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東芝の粉飾を見逃した「新日本監査法人」が存亡の危機 金融庁の厳しい処分がまもなく下る?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46958
2015年12月18日(金) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■また大手監査法人が消滅するのか
歴史は繰り返すのか――。
9年前、筆者がスクープした日興コーディアル証券の粉飾決算に「適正意見」を付けていたことで息の根がとまったみすず監査法人(旧中央青山監査法人)。在籍していた公認会計士の大半が移籍したのが、新日本監査法人であった。その組織が再び、存亡の危機に瀕している。
新日本監査法人は、巨額の利益水増しで決算訂正に追い込まれた東芝に「適正意見」を付け続けていたにもかかわらず、自ら何らけじめをつけようとしなかった。これに業を煮やした金融庁の「公認会計士・監査審査会」が今週火曜日(12月15日)、公認会計士法に基づく行政処分を行うよう同庁長官に勧告したのだ。
勧告を受けて、金融庁は来週(12月22日)にも、業務改善命令だけでなく、業務停止や課徴金支払いを含む厳しい処分を下す公算が高まっている。その一方で、経済界ではクライアントの「新日本離れ」が取り沙汰されており、またしても日本を大手監査法人が消滅しかねない事態に陥っている。
<リスクの識別、リスク対応手続きの策定等にあたり、職業的懐疑心を十分に保持・発揮しておらず、また、実施した監査手続きから得られた監査証拠の十分性及び適切性について検討する姿勢が不足している>――。
この一文が、今回の公認会計士・監査審査会の勧告がくだした新日本監査法人に対する辛辣な評価だ。
「職業的懐疑心」とは、監査の分野で会計士に最も必要とされている資質である。簡単に言えば、監査のプロとして、企業が作る財務諸表には常に虚偽があると疑ってかかれという意味である。さもないと虚偽の財務諸表が氾濫し、投資家や取引先の判断の道標(みちしるべ)が失われるからである。
■基本中の基本がなっていない
会計監査の歴史は、企業が作成した財務諸表の不正を発見できなかった監査人の失敗の歴史だ。
そのため、日本でも、企業会計審議会監査部会が2013年3月にまとめた「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について」で、改めて「職業的懐疑心」を保持、強化することの重要性を強調していた。
ところが、今日に至っても、新日本監査法人は、その基本中の基本がなっていないというのである。
お断りしておくが、筆者は、A4用紙にしてわずか2枚に過ぎない今回の勧告を褒め称える気はない。
むしろ、この種の勧告のスタイルとして定着してしまった感があるが、内容が抽象的で、具体性を欠いている点に違和感を覚えている。この程度の立証振りで生殺与奪を左右する行政処分を科されたのでは、監査法人として納得できる道理がない。特に、一連の東芝問題にまったく関与してない職員だけでなく、社会的にももっと丁寧な説明が必要だ。
ちなみに、6年9ヵ月の間に2248億円の税引き前利益の水増しをした東芝の粉飾事件を受けて、公認会計士・監査審査会は今年9月14日から、新日本監査法人に対する関連の調査と定期検査をあわせて実施していた。
ところが、今回の勧告は、具体的な問題としては「(以前から)繰り返し指摘されてきた」にもかかわらず、「周知徹底を図っていない」ため、「改善できていない」といった具合に簡単に問題点を指摘しただけだ。
問題点が、東芝の問題なのか、それ以外の会社なのか、どの勘定科目に関わるもので、公認会計士のどういう判断がいけなかったのかといった点には一切言及していない。一般論として言えば、もっとアカウンタビリティ(説明責任)に配慮したものに、勧告を改めていくべきだろう。
■異例の厳しい処分
とはいえ、筆者なりに取材をして、“補助線”を引けば、「監査法人の運営が著しく不当なものだ」という勧告の指摘には説得力が出てくる。
というのは、新日本監査法人はこれまで、東芝の決算にお墨付きを与えていた問題について、自ら原因の説明やけじめ・処分、再発防止策などを講じて公表するという手続きを一切踏んでいないからだ。
内外のメディアは、先月(11月半ば)から再三にわたって、金融庁が新日本監査法人の自浄能力の無さを問題視して、処分をエスカレートさせかねないと報じていた。
例えば、まず11月19日付の読売新聞が業務改善命令、次いで12月7日付のロイター通信が業務停止、そして12月10日付の朝日新聞が課徴金処分の可能性をそれぞれ報じているのだ。
そうした報道を総合すると、金融庁は業務改善命令に加えて、周知期間を経て来年1、2月頃から6ヵ月程度の新規契約を禁じる「業務停止処分」をくだす模様である。さらに、課徴金額は、新日本の年間監査報酬収入(10億円程度)の1、2年分に膨らむ可能性があるという。いずれも、大手監査法人への処分としては異例の厳しさと言ってよい。
金融庁は2008年の公認会計士法改正に基づく処分基準を公表しており、監査対象企業の規模や監査証明で適正としてしまった会計の虚偽の大小、監査法人の自主的な是正策の有無などに応じて、処分を加重・軽減する方針も明らかにしている。が、「金融庁は、新日本の対応に軽減の余地はないとみている」(全国紙の金融庁担当記者)という。
通常なら、企業が監査法人を交代させるのは容易なことではない。会計上のなんらかの不正があり、適正意見をもらいやすい監査法人に変更したのではないかとの疑われるリスクがあるからだ。
ところが、監査法人に今回のような落ち度があると、そうした懸念が薄れるばかりか、逆に切り替えないほうが会計軽視に見えてしまう。
このため、筆者が粉飾をスクープした日興コーディアル証券の際も、適正意見を付けていたみすず監査法人のクライアントが競うようにみすず離れを起こし、自ら解体して他の大手監査法人に会計士や業務を移管せざるを得ない状況に陥った。
ちなみに、みすずのクライアント数は、ピーク時に800社を超えていたが、カネボウ事件を経て600社前後に減少、さらに100〜200社が離反しかねない状況になっていた。
新日本監査法人は、自主的に金融庁と企業社会の信頼を取り戻す是正策を打ち出すことができるのだろうか。
処分のXデーまで残された時間はほんの数日しかない。新日本監査法人の去就から目が離せない。
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