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サンマ、サバ、イワシの小型化が止まらない 〜日本の水産業が迎えた「危機」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47018
2015年12月22日(火) 岩崎大輔 現代ビジネス
■「今までこんなことはなかった」
「秋には400グラムに成長するサバが、今年は270〜280グラム、サンマも140グラム未満の小型のものが大半。今までこんなことはなかった。夏のマイワシ漁も不振だったから、青魚3種が全滅だ!」(都内寿司店主)
漁業関係者の間でいま、衝撃が走っている。今年の漁で獲れた魚が、あまりにも小さく痩せすぎるというのだ。
全国水産加工工業協同組合連合会・中山嘉昭会長がこう嘆く。
「東京だけじゃない。魚が減った、小さくなった、との声は全国に広がっている。平成27年のサンマの水揚げは12万トン前後にとどまり、昭和55年以降の漁獲量で最低だった平成11年の13万4944トンを下回ることは確実だ。大衆魚と呼ばれたサンマが口にできなくなる恐れもある。いま手を打たないと持続可能な漁はできなくなるかもしれない」
温暖化、分布域の変化、餌の減少・・・様々な原因が考えられるが、中山氏は「我が国を含め、各国の漁獲量が『持続可能な資源量』を超えたことが大きな要因だろう」と指摘する。
現在は、漁獲可能量(Total Allowable Catch)を定めるTAC制度により、一定の産卵親魚を残し、再生産可能な資源状況を保つことを目指している。
ところが、その秩序が脅かされている。中国や台湾が、公海上のサンマを狙い始めたのである。近年、中国・台湾のサンマ漁獲量が大きく増加。1千トン級の大型漁船が北海道の東沖の公海をまわり、サンマを水揚げしているのだ。
クロマグロやメバチマグロは激減しているために公海でも獲り過ぎをふせぐための規制がある。だが、サンマは資源にゆとりがある種とみなされ、公海のサンマ漁獲に関する国際的なルールは未整備なまま。台湾、中国の大型漁船の水揚げを規制できない現状がある。
■日本とは食べ方が違う
実は「水産業の危機」はいま、与党自民党の中でも大きな問題となっている。自民党水産部会資源管理WT座長の浜田靖一衆議院議員は、法の未整備をこう嘆息する。
「我が国はロシア、韓国、中国などと漁業協定を結び相互入漁(互いに魚種、数量を決めて漁をすること)を行っているが、資源管理については十分なルールがつくられていない。今後、国と国との間で資源管理の強化を図る必要がある」
日本人は「鮮度、大きさ、脂の乗り具合」と魚の味にうるさい。そのため日本漁船は200トン未満の小型漁船で漁を行い、新鮮なうちに漁港に持ち込むのが主流だ。
一方、中国人や台湾人は魚を油で揚げて食べるために、日本人のような味への拘りがない。捕った魚を船上で冷凍すればいいので、次第に漁船は大型化していった。また、かつては日本のサンマを輸入して食べていた台湾人が、積極的に日本周辺に進出してきたことも大きいといわれる。
特に三陸沖の漁場への進出が顕著で、その被害は深刻だという。親潮と黒潮がぶつかる三陸沖の漁場は、世界4大漁場の一つと呼ばれるほど豊富で多様な水産資源を誇っているが、それも「過去のもの」となるかもしれない。
「三陸沖の漁場は日本の宝。三陸沖を中心とした日本の沿岸は世界の天然漁獲量の4分の1を占める豊かな漁場でもある。豊かなうちに資源管理をしっかり行い、継続して捕れるようにしっかりと対策を打ち出すべき」(前出の中山会長)
資源管理とは、簡単に言えば、漁に制限を加えることだ。魚を捕らなければ、自然と漁場は回復する。たとえば福島県の沿岸漁業は、福島第一原発事故による操業自粛で、水産資源は増え、魚が大型化している。
皮肉な話だが、原発事故で漁業ができなかったことで、沿岸漁業での水産資源が回復したのだ(汚染問題については別の議論となるのでここでは割愛する)。
■TPPが日本の漁業を呑み込む?
