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ドル高だと思っていると、逆になる?(blanche / PIXTA)
1ドル102円台の「円高時代」がやって来る? 日本株は米国の利上げ後どうなるのか
http://toyokeizai.net/articles/-/96651
2015年12月15日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
世界中の市場関係者が注目するFOMC(米・連邦公開市場委員会)が目前に迫っている。この一大イベントをきっかけに、世界の市場はどのように動くのか? 市場関係者はさまざまな思いを抱きながら、その日が来るのを待っている。
しかし、先週末の株式市場や為替市場の動向を見る限り、投資家はリスク回避の方向に向かっているようだ。この動きがFOMC後も続くのか、その場合にはどのような投資行動が賢明なのか。ここ数年間続いていた市場トレンドの転換点になる可能性もあり、投資判断には慎重さと大胆さが必要に思われる。
■過去3回の利上げでは、利上げ後「円高」に振れた
12月15〜16日に開催されるFOMC(結果が出るのは日本時間の17日未明)では、2004年以来の利上げが実施されるとの見方が支配的だ。直近の市場予想でも約8割の確率で利上げが実施されるとされており、利上げは確定的とみてよいだろう。
直近では金融市場が少し不安定な動きになっているが、9月に利上げを見送った際の理由となった中国の株式市場の混乱や景気鈍化懸念は見られない。つまり当時ほど市場が混乱しているわけではない。そのためイエレンFRB議長が「年内利上げが妥当」と言い続けてきた通り、“予定通り”の利上げが実施されるだろう。
では、その場合、市場はどのような動きになるのだろうか? 利上げとなれば、金利が上昇することになる。金利が高くなれば、その通貨は買われると考えるのが一般的だ。しかし、実際にはそのようにはならないのが市場である。
実際、ドルは利上げ観測を反映する形で、この1年半で大幅に上昇している。つまり、今回の利上げを織り込んで、かなり早い段階で上昇していた。そのため、利上げがむしろドルのピークを確認する材料となり、そこから徐々にドルが下げていくといった、普通では考えられないことが起きるのである。
「そんなことはないだろう」と思われるが、直近3回の米利上げ局面でのドル/円相場は、約1年間で平均23.5円も円高に進んでいる。今回の利上げ前のドル/円の高値を1ドル=123.50円とすれば、約1年間で100円近くまで円高が進む計算になる。
■利上げ時はドル高織り込み完了、反転は16年6月?
この動きを見るだけでも十分に驚きなのだが、さらに驚くのは、米国が利上げを開始し、徐々に金利を引き上げていく中、日本では金融緩和政策がとられていたことである。「米国は利上げ、日本は緩和策」となれば、ドル高・円安が急激に進むと考えるのが自然だろう。
しかし、実際の動きは前述の通りである。市場は想定される事象を織り込みながら変動し、実際にその事象が顕在化した際には織り込み完了となり、それをきっかけに反対の方に動く習性がある。
まさに「噂で買って、真実で売る」である。このような動きになるとすれば、円高基調が相当進むことになり、日本株にはかなりネガティブな材料になるといわざるを得ない。
その動きはすでに見られ始めているともいえる。投資家は、このようなロジックを事前に十分に理解した上で、投資判断を行うのがよいだろう。そうすれば、市場動向に振り回されることもないはずである。これは、株式市場でも同様である。
■5月が輸出関連株の投資タイミングか
では、今後の株価動向について、どのように考えるべきだろうか。全体像としては、「2016年の5月までは慎重姿勢、6月以降は積極姿勢」となるだろう。
これまで日本株は米利上げにより、平均的に6〜8%程度下落している。この下落をこなした後は、上手くいけば、2016年3月中には反発に転じる可能性がある。長引いても半年、つまり、16年5月末ごろには底打ちするとの期待が持てる。
そこまでにドル安・円高が一気に進めば、そこで株価とドルの底値を確認し、16年末に向けて上昇に向かうことになろう。これが、まさに米利上げ時におけるセオリーを基にした、客観的な相場観である。
具体的には、円高が最大で102円程度にまで下落するにつれて、日経平均株価は利上げ開始時の水準を1万8500円とした場合、最大8%下の1万7000円程度にまで下落することになる。この間の投資戦略は、円高を背景に内需・ディフェンシブ銘柄が中心となろう。
しかし、その後はドル円相場が反転し、2016年末には下がった分の半値戻しの水準である112円程度に戻すだろう。年央のドルの下げ幅がそれほど大きくない場合には、年末には120円台を回復するかもしれない。そうなれば、再び輸出企業への関心が高まってくる。
もし5月末までにドルが底値を付ける過程で輸出関連株売り込まれれば、そのときがそれらの企業への投資タイミングになるだろう。日本株は外国人投資家の動向とともに、為替相場の変動に大きく左右される。
前述のような、米利上げ時のドル円相場のセオリーを念頭に入れながら、投資タイミングを計るのが賢明だ。無論、2016年以降の米利上げのペースが重要になることはいうまでもない。最終的には、総合的に判断することが肝要だ。
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