3. 2015年12月14日 13:03:10
: OO6Zlan35k
: ScYwLWGZkzE[76]
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/129957/121000043/?mle&rt=nocnt小宮一慶の「スイスイわかる経済!“数字力”トレーニング」 政府の賃上げ要請は経済を活性化できるのか 官民対話を考える小宮一慶 • 2015.12.11 • コメント(7件) 11月26日に政府が開いた官民対話で、経団連の榊原定征会長は「設備投資は3年間で10兆円増やすことが可能。来年は今年以上の賃上げを期待する」と発言しました。それに呼応するかたちで政府は、法人税の実効税率を16年度に現行の32.11%から29.97%にする方針を固めました。 本来、設備投資や賃上げは企業判断で行われるものであり、政府が要請すべきことではありません。ある意味、いびつな状態だと感じますが、この官民対話は何を意味しているのでしょうか。今回は、官民対話について、景気指標の数字を分析しながら、私が考えるところを述べたいと思います。 (写真:bee / PIXTA) 次ページ:政府は二度目の消費増税前後の景気後退を恐れている... 政府は二度目の消費増税前後の景気後退を恐れている 前回の会合で、政府は経団連に対し、「賃金と設備投資を増やせないか」という質問を投げかけていました。政府としては、17年4月に控える消費増税をにらみ、今のうちから景気をよくしておきたいのです。もっと言えば、来年のしかるべき時、つまり、参院選(場合によっては衆参同時選挙)後の、夏から晩秋にかけて、増税の判断をしなければならないのですが、その時期の景気を良くしておきたいということもあります。 経団連は、積極的に賃上げをする代わりに、政府に対して法人実効税率の引き下げや規制改革の推進、原発再稼働による安価な電力供給など9項目の要望を提示しました。 ただ、そもそも賃上げや設備投資というのは、企業が判断すべきことです。企業の業績が改善し、先の見通しが明るいと経営者が判断した時点で、賃上げや設備投資をするのです。政府から言われてやることではありません。 では、なぜ、政府は経団連に強くプレッシャー働きかけているのでしょうか。 実質GDPを見ますと、15年4-6月は年率換算でマイナス0.7%。7-9月は、速報値ではマイナス0.8%でしたが、改定値では1.0%増となりました。7-9月は上方修正されたと言っても、GDPの6割弱を支える家計の消費が不振で好調とは言えない状況です。 その主な原因は、二つあります。一つは、企業が設備投資に慎重なことです。企業の設備投資の先行きを示す「機械受注」を見ると、8月は前年比マイナス3.5%、9月は同比マイナス1.7%と減少が続いていますね。 中国の景気減速の影響から、企業は「先行きはそれほど明るくないだろう」と考えて、設備投資を抑えているのです。 次ページ:実質賃金が少し伸びても消費は増えない 実質賃金が少し伸びても消費は増えない もう一つは、個人消費の低迷です。「消費支出2人以上世帯」を見ますと、前年比マイナスの傾向がずっと続いていますね。確かに消費増税の影響もあるでしょうが、消費増税が行われたのは1年半以上前の14年4月のことです。この指標は前年比の数字ですから、今年4月以降はその影響が剥げ落ち、反転してもいいはずです。 そういった点があるにも関わらず、マイナスの数字が続いているということは、落ち込んだ昨年よりさらに減っているということです。 その根本的な原因は、ひとりあたりの給与の総額である「現金給与総額」です。ただ、推移を見ますと、徐々にではありますが前年比で増加しています。同じく「消費者物価指数(前年比)」を見ると、8月以降はマイナス0.1%が続いています。 つまり、14年度は消費増税の影響もあり物価が2.8%上がったことで実質所得は減少しましたが、15年度に入り実質所得自体は増えているのです。実質所得は増えているのにもかかわらず、消費にお金を使わない、といった様子が分かります。 次ページ:「臨時給付金」はカンフル剤に過ぎない 「臨時給付金」はカンフル剤に過ぎない なぜでしょうか。当然ですが、消費者が将来に不安を感じている、あるいは、所得の上がり方が将来の不安を払しょくするくらいに大きくなければ、実質所得が多少上がっても消費を増やしません。実質所得が増えたといっても、1%を切る水準ですからね。 