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銀行員にダマされないための「絶対正しい」マネー運用マニュアル
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47026
2015年12月24日(木) 山崎 元「ニュースの深層」 現代ビジネス
■なぜ今、「銀行員」を警戒すべきなのか
先日、筆者の実家で発見された古いポスターを一枚見て頂こう。
父親らしき男性(実際には近所の電通マンで、アカの他人だったが)に肩車された男の子が空を見上げている。コピーは「大きく育て!」と「ボーナスでつくるくらしの土台」の2つだ。
これは、約50年前の北海道拓殖銀行(地元では「たくぎん」と呼ばれていた)の「すずらん定期」という商品名の定期預金のポスターだ。そして、実は、肩車に乗っている男の子は子供の頃の筆者なのだ。
この頃、銀行は定期預金を中心に預金集めに力を入れていた。日銀のホームページの「主要金利」の表で当時の金利を見ると、公定歩合が6.57%、普通預金が2.19%だから、定期預金はこの間くらいの利息が付いていたのだろう。
インフレとの競争がどうかという問題はあっても、「貯金しよう」という意欲がそこそこに湧く金利が付いていた。
北海道拓殖銀行は後に破綻する訳だから(政府の判断によって預金者は損をしなかったが)、完全に安心してお金を預けていて良かったのかという問題はあるが(お金の世界に「絶対」は無い!)、当時の人は、銀行にお金を預けて安心できたし、銀行員には「堅くて真面目だ」という絶大な信頼があった。
だが、今では、そうは行かない。
銀行に預金しても「利息」は殆ど付いてこない。一方、銀行員が熱心に売る投資信託には、たっぷり「リスク」が付いて来る。加えて、それ以上に筆者が問題だと思うのは、銀行が顧客から大きな手数料を取ることだ。
ところが、こうした状況であるにもかかわらず、銀行の多くの顧客、特に、お金を持っている年齢の高い層の顧客は、まだ「銀行員は安心だ」という誤ったイメージを持っている。この現状とイメージのギャップが危険だ。
ポスターに載っていた男の子は、ポスターのコピーが幸せの呪文となったおかげか、ありがたいことに図体だけは「大きく育った」。そして、銀行の顧客に向けて銀行及び銀行員を警戒せよという趣旨の本を書くに至った。書名は『信じていいのか銀行員』(講談社現代新書)で、先週末に発売された。
■「信じていいのか銀行員」のポイント
2015年12月17日刊行 税別価格760円
この本で筆者は何を言いたかったのか。前書きと、後書きの、それぞれ冒頭部分を引用するのが分かりやすい。
前書きの書き出しは、次の通りだ。
<『信じていいのか銀行員』。結論を早く知りたい読者のためにお答えしよう。
『とんでもない! 銀行員を信じるような人になってはいけない』というのが本書のメッセージだ。>
一方、後書きは、次のように始まる。
<実は、著者にとって、本書を一番読んでほしい読者は銀行員なのだ。銀行の経営者および銀行員の皆様に、顧客と銀行の双方が長期的にうまく行くようなビジネスのあり方をあらためて考えてみることを期待するからだ。>
前書きで述べた内容は、読者が、お金に関する意思決定を、銀行員に一切頼ることなく「自分で」行うような、(1)常識的な経済的警戒心、(2)初歩のマネーリテラシー、(3)依存心の克服(銀行員に「話し相手」や「構ってくれる人」を期待してはいけない)、を持つ事で達成できるはずだ。
具体的にどうしたらいいのかは、著者としては「本を読んで頂けると、分かります」と言いたいところだが、お忙しい方もいらっしゃるだろうから、「考え方」のエッセンスをお教えしよう。
(1)お金の「使途」は後から自由に決めることが出来るので、お金の将来の使い道とお金の運用方法は無関係だ。お金は最も効率の良い方法で運用して、使い道を後で決めたらいいのだ。
(2)リスクの大きさは「(「リスク商品」に)幾ら投資するか」の金額で決めるのが適切だ。誰もが最も効率的な「リスク商品」に自分に適切なリスクの分量だけ投資すればいい。個人の「タイプ」によって適した運用商品の「種類」が変わるというのは、金融商品の売り手側が作った嘘だ。
(3)運用商品を選ぶ際に最も重要な基準は、確実なマイナス・リターンである「手数料」だ。この観点で評価すると、銀行の店頭には、「個人向け国債・変動金利10年満期型」以外に買ってもいい運用商品は存在しない。投資信託も、生命保険も、「買えないモノ」しかない。
(4)銀行員は、顧客のお金の流れを知っている「手強すぎるセールスマン」だ。銀行員にお金の運用(典型的には退職金の運用)を「相談」するのは(無料であっても!)全く愚かだ。商品の購入可能性がある相手を、相談相手にしないのが重要な原則だ。
具体的には、銀行で、「相談」をしてはいけないし、NISA(少額投資非課税制度)の口座を銀行に開くのは明確な損だし、投資信託(売れ筋の「毎月分配型」は全てクズであると断言できる)も、生命保険(個人年金保険は明確にダメな運用商品の一つだ)も銀行で買ってはいけない。
普通の個人にあって、銀行との付き合いは、普通預金(「一人一行1千万円迄」の預金保険の上限は守るべきだが、今は)と、せいぜい個人向け国債(変動金利・10年満期型)に限るべきだ。その代わり、時給の高い銀行員に無駄な時間を使わせてはいけないという節度も守ろう。本書は、銀行員と喧嘩せよとは述べていない。
■どのような銀行員ならいいのか?
