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『声優サバイバルガイド〜現役プロデューサーが語る“声優の戦い方”』(くびら出版)
声優学校ではスキルよりコネを身につけろ!? 声優キャスティングの生々しすぎる実態を現役プロデューサーが暴露
http://lite-ra.com/2015/12/post-1809.html
2015.12.22. リテラ
大晦日の『NHK紅白歌合戦』に『ラブライブ!』声優9人組μ'sが初出場するなど、声優ブームはとどまる気配がない。深夜アニメやアニメーションを用いたCMの増加、月9やバラエティ番組でのボイス使用など、声優が起用される機会も増えた。それに伴い、声優志望者も多くなり、新人のデビューも相次いだ。しかし、そんなあまたの声優がいるにも関わらず、同時期のアニメに同じ声優が何作品も登場していることは珍しくない。そのキャスティングは一体どうやって決まっているのだろうか? 『ああっ女神さまっ』や『吉永さん家のガーゴイル』などを手がけた現役プロデューサー・大宮三郎が書いた『声優サバイバルガイド〜現役プロデューサーが語る“声優の戦い方”』(くびら出版)から、その実態に迫ってみよう。
キャスティングは、オーディションや原作関係者、制作関係者などによって決められる。オーディションは主に主役を決める際に行われるが、主役や名前のある脇役は、原作関係者や監督、プロデューサーといった制作関係者が決める場合もあるという。オーディションにも、制作側からある程度参加者を絞り込んで行われる「クローズド」と言われるものと、作品の概要やキャラクターのプロフィールなどを各事務所に提示し、参加者を募る「オープン」と言われるものがある。「オープン」の場合、まれにプロ・アマ問わずに募集を掛けることもあるそうだが、プロを対象としたオーディションの場合、すべての事務所に声がかかるわけではない。さらに、たとえ事務所に声がかかっても、社長やマネージャーなど、誰を参加させるか決める権限のある人に気に入られていなければ、参加するチャンスも得られないのだ。
また、名前はないがセリフのある役、ガヤなどは音響の制作関係者が決めるというが、こちらも制作関係者が仲の良い事務所のマネージャーに声をかけ、候補を出してもらうそうだ。つまり、事務所に所属していないフリーの声優は、音響監督や音響の制作担当者と直接コネがなければ、声がかかることはないということ。いずれにせよ、たんに「仲が良いから」というだけでキャスティングされることはなくても、「自分が知っている声優の中からもっとも役に適した人」が選ばれるのが必然。「事務所に所属すれば仕事がもらえる」という考えは間違いだが、新人でどこの事務所にも所属していないと、よほどのコネでもない限り、スタートラインにすら立てないということになる。
さらに、大宮は各部署によって声優を選ぶ基準も違うと語る。その基準とは、次のようなものだ。
「プロデューサーは、製作委員会(作品の制作費を出している会社の集合体)や営業を代表する立場として、プロモーションの効果を高めてくれる声優を選びたい気持ちがあります。ですから、候補者のルックスや歌唱力、トーク力に加え、ハードなプロモーション活動に耐えられる体力や、前向きに取り組んでくれる人柄を重視します」
「原作者は、何より自らが創造したキャラクターのイメージと合うかに重きを置きます」
「監督は、自分の演出に応えられる演技力を求めます」
「音響監督には、候補者たちの声質が似すぎていないかチェックする、新人ばかり選ばれそうならベテランも織り交ぜるといった全体のバランスを考える役目があります」
これらの基準を1つでも多く満たすことができれば、当然キャスティングされる可能性は上がる。たとえば、アニメ『監獄学園』の主人公・藤野清志を演じた神谷浩史は、制作発表会の場で、裏話として監督から「神谷さんが出てくれるとお金が集まるんです」と言われたというエピソードを語っている。神谷は「声優・神谷浩史に来た仕事は断らない」と公言していることもあり、キャスティングの時点で少なくとも監督、プロデューサーの基準はクリアしていたと言えるだろう。
といっても、すべての人の要望を満たさなければならないということでもない。たとえば、スクウェア・エニックスの主要クリエイターである野村哲也に気に入られたことで、野村がプロデュースした『すばらしきこのせかい』の主人公役として推薦された内山昂輝のようなパターンもある。ただ、これらの基準を知っていれば、「審査員席の誰に、何をアピールすればよいのか、自ずと見えてくる」し、事務所や仕事現場での立ち居振る舞いも変わってくるという。
現役声優である浅野真澄が原作を担当したアニメ『それが声優!』で、新人が名札を下げて事務所のロビーに並び、先輩やスタッフに挨拶する描写があった。ネットでは声優業界の闇だと話題になったが、同じようなことは実際にあるらしい。大宮も、「アフレコが終わった後は、先輩たちが帰るのを「お疲れ様でした」と元気よく見送り、自分は最後に帰るようにしましょう」とアドバイスしている。たしかに、話だけ聞くととんだブラック企業のように思えるかもしれないが、声優という仕事の性質上、こういったところからも他と差をつけていくしかないのだという。なぜなら、
