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18日に会見した黒田東彦日銀総裁。この日に日銀が明らかにした補完措置への失望もあり、日経平均は366円安で終わった(撮影:今井康一)
頓死!黒田日銀は進退窮まり詰んでしまった いきなりの「補完措置」は自殺行為ではないか
http://toyokeizai.net/articles/-/97495
2015年12月19日 小幡 績 :慶應義塾大学准教授 東洋経済
米FEDの利上げについて書く予定が、日銀の追加緩和で想定外の流れになってしまった。米国の利上げも重要だが、自国の中央銀行が自殺を図ったときに、それを放っておく愛国者はいない。今日は、日銀が将棋で言う「頓死」してしまったことについて書かざるをえない。
■補完措置という名の小規模追加緩和
12月18日金曜日、日銀は政策決定会合で、自称「補完措置」を決定し公表した。量的・質的緩和を補完する措置だが、メインは@買入れ長期国債の平均残存期間を、これまでの7〜10年から7〜12年に長期化、AETFを3000億円買い増し、BJ-REITも買い増ししやすくする、というものだ。
私自身、黒田氏は追加緩和をせず、今回も現状維持以外に何もないと思っていた。ところが、いきなりの「補完措置」。補完といっても、国債はリスクベースで言えば買い増しだし、ETFも名実ともに買い増し。J-REITは名目的な総量は増えないが買い入れをしやすくするもので、今後の買い入れ拡大もありえる。したがって、小規模の「追加緩和」と言ったほうが実質を表している。実際、株式市場、為替市場、国債市場は大きく反応し、日経平均は一時的に500円超高、直接の買い入れ対象となるJPXはさらなる大幅高。ドル円は123円となった。
しかし、その上昇は10分程度しか持たなかった。中身のせこさに市場は失望して(感情的な反発か?)大暴落となり、日経平均は366円安、ピークから900円も下げて終わった。JPXはそれ以上下がった。
黒田日銀は詰んでしまったのである。
これまでの黒田氏は、官邸とは距離を置き、自身の信念として量的緩和政策を行い、日銀総裁および日本銀行のあるべきスタンス、政策を追求して大胆な金融緩和を行ってきた。その結果が、官邸の意向と非常にうまくかみ合った2013年4月の緩和であり、消費税の絡みもあって微妙なズレをもたらした2014年10月の緩和だった。
官邸とのズレがあったとしても、黒田氏としては、信念を貫いた自信満々の一手だった。それに関して賛否はあるが(私は第1弾反対、第2弾は絶対反対で、多くの人は第1弾賛成、第2弾反対だろう)、悔いのない政策決定だったはずだ。
■なぜ中途半端な半歩を踏み出したのか
しかし今回は違う。官邸の意向かどうかは分からないが、明らかに黒田氏の信念に反したアリバイ作りのような追加緩和だ。「何か日銀もやってます」「危機意識がないわけではありません」というポーズのようだ。こんな緩和を黒田氏がしたいはずはない。妥協の産物だろう。
その苦渋の妥協を行った結果が、市場からのしっぺ返しだ。株価を支える政策を打ったのに株価暴落、円高進行では話が違う。背後から刺されたような展開といえる。追加緩和は国債市場崩壊、円売り日本売り加速という地獄への道だと思っていたが、地獄へ進もうと半歩踏み出したところ、地獄にも行けないというパニッシュメント(処罰)を受けた。市場は日銀の異次元緩和、黒田バズーカもこれで打ち止めと判断し見切りをつけたということだ。
最悪のシナリオは、これに慌てて彼らに媚びまくって、本当に地獄への道を自ら突き進み、バズーカ第3弾を打ち出すというもの。地獄で待つ市場関係者の、いわば狙い通りになるシナリオだ。いったんは大幅上昇し、飽きたところで暴落となるだろう。
一方、市場の乱高下で儲けようとしていないまともな人々からは、なぜ今、小出しの追加緩和だったのかという疑問が出てくる。米国は利上げを始め、ついに出口の流れに完全に入った。そのタイミングで、逆方向に中途半端な半歩を踏み出すとは自殺行為ではないか。ここは我慢して緩和は一切せず、現状維持を続けながら出口の入り口を探すことが必要なのに、地獄からの出口を自らふさいでしまったのだ。
前にも後ろにも進めず、進退窮まり「詰んで」しまった日銀。アリバイ作りの追加緩和というつまらない失着が、大きな敗着となってしまった。
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