さて、後書きに書いた「本書を一番読んでほしい読者は銀行員なのだ」というメッセージは100%本音である。
現実に、銀行員は顧客に信じられていると同時に期待されている。しかし、銀行及び銀行員には、現在の行動を改善する余地が大いにある。その改善は、たぶん、銀行の顧客と銀行自身にとっていいことだろう。
以下、拙著に明示的には書いていない、銀行及び銀行員にこうあって欲しいという具体像を少し申し上げてみたい。あれこれ考えると要望はかなりの数に上るが、この際、3つに絞る。
【銀行員への要望 その1】〜ダメな商品を売っていることを自覚せよ〜
銀行の店頭で売っている投資信託は、顧客の立場から見ると殆ど全てが「はじめから検討に値しないダメな投信」である。個人年金保険をはじめとする生命保険もそうだ。
「国内株式」、「外国株式」といった投資対象のカテゴリー別に投資信託を考えると、(1)市場のリターン、(2)運用スキルのリターン、(3)手数料によるマイナス・リターンの三つのリターンの合計が「顧客にとってのリターン」を構成している。
同じカテゴリーの投信の場合、(1)はどのファンドにも共通だが、(2)は事前には評価できず(相対的に運用が上手いファンドを事前に選ぶことは出来ない。例えば、過去の運用成績は将来の運用成績と無関係だ)、(3)は「確実な差」だ。
つまり、同一カテゴリーで販売及び運用管理の手数料が相対的に高い商品は、「それだけでダメな商品」なのだ。
銀行員が、それぞれの「市場のリターン」を予想できる訳もないし(もちろん、証券マンにもできないが)、運用スキルの評価が出来ると言い張る人は現実を知らない自信過剰か確信犯的な嘘つきだ。
銀行の店頭で売られている投資信託は、販売手数料が2〜3%位であることが多いし、運用管理手数料も1%台半ばのものが多い。投資家から見ると、これだけで「話にならない」。顧客の側で、銀行員の親切に好意を抱いて、「この人には手数料をたっぷり払ってあげたい」と思うのであれば、手数料が高い商品を売るのも「あり」だろう。
しかし、顧客がお金を運用する目的は「お金を増やすこと」にあるのだから、手数料の高い商品の購入は顧客の将来の運用資産の期待値にとって「深刻なマイナス」なのだ。
銀行員は、せめてこの事実を知り、「心の痛み」を感じながら、顧客に運用商品を売るのであって欲しい。
また、後で述べる要望にも関係するが、個々の銀行員は、真に顧客のためを思うなら、せめて現在ネット取引専用の扱いで売っているインデックス・ファンド程度の手数料の商品を売りたいと思うはずだ(ノーロード=販売手数料ゼロで、運用管理手数料は1%未満)。こうした商品でも、世間の最割安の商品には距離があるが、この程度くらいなら「サービスの対価だ」と言っても、「ひどく下品」ではない。
【銀行員への要望 その2】〜正直に儲けの額を言って、商品を売れ〜
前述のように、銀行で売っている投資信託や生命保険は、損得の分かる投資家から見ると、法外に手数料が高い。
拙著の中で具体例として紹介した、近年での屈指のクズ商品だと筆者が思う投資信託は、販売手数料が上限3.78%(税抜き3.5%)、運用管理手数料(信託報酬)が年率1.902%程度だ(「目論見書」による)。
このファンドを売るにあたっては、「分配金が毎月300円あって設定来1年数カ月安定している」(さすがに、その後200円に下がったが)といった、都合良く聞こえる事実だけを顧客に話すのでは不誠実だ。
例えば顧客が1千万円この商品を買うのだとすると、販売手数料が37万8千円、1年目の運用管理手数料が19万2百円で、はじめの1年間に56万8200円掛かる、ということを銀行員がはっきり述べて、顧客がそれに納得したことを確認した上で、この商品を売るのなら、これを買う顧客の判断基準は理解不能だが、この銀行員が顧客を騙しているとは思わない。