「声優としてのスキルを上げるには、100回の練習より1回の本番が効果的」
「アニメ業界では“仕事が仕事を生む”」(『声優サバイバルガイド』)からだ。
そのために、大宮は「現場にいる人の顔と名前をすべて覚えれば、仕事をしていくなかできっと役立つはずです」とも語る。実は、あの山寺宏一もこれを実践していた一人。『声優魂』(星海社)で大塚明夫が語っているが、山寺は若い頃から現場のスタッフの名前を全部覚えていたという。
いずれにせよ、声優として生き抜いていくには、とにかく覚えられること、「関係者の誰かに自分の顔を思い浮かべて」もらうことが第一。そして、その戦いはすでに養成所や専門学校時代から始まっているというのだ。大宮は声優専門学校や養成所に通わなくても声優になることは可能としながらも、「声優事務所に所属する前に技術を身につけたり、コネクションを築いたりする手段として、学校や養成所で学ぶのはとても有効な方法」と語る。
ただ、「絶対プロの声優になる」と決めているなら、「同級生と仲良くする必要はありません」。周りから「付き合いが悪い」「こびを売っている」と言われても、「同級生よりも仲良くしなければならない人が周りにいる」という。それが、「学校であれば講師や担任の先生、養成所であれば講師や担当者(声優事務所のマネージャーを兼ねている場合が多い)」だ。
実際に、東京アナウンス学院に通っていた寺島拓篤は、「VOICE Newtype No.057」(KADOKAWA)でこんなことを語っている。
「2年生のときナレーションの授業を教わっていた先生が、僕が最初に所属する事務所のマネージャーをやっていたんです。呼び出しを受けて「何怒られるんだろ」ってびくびくしていたら「うちに来なよ」って」
彼以外にも、養成所時代に講師やマネージャーの目にとまり、デビューを果たした人はいる。もちろん、いくらコネがあっても、期待に応えられるだけのものを返せなければ、声優を続けていくことはできない。最近では、歌って踊れることが必須だったり、アニメと同時にラジオが始まったり、イベントが開催されることも多いので、トークやMCができなければならない場面も多い。『声優サバイバルガイド』でも、「声優は芸人ではないですが、トークの材料をメモするネタ帳のようなものを持つべきかもしれません」とまで書かれている。
声優の幅が広がったことでできることも増えたが、その分、目指す側のモチベーションも多様化したし、求められるハードルは高くなった。しかし、声優だけで食べていける人の枠は決して増えていない。そして、この厳しい現状に直面しているのは、なにも新人に限ったことではない。
つい最近、『サザエさん』で中島を演じていた白川澄子が亡くなったことで、二代目中島として落合るみが選ばれた。これまで声優の世代交代といえば、このように担当していた声優が亡くなるか、高齢で体力的に厳しくなったことから交代されることがほとんどだった。でも、今はそうじゃない。
『THE IDOLM@STER』や『ラブライブ!』、『うたの☆プリンスさまっ♪』など、男女問わずアイドルものが増え、イベントでも声優が歌って踊るコンサート形式のものが当たり前になってきた。特に、2005年のアーケードゲームから始まり、今年で10周年を迎えた『THE IDOLM@STER』シリーズに関しては、声優の高齢化により、世代交代するのではないかという声もあがっている。
さらに、先日『タッチ』の南役として知られる日高のり子、『名探偵コナン』の毛利蘭を演じる山崎和佳奈、同じく『名探偵コナン』で鈴木園子役を務める松井菜桜子といったそうそうたるベテラン女性声優が、アイドルユニット「backdrops」としてデビューすることが決まった。本人たちも、まさか平均年齢52歳にしてアイドルデビューするなんて、思ってもみなかっただろう。
若手の頃は知ってもらうことに必死だが、知ってもらっても、後からは次々と若くて見た目も良く、歌も踊りもできる新人が迫ってくる。芝居だけでなく、歌唱力も磨き、見た目も体力も保ちつつ、新人と一緒にイベントなどのステージに立たなければならないとなると、かなり過酷だ。
そもそも、声帯はからだの中で一番老化が遅い器官と言われており、声優はいくつになっても少年・少女の役を演じることだってできる。いや、少年少女だけでなく、女性が男性を演じることも、逆に男性が女性を演じることも、見た目にかかわらず、声だけで何者にでもなれる。それこそが、声優の魅力でもあった。しかし、その魅力は徐々に薄れつつあるのかもしれない。もはや、昔のように「役のイメージを壊したくないから顔出しNG」などということは、通用しない世界になってしまった。
(田口いなす)
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