２０ドル/バ-レル、早急に割ってくれないか？

日本にとってこんな良いニュ-スはありません。

何をバタバタ慌てているのだ？　トータルで見たら、日本は喜びです。

しかし、ガソリンは安くならないな〜。１００円/Ｌを切っても良いのにな〜

流通が設けているのか？

８０円切って販売している地区があるそうです。当然と思います。

　12月6日に開催されたベネズエラ国会議員選挙で、故ウーゴ・チャベス元大統領の流れをくむ与党PSUV（ベネズエラ統一社会党）が大敗、中道右派のMUD（民主統一テーブル）が3分の2を超える議席数を獲得した。ベネズエラは経済の崩壊と深刻な物不足、治安の極度な悪化に直面している。野党大勝で苦境のベネズエラは変わるのだろうか？ 1回目はこちら

カラカス郊外のバリオ。ある意味で細密画。
　ベネズエラには1ドル6.3ボリバルの公定レートに加えて、1ドル13.5ボリバルのSICAD、1ドル約200ボリバルのSIMADI、1ドル900ボリバル前後の闇レートの主に4つの為替レートが併存している。
　公定レートは食料品や医薬品などの基礎生活品を輸入する企業や政府の調達品などに適用される。ボリバルの実勢に対してボリバル高に据え置いているのは、輸入価格を抑えて安価に国民に分配するためだ。ジェトロ・カラカス事務所の松浦健太郎所長によれば、食料品と医薬品で90〜100億ドル分が公定レートで輸入されたという。
公定レートと闇レートの差は138倍
　一方のSICADは主に民間企業の原料調達のためのレートだが、政府自身がドル不足のため、業種などを決めての入札方式を採る。2014年は合計26回、54億ドル分の入札が行われたが、今年は2回、計5億ドルに過ぎない。それだけ外貨不足が深刻ということであり、製造業にとっては部品など原材料の輸入が困難になっているということである。
　現実に、三菱自動車などの組み立てと販売を手がける双日のベネズエラ子会社MMCアウトモトリスでは部品が払底、生産が止まった。トヨタの組立工場も、12月中に部品がなくなると囁かれる。
　SIMADIは2015年2月に導入された新レートで、より制限なくドルを調達できるよう、当時の闇レートの相場に併せて導入された。その後、10カ月で闇レートでのボリバル安が急激に進んだため、位置づけのよく分からない存在になっている。空港での換金やクレジットカード払いの際の交換レートは基本的にSIMADIだ。

空港で200ドルを換金したらこの有様。しかも、ボリバルからドルへの換金は闇市場でなければできない。
　なお、闇レートは、ドルとコロンビア・ペソのレートと、コロンビア・ベネズエラ国境における闇レートを掛け合わせて算出されたもので、12月10日現在で1ドル869.57ボリバルである（出所：dolartoday）。
　このように、必需品は公定レートで輸入されるが、公定レートでのドル割り当ては規制が厳しく、誰でも6.3ボリバルでドルを取得できるわけではない。結果として、１ドル200ボリバルのSIMADI、あるいは闇レートで輸入せざるを得ず、インフレが加速する。
「ボリバルを引き出すたびにピン札が出てくる」
　インフレについていえば、PDVSA（ベネズエラ国営石油会社）の経営悪化に伴うボリバルの供給過剰も大きい。

車の中から撮っているので分かりにくいが、ベネズエラ中央銀行の本店。壁にチャベス元大統領の写真がデカデカと貼ってある。中銀総裁と口論になった際に、「ほんの10億ドルほしいだけなんだ」と言ったという逸話が残るように、チャベス大統領は中銀を財布代わりに使った。
　PDVSAはベネズエラの外貨の大半を稼ぐ存在であり、輸出で稼いだドルの半分程度をベネズエラ中銀に売却している。その際の為替レートは公定レートだが、人件費などはインフレに連動して上昇しているため、経営環境は厳しい。そこで政府はPDVSAを支援するため、ボリバルを印刷して同社に貸し付けているのだ。「ボリバルを引き出すたびにピン札が出てくる」とある市民は語る。
　この複数為替制度は汚職の元凶にもなっている。

