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『社畜人ヤブー』(那智泉見/PHP研究所)
自己実現などバカ言葉…社畜サラリーマンであることに耐えるあなたは100%正しい
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151222-00010002-bjournal-soci
Business Journal 12月22日(火)8時1分配信
【今回取り上げる書籍】
『社畜人ヤブー』(那智泉見/PHP研究所)
2015年に出版された書籍のなかで、タイトルのみのコピー等が際立つ書籍を表彰する「第8回 日本タイトルだけ大賞」(主催:新刊JP)のノミネート作品が11月20日に発表されたのだが、そのなかでも話題となったのがこの書籍(漫画)である。「BL」を謳っているが、「ボーイズラブ」ではなく「ビジネスラブ」である。「社畜」と揶揄されがちな世の中のサラリーマンに対し、理不尽なことは数多くあれど、まぁ、仕事ってのは尊いもんだよな、といったことを説く。
当然、小説『家畜人ヤプー』のタイトルを意識しているわけだが、本書の良い点は、6冊の書籍を参考文献とし、活字を読むのが苦手な人に対してこれら6冊のエッセンスを伝えたことにある。もちろん大袈裟すぎる表現や「お前、これってデフォルメしすぎだろ」といった部分はあるものの、それは漫画という基本的には娯楽的要素もある体裁を取っている場合は、必要な表現手法であろう。
その6冊とは以下の通り。
『社畜のススメ』(藤本篤志/新潮新書)
『仮面社畜のススメ』(小玉歩/徳間書店)
『個性を捨てろ! 型にはまれ!』(三田紀房/だいわ文庫)
『サラリーマンの新しい掟 下積みは、あなたを裏切らない!』(常見陽平/マガジンハウス)
『入社1年目の教科書』(岩瀬大輔/ダイヤモンド社)
『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』(河野英太郎/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
内容に関してはブラック企業の典型ともいえそうな長時間労働、過酷なノルマを課す広告代理店「アドブラックス」の新入社員・倉良優一と上司である藪隣一郎が中心となり、「労働がお前を成長させる」「仕事はとにかくやれ」「自己実現はバカ言葉」「『自分らしい』のアホさ」とは何かを説いていくもの。倉良とその同僚の高柳がいかにして「社畜」として生きていくか、その成長譚であり、見方によっては「人生の諦め」といった雰囲気もプンプンと漂う。
理不尽な人事異動や、上からの命令は絶対であること、得意先の考え方こそ重要であること、実績をつくることこそが周囲を黙らせること、不祥事を一発でも起こせば会社人人生終了になること、夢を抱き続けることの是非などを若干ハイペースで唐突な展開すぎるが解説していく。
正直オレはPHPの本は嫌いだし、そこの社員も嫌いだし、クソみたいな扱いを受けたことがあるのだが、松下幸之助の『商売心得帖』とその関連本だけは大いに影響を受けている。だから今回も本当は書きたくはなかったが、この会社のつくった本を紹介しているのである。PHPの関係者、お前らオレに今後一切連絡してくるんじゃねぇぞ。
●そんな自分の生き方が正しい
この漫画の一番お得な点は、前出6冊のエッセンスを網羅している点である。6冊目の『99%の〜』以外はオレは読んでいたのだが、それらの主眼がある程度含まれた内容となっている。
そして、特筆すべきは、漫画の本筋ではなく、章と章の合間に挟まれる7本のコラムである。この7本を読むだけで、若いサラリーマンにとっては、仕事とは一体どんなものなのか、といったエッセンスはわかるだろう。
ただし、理解してほしいのが、オレの今書いている原稿には「エッセンス」という言葉が何度か出てきた点だ。『社畜人ヤブー』はあくまでも「エッセンス」を抜き出した本であり、活字が若干苦手な者でも理解できるよう漫画形式にしたものだ。だからこそ、本書の良さは前出6冊を読むに当たってのガイド本となっている点にある。
ならば『社畜人ヤブー』で描かれた考え方に共通している前出6冊を読むためのモチベーションになるではないか。そういったきっかけをつくってくれるという意味で今回は紹介した。サラリーマンでいることに疑問を抱きつつも生活のためならば仕方ない。他人に迷惑かけたくもないし、自分だけ目立つのもなぁ……なんて思う人も多いだろう。そんな自分の生き方が正しい、と実感させられる。
そして、前出6冊の中でまず読むべきは『個性を捨てろ! 型にはまれ!』であると最後に書いておく。
(文=中川淳一郎/編集者)
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