期的な端末の買い替えを促し、国内で最新の通信インフラをいち早く普及させるのに大いに役立っている。実際、LTEによる高速なインフラがいち早く広まったのは、日本のほか米国、そして韓国と、いずれもキャリア主導で端末販売が進められていた国である。
また、高価格な端末を安価に販売することは、国内で高性能な端末を開発し、それが高性能な部品を生み出して海外への輸出拡大につながっているほか、高性能端末をユーザーが手にすることでコンテンツやサービスの利用が促進され、日本を世界一のアプリマーケットに育てたことも見逃せないだろう。
それだけに、今回の総務省の方針でもっとも疑問を抱くのは、結局日本の携帯電話市場をどう育てていきたいのかがまったく見えず、近視的な対応に終始していることだ。公平性を追求すれば携帯電話料金の不公平感はなくなるかもしれないが、高速インフラの普及や日本の端末・部品産業などに大きな影響をもたらし、さまざまな面で国際競争力を失わせることにもなりかねない。
実際、今回の総務省方針でもっとも恩恵を受けるのは、低価格端末に強みを持つ中国などのスマートフォンメーカーではないかと推測され、日本の産業にとってメリットにつながるのか疑問が残る。
現在の業界の商習慣がデメリットをもたらす部分があることは事実だが、一方でその商習慣がもたらす特性が、日本ならではの独自性を生み出しているのもまた事実だ。それを「ガラパゴス」といって切り捨てるのは簡単だが、独自性を失えば自国の特色を失い、ひいては国際競争力を失うことにもつながりかねない。
携帯電話料金と商習慣の問題を考える上でも、そうした日本の独自性をつくり上げつつ、競争力向上へとつなげるための取り組みが、真に求められているのではないだろうか。
(文=佐野正弘/ITライター)
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