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緩やかな人民元安か暴落か、2つの可能性 - 齋藤尚登 チャイナ・コンパス(ニューズウィーク日本版)
http://www.asyura2.com/15/hasan103/msg/557.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 16 日 17:45:44: igsppGRN/E9PQ
 

緩やかな人民元安か暴落か、2つの可能性 - 齋藤尚登 チャイナ・コンパス
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151216-00161296-newsweek-int
ニューズウィーク日本版 12月16日(水)17時0分配信


 このところ人民元安が続いています。これが、当局が為替介入を減らした結果であれば、私は高く評価したいと思います。元安に振れようとするマーケットに対して通貨当局が元買い(ドル売り)介入をすればするほど、外貨準備は減り、さらなる元安観測や資本逃避懸念が高まるというスパイラルに陥る可能性が否定できなくなります。人民元暴落シナリオです。為替介入を減らし、外貨準備の無駄遣いを抑えることで、こうしたリスクシナリオ発生の可能性を低めることができるからです。

 国際通貨基金(IMF)は2015年11月30日、SDR(特別引出権)に人民元を採用することを正式に決定しました。SDRとは世界の主要通貨が構成する準備通貨であり、IMF加盟国が通貨危機等に陥った際に、加盟国が保有するSDRをSDR構成通貨と交換することができます。2016年9月末までは米ドル41.9%、ユーロ37.4%、スターリングポンド11.3%、日本円9.4%の4通貨で構成されます。2016年10月1日以降はSDR構成通貨に人民元が加わり、構成比はドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、円8.33%、ポンド8.07%となることが決定されました。

 それに先立つ8月11日、中国人民銀行(中央銀行)が人民元の対ドル中間レート中国人民銀行がマーケットレートをもとに毎朝発表する為替レートです。対ドルの人民元の1日の変動幅はこの中間レートの±2%に規制されています)の算出方法の変更を発表したのは、人民元のSDR採用を巡りIMFが問題視していたマーケットレートと中間レートの乖離を是正することが目的でした。しかし、これは中国人民銀行の声明文には明記されず、少なくとも当時、広く認識されていたとはいえませんでした。このため、算出方法の変更を機に中国政府が輸出テコ入れのため人民元安誘導に踏み切り、通貨安戦争が始まるといった疑心暗鬼が生まれ、8月中旬にはアジアの新興国通貨が対ドルで大きく下落しました。さらに、元安誘導をせざるを得ないほど中国の景気は悪化しているとの思惑から日本株が大幅安になるなど、世界の為替・株式市場の動揺を招きました。

恣意的と批判されていた中間レートを改善

 8月11日以降、人民元の対ドル中間レートは、前日のマーケット終値を参考に決定されることになりました。従来、為替市場のレートと中国人民銀行が発表する中間レートは断絶されていました。制度変更前には、マーケット終値が中間レートに対して2%近い元安で引けても、翌日の中間レートは前日と変わらない水準で設定されるなどしていました。中国人民銀行は中間レートをブラックボックスの中で恣意的に設定し、中間レートとは名ばかりのものであると批判されていたのはこのためです。これが、8月11日以降は前日の終値を参考とすることになり、マーケットと中間レートに連続性がでるようになりました。

 8月11日の人民元の対ドル中間レートは1ドル=6.2298元と発表され、10日の中間レート6.1162元からは1.9%の元安となりました。8月13日の中間レートは1ドル=6.4010元と、3日間累計の下げ幅は4.7%に達しました。この背景には、基準値と前日終値との間にあるギャップを埋める意図があったのです。実際、8月13日に開催された中国人民銀行による記者会見では、「従来、人民元の中間レートと市場レートには3%程度の乖離があった」とし、「この乖離の是正は既に基本的に完了した」と明言しました。

 景気減速などを背景に元安に振れようとする為替市場に対して、「乖離の是正は既に基本的に完了した」として「当面はこれ以上の人民元安は望まない」と宣言したに等しい中国人民銀行は、「元買い(ドル売り)介入」でこれに対応しました。為替介入資金はかつてない規模となったとみられています。中国の外貨準備は2014年6月末の3兆9,932億ドルをピークに減少傾向にありますが、2015年8月は過去最大となる939億ドルの減少を記録し、8月〜11月の4ヵ月では2,130億ドルの減少となりました。この間に貿易黒字が大きく増加していたことを考えると、為替市場で相当大規模な元買い・ドル売り介入が実施されたとみられます。元安阻止のコストは極めて大きいと言わざるを得ません。

「管理された」変動相場制は続く

 12月1日に行われた易網・中国人民銀行副総裁の記者会見では、SDRへの採用が決まったことで今後の人民元レートはどうなるのか(元安が大きく進展するのではないか)、さらには当局による介入は大きく減るのか (為替レートの決定を市場に任せるのか)といった質問が相次ぎました。これに対して易網・副総裁は、「中国経済は中高速成長が続いており、貿易収支は大幅な黒字で、外貨準備も豊富である。これらの要素は人民元が持続的に下落する基礎がないことを示している」、「我々の長期目標は変動相場制への移行であり、それが実現する頃には為替介入は極めて少なくなっていよう。しかし、我々が現在採用しているのは管理された変動相場制であり、市場安定化を目的にある程度の介入を行う」、「IMFは我々の為替レート形成のメカニズムを変えることは要求していない」、などと回答し、為替介入を伴う「管理された」変動相場制が相当程度続くことを示唆しました。

 足元では元安が再び進展しています。12月15日の対ドル中間レートは1ドル=6.4559元となり4年ぶりの元安となりました。計算方法変更前の8月10日の6.1162元からは5.6%の元安です。これが、当局が為替介入を減らした結果であれば、私は高く評価したいと思います。

 8月以降の外貨準備の急減は、人民元買い(ドル売り)介入をかつてない規模で行ったことが主因の一つであると指摘しましたが、今後、人民元取引の拡大に伴い、そのコストはより大きくなっていきます。中国では景気テコ入れのための金融緩和が続く一方で、米国は利上げ局面に入ります。元安(ドル高)圧力が高まる可能性があるなか、それを元買い(ドル売り)介入で阻止しようとすればするほど、外貨準備は減り、さらなる元安観測や資本逃避懸念が高まるというスパイラルに陥る可能性が否定できなくなります。人民元暴落シナリオです。通貨当局が為替介入を減らした結果、元安となっているのであれば、外貨準備の無駄遣いは抑えられ、こうしたリスクシナリオ発生の可能性を低めることができるとみています。

齋藤尚登

 

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