ビジネスの現実を考えると、銀行員に、手数料の高い商品を売ってはいけないとは言えない。しかし、顧客に手数料を知らせた上で、それに顧客が納得して商品を買うなら、顧客にその商品を売ってもいい、というくらいまでの「正直さと、慎重さ」を銀行員には求めたい。そうさせるには、どうしたらいいか。
銀行は、基本的に文書の文化だ。銀行が投資信託のような金融商品を販売する場合には、顧客が支払う手数料の実額とその明細とを分かりやすく記載した「手数料明細書」を銀行が顧客に提出し、顧客の署名・捺印を貰うことが必要だと定めるといい。
もちろん、銀行にはこの書類の控えを保存しておくことが義務付けられるべきだ。金融庁は、銀行への金融検査の際に、顧客の同意の信憑性と、情報開示の適切性をチェックし、指導するといい。文書確認は、リスクに対する納得だけが対象では不十分だ。
ついでに、年間累計の受け取り手数料額を顧客に通知する仕組みも作ると、金融庁が近年中途半端に気にしているらしい投信の乗り換え推奨に対する、効果的な抑止力にもなるだろう。
投資家が現実に気付き、銀行が真面目になり、金融庁にも張り合いが生まれるのだから、これはいい仕組みだと思うがいかがだろう。
【銀行員への要望 その3】〜顧客の資産から年間幾ら取っていいかを考えよ〜
拙著の後書きにも少し書いたが、顧客から預かっている資産から年間にどの程度まで稼いでいいのかを、銀行には意識的に考えて欲しい(証券会社が、ずっとやらずに誤魔化してきたことだ)。それは顧客のためでもあるが、長期的には銀行自身のためでもある。
それでは、銀行が稼いでもいい金額は、顧客の資産残高に対してどれくらいなのだろうか。
現在、賢い個人投資家がリスク商品に投資する場合、「国内株式」ならTOPIX連動型のETF(上場型投資信託)で運用管理手数料は投資額に対して年率0.1%程度、外国株式(先進国株式のインデックスファンド)で0.27%(税込み)程度である。
この条件を甘く見て0.5%として、銀行のアドバイスの最大限の価値をその程度とすると、「どんなに大甘に見ても」、顧客の資産残高に対して年率1%以上稼ぐのは取りすぎだろう。
つい先日、拙著の中で「警戒せよ」と呼び掛けた「ゴール・ベースド・アプローチ」(顧客の人生の目的=ゴールと資産運用を関連付ける営業話法)の本家米国の事情に詳しい米国在住の日系シンクタンク研究員と話をする機会があった。
彼によると、米国でゴール・ベースド・アプローチの受け皿となっているラップ口座の米国でリーズナブルとされる年間支払手数料率(経費率)は1%台であるという。これでも、まだ払いすぎだと思うが、投資家の側では、せめてこの程度に納めるのでなければ、手数料が過大だ。
顧客の運用資産(普通預金を除く)に対して、年率1%以下の獲得手数料に納めるのでなければ、少なくとも顧客の側にとって、銀行との付き合いは幸せなものではない。
「顧客の運用資産から、一年当たり1%を超える手数料を取ってはまずい!」と理解してくれているなら、銀行員は顧客のいいパートナーたり得る可能性を持っている。この程度の理解がない銀行及び銀行員は、顧客にとって「お金の敵」と呼ぶべき存在である。
銀行の経営者には、現状の延長線上を前提とするのではなく、顧客の資産も幸せになることが出来る新しいリテール・ビジネスのビジネス・モデルを考えて欲しい。
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