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シャープは税金を投入してまで救う価値がある企業か? 内紛ばかりを繰り返す
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47059
2015年12月24日(木) 井上 久男「ニュースの深層」 現代ビジネス
■大事な時に内紛
資金繰りにも窮し始めたシャープの経営が瀬戸際に立たされている。官民ファンドの産業革新機構主導で救済する方向が固まりつつあるが、一民間企業のシャープを、公的資金を使って救済する「大義名分」はあるのだろうか。
シャープが苦境に陥った原因を振り返ると、液晶への過剰投資が直接の原因だ。2012年3月期に3760億円、2013年3月期に5453億円の当期赤字を2年連続で計上。これにより、元々財務体質が強くなかったシャープは自己資本比率が低下し、資金繰りなど生き残り策をメーンバンクの三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行の2行に依存しなければ存続できない企業に転落した。
2012年4月に「ミスター液晶」と呼ばれ、シャープでは珍しい東大卒の片山幹夫雄社長が引責辞任し、後任に末席に近い奥田隆司常務が就いたものの、わずか1年で退任。会社の業績が急降下している最中にも、相談役に退いていた町田勝彦元社長・会長や片山氏らが再建を巡って主導権争いをして社内に「内紛」が起こった。
この頃、台湾のホンハイ精密工業と資本提携交渉が進み、不良在庫を抱えてネックとなっていたテレビ向けなどの大型液晶の堺工場を分社化し、ホンハイに売却、シャープのフル連結から外した。
そこまでは良かったが、シャープ本体にも出資を目論むホンハイと株価などの条件面で折り合わず、ホンハイとの資本提携交渉は流れた。この時点では、シャープの経営陣は、銀行から支援を受ければ何とかなると考えており、ブランド的には格下のホンハイを見下していた。
13年6月に高橋興三氏が副社長から昇格した。しかし、高橋社長は、製造業の再建のことが分からない銀行の操り人形と化し、しかも自分の同期や仲良しで周囲を固める役員人事をした結果、危機の最中にもかかわらず再び「内紛」が起こった。液晶事業担当の役員と管理部門の役員が赤字の責任を押し付け合うという醜い争いだった。
管理部門担当の役員は高橋氏と近かったことから、「内紛」には勝ち、そのまま役員として会社に残っている。
また、メーンバンク2行から役員が派遣されているが、なす術もないのが現状だ。債務と資本を入れ替えるデッドエクイティスワップ(DES)を実施して、帳簿上は自己資本比率を上げたものの、再建や将来の技術開発に必要なニューマネーが入ってきたわけではなく、抜本的な改革には繋がらなかった。
本質的でかつ大胆なリストラを行うにも、キャッシュが必要なのだ。
■かつての日本軍を彷彿させる
逐次的に小手先だけの改革を繰り返すシャープのこうした姿は、仏ルノーと提携する前の日産自動車と重なった。当時、筆者は朝日新聞経済部記者で日産の担当だったので、「デジャブ」だった。
かつての日産もコストが高いうえに売れない商品を作って、その責任を開発や営業、購買が常に擦り付け合っており、当期赤字を何年も垂れ流して自己資本比率が下がり、日本興業銀行(現みずほ銀行)や富士銀行(同)からの手助けなしでは資金繰りに窮する状態だった。
シャープのここ数年の動きは、戦力を逐次的に投入して結局は全滅してしまうかつての日本軍をも彷彿させた。
シャープの現状はこうなっている。10月30日に発表した2016年3月期決算の通期見通しは、売上比率の最も高い液晶事業の営業損益が450億円の黒字から一転して300億円の赤字に転落。全体の営業利益も期初予想から700億円減の100億になる見通し。
4四半期連続で下方修正を繰り返し、株価は100円台だ。冬のボーナスは前年比で半減の1カ月、おまけに社員には自社製品購入のノルマまで課せられている。
30代、40代の有能な人材は、退職金が割り増しされる希望退職の対象ではないのに、残っていても将来展望はないとして、会社に見切りをつけて転職に走っている。液晶開発のキーマンも辞表を叩きつけて会社を去ったそうだ。このままでは、「買い手」の付く優秀な社員ほど辞める動きが益々加速するだろう。
■「国益のため」は本当か?
こうした状況下において、官民ファンドの産業革新機構が動き始めた。同機構は、「官民ファンド」とは言っても、大半を政府が出資する「政府系ファンド」と言っても過言ではない。管轄は経済産業省だ。
シャープのスマートフォン向けなどの中小型液晶事業を分社化し、産業革新機構が筆頭株主のジャパンディスプレイ(JDI)が買収する案が有力だ。シャープの中小型液晶事業はかつて「亀山モデル」と言われた三重県の亀山工場が主力だ。
さらにシャープ本体にも同機構が出資して、家電などの他の事業のリストラや再建を支援する案も検討されている。
しかし、公的資金を使っている産業革新機構がシャープを救済する「大義名分」はない、と筆者は考える。「シャープが経営破たんして、液晶技術が中国や韓国に流れる」と危惧する声が経産省内にはあるが、そもそも液晶技術は「国益」のために守らなければならない技術なのかといった疑問がある。
液晶技術は陳腐化が加速し、かつてのメモリーと同じように設備投資競争によって優勝劣敗が決る製品となっており、今後の主戦場は中国に移っていくのではないか。
液晶技術を守るために公的資金をつぎ込んでも、それが雇用や税として返ってきて日本経済に好循環を生み出すとは到底思えず、どぶに捨てることにもなりかねない。もはや液晶は市場原理に任せておけばいい技術なのではないか。
そもそも政府主導による大手製造業の再生でうまくいったためしがない。かつて日立製作所やNECなどのメモリ―事業が統合して発足したエルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)に対して、09年、産業活力再生法が適用され、一般企業に公的資金が初めて注入された。
しかし、3年後には経営破たんして会社更生法を申請、米国企業の傘下に入った。しかも、この再建に絡んで経産省元審議官が株式のインサイダー取引を行って1、2審で有罪判決を受けている。
さらに言えば、シャープの苦境は、政府側にも責任の一端がある。JDIは4年前、ソニーと東芝、日立製作所、パナソニックの中小型液晶事業を産業革新機構主導で統合させて発足した会社だ。
中小型液晶でシャープなどとの競争に負けた4社を国が支援して再生させた。シャープは中国でそのJDIが仕掛けた安売り競争に負け、頼みの綱だった中小型液晶事業も躓き始めた。シャープにしてみれば「ゾンビ」に足をすくわれたわけで、その「ゾンビ」誕生を支援したのが産業革新機構だ。
おそらく経産省の心ある官僚も、シャープ救済に大義名分はないと感じているのではないか。しかし、来年夏の参院選を控えて、景気悪化のイメージを避けるため、政府としては誰もが知っている大企業の倒産は避けたいところだろう。
安倍晋三首相の「知恵袋」、今井尚哉秘書官は経済産業省出身だ。さらに、産業革新機構の志賀俊之会長(日産副会長と兼務)は菅義偉官房長と親しい。政権の意向が同機構には直接反映しやすくなっている。「実力強面政権」の意向には官僚も簡単には逆らえない。
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