とはいえ、漁師や水産加工会社の人たちは生活がかかっているので、魚が小型化しているからといってまったく獲らないわけにはいかない。代わりに産卵期には漁を控えることや、稚魚を放流すること、また網の目を大きくして小さな魚を捕らないようにするなど水産資源を守る努力が各地で行われている。
漁と安定収入のバランスをどう保つのかが難しいところだが、同じく水産業が盛んな静岡県・焼津市を選挙区とし、カツオ・マグロ漁業推進議員連盟の事務局長を務める井林辰憲衆議院議員は、こんな成功例を示す。
「由比ヶ浜はサクラエビが有名です。そのサクラエビを捕る漁師さんはみんなで漁獲量を決めて全員で折半する仕組みになっている。プールしたお金を折半する仕組みなので、漁が休みになっても抜け駆けして漁に出る必要も無い。シラスは淡路島でも捕れる。淡路島で水揚げが多い、と耳にすれば負けじと漁に出てしまうかもしれない。でもサクラエビは由比でしか捕れないので焦らない」
資源管理については各地で模索が続いている。取り組みがうまくいき、水産資源が回復すれば、操業回数を抑制しても安定した収入が見込めるようになる。漁師たちの休みも増え、効率的な働き方ができるようになるだろう。高齢化が進む漁業においても新たな担い手の確保の一助となるかもしれない。
しかし、そうした「個々の努力」を水泡に帰すような大きな波が漁業に伸し掛かっている。
TPPである。
TPP交渉が大筋で合意に至ったことで、魚価、魚食への影響が懸念されているのだ。関税の撤廃の他にも為替の変動などもあるので一概に言えないが、海外からの安い水産加工物が入ってくることで、国内の水産加工物の価格は下がることが予想されている。どんな仕事もそうだが、一定の売り上げが見込めなければ設備投資は行われない。また将来の展望が開けなければ後継者も育たない。
日本の水産業は、この大波をどう潜り抜けるのか。
11月5日、6日両日、永田町の自民党本部で「水産基本政策小委員会」が開催され、水産庁と水産関連会社との話し合いが行われた。TPP合意後の影響や水産業の基盤強化についての意見が交わされたのだ。
■大荒れの委員会
水産庁はTPP合意後の影響については、アジ、サバ、マイワシなど12品目の魚介類の品目ごとの輸入量などの基礎データ、交渉結果、結果分析を提出し、「品目ごとに見れば、おおよそが限定的な影響を受けるのみ」との見解を出した。
しかし、出席者した議員からは「そんな解説はいらない」「見通しが甘い」「なぜ個別品目ごとの調査しかないのか!」との怒りの声があがった。あまりに大荒れとなったために山本公一委員長が「限定的と言うのは楽観的過ぎる。水産庁もしっかりしてくれ」とたしなめたほどだ。
「食品は相互関係にある。輸入魚対国産魚で争う場合、影響は『限定的』なのかもしれないが、懸念すべきは、輸入肉との争いだ。つまり、食卓で肉と魚が競い合う、ということ。
いまは1日3食のうち魚も肉も両方食べることが当たり前かもしれないが、TPPで輸入牛肉の関税が大幅に下がれば、消費者は魚よりも安くなった輸入肉を買い物かごの中に入れるでしょう」(前出の井林氏)
安価な輸入牛肉が幅をきかせることで、国内牛肉の価格は下落する。相関関係にある国内水産物の価格も引きずられるように価格を下げざるを得なくなる。肉類の低価格化に伴う魚からの肉への消費シフトの影響が国内では徐々に出るだろう。
そんな不安が渦巻く中で、水産庁がすべきことは「守りのデータ」を示すのでなく、「攻めの姿勢」をみせることではないだろうか。
前出の井林議員は、「水産関係者は、これを好機ととらえるべきではないか」として、こう提言する。
「TPPで世界の市場の4割が関税を撤廃したことになった。新たな市場ができる、ととらえることもできる」
「中国のお金持ちが青森産の1個2000円のりんごを買っているんですよ」
かつて小泉純一郎元首相が、演説などでこう説いていたことをご記憶だろうか。規制をかけて「守る農業」から、規制を緩和して「攻める農業」へと大転換せよ、ということだ。
安倍首相も外遊の際には、日本の農産品の紹介を必ず行っているという。農業で定着しつつある「攻めの姿勢」を、水産業も見習うべきではないか。それが漁業や水産加工業を「基幹産業」として復活させるカギとなるはずだ。
世界の魚の消費量は右肩上がりとなっている。しかし一方で、魚の争奪戦が過度に進めば絶滅する魚も出てこよう。サンマ・サバの小型化に今すぐ危機感をもち、日本が先頭に立って資源管理における国際的なルール作りに着手すべきである。
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