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中国がTPP加盟でもくろんでいることとは(写真:photoman/PIXTA)
遅れてきた中国がTPP加盟で本当に狙うもの 中国にとって「飛び道具」となる可能性も
http://toyokeizai.net/articles/-/96993
2015年12月19日 塚田 紀史 :東洋経済 記者
『経済統合の新世紀』をこのほど書いた国際貿易投資研究所の畠山襄理事長は、中国の環太平洋経済連携協定(TPP)入りは“確定的”になったと主張する。日本の自由貿易を推し進めてきた立役者でもある同氏に、その理由などを聞いた。
■日本も米国も中国の経済連携のゴールは同じ
──TPPの内容には大いに不満なご様子ですね。
まったくがっかりだ。もともとTPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国の経済連携協定(P4)として始まった。いわばこの清純な乙女の園に日本と米国がTPPという名で入り込み、貿易の自由化とはこんなものとしてしまった。
本来なら、これを機会に純粋な乙女の力をばねにして日本は農業改革をやるべきだった。ところが、政府の発表文の冒頭に、農産物5項目が国家貿易品目であるとある。恥ずかしげもなく。この自由化の世の中に、「コメ、国家貿易品目である。麦、国家貿易品目である。牛・豚肉、国家貿易品目である」などと書いてあるのと同じだ。
──中国は入りやすくなった?
中国にとってTPP入りは「高嶺の花」だった。包括的経済連携構想(RSEP=アールセップ)といったもので代替しようかと、迷っていたところへ今回の形のTPPが自ら飛び込んできた。中国もまんざらでない。米国は安全保障第一の国だからセンシティブな問題となるが、貿易は第2の問題の位置づけであって、今まで豹変は常套手段でもある。オープンなのはいいことだとか言って、中国を歓迎することになるのだろう。
実は日本も米国も中国も経済連携のゴールは同じだ。成長センターとして期待が持てるアジア太平洋経済協力(APEC)の自由貿易協定(FTA)に参加する(アジア太平洋自由貿易圏=FTAAP)のが目指すゴールなのだ。TPPもRSEPも、そのためのツール。中国がRSEPで走るのはいいが、TPPランナーではいけないとしたところで、ゴールに中国がいることには変わりがない。
──中国にとってまんざらでもないのですね。
中国の企業も国際企業が続出してきた。暴れん坊の中国企業にしても、たとえばインドネシアやマレーシアで活躍するには「場のルール」に従わなければならない。今は両国の独自なルール下にあっても、TPPが発効されれば両国ともそのルールに従う。その場で中国企業だけがうちのルールでと言うわけにいかない。いずれTPPのルールに従うなら、早くから作る側に回らなければ損だ。だから早めに入ろうとなるのではないか。加えて、今まで受け入れられないだろうと予測されていた中身が、ハードルが低くなり越えやすいものになった。
──この内容には古巣の経産省も一役買ったのでは。
哲学なき交渉になって、けっこう苦労があったらしい。結局、米国の自動車関税が最後まで問題だった。官邸の指図が入った。経産省が即時撤廃から降りたのは、撤廃まで25年というのはいかにもおかしいが、税率が2・5%と大したことがなく、まなじりを決して闘うことか、という判断になった。この部分は確かに経産省が仕切ったようだ。
■TPPが消費者の利益になるのかは疑問
──この本の全体の印象はアンチ外務省ですが。
別に外務省を非難しているわけではない。バランスを取るために外務省OBを評価するエピソードもコラムで入れておいた。対外経済政策には論理というものがある。必要なときには悪者になる勇気を持たないといけない。
──対外経済政策の論理?
対外経済政策は本来、消費者あるいは需要家の利益のために行われるのであって、製造業者の利益のためにではない。ところが、GATTにしてからが、製造業者の利益に偏している。たとえば、その物資が緊急不可欠なものである場合には短期的な輸出規制を行っていい、と麗々しく書いてある。それに対して輸入の規制は例外的であって、真正面から輸入規制は認めてない。ましてTPPになると、どんどん自由化をしなくてはならない。これは輸出国の輸出業者の利益になっても本来の目的である消費者の利益になっているかどうか。大きな疑問がある。
──この本では経済活動におけるいくつもの提言をしています。
今の風潮に反するが、世界は公平でないといけない。そこで、私の提案は虚心坦懐にサミット構成国も単純なルールで参加国を決めるべきだと考えている。その基準にGDPは経済活動の成果だから入れざるをえない。それだけとはいかないので、人口ウエートを入れる。わかりやすくGDPのウエート半分、人口のウエート半分で決める。世界に200カ国あるとすれば、うち上位10カ国をG10としてメンバーにして、毎年入れ替えありとする。基準は数年前の統計となるかもしれないが。世界をどの国の誰がリードするかの大問題だから、選出手続きなどでの多少の煩雑さは我慢してやるべきだ。
──どう提案するのですか。
安倍晋三首相はプーチン大統領と仲がいい。サミット参加資格を停止されているロシアにまず提案したらどうか。
■説得力のない議論が多すぎる
──「鋭刀法国際条約」を喫緊の課題にしていますね。
テロは貿易とは無関係ではない。テロは大量破壊兵器でなく通常兵器をもって挑まれる。大量破壊兵器は核兵器にせよ化学兵器にせよ生物兵器にせよ輸出禁止が原則だ。ところが、通常兵器は輸出禁止ではない。通常兵器を国連に登録する制度はあるが、それも任意にとどまっている。これはテロの時代の問題解消のアプローチとして欠陥になる。大量破壊兵器はあるが、使われない。使われないものを懸命に規制して、使われるものは野放し。こんなバカなことがあってはいけない。
日本は比較的犯罪が少ない。鋭刀法の取り締まりが効いている。米国は鋭刀法がないから、相次いで鋭乱射事件が起こる。鋭保持は凶悪犯罪とテロの温床になっている。安倍首相はテロ対策などで抽象的な発言をするのではなく、鋭刀法国際条約というものを作って規制をしようと、少なくとも来年の伊勢志摩サミットで唱えるべきではないか。
──地球環境対応にも大いに問題ありですか。
あれぐらい腹立たしいものはない。加害者が被害者に払うのが原則であるべきなのに、それぞれの国が言いっ放し。しかも環境改善への効果も定かではない。パリのCOP21でもそれぞれの基準で数字を言うだけだ。その基準が地球全体の汚染の解消・改善にどれだけ寄与するのか、はっきり示すべきだ。
まったく説得力がない議論が多すぎる。
畠山襄(たけやま・のぼる)/1936年生まれ。東京大学法学部を卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省。鈴木善幸内閣時代に内閣総理大臣秘書官、その後貿易局 長、基礎産業局長、通商政策局長などを歴任後、1991年から通商産業審議官として通商交渉を担当。退官後、日本貿易振興会理事長、国際経済交流財団会長を歴 任。
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