いずれにしても、個人消費はGDPの6割弱を支える大きな要素ですから、ここが継続的に増加しない限り、景気は浮揚しないのです。 そこで政府は、「個人消費を上げるためには、給与所得をもっと増やさないとダメだ。企業には賃上げをしてもらおう」と考えました。ただ、先ほども言いましたが、実質所得が少しくらい増えても、将来への不安があれば積極的な消費は期待できません。 さらに今は高齢者世帯が増えていますから、彼らにとっては、現金給与総額が上がっても関係ありません。年金が上がらない限り、消費を増やせないのです。 そこで政府は、高齢者を中心に1人3万円を配る「臨時給付金」を行おうとしています。1千万人以上に配ることをも考えています。来年には参院選を控えていますから、ただのバラマキだとの批判もあります。この政策は、一時的には消費刺激効果があるかもしれませんが、あくまでも一時的なカンフル剤でしかありません。 次ページ:中小企業のボーナスは伸びていない 中小企業のボーナスは伸びていない もう一つ見落としてはならないのは、中小企業の動きです。細かい数字に注目していますが、前掲の6月の現金給与総額は、前年比マイナス2.5%と大幅に減少していますね。当初、マスコミは「賞与の月ズレが起こったのだろう」と言っていました。 しかし、最近では月ズレではないとの見方が強まっているのです。日経新聞の報道によると、大企業のボーナスは増えたものの、中小企業は伸びていないという話です。 官民対話では、経団連と政府が意見を交換しました。経団連は大企業の経営層によって構成されている組織です。大企業の多くは、円安もあり海外での業績が上がっていますから、賃上げにも対応できるでしょう。 ただ、それが中小企業まで波及するかどうかは分かりません。全国の企業の約99%は中小企業であり、労働者の7割が中小企業で働いています。ここが底上げされなければ、個人消費の増加には繋がらないのです。 今、所得の二極化が急速に進みつつあります。大企業に勤めている人たちは所得が上がり、株も上がっていますから、「景気はよくなっている」と感じているでしょう。ところが、その他の大多数の人たちにとっては、その恩恵が得られないのが実状です。 安倍首相が、11月24日の経済財政諮問会議で「現在、全国平均798円の最低賃金を毎年3%程度ずつ引き上げ、将来的に1000円程度にしてほしい」と発言したのは、そのためでしょう。 次ページ:配当税制を見直さない限り税の歪みは正せない 配当税制を見直さない限り税の歪みは正せない 本来であれば、企業業績が上がり、経営者が「先行きは明るい」と感じた時点で給与を上げたり、設備投資を増やしたりするのが自然な形です。しかし、今回の官民対話では、先に給料を増やすことで消費が刺激され、景気が改善される、というサイクルをつくろうとしているのです。 ただし、先ほどもお話ししたように、あくまでも中小企業の業績が改善しない限り、全体の個人消費を継続的に増やすことは難しいのです。 もちろん、法人税の減税は我々経営者にとっては有難い話です。ただ、企業の70%以上が法人税を支払っていないわけですから、減税をしてもどこまで好影響があるのは分かりません。 本コラムでは何度もお話ししていますが、そもそも配当税制を見直さない限り、中小企業は法人税を支払うようにならないと思います。税制が社会を歪めている部分がありますから、そこにメスを入れた方がよほど効果的ではないでしょうか。 また、「GDP600兆円」という目標を目指すために、冒頭で述べたように、経団連は設備投資を3年間で10兆円増やそうとしています。設備投資を増やすこと自体は悪いことではありませんが、その後の企業業績がちゃんとついてくるかどうかをよく考えなければなりません。 次ページ:わずかな減税でキャッシュフローが生めるのか? わずかな減税でキャッシュフローが生めるのか? 今、中国の景気減速によって、企業収益はやや減速傾向に転じつつあります。国内消費も伸び悩んでいます。2017年には消費税の増税も控えています。そんな状況の中、本当に国内で設備投資を増やせるのかどうか。 さらに考えなければならないのは、業績が回復している企業は、国内より海外で稼いでいるということです。それをどこまで国内の従業員に還元できるのでしょうか。 輸出の多い企業でしたら問題ないでしょうが、多くの企業では現地生産しています。配当では国内に利益を戻せるでしょうが、国内の従業員の給料を上げられるかどうかは分かりません。 