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実は収益基盤が「とても心許ない」東芝、本当の危機…改革という名の単なる「縮小」
http://biz-journal.jp/2015/12/post_13013.html
2015.12.24 文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授 Business Journal
今回は、「組織ぐるみ」といわれた不正会計処理を受け組織の立て直しに向けて東芝が取った組織的な内部的対応について、見てみることにする。
株価操作目的でもなく、社長何代にもわたってありもしない利益を積むという、世にも不可思議な不正会計に端を発する今回の東芝事件であるが、白日のもとに晒された赤字体質の事業整理は着々と進んでいる。9月に発足した新経営陣は、画像用半導体事業のソニーへの売却に続いて、日本のノートパソコンの歴史をつくってきたともいえるパソコン事業について、富士通とVAIOとの間で事業統合する交渉を進めている。数字的には3社の事業統合で国内パソコンシェアがNECレノボ・ジャパンを抜いてトップになるが、世界的に縮小の止まらない事業であり、基本的には「負け組統合」による事業整理の性格が強い。
次に俎上に上がっているのが、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業である。すでに中国企業との製造販売提携や海外工場の売却などを進めているが、ここにきてシャープとの同事業との統合話が出ている。これも、明らかに「負け組事業の統合」であろう。
このような企業間における事業統合の発想は、日本の半導体産業が苦境に陥るなかでその復興を掲げて、2003年に日立製作所と三菱電機の同事業を統合して発足したルネサス・テクノロジに遡る。同社は10年にNECの半導体部門と統合し、現在はルネサス エレクトロニクスとなり、筆頭株主は産業革新機構である。12年には、同機構主導でソニー、東芝、日立製作所が中型液晶ディスプレイ事業を統合するかたちでジャパンディスプレイが発足。さらには、スマートフォンへの移行に失敗した各メーカーの携帯電話事業統合も過去になされたが、これら一連の企業間事業統合は、産業整理的性格を持つものといえよう。
東芝はテレビ事業について、「レグザ」ブランドは維持するものの工場を売却し自社生産から完全撤退し、海外での製造委託に切り替える方針を固めている。余談だが、日本の液晶テレビ産業についても、高解像度の4Kや8Kに注力するなどと勇ましいことを言ってはいるが、産業整理の対象になるとみて良いであろう。
結果として、東芝のこれらの事業整理は、大規模な人員整理を避けては通れないであろう。
■「Shrink to Grow」といえるか?
赤字事業を整理することは、現在の東芝経営陣にとって急務の課題であることは事実であるが、それを通して見えてきたことは、現在の東芝には、事業構造的に不安定な半導体事業以外に依存できる収益基盤がないことである。
その半導体事業にも不採算事業はあり、ソニーに売却されるのは赤字のシステムLSI事業の画像用半導体事業であり、もうひとつの赤字事業であるディスクリート(単機能半導体)事業では白色LED事業からの撤退が決定されている。
これらの対処は、赤字事業の止血による縮小均衡にしか見えない。苦境にある企業が立て直しを行う方法として、米国では「Shrink to Grow(成長する為に一度縮小する)」という表現があるように、不採算のみならず事業整理という施策が必ずしも悪いわけではない。もし、東芝が「Shrink(事業縮小)」を通して脂肪を削いで組織体質を筋肉質にすることができ、組織体質を抜本的に刷新することができるとすれば、現在進行する事業整理を東芝建て直しのための「Shrink to Grow」、すなわち抜本改革の一環ととらえられるであろう。
■組織体質の転換
では、東芝でどのような組織体質の転換が行われているかを見てみたい。
もたついたものの、過去に遡った決算訂正を含む有価証券報告書の提出、室町正志会長の新社長就任などで、表面的には出直しの体制を整えてみたものの、組織体質転換にとって大前提である、今回の不正会計事件の清算ができない状況が続いている。第三者委員会の調査に対する批判を受けてか、9月には社外の弁護士3人からなる役員責任調査委員会を立ち上げ、11月初旬にその報告書を公開。期を一にして、東芝として歴代3社長等を提訴した。
これは、内実は株主代表訴訟を回避するための苦肉の策であったのであろうが、「旧経営陣との決別」というメッセージでもあり、市場の信頼を取り戻そうとしたと受け取ることはできる。しかし、下旬には、米子会社ウエスチングハウス(WH)の減損をめぐる適時開示義務違反が発覚して、情報の隠蔽体質は変わっていないことが露呈し、再び市場の信頼を損ねている。
そして、今月7日に証券取引等監視委員会が、有価証券報告書の虚偽記載では最高額に当たる73.7億円の課徴金納付命令を東芝に出すよう金融庁に勧告し、これで今回の事件の始末は付いたと思いきや、同委員会が東京地検と歴代3社長を刑事告発する協議に入ったと報じられている。周囲が過去との決別を後押しすればするほど、それがいかに難しいかを逆に示すことになっている。
■優等生・東芝の弱さ
ここで、社内の経営組織体制変更の手続きを見てみたい。
例えば、室町新体制では不祥事の原因とされるコーポレートガバナンス(企業統治)の問題を克服するために11人の取締役中、7人を社外取締役とし、社外の前田資生堂相談役を取締役会議長とする体制を敷いている。東芝は指名委員会等設置会社なので、今回は社外取締役が3つの委員会を兼務しながら経営を監視する体制を取るとしている。ちなみに指名委員会等設置会社とは、取締役会のなかに社外取締役が過半数を占める指名・報酬・監査委員会を設置し、取締役会が経営を監督し、業務執行については執行役に委ねて経営の合理化と適正化をはかる会社である。
室町社長は新体制以前の8月に、上級管理職による社長の無記名信任投票を行い、指名委員会による社長再任指名の参考にするとした。これらを見る限り、確かにやるべきことは正しくやっている。さすが、優等生の東芝である。
しかし、詳しく見てみると、この新体制は世間の常識とは異なる感覚を露呈している。次稿では、その詳細をみていくことにしよう。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
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