4. 2015年12月17日 06:25:05
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2015年12月17日 村田雅志 [ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト] ついに来た米国利上げ 世界経済と為替への影響は?村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン通貨ストラテジスト 米国の利上げは、2006年6月末以来、9年半ぶりとなる(写真は11月12日の講演時のイエレンFRB議長) Photo:Federalreserve 米連邦準備理事会(FRB)は日本時間17日午前4時、米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の目標レンジを25bp引き上げ、0.25〜0.50%にすることを決めた。利上げは2006年6月末以来、9年半ぶり。利下げも含めたFF金利の変更は、2008年12月以来、7年ぶりとなる。 日本経済にとって、特に注目すべきは為替市場への影響だろう。だが、2016年のドル円見通しについては、上昇(ドル高・円安)を見込む声がある一方で、横ばい圏での推移に留まるとの見方や、下落に転ずるとの見方も示されている。一昨年、昨年はドル円の上昇が続くとの見方が大多数だったことを考えると、来年のドル円見通しはバラつきが大きくなってきている。 米金利上昇と日銀の緩和姿勢継続で ドル買い優勢が続くと見るのが自然 FRBが、その後も経済指標次第としたものの、利上げを続ける意思を示したことで、米債利回りは短期債を中心に上昇。今後も利上げ継続観測を背景に米債利回りは上昇基調での推移が予想され、米金利の上昇を背景にドルは買い優勢の動きが続くと見るのが自然だろう。 一方で、日本銀行(日銀)は、来年も緩和姿勢を続けることがほぼ確実。黒田日銀総裁は追加緩和に慎重な姿勢を示しているが、2%物価安定目標のターゲットとされている生鮮食品を除いた消費者物価指数は、小幅ながら3ヵ月連続の前年割れ。2013年4月から続けられている量的・質的金融緩和が強化されることはあっても、日銀が緩和姿勢を弱める(いわゆる出口戦略に着手する)とは考えられない。 昨年、今年と為替市場で意識されてきた日米の金融政策の違い(ダイバージェンス)は来年も続くことになる。 原油価格下落、中国景気減速── ドル高円安を阻む“リスク”の蓋然性は? 先述したように、来年のドル円については、上昇だけでなく横ばいや下落を見込む声もあるが、その多くは“様々なリスクが存在する以上、日米ダイバージェンスという分かりやすい図式だけでドル買いが続くわけではない”と指摘する。 たとえば、足元で進展している原油価格の下落は、市場関係者の多くが指摘する来年のリスクの代表例だ。米原油先物価格(WTI)は、12月14日に一時1バレル=34ドル台半ばと2009年2月以来の安値に下落。これを受けて米国株はエネルギー関連株を中心に下げ幅が広がり、S&P総合500指数は2000の大台を割り込む場面も見られた(図表1参照)。 ◆図表1:NY原油先物価格とS&P総合500指数の推移 石油輸出国機構(OPEC)は12月4日の総会で、これまで日量3000万バレルとしてきた原油生産量の目標の引き下げ合意を見送り。欧米による経済制裁の解除を機にイランが原油輸出を再開する見込みもあって、原油の供給過剰状態を背景に原油安は続くとの見方が大勢だ。 原油安が続けば、産油国が石油収入に基づき運営している政府系ファンド(SWF)による換金売りも広がり、米国を中心に世界の株式市場は下落基調が強まるとの指摘も増えている。世界的な株安が続けば、市場のリスク回避姿勢が強まり、円買いの動きからドル円が下落する展開も考えられる。 しかし、原油の純輸入国である米国や日本にとって、原油安は景気拡大の追い風。原油安を機に米国株が下げ、円買いの動きが強まる可能性は否定しないが、原油安で日米ともに景気の底堅さが増すのであれば、米国の利上げ継続観測も強まり、日米ダイバージェンスの構図は続く。 そんな状況の中、ドル円が今年の最安値である116円台前半や節目となる115円ちょうどを割り込むほど下落する(円買いの動きが強まる)とは考えにくい。 中国景気の先行き懸念についても同様のことが言える。市場関係者の中には、同国の景気が大きく下振れすることで、市場のリスク回避姿勢が強まり、ドル円が下落するとの見方も示されている。しかし、中国景気が、ドル円を大きく下押しするほど減速すると考えるのは無理があるように思われる。 主要予測機関の見通しによると、来年の中国GDP成長率は6.3〜6.5%程度と、今年の成長率見込み(6.8〜7.0%)から減速する見込み。