内部留保を吐き出せばいいじゃないかという声もあるでしょうが、それも企業体力を弱めることに繋がります。これも個別企業が決めるべきことであって、長期的な視点で見たときに、それが本当によいのかどうか、その点は全く議論されていないのです。 法人税の減税についても、効果はそれほど期待できない可能性があります。「20%台」と言っても、32.11%から29.97%までのたった2%強の減税です。そのわずかな差で、どれだけのキャッシュフローを生めるのでしょうか。 さらには、給与を上げることで費用が増えれば、利益額が減るわけですから、法人税減税の恩恵も薄れます。設備投資も同様で、これを増やせば減価償却費が増えるわけですから、こちらも利益が減ってしまいます。継続的に利益やキャッシュフローが増加できることが大切なのです。 次ページ:賃上げや法人税減税は根本的解決にはならない 賃上げや法人税減税は根本的解決にはならない 以上のことを考えますと、官民対話によって、賃上げや設備投資の増加、法人税減税などが実現したとしても、どこまで好影響があるかは微妙なところだと感じます。 そもそも、政府が企業に賃上げなどを要請すると言うことは、見方を変えればそれだけ政策が手詰まりだということです。「GDP600兆円」という目標を掲げたのはいいけれど、具体策がないから、結局は民間のお金を吐き出させようというだけの話なのです。経営者にとっては、政府から言われる筋合いはありません。 2017年4月に消費増税が行われれば、景気は前回同様、高い確率で腰折れします。政府としては、増税判断のことも含めてその前に景気を上げておきたいのでしょう。 また、日本経済に大きな影響を及ぼす中国の景気が急速に減速しています。今後、従来のスピードに急回復する可能性は当面はほぼありません。日本経済は、いつ踊り場から下降局面に転じるか分からないのです。万が一、景気後退に突入すれば、消費増税を決められなくなる可能性があります。 そういった政府の思惑もあるでしょうが、根本的には企業業績が上がらなければ、継続的な経済成長は見込めないということを忘れてはなりません。 (構成=森脇早絵) 小宮 一慶(こみや・かずよし) 経営コンサルタント。小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。84年から2年間、米国ダートマス大学エイモスタック経営大学院に留学。MBA取得。主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(以上、ディスカバー21)、『日経新聞の「本当の読み方」がわかる本』、『日経新聞の数字がわかる本』(日経BP社)他多数。最新刊『ハニカム式 日経新聞1週間ワークブック』(日経BP社)――絶賛発売中! 小宮コンサルタンツ facebookページ:http://www.facebook.com/komiyaconsultants
皆様からお寄せいただいたご意見(7件) 1. 日本国内は人口減少と高齢化で消費は伸びない。最低賃金引上げだけは効果が期待できるが、賃上げや投資は必要だが成長には繋がらないだろう。日本経済を活気づかせるには、外国から金を稼ぐしかない。 しかし、成熟した世界一の経済大国米国は、シェールガスで活気を取り戻したが、成長率は名目で2〜3%だ。同規模のEUは、南北格差や移民問題を抱え、現状維持が精いっぱい。今まで年率10%程度の高度成長で世界経済を牽引した中国と東南アジア諸国は、工業化による高度成長期を通過し終えて成長率は鈍化する。 今後は、成長鈍化しても5%程度は成長する中国・東南アジア諸国の消費の伸びや、日本を訪れる外国人観光客増加に重点を映さねばならない。観光庁まとめの外国人観光客日本国内消費額推計は、2014年約2兆円、GDPの0.4%程度だったが、2015年は激増して第三期ついに4半期の金額が1兆円を超し、年額は3.5兆円を超すだろう。以下に四半期ごとの推計値を転記する。数値の単位は億円。 2014年1Q:4298、2Q:4870、3Q:5505、4Q:5605、2015年1Q:7055、2Q:8893、3Q:10009 日本経済の活性化対策は、サービス業、特に外国人観光客の消費額増加に力を入れるべきだ。大型客船受け入れ設備、観光バス増車と運転手増強、民泊を含む宿泊設備増強、すぐ消費増につながる項目がたくさんある。外国人観光客の落とす金増加だけで、GDP 1%増が期待できる。