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“国際通貨”人民元による日本への挑戦が行きつく先
http://diamond.jp/articles/-/83823
2015年12月25日 莫 邦富 [作家・ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン
11月30日、IMF(国際通貨基金)が人民元をSDR(特別引出権)の構成通貨として採用すると正式に決定した。中国のメディアはそれを「歴史的な一歩」と評価し、民間でも人民元が国際通貨へと大きな一歩を踏み出したと見て歓迎している。
SDRは国際的な主要通貨で構成される架空のバスケット通貨だ。外貨不足に備えた各国の準備資産を補完する手段のひとつとして活用されている。
現状ではドル(構成比率41.73%)、ユーロ(同30.93%)、円(8.33%)、ポンド(8.09%)の4通貨のみで構成されている。この4通貨のいずれも国際通貨の中でも世界的に評価が高いハードカレンシーだ。その意味では、SDRは国際通貨のエリートクラブと言われるほどの存在だ。
IMFのこの決定により、人民元は来年10月にようやくこのクラブに入ることができると言えよう。しかも、人民元がドル、ユーロに次ぎ、新たに10.92%の比率で入ることになる。先輩会員の円、ポンドをいきなり抜いての堂々3位だ。
だから、一部のメディアは、「経済の減速、株価のバブルとその崩壊など、必ずしも明るい知らせばかりではない中国にとっては国威発揚にもつながる」と報じている。
実際、日本国内にも、長い間、人民元のSDR入りが不可能と見る世論が一部ながら、存在していた。実際、「いずれにせよ、IMFのSDRに人民元が認証されるなんて、あり得ない未来だと言えるでしょう」と公言するところもあった。
しかし、人民元が国際通貨になる道のりはまだまだ険しいものがある。国際通貨の仲間入りといっても、人民元の国際通貨としての現時点での実力は必ずしも高いとは言えない、と指摘する声がある。
その意味では、人民元が国際通貨としての実力を発揮するには、中国経済の健全化と安定化が不可欠だと言えよう。直近の課題としては、経済低迷からの脱出が必要だ。
■ジンバブエによる人民元の法定通貨採用が意味すること
一方、農村から都会を包囲する中国革命が成功を収めた秘訣のように、人民元の国際通貨への道のりもその傾向を見せている。数日前に、筆者の目を惹いたニュースがある。
中国がジンバブエとの関係をさらに強化するため、年内に期限を迎える債務4000万米ドル(約48億5000万円)の返済を免除した。一方、ジンバブエは自国の新たな法定通貨として人民元の採用を決め、2016年から現在流通している米ドルなどと併用させると予告した。中国に対する負債も今後、人民元で返済することになった。
ジンバブエは2012年時点の統計で、総人口が約1372万人。タバコや綿花などが主な農産物だ。鉱産物としてプラチナ、クローム、ニッケル、金、ダイヤモンドなどを採掘しているが、近年、経済が非常に厳しい状態にある。元法定通貨のジンバブエドルは15年に廃止することになった。その代わり、米ドルや南アフリカ・ランド、英ポンドが通貨として流通している。
こういう状態で人民元を法定通貨に指定したことは、中国の債務放棄へのお返しであると同時に、ドルによる経済のコントロールからの一種の対抗策または逃避策でもある、と言えよう。
■国際通貨を目指した人民元の長かった闘い
中国メディアの報道によれば、アフリカでは一部の国々が中国との金銭決算においては、すでに人民元を使用している。たとえば、南アフリカは中国との貿易においては、30%以上の金額を人民元で決済している。
しかし、ここまでやってきた人民元の国際通貨化の道のりは波乱万丈そのものだった。1997年、アジア金融危機が発生した際、ジョージ・ソロスなどが率いるヘッジファンドが一斉に資金逃避したため、タイをはじめとするアジア諸国は貨幣の為替レートが軒並み暴落し、経済が壊滅状態に陥ってしまった。そのとき、人民元は頑として切り下げせずにアジア金融危機の嵐の襲来に耐え抜いた。当時、中国のこの措置を「アジア金融の防波堤」と評価する声もあった。
自由に両替できず、1978年の改革・開放以来、暴落し続けて中国国民のなかでも人気がなかった人民元ははじめて注目の存在となり、その動きがアジア、そして世界の関心の的となった。一方、アジアの代表通貨の座を目指して、これまでの地位を強固にしようと動く円と日増しにその存在感を強めつつある人民元もその辺から激しい攻防戦を始めた。
やはりその頃から、中国では「亜元」という言葉がやけに目につくようになった。米ドルのことを中国では“美元”と呼ぶ。ユーロは“欧元”。だから、この“亜元”とは、アジアン・ドルのことを言う。
■国境を越えた人民元は日本への挑戦を加速する
当時、経済の持続的な高度成長によって自信を高めた中国国内は、次第にアジアの統一通貨「亜元」を語り始めた。2003年5月29日に発売された「ファーイーストエコノミックレビュー」も、「The New Asian Dollar」というタイトルで中国の通貨人民元の台頭に関する特集を組んだ。
中国経済の成長の勢いをそのまま保っていけば、GDPが2010年にドイツを、20年には日本を超えてしまうだろう、現在中国領土外に流通している人民元はすでに300億元を超えており、いずれはドル、円、ユーロと並ぶ第4のハードカレンシーとなるに違いない、というのがこの特集の主な論調だ。
当時、私も自分がもつコラムのなかでこうした動きを取り上げた。北京の学者からも、「私たちはまず東アジア自由貿易地域(EAFTA)を築くことから、東アジア貨幣(EAC)を作ればいい」といった大胆な提案が出された。
しかし、日中間の政治的確執が続く中で、「亜元」を作りだす環境が形成できなかった。そこで人民元は「ファーイーストエコノミックレビュー」が描いた予想図の通り、ドル、円、ユーロと並ぶハードカレンシーの方向へ舵を切った。
12年前に、「亜元」を取り上げたコラムの中で、私は、「日本はこれから製造業だけでなく、金融の面でも中国からの挑戦を受けることになるだろう」と予言したが、人民元が国境を越えたいまは、まさに、日本は日増しに、中国から金融面の挑戦を受けている。さて、これからはどうなっていくのか。興味津々だ。
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