今年は6月から8月にかけて中国株が大きく下落し、人民元は事実上の切り下げ。一部からは景気の減速感が来年にかけてさらに強まるとの指摘も出ている。 中国政府が、輸出・設備投資主導型経済から脱却し、消費主導型経済への転換を目指していることもあり、景気の減速が続くのは避けられないだろう。とはいえ、人民銀行が今年に入って利下げを5回実施するなど、中国当局は昨年までと違い、足元の景気に配慮する姿勢を強めている。 現に、習近平・国家主席は、第13次5ヵ年(2016〜2020年)計画の発表時に次の5ヵ年の成長下限は6.5%と明言。また次期5ヵ年の中国の潜在成長率は6〜7%となり、7%前後の成長ペースを維持することが可能だと強調した。当局のトップが、ここまで明確にGDP成長率についてコミットしている以上、仮に景気が大きく下振れする事態に直面することがあれば、政府は利下げや預金準備率の引き下げといった景気刺激策を続けると予想され、中国景気の減速を主因に市場のリスク回避姿勢が強まることは避けられると思われる。 米国景気への影響は ドル高で成長減速か? FRBが9年半ぶりの利上げに着手したことで、米国景気の先行きを過度に悲観視し、日米ダイバージェンスの見方を否定する意見も目にする。しかし、25bpの利上げだけを根拠に米景気の大幅な変調を期待するのは無理があり、結論ありきのロジックに思える。 ドル高が米景気を下押しするとの見方もある。たしかにドルは昨年後半から上昇基調で推移しており、FRBが公表するドルの実質実効レート(1973年3月=100)は、11月に98.5と10年ぶりの高水準に上昇。過去最低を記録した2011年6月(81.1)からは2割以上も上昇している(図表2参照)。ドルがさらに上昇すれば、米景気はドル高で大きく減速するとの見方はもっともらしく見える。 ◆図表2:ドル実質実行レートの推移 ただ現在の米景気は、個人消費が牽引役であることを忘れてはならない。米個人消費は、昨年第2四半期以降、厳冬の影響で外出が難しくなった今年第1四半期を除き、プラス2.1〜2.9%の範囲でGDP成長率を押し上げ続けている。 一方、昨年第2四半期以降の純輸出は、今年第1四半期にGDP成長率を1.9%押し下げたことがあるが、それ以外の時期はプラスマイナス1%内の範囲で上下動している。今後、ドル高の影響で純輸出が恒常的に成長率を下押しする可能性は否定しないが、1990年以降、純輸出がGDP成長率を2%以上押し下げたことはない。 つまり個人消費が現在の拡大ペースを維持するのであれば、ドル高による純輸出の悪化で米成長率がマイナスに転ずる可能性は低いと言える。 米個人消費の行方は、来年も雇用と賃金の状況次第と言えるが、来年に大きく悪化することは考えにくい。11月の雇用統計が示すように、米国の雇用者数は月平均20万人以上の拡大ペースを維持。来年に入ると、労働市場の弛み(スラック)が縮小する影響で雇用者数の伸びが鈍化する可能性があるが、雇用の拡大が急速に鈍化することはないだろう。 個人消費が堅調に推移する以上、消費関連サービスの雇用増が、原油安やドル高の影響でエネルギー関連産業や製造業の雇用悪化をカバーすると予想される。雇用拡大が続く以上、イエレンFRB議長が指摘するように賃金上昇ペースの加速も期待される(図表3参照)。 ◆図表3:米非農業部門雇用者数と米平均時給 米非農業部門雇用者数は前月からの増減、米平均時給は前年比 やはりドル高・円安の進展が基本シナリオ ドル円は125円を抜け130円を目指す ドル円に限らず、今後起こりうる事象を100%確実に予想できる者はいない。だからこそ、今後予想されることをあれこれと思い浮かべたくなるのは理解できなくもない。しかし市場の見通しを作る上で大事なことの一つは、考えうる要因のうち現実に起こり得そうな事象を選び出し、実現可能性の高いものに優先順位をつけること。原油安、中国景気の急減速、そして米国景気の悪化といった様々なリスクは、来年のドル円相場を左右する可能性があるが、いずれも日米ダイバージェンスの構図を否定するほどの現実味があるように思えない。 米国内でのテロ発生、地震・台風などの自然災害といった予測不能のイベントを根拠に日米ダイバージェンスの構図が崩壊することも可能だが、このような予測は(言うまでもないが)当てずっぽうの類でしかない。考えられる可能性・リスクを取り上げ、様々な可能性に言及するだけで、結論をうやむやにしたまま終わる文章も散見されるが、このような文章は、自らの見方を明確に示さないだけに市場見通しとしての付加価値は低い。 繰り返しになるが、来年のドル円は、様々なリスクが想定されるものの、日米ダイバージェンスを背景に上昇(ドル高・円安の進展)することが、基本シナリオとしてふさわしいと考えられる。 米利上げ継続期待が高まりやすい年央には、ドル円が「黒田ライン」と呼ばれる125円を大きく上抜け、130円を目指す展開が期待できる。