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KiOR社のホームページより
史上最高のベンチャー投資家が大ピンチ! 〜ITの流儀は「あの業界」では通用しなかった
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47066
2015年12月24日(木) ITトレンド・セレクト 小林 雅一 現代ビジネス
米国を代表するベンチャー・キャピタリストの手掛けた代替エネルギー会社が今、史上稀に見る経営破たんに瀕している。
それはまた、シリコンバレーなどIT業界で育まれたスピード重視の経営手法が、石油・ガスに代表される"伝統的"なエネルギー産業では通用しないことを示す事例としても注目されている。
●"A BIOFUEL DREAM GONE BAD" FORTUNE, December 15, 2015
■伝説的投資家が立ち上げたバイオ燃料ビジネス
上記記事によれば、先頃、経営破たんしたのは、米テキサス州に本社を構えるバイオ燃料企業「KiOR」。同社を事実上、立ち上げ、その後も強力に資金援助してきたのは米国でも有数のベンチャー・キャピタリスト、ビノッド・コースラ(Vinod Khosla)氏だ。
コースラ氏は元々、米国でも一、二を争うベンチャー・キャピタル「クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins Caufield & Byers)」で投資の腕を磨き、2004年に独立して自らのベンチャー・キャピタルを立ち上げた人物だ。クライナ―・パーキンスに在籍中の2000年には、米フォーチュン誌が「史上最高のベンチャー・キャピタリスト」と絶賛するほど卓越した投資家だった。
そんなコースラ氏が敢えてクライナ―・パーキンスを辞めて、自らの投資会社を立ち上げたのは、代替エネルギー事業に対する並々ならぬ熱意からだった。冒頭の記事によれば、コースラ氏は2006年に「石油への戦争」を宣言し、「今から25年以内に、我々(人類)はガソリン(石油)需要の大半をバイオ燃料で代替できるようになるだろう」との見通しを述べたという。
が、これほど代替エネルギーに対する思い入れが強ければ、逆に利益を出すためには、どんな分野にも投資するクライナー・パーキンスのような会社には居難くなる。だからコースラ氏は、敢えて自分の投資会社を興して、代替エネルギーへの夢を追い続けようとしたわけだ。
このようにして独立したコースラ氏は、その後、代替エネルギー事業を手掛ける幾つものベンチャー企業に投資したが、中でも最も力を注いだのが、冒頭で紹介したKiORというバイオ燃料企業だった。
KiORは、森林から木材を伐採した際に生み出される大量の木片(Wood Chip)などバイオマスを化学的に加工して、成分的にはガソリンと同等の代替燃料にする驚くべき技術を有していた。
■巨額投資と僅かな収益
この技術を製品化するため、コースラ氏を筆頭とする投資家チームと経営陣はミシシッピ州にあった製紙工場を買収して、バイオ燃料工場へと改築するなど総額6億ドル(約720億円)もの資金を注ぎ込んだ。そのうち1億6,000万ドル(190億円)近くはコースラ氏の私財という。
ところが、この工場は当初想定した生産量のほんの一部しかバイオ燃料を生産することができなかった。結果、これまでに同工場が稼ぎ出した売上は僅か230万ドル(2億7,000万円)に止まり、2014年にKiORは経営破たんした。
コースラ氏らは今、同社について米国の会社更生法「Chapter 11」を申請するなど再建を目指している。が、元々2億1,500万ドル(260億円)をかけて買収・改築した製紙工場を、今や210万ドル(2億5,000万円)で買い叩かれるなど苦戦している。
また悪いことに、コースラ氏らがKiORのバイオ燃料工場を構えたミシシッピ州は米国でも指折りの貧しい州だという。
彼らは、この工場を作るときに、自らの出資金額に加え、ミシシッピ州からも7,500万ドル(90億円)を借りていた。が、同社が経営破たんしてから今日まで、そのうち僅か600万ドル(7億2,000万円)しか州に返済していない。
このためミシシッピ州の政府関係者らが、「コースラ氏のような富豪が貧しいミシシッピ州からお金を借りて返さないのはけしからん」と激怒している。これを受け、同州の検察当局がコースラ氏や経営陣を詐欺の容疑で告訴したという。
さらに米SEC(証券取引委員会)もKiORの調査に乗り出した。それによれば、同社はミシシッピ州に作ったバイオ燃料工場の生産能力を実力以上に高く見せかけた疑いがあるという。最悪の場合、同社株主による大規模な集団訴訟が起きる可能性もあるという。
■経営に対するスピード感が敗因
KiORは何故これほど壮大な失敗を犯してしまったのだろうか?
冒頭のフォーチュン記事では、その最大の要因を「シリコンバレーに代表される米IT産業と伝統的なエネルギー産業における、経営に対するスピード感の違いではないか」と分析している。
たとえばKiORは創業から僅か4年後の2011年に株式公開(IPO、上場)を果たしている。が、当時から、このIPOは時期尚早との見方が強かったという。
コーセラ氏がかつて在籍していたクライナ―・パーキンスは、アマゾンやグーグルなど米国を代表するIT企業に投資することで大成功を収めた。確かに、こうしたインターネット企業であれば、彼らの優れた技術をベースに短期間で会社を育て上げ、それを上場させて巨額の利益を稼ぎ出すことが可能だ。
が、バイオ燃料などを手掛けるエネルギー産業の場合、その技術を製品化するまでの工程や、それに要する期間は、速攻が通用するIT産業とは比較にならないほど複雑で長期に渡る。つまりコースラ氏が長年親しんできたIT業界の経営手法を、無理矢理エネルギー業界に持ち込もうとして功を焦ったのが失敗の原因ではないかという。
さらに悪いことに、KiORが経営破たんに追い込まれた当時は、ちょうど、それまで高騰していた世界の原油価格が一転して急降下し始めた時期でもあった。
KiOR社のホームページより
昨今、原油価格がここまで下落するとは、素人はおろか専門家ですら予想できなかったはずだ。その最大の被害を受けたのが、石油への代替エネルギーを提供しようとしていたKiORであったことは言うまでもない。
以上のように非常な失敗に終わった代替エネルギー事業だが、当事者であるコーセラ氏や経営陣らは、失敗が大きければ大きいほど、そこから学ぶことも大きいという思いを抱いているらしく、いずれKiORの技術を活かして事業化に再挑戦する姿勢をのぞかせているという。
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