将来のリーダーと目されるスモランスキー市長。まだ30歳の若さ。日本青年会議所が選出した「Ten Outstanding Young Persons（世界で活躍する10人の傑出した若者）」の一人に選出された。
　例えば、何かしらの理由で新車を輸入できる政府高官や軍関係者が6.3ボリバルの為替レートで新車を輸入したとしよう。シートにビニールカバーがついた状態でしばらく乗り回して、それを国内で新車として販売すれば、為替のところだけで膨大なさやを抜くことが可能だ。野党側リーダーの一人であるアティージョ市のダヴィッド・スモランスキー市長は、この複雑な為替レートを用いた汚職は250億ドルに上ると指摘する。
　汚職ついでだが、この11月には、マドゥロ大統領の妻の親族がコカイン800ｋｇを米国に密輸しようとしてハイチのポルトープランスで米当局に身柄を拘束された（その後、起訴された）。マドゥロ大統領に次ぐ実力者であるディオスダド・カベジョ国会議長にしても、コカイン密輸組織のボスとして米DEA（麻薬取締局）がマークしている。このように、チャベス以降における政府の腐敗レベルは常軌を逸している。
「我々は直接国民に利益を与えている」
　もっとも、与党による経済失政が苦境の原因という見方を、与党サイドの人間は明確に否定している。今回の国会議員選挙で与党連合の一員として出馬したPPT（みんなの祖国）党のイレーニア・メディア書記（元国連ベネズエラ代表代替大使）は次のように語る。
　「インフレ率がどうこうとおっしゃいますが、それはキャピタリストの見方であり、我々の考え方とは違う。キャピタリストは銀行と私企業を重視するが、我々は直接国民に利益を与えている。我々は人に投資しているんですよ。とにかく、ニューヨークで仕入れた知識は間違えています」
　貧困層の底上げは、ベネズエラのような格差の激しい国では重要な政策だと理解している。人材への投資も持続的な成長のために不可欠だと理解している。だが、住居や食料、ガソリンの分配は一過性の投資に過ぎない。また人材への投資というのであれば、強盗と暴行で授業もままならない大学のセキュリティにも力を入れるべきだろう。
　また、彼女は対外債務の返済はしっかりと支払われていると強調していたが、民間企業への支払いは明らかに滞っている。企業が商品や原材料を輸入した際に、海外の輸出者に対する支払いが遅れているということであり、それが輸入の障害になっていることは見て見ぬ振りだ。
　「今どき、こんな制度（価格統制や複数為替制度）を取っている国はない。資源価格が高いうちは持っていたが、限界に達したということ」。在ベネズエラ日本大使館の鈴木利幸参事官はこう語る。チャベス以前の社会的不平等がチャベス政権を生み出したという歴史的な意義は理解するとしても、チャベス主義者による市場を無視した過度のばらまきが経済システムを破壊したといっても過言ではない。
　今回、野党連合が3分の2の議席数を獲得したことで、野党連合は憲法改正や選挙管理委員会役員の信任、最高裁判長の解任などが可能になった。
　ベネズエラは立法、司法、行政の3権に加えて、選挙権、民衆権の5権分立をうたっている。選挙権の長である選挙管理委員長、民衆権の検察庁長官を解任するためには最高裁の事前判断が必要であり、与党寄りの最高裁判長を解任できるのは大きい。また、今の野党の勢いであれば、大統領罷免と、選任の国民投票（レファレンダム）も可能になるかもしれない（大統領の罷免投票は有権者の20％以上の署名が必要）。
　だが、仮に野党連合がマドゥロ大統領を引きずり下ろしたとしても、ベネズエラが今の苦境を抜けるのは並大抵ではない。
野党連合に経済再生は可能か
　ベネズエラにとって原油価格が死活問題だが、原油価格が100ドル台に復活することは当面ないだろう。また、物不足を解消するためには国内の生産力を高める必要があるが、国有化で生産ベースが弱体化しているうえに、ドル不足で原材料や資材の輸入もままならない。2015年3月に240億ドルあった外貨準備高は現在150億ドルまで減少している。
　そうなると、頼みの綱は共同基金への拠出という形で300億ドルの融資を受けている中国だが、基本的に中国の融資は用途限定、中国企業限定の紐付き融資。原油ならびに石油製品での代物弁済が認められていることからも分かるように、ベネズエラの原油が目当てである。ただ、中国経済の減速によって状況が変わりつつある今、ベネズエラのために中国がどれだけ支援し続けるかは分からない。
　国軍がどう出るかも不明確だ。今回の選挙では、投票が締め切られてから選挙管理委員会が3分の2の112議席獲得を発表するまで48時間近くかかった。僻地などからのデータ送信に時間がかかっているという説明だったが、裏ではどこまで野党を勝たせるか、言い方を変えれば、112議席未満にどうやって抑えるかを交渉していたと見る向きは少なくない。最終的に、軍の最高司令部が与党の不正を認めなかったと報道されているが、軍も護憲派と与党支持派で割れている。また、コロンビア国境付近での麻薬取引など軍自身の汚職もある。
　加えて、選挙結果がどこまで尊重されるのかが不透明だ。ある政府機関のOBは野党大勝が報じられた時にクールに言い放った。「仮に野党側が3分の2議席を獲得したとしても、どうせ大統領は議会を機能不全にする方法を考え出しますよ」。実際、選挙後の大統領放送では、興奮したマドゥロ大統領が「革命だ！」と叫んでいたという。来年1月の新議会に向けて、一波乱も二波乱もありそうな状況だ。
　何より、経済を立て直す過程で、これまでのばらまきに慣れている国民の強烈な痛みを強いるに違いない。その時にどう不満を抑えて改革路線を堅持するか。経済再生に時間がかかることを思えば、ポピュリズムに染まりきった多数の意識改革が恐らく一番難しい。
「復興は可能だと信じている」
　「私たち野党はまず自由を保証し、体制や法制度を完全に独立したものにする。同時に、経済的な自由を実現する法律を推し進め、国民が安全と思える国づくりを目指す。ベネズエラには原油だけでなく、天然ガスや金などの豊かな資源があり、観光に適した自然・地形がある。それらをうまく生かせば、復興は可能だと信じている」
　先のスモランスキー市長は言う。国のポテンシャルだけで言えば、ベネズエラは世界でも有数の存在だろう。だが、ベネズエラ人はそのポテンシャルに溺れ、持続的な国づくりを疎かにしてきた。今回の選挙で、長いトンネルの出口はかすかに見えたが、厳しい国際情勢の中で、スモランスキー市長が語るような国づくりが実現できるのか。そのチャレンジは今まで以上に厳しい。

○○支局長の「辺境を視に行く」
「日経ビジネス」の海外支局で働く支局長が世界の「辺境」を訪れます。地理的な辺境あり、文化的な辺境あり、政治システムの極北もあれば、社会システムの楽天地もあり。
支局長たち自らの眼で見た世界を活写します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/283921/121300005/?ST=print