年後半は米大統領選挙を控え、ドル高を牽制する見方も強まりやすくなるだろうが、ドル円は125〜130円のレンジ内で底堅さを維持すると予想される。http://diamond.jp/articles/-/83393 M&Aブームの波が米規制当局の動きに火をつけた 2015年12月17日(木)The Economist 米国は今、史上最大級のM&A(企業の合併や買収)ブームのさなかにある。2008年9月に米リーマン・ブラザーズが破綻してから今までに成立したM&A案件、成立を待つ案件の総額は11兆ドル(約1332兆円)にのぼっている。そして今年の案件数は記録的に多い。最も新しいところでは、米ダウ・ケミカルと米デュポンが統合するかもしれない。ともに、米国の化学産業で長い歴史を誇り、業界を支配してきた存在だ。実現すれば時価総額1300億ドル(約16兆円)の巨大企業が誕生する。 こうした状況に、産業の独占を規制する当局がついに痺れを切らした。米国でM&Aを取り締まっているのは主に連邦取引委員会(FTC) と司法省だ。司法省は12月に入ってからこれまでに、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が家電部門をスウェーデンのエレクトロラックスに売却する案件を阻んだ。また、米投資会社が所有するバンブル・ビー・シーフーズをタイのライバル企業に売却する提案も差し止めた。他方、FTCは12月7日、オフィス用品の小売りを営む米ステープルズによる米オフィス・デポ買収を阻止する意向を明らかにした。 鉄道業界ではカナディアン・パシフィックが米ノーフォーク・サザンの買収を狙っており、騒動を引き起こしている。鉄道業界は19世紀から反トラスト運動の中心となってきた。ノーフォークはこの案件について輸送規制当局の認可を受けられないだろうと懸念している。 世論はM&Aに否定的 M&Aの波が発生すると、ほとんどの場合に否定的な反応を呼ぶ。野心を燃やす企業が「許容されるギリギリの線」を試そうとするからだ。当局は1990年代後半から2000年代前半にかけて、とりわけ防衛(米ロッキード・マーチンと米ノースロップ・グラマン)、通信(米ワールドコムと米スプリント)、ヘリコプター製造(米ベルとボーイング)分野における買収案件を阻んできた。2001年、欧州当局はGEによる米ハネウェルの買収を打ち切らせた。 今回も一部の大型案件は人々の批判を招いている。国民は航空や医療保険など、再編を経た(または計画中の)一部の業界に対してすでに嫌悪感を抱いている。次期大統領候補に名乗りを上げているヒラリー・クリントン氏は、遊説先で大手保険会社の合併計画を批判した。 米議会は12月8日、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)による英SABミラーの買収について公聴会を開いた。クリス・クーンズ上院議員は「バーに行って席についたらビールはバドワイザーとミラーしかない、などという状況を望む人間はいない」と不平をもらした。ちなみに両社は合併したら自社ブランドの一つを販売すると約束している(どちらにしても気の抜けた味のビールなのだが)。 出所:The Economist/Dealogic 買収の拡大がもたらす競争不足 政治家の酒の好みはともかく、当局が厳しいアプローチをとる背景にはもっと深刻な理由がある。各産業の上位50社が占める市場シェアの割合を1997年と2007年とで比較すると、大型産業の5分の4においてその割合が増加していた。企業の利益幅は現在、ほとんど記録に迫る勢いである。つまり競争が不足しているのだ。 買収活動の規模を見ても、さらに再編が進んでいることが窺える(リーマンショック以降に行われたM&Aの総額は米国企業全体の時価総額の46%を占めている)。金融危機前は、多くの場合に未公開株式投資会社が買い手となっており、ビジネス上の直接の関連がない企業を組み込んだ巨大ポートフォリオを作成していた。これに対して現在の買収案件のほとんどは「戦略的」なものだ。つまり、2つの企業が同じような事業を統合し、株価上昇とコスト削減を狙うのである。食品、ケーブルテレビ、通信、航空、コンピュータチップなどの業界は過去5年の間に統合を果たしている。 規制当局は競争を阻害するかどうかに注目 貪欲な企業は当局の神経を逆なでしないよう巧みな戦術を展開するようになった。ダウとデュポンの場合はいったん統合した後、それぞれ特殊性を持った3社に分割することになりそうだ。カナディアン・パシフィックは自身を独立したトラスト(企業合同)に組み込み、その後ノーフォークを組み込んで、当局の認証を得るまで両社を切り離して運営する形を提案している。もし当局が認めなければ、2社は再び分割される。 だが規制当局側もまた、アプローチを変化させている。