また、日本ブランドの信用は高いから、中国・東南アジア諸国への小売・飲食業の進出も伸ばせるだろう。(富士 望) (2015年12月12日 11:40) 2. 需給ギャップが問題なのに、設備投資して供給を増やしてどうするんですか。設備投資しなくても利益は出るんですから、それを給与や税金で吐き出してもらった方がいい。金融緩和による政策株高をキャピタルゲイン増税で回収しなかったのが悔やまれる。(ぴ) (2015年12月12日 08:01) 1. やはり賃上げが先行すべきだ。 もし、企業が内部留保を増大させつつ、減税の蜜を吸い続けるならば、一般労働者は少子化で対抗するしか策がない(結婚できない、産めない、育てられないのが実態だが)。 何のための経済活動なのか。 投資家、株主、博打打ちに安易な不労所得を与えるためなのか。 若い勤労夫婦が将来に夢が持てて、次世代を育成できる経済構造が本来の姿ではないのか。 次世代を育成できない経済は、本末転倒である。 以上(高等貧民) (2015年12月11日 18:44) 2. 政府の設備投資要請に対し、需要増大の見込みが無いのに設備投資したら、将来無駄な設備を抱えて生産性の低下を招くのでは、という指摘をネットで見かけてもっともだと思いました。 政府の設備投資・賃上げ要求にしろ日銀の異次元緩和にしろ、政策が近視眼的かつ経済との因果関係に関する考察が甘く、もう少し沈思熟考した方が良いと感じます。 経済状況を構成するパラメータと影響度を明らかにし、影響度の大きいパラメータを調整するようにしないといつまでも問題が解決しないのではないかと思います。 具体的には、高齢化による需要の減退、社会保障負担率の増加による労働世帯の可処分所得の低下辺りが影響が大きいパラメータなのではないかと考えています。(エンジニア) (2015年12月11日 12:44) 3. 法人企業統計によれば。 金融保険業を含む全産業で、売上は320兆円、利益剰余金は390兆円、資本剰余金は160兆円レベル(資本剰余金と現金貯金の金額はかなり近しい状態)でしたっけ? 月商の1.5ヵ月分の現金預貯金あれば、運転資金ショートに陥らず、自転車操業から避けられるという話もあるなか、資本剰余金や利益剰余金、このレベルは「適正」を通り越して、「異常」なのではないですか? そりゃ少ないよりは多いに越したことはないにせよ。 (2015年12月11日 11:18) 4. 小宮先生、いつも記事を拝見させていただき、ありがとうございます。 私は、政府が思ったよりも手詰まりになっているという意見に納得です。 このところの政府の民間企業向けのメッセージには強い意思を感じます。 景気回復は国家国民のすべてが願うところといった感があり、日本の国の威信をかけた戦いという感じを受けます。 やはり、国際的に日本のプレゼンスが低下しているという背景があって、とりわけ中国経済の影響を受けてしまうため、なんとか出口を探してもがいている様子が見てとれます。 ただし、私の考えはそれほど国家のメンツを大事にする必要があるのか、むしろ世界のリーダーとして、より国際社会での役割を果たすことのほうが重要ではないでしょうか? せっかく、ノーベル賞を受賞するような有能な研究者を排出する国なのですから、諸外国に先駆けた先進的な問題解決のモデル社会となるように、企業の資金を投資にむけるように促してはいかがでしょうか? 安倍総理には、積極的なリーダーシップを発揮していただきたいところです。(ああ無情) (2015年12月11日 10:41) 5. 仰る通り需要が無ければ企業が設備投資をする訳がありません。法人税を下げたところで、70%の企業が払っていないのですから、むしろ大企業と中小企業との収益価格差が広がるばかりで何の景気対策になりません。 未だに財務省を中心とした財政緊縮派は10%への消費税引き上げを当然と考えているようですが、橋本政権での2%引き上げが20年近くも経ているのにGDPが1997年の数値を下回っています。 ここは、消費税増税を撤回するべきです。さらに財政健全化を考えるのなら元の5%まで引き下げるべきです。高橋洋一氏のご意見通りプライマリーバランスなど数年で黒字化し、年率3%以上のGDPの成長が見込まられるので600兆円達成など簡単にできます。(世話焼き爺) (2015年12月11日 09:23) http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/129957/121000043/?P=8
|