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米利上げで世界経済を覆う三つの不安
http://diamond.jp/articles/-/83565
2015年12月21日 週刊ダイヤモンド編集部
ついに米国が利上げに踏み切った。利上げは、自動車や住宅などの消費を冷え込ませ、景気腰折れのリスクをもたらすとともに、ブラジルなどの新興国市場のマネーを流出させ、新興国経済の混乱を招きかねない。実に9年半ぶりとなる利上げは、金融緩和に浸り切った世界経済にどのようなインパクトを与えるのだろうか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)
12月16日の記者会見で、ゼロ金利政策の終了を宣言したイエレンFRB議長。利上げのペースは緩やかなものになることを強調し、景気への配慮をにじませた Photo:REUTERS/アフロ
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ついに利上げに踏み切った。政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0〜0.25%から0.25〜0.50%に引き上げた。2008年秋のリーマンショックを受けて導入したゼロ金利が、いよいよ解除される。利上げそのものは、図のように、06年6月以来、実に9年半ぶりだ。
なぜ利上げに踏み切ったのか。小野亮・みずほ総合研究所主席エコノミストは、「FRBは、今なら米国経済が利上げに耐えられると判断した」とみる。
米国経済は09年6月を底に景気拡大局面が続いている。リーマンショックの非常事態から脱した以上、金利水準も元に戻すのが当然の流れだった。
それでも、イエレンFRB議長が利上げに慎重な姿勢を取ってきたのは、利上げによる影響が大きいためだ。金利が上がれば、自動車や住宅などの消費を冷え込ませ、景気を腰折れさせてしまう恐れもある。それだけに、消費を支える要素の一つとして、イエレン議長は雇用を重視してきた。
15年11月の失業率は5%、ほぼ完全雇用といわれる。パートタイマーなどを含めた失業率も下落傾向を見せており、賃金も上昇している。これが利上げ後も景気拡大が持続するという自信になったのだろう。FOMCでは10人のメンバー全員が利上げに賛成した。
もっとも、マーケットはすでに今回の利上げは織り込み済みで、焦点は利上げのペースに移っている。イエレン議長は明言しなかったものの、「16年内に2〜4回というのがマーケットのコンセンサス」(村田雅志・ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト)とみられている。実際、FOMC参加者によるFF金利の見通し(中央値)は16年末が1.375%となっており、0.25ポイントずつ4回の利上げを見込んでいるとみられる。
ネガティブなサプライズがなかったことで、マーケットには安心感が広がり、12月16日のNYダウの終値は1万7749ドルと、前日より224.1ドル上がった。米国の景気が利上げできるほど底堅いことが好感されたもようだ。日本時間17日朝の東京市場でも、日経平均株価は大きく上げて始まった。
足元では、米国の利上げという不透明な要素が払拭されたことで、マーケットは落ち着いている。しかし、9年半ぶりの利上げは、世界経済の先行きに、新たな三つの不透明要素をもたらしている。
■中国経済減速に米利上げが追い打ち苦境の新興国経済
第一は、新興国経済の減速懸念だ。利上げは、短期金利の上昇につながり、短期資金が好む資源などのコモディティや新興国への投資意欲を減退させ、コモディティ価格や通貨の下落につながる。
米国の利上げを織り込んで、新興国通貨の下落が始まっている。通貨安で輸出競争力が高まるのならいいが、インドネシアなどのように輸入依存度が高い国は、輸入品価格の上昇からインフレ圧力が高まる。その結果、景気が悪くても利上げせざるを得ず、さらなる景気減速を招くことになる。こうした事態を警戒して、通貨安が進んでいる南アフリカ共和国などは利上げに踏み切っている。
前回の利上げサイクルが始まった04年は、中国経済の拡大とそれに伴う資源価格の上昇による経済成長で、新興国経済が受けるダメージは相殺され、大きな問題にはならなかった。だが今回は、減速する中国経済が新興国経済にダメージを与えており、利上げが追い打ちを掛けることになる。
第二は、金利上昇による過度なドル高進行の懸念だ。FRBは債券の償還で得た資金を、債券に再投資してバランスシートの規模を維持しており、利上げしたものの金融緩和は続けている。このような政策対応によって、今のところ米国の長期金利は落ち着いている。しかし、マーケットを完全にコントロールすることは不可能であり、急激な金利上昇からドル高が進行する懸念は拭えない。欧州中央銀行と日本銀行が引き続き大規模な金融緩和を続けていることもドル高を助長する。行き過ぎれば、輸出を冷え込ませ、米国経済の減速につながる可能性も排除できない。
第三は、利上げによる米国景気の腰折れ懸念だ。イエレン議長は12月16日の会見で、繰り返し家計部門の強さを強調し米経済に対する自信を表明したが、労働生産性の鈍化で、完全雇用の割に実質賃金の伸びは鈍く、消費の先行きは楽観できない。
今回の利上げは、金融政策正常化への第一歩にすぎない。FRBは不透明な要素を抱えながら、引き続き金融緩和の出口を模索していくことになる。
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