バンブル・ビーのケースでは司法省は市場の定義を狭め、魚の缶詰全般ではなくマグロ缶の売り上げだけを調査の対象とした。 法律事務所ワクテル・リプトンのネルソン・フィッツ弁護士は、司法省とFTCがM&Aに関する指針を2010年に変更したことを指摘する。特定の市場におけるシェアや参入障壁などの伝統的な基準を重視するのではなく、その買収が競争を阻害するかどうか(例えば利幅や価格が上昇するかどうか)といった幅広い要素を判断の対象にしている。 6月には裁判所が食品大手シスコによるUSフーズの買収を差し止めた。判事はその理由として、2社が合併すれば国中のレストランや病院、ホテルをはじめとする食品購入者に対する価格決定力を獲得することを挙げた。ステープルズとオフィス・デポのケースも同様の根拠に基づいて判断された。FTCは、合併後の企業が大手企業向けの価格を上昇させることになると主張している。 M&Aに尻込みする経営者たち 独占禁止に対する反発はどこまで進むのだろうか。それを判断するには、未決の案件において、買収される側の企業の株式が提案価格より大幅に低い価格で売買されている件数がどのくらいあるかが一つの基準になる。アービトレイジャー(鞘取り仲買人)と投資家が買収の成立を期待していないことを示すからだ。可否の判断が保留されている大型案件20件のうち、株式が1割以上低い価格で取引されているものは9件ある。米石油会社ベーカー・ヒューズと米ハリバートンの案件もその一つだ。 米規制当局が意地の悪いパンチを今後も繰り出してくるとすれば、北米企業が関わる総額1.4兆ドル(約160兆円)の未処理案件の先行きはますます不透明になる。新たなM&Aを考える経営陣も、さらに神経を尖らせることになる。ある銀行役員によると、当局とやりあう期間が長期化していることを受け、一部のCEO(最高経営責任者)は潜在的なM&A案件に関して尻込みしているという。 当局の規制が強まるにつれ、既に高い市場シェアを持つ企業は解体を恐れるようになるかもしれない。たとえ、現在の地位を買収によらず独力で勝ち取った場合であったとしてもだ。米グーグルや米フェイスブックなどのIT(情報通信)企業は、業界を独占していると見なされる可能性もある。2001年、マイクロソフトは解体の危機をかろうじて免れた。米国がポピュリズムのムードに染まる中、独占禁止の動きが再び力を得ている。その余波はシリコンバレーにさえ達するかもしれない。 ©2015 The Economist Newspaper Limited. Dec 12th 2015 | NEW YORK | 2015 All rights reserved. 英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。 Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。 世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。 記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。 このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/121500048/?ST=print 下げ止まる兆しが見えない原油相場 2016年の注目ポイント 2015.12.17(木) Financial Times (2015年12月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
原油相場の大幅な下落は来年も続くのか? (c) Can Stock Photo ?2015年も暮れようとする中、石油トレーダーたちは楽観的になる理由をほとんど見つけられずにいる。石油の供給が増えているうえに、石油輸出国機構(OPEC)は減産しない方針を堅持しているからだ。 ?原油価格は今週、世界金融危機のときの安値に肉薄した。 ?主要指標のブレント原油とウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は、ともに1バレル40ドルの水準をしっかり下回っている。 ?どこまで安くなり得るのか、相場反発の準備はできているのか、多くの人が知りたがっている。 ?そこで、来年に向けて注意すべきポイントをまとめてみた。 増産を促すOPEC ?産油国のカルテルであるOPECは先日の総会で、原油の生産量を減らして価格を下支えするという行動を一切取らなかった。また、日量3000万バレルという公式の生産枠も取り払った。完全に遠慮がなくなった格好だ。 ?2015年の生産量が記録的な高水準に達したイラクとサウジアラビアが来年どんな動きを見せるかが注目を集めることになるだろう。諸外国の経済制裁がこれから解除される見込みのイランの原油も今後市場に出回ることを考えれば、特にそうだ。 ?サウジアラビアに単独減産を求める声も上がっているが、同国政府はこれに従うつもりはなく、イラン政府も生産量を制限されることを拒んでいる。そのため、OPEC内で対立が激化してもおかしくない状況になっており、これが来年の原油価格をさらに下押しする恐れがある。 ?「OPECの主要産油国はまだひるみそうにない」。シティグループでコモディティー調査部門のグローバル代表を務めるエドワード・モース氏はこう語る。 米国のシェールオイルブームは後退 ?非OPEC諸国の原油生産量の伸びは、原油価格の下落を受けて劇的に鈍化している。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2015年の年初には1日当たりの生産量が前年同期実績を220万バレル上回っていたが、11月にはこれが30万バレルにとどまった。 ?米国をはじめとする国々では、資金繰りに困った石油会社が原油の生産や設備投資を取りやめる事例も出ていることから、来年には2008年以降で初めて、非OPEC諸国の生産量が前年割れに陥るだろう。 ?IEAでは、日量60万バレルの減少を予想している。2016年には、非OPEC諸国の原油増産を牽引してきた米国シェール油田の生産が減るためだ。 ?「米国のシェールオイルについては、そのかなりの量が2015年末以降のヘッジを行っていない」。JBCエナジーのアナリストらはこう指摘する。「これは意外に早い時期に大きな問題になる恐れを秘めている」 ヘッジファンドのポジション ?原油価格の一段安を見込んだヘッジファンドが、原油の主要指標の取引で記録的な規模のポジションを積み上げている。 ?運用担当者らが先物・オプション取引で売り立てた原油の量は、世界の原油需要量の3日分以上に相当する。しかし、このポジションは2016年の原油相場を押し上げる要因になるかもしれない。各ファンドは反対売買を行って利益を確定したいと考えるからだ。 ?従って、最初に生じる値上がりは一気に大幅なものになる可能性があるだろう。OPEC加盟国のどこかで生産が大幅に滞るなど、相場を上昇させる予想外の材料が飛び出し、手じまいの注文が殺到するときは特にそうだ。 ?また、1バレル40ドルを下回る価格は長期的に持続不可能だとファンドが判断し、買い手に回る可能性もある。 ?世界金融危機のときに見られた原油急落の後、最悪期が終わったと見るやファンドは原油先物・オプション取引の大口の買い手になった。2015年のブレント原油の平均価格は前年比で44%安になりそうだ。しかし、ファンドにはまだ、原油価格を売り崩す手を緩めるつもりはなさそうだ。 バランスシートの改善 ?減産しないというサウジアラビア主導のOPECの戦略から最も大きな影響を受けているのは、大手の石油会社だ。特にロイヤル・ダッチ・シェル、BP、コノコフィリップス、スタットオイル、トタルの5社は、赤字を止めて現金を蓄えようと新規や既存のプロジェクトへの支出削減に踏み切っている。 ?スタンダードチャータードのアナリスト、ポール・ホースネル氏は、原油安によって強いられた支出削減は今年だけで3000億ドルに上ったと推計している。また2016年にもこの傾向は変わらず、設備投資の削減幅の累計は5000億ドルを超えると予想している。 ?では、この緊縮の時代が非OPEC諸国の生産に影響を及ぼし、市場のバランス回復に寄与し始めるのはいつごろになるのだろうか。 ?複数のアナリストの見立てによれば、石油メジャーによる設備投資の延期やキャンセルの影響は2017年以降になるまでフルには感じられず、感じられるときには顕著なインパクトが生じる恐れがあるという。 積み上がる在庫 ?先進国の原油の在庫は30億バレル近く――世界の需要の1カ月分に相当する――という記録的な水準に達しており、米国外では貯蔵スペースに余裕がなくなりつつある。 ?少なくとも年の前半の6カ月間は供給が需要を上回ると予想されている。では、余った原油はどこに蓄えておくのだろうか。 ?IEAによれば、来年には約2億3000万バレル分の海上備蓄施設が新たに利用可能になる見通しだ。ここには中国やインドに作られた大規模な戦略備蓄施設が含まれている。 ?石油トレーダーは、原油を安いときに買って備蓄し、限月が数カ月先の先物を購入価格より高く売って利益を得ることができる。しかし、原油が海に浮かぶタンカーに運ばれて蓄えられるのは、原油相場が一段と下げる場合に限られる。数カ月内にそういう状況になると見られる。 By Anjli Raval, David Sheppard and Neil Hume http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45566 |