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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
他人事じゃない 非正規社員急増の裏に中高年「介護離職」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/171650
2015年12月15日 日刊ゲンダイ
「介護離職ゼロ」のお題目は、素晴らしい。しかし、ハコ物づくり一辺倒のトンチンカンな政策で、肝心の介護離職は減るどころか増えそうだ。
厚労省が先月、発表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、パートや派遣などの非正規社員は4割に達した。その背景にあるのが介護離職なのだ。
「安倍政権発足前の2012年4〜6月期と15年同期を比較すると、雇用者数は121万人増えています。しかし、その内訳は、非正規が178万人増で、正社員は56万人減っているのです。5年に1回調査している総務省の『2012年就業構造基本調査』では、働きながら介護している人は240万人で、調査期間の11年10月〜12年9月に介護離職した人は約10万人。しかも、介護を理由に『仕事を辞めたい』『転職したい』と答えた人は42万人。この42万人は“介護離職予備軍”で、今後、正社員から非正規への転落を伴いながら、介護離職数が増えるのです」(総務省関係者)
荒木和夫さん(49=仮名)は3年前、化学メーカーを介護離職。その1年前、母が他界したことで、実家から車で40分の自宅を処分。実家で父を介護しながら働いていたが、限界だった。
「当初、父は元気で、食事の世話くらいで済む状態だったので、仕事と介護は両立できると判断したのですが、母を失ったショックなのか、同居生活から2カ月ほどで、一気に認知症が進んだ。病院に連れていくのも、役所に相談するのも、半日がかり。父のことが気になり、残業もできません。仕事の穴埋めに休日出勤でカバーしたつもりでしたが、次第に周りの目が冷たくなった。ある日、上司に営業への異動を命じられましたが、あの状況で受け入れられるわけがなく、辞職を余儀なくされたのです」
■正社員から年収は4割減
冒頭の非正規増加の調査で、4人に3人が35歳以上。急増する非正規は中高年が圧倒的。荒木さんのようなケースは他人事ではなく、介護離職した人は1年以内に5割が仕事との両立を断念している。好きこのんで介護離職するわけではないが、「自宅はあるから、親の年金とバイト代程度で何とかなる」という甘い考えがなくもない。
「ローンの残りを差し引いても、マンションの売却資金と貯金で2000万円ありましたから、そういう考えがあったのも事実。ところが、認知症の一気の進行で、バイトさえままならなくなりました。週3回、病院の清掃バイトが精いっぱい。時給は800円、交通費込みで月9万円ほど。親の年金なしにはやっていけません」(荒木さん)
明治安田生活福祉研究所などの調査によると、介護離職で非正規に転落すると、年収は男性で4割、女性で5割減る。「全国介護者支援協議会」理事長の上原喜光氏が言う。
「介護離職に追い込まれる人は圧倒的に情報不足で、公的な介護サービスを十分使えていません。介護認定さえ受けていない人もいます。地域包括支援センターで、介護支援専門員や社会福祉士などに相談し、親がどんな介護サービスを受けられるのか知ることが第一です。仕事との折り合いのつけ方も、そこで相談するといい。使えるものはなんでも使い、とにかく仕事を続けながら介護する。中高年が非正規に転落したら、もう正社員には戻れない。転落の時期によっては、無年金になる。500万円くらいの貯蓄額では、親が亡くなったら5年で親子共倒れです」
肝